地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

ワイン

2009-09-18 00:00:00 | フランス語(フランス)

vin(ヴァン)

 パリからバスに数時間ほど揺られ、のどかな田園風景の広がる地帯へ向かった時のこと。美しい古城を見学した後、ワイナリーへ訪れた。

 やや辛口のワインをテイストして、ふんわりといい気持ちになると、やがて葡萄畑へといざなわれた。そして、見渡す限り広がる畑のうち、目の前のほんの一区画が最も味がよく、品質のよいワインの生まれる地であるということを知った。

 この小さな一区画から生まれたワインは、世界中の愛飲家のもとへと旅立ってゆくのか。人間の私よりもずっと遠くへと旅立つであろうその葡萄の実を見つめ、なんとも奇妙な気持ちに陥った。

 いつ頃から、人々はワインと共に過ごしてきたのだろう?その昔、ワインの起源についてなど考えてみたこともなかった。なぜならワインといえばフランスで、それ以上考える必要などなかったからだ。しかしある時、ワインがエジプトと関係があると知り、少なからぬショックを受けた。あの砂漠に浮かぶピラミッドと、私の中では「西欧」コテコテの代表的イメージであるワインが、どうしても結びつかなかったのだ。

 ワインの歴史を紐解くとき、我々は思いもかけぬ壮大な歴史の仮想体験をすることになる。コーカサス地方にその起源を持ち、メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマと、気が遠くなるほどの昔から、神への捧げものや貿易品として、僧侶や商人、十字軍の手によって広がった。時間的流れ、空間的広がり、人々の交流、地中海の役目…ワインの歴史は、同時にメソポタミア文明、エジプト文明、そして地中海文明をまたがって展開する、ダイナミックな人間の歴史を物語るのである。

 ワイン自体を眺めてみると、各時代に生きた人々の意思など全くお構いなしに進化し続けてきたようにも見える。人間は、政治、経済、宗教における目の前の目的を達成させようとする傍らで、ワイン文化拡大の担い手となり続けてきた。そして現代では、地中海はとっくの昔に飛び出し、大西洋を横断して、はるか遠くの南太平洋の国々においても豊かな発展を遂げている。まさに世界を駆け巡っているシロモノなのだ。

 そんな古い古い歴史を持ったワインを、今目の前で口にできることの喜び。フランスのワインも、国産のワインも、膨大な歴史を秘めた遺産の一部であると思うと、そこに存在していること自体が神秘的にさえ思えてくる。フランスのワイナリーで、小さな葡萄の実が世界に飛び立つことに違和感を感じたが、今出来上がった一瓶のワインを手にすると、なんという偉大な歴史の遺物に出会ってしまったのだろうと思う。ワインを手にできるわが身の幸運に乾杯だ。

 時に過去の幻影を見、時にワインの辿った歴史のロマンを感じながら、今宵も受け継がれてきたその味を愛でようではないか。

 

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