相変わらず無料映画のお世話にはなっているのだが、これといった映画に遭遇することは滅多にない。尤も、観る映画が娯楽作品中心なので当たり前と言えば当たり前の話だった。そんな中やや(10パーセントくらい)期待して観たのが日本映画の「アントキノイノチ」という作品。微かな記憶では、そこそこ評判になったようにも思う。監督は瀬々 敬久という人で、ピンク映画監督の時代、結構評価する人がいたのだ。ゲロゲロ少年Yもその一人。それで、この名前はずっと覚えていて、今回やっと初めて作品を観ることが出来たわけだ。唯、この作品に関しては不安要素があることにはあった。それは、原作がさだまさしであるということ。
映画の内容は、それぞれトラウマを抱えた若者二人(男女)が、ある遺品整理会社で出会い、徐々に過去を乗り越えていくといったもの。職場がちょっと特殊な、遺品整理会社(孤独死した人の家を整理する仕事)というと、どうしても「おくりびと」を思い出すが、実際、そのあざとい設定には近いものがあった。これは、それぞれの映画の、方や脚本家(おくりびと)、方や原作者に共通するある体質によるものであると思う。要するに、この映画も「おくりびと」と同じように良くはなかったということである(結果的には監督の責任だが)。特に、最後の女性(榮倉奈々)が車にはねられる場面には唖然としてしまった(原作に忠実にやったのなら原作がひど過ぎる)。同じようなキャラクターとして出ていた「東京公園」はいい映画なのだが、この「アントキノイノチ」は、タイトルが示すように、最後までそのあざとさが消えなかった。