ピカビア通信

アート、食べ物、音楽、映画、写真などについての雑記。

狩人の夜

2010年01月16日 | 映画


エリック・ロメールの遺作「我が至上の愛
~アストレとセラドン~」のDVDと一緒に
チャールズ.ロートンの「狩人の夜」も頼
んだのだが、この作品はチャールズロート
ンが監督したものの唯一のもので、常に幻
の傑作と言われていたものである。ヴィデオ
では持っていたが、DVDでも安く販売される
ようになったので今回注文したというわけ
だ。つまり、今はもう幻ではないというこ
となのだ。

特異なこの作品は、ジャンルで言えばサス
ペンス、あるいはサイコホラーということ
になるか。主役でもあるロバート.ミッチャ
ムの不気味な殺人者振りがたまらないが、
それだけならまるで「恐怖の岬」だが、特
異なと言ったその訳は、その恐怖を主題に
するよりは、不思議なファンタジーにして
しまった映画全体、監督のセンスにある。
殺人者がまるで童話の世界に紛れ込んだか
のような錯覚、現実感がふっと消える瞬間
が実に魅力的なのだ。ティム・バートンな
んかが近いかもしれない。ダークファンタ
ジーの先駆者、多分早すぎた監督であった
のだと思う。

冒頭の空からの俯瞰からカメラが徐々に地
上の人間に近づき、何かの現場らしき所に
行き着きそこが殺人現場であることが分か
るといった一連の映像、どこかで見たと思っ
たら、イーストウッドの「ミスティックリ
バー」の最初と同じだった。あれも傑作で
あったが、イーストウッド、この作品から
借りてきたのか。この最初の部分だけで、
すでに「狩人の夜」が傑作であることは約
束されたようなものであったが、普通真似
た方は駄目なのだが、イーストウッドの「ミ
スティック・リバー」も同じように傑作で
あったことはもはや奇跡としか言いようが
ない。いや、今回はイーストウッドではな
く、あくまでも本家であるチャールズロー
トンに感服するべきである。
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