U23の試合でも見ようかと、「更級」に行くと、な
にやら「U70」のおじさん達が、酒を飲みながらご機
嫌でテレビを見ている。
何を見ているのかと思えば、それはボクシングの世界
戦だった。
これで、U23は駄目だなと諦めたが、そのおじさん
達は兎に角ご機嫌なのだ。
嬉しそうに解説しては、そうだそうだとうなずきあい
ながら日本酒をちびちび。
至福の時間というのは、多分こういうのだろうなと思
わずにはいられなかった。
しかし、この年代の人はテレビのスポーツ観戦が好き
だ。
この前のイタリア戦は惜しかった、などと言っている
ので、イタリアは今はユーロだし何のことだろうと思っ
ていると、男子バレーの話だった。
普段、バレーになんか興味ないはずなのに、オリンピッ
ク出場がかかっている試合なので見たようなのだ。
ここで前言を訂正。
スポーツ観戦が好きというより、ことのほかオリンピッ
クが好きなのだ。
「殆ど勝ってたのに、最後に負けたのは、結局本当の強
さがないからなんだよ」
「そうだそうだ」
「スポーツ心理学上、勝てると思うと油断が出来、集
中力がなくなるらしいよ」
(多分スポーツ新聞に書いてあったのだろう)
「ほう、そうなんだ」
「勝とうと思う気持ちが、勝てるとなった時が危険な
んだ」
「なるほど」
「ゴルフなんかもそうだもんな」
(自分の体験と照らし合わせ納得する)
「しかし伊達は凄いよ」
(突然伊達の名前が出てきたが、他のおじさんはそれ
が誰だか判らない様子)
「バレーの男子と違って、殆ど負けの状態から持ち返
すんだから、やっぱ凄いねプロは」
「精神力が違うんだよね、最後まで諦めない集中力」
(伊達が誰だか知らないが、とりあえず話をあわせる)
「結局最後は気持ちの問題だね、メンタルだよ」
(もう、伊達が誰なのかは問題ではない)
「うわあ、KOだよ」
(ボクシングの画面にKOシーンが)
「あれは、過去のいいシーンをやってるからだよ」
「そうか、それにしても今のボクシングは誰がチャン
ピオンなのか全然判らないね」
「階級が多すぎるし、何だか団体もいろいろだしね」
「しかも、ころころ変わるし」
(ファイティング原田の時代からすると、やはり取り
巻く環境が違いすぎる)
「うわあ、やられた」
(今回は、本当に日本人選手がKO負け)
「弱いね」
「全く、情けねえな」
(この辺になると、知ってようが知らなかろうが関係
なく、目の前の現象に対して好き勝手に言うだけ)
こうやって、終わりなきU70の楽しい会話は続くので
ある。
仕方ないのでU23の試合は家で見ることにした。