昨日BSで、もう何度目かと言われても分からないほどやっている「大脱走」をまた放映していた。流石に今回は、これも何度か分からないくらい見ているので見なかったが、まあよくできている映画だとは思う。
ということで、同じ戦争映画で多くの人に知られている「大脱走」とは対照的な、この映画を知っている人は一体誰?と思われるような戦争映画を観た。タイトルは「燃える戦場」。何となく叙情的なタイトルに感じるのは私だけか。誰の映画かと言うとアルドリッチの作品だ。かく言う私も全く知らなかった作品で、アルドリッチのフィルモグラフィーを見て初めて見つけ興味を覚えた作品だったのだ。南洋の島で日本軍と対峙するイギリス軍の話というのも興味を引いたし、しかも日本軍の隊長が「高倉健」だという。こんな映画に出てたこと自体初めて聞くし、これはどうしても観たいと思ったのだ。
南洋の島で半ば孤立気味のイギリス軍に、日本語ができるあまりやる気のないアメリカ将校(戦況に応じて徐々に変化するのも見所)が一人派遣され特別部隊が結成される。任務は、日本軍の通信を破壊するというもの。そしてジャングルを掻き分け日本軍の陣地に深く踏み入れるのだが、ジャングルに精通している日本兵の反撃に耐え果たして生きて帰れるか、というのが物語の中心である。状況としては、テレンス.マリックの「シンレッドライン」にかなり似ている。しかし、あちらは超が着く真面目な作り(ちょっと大仰な感じが好きではない)、一方こちらの「燃える戦場」は飽くまでも娯楽作品の形をとっている。にしては、二時間以上、しかもあまり派手な戦闘場面もなく、部隊の不協和音を描きつつジャングルを彷徨う姿を描くという、如何にもアルドリッチらしい一本筋の通った地味な映画である。ヘンリー.フォンダ(出番は少ない)やマイケル.ケイン(かなり重要な役どころ)と有名どころも出演して、決して三流映画ではないが、B級扱いはされるかと思うようなヒット作の臭いのしない、これぞアルドリッチ映画の典型と言う映画でもある。しかし、魅力的である。
感心したのは、日本軍が出る向こうの映画は、ドイツ軍の扱いと同じで、大体残酷なイエローモンキー扱いなのだが、その辺の描写が明らかに違う。ちょっと間抜けな扱いは見受けられるが(これは立場が逆であれば同じようにすることだろう)、決して残虐性を際立たせることもせず、高倉健にいたっては、むしろ立派な軍人として描いている。だから、例えば退役イギリス人からすれば不満ではないかと思うくらいだ。こんなところでもアルドリッチのフラットな確かな視点を感じる。思うのは、何故これほどこの映画が無名なのかの、その一点だ。