視察研修2日目は愛知県高浜市を訪問しました。
愛知県高浜市(高浜町と親近感を感じます)は、福祉のまちづくりとして全国的に知られた自治体です。従って、ここも全国各地から多くの視察団が訪れます。
私は今回の視察を計画するにあたり、どうしてもこの高浜市を研修したかったので視察日程を先に決めずに高浜市にアポ取りし、高浜市が研修を受入できる日を視察研修日程とすることで今回の視察が実現しました。
聞くところによると今週は高浜町の視察で3団体目だそうです。日本全国でまだ視察に来ていない都道府県は青森県だけだとのことでした。
以下に高浜市の取組みを報告します。
■高浜市政の行動規範
高浜市では市民を「お客さま」と呼びます。研修の説明を担当される職員も常に市民ではなく「お客さまのために・・・」とか「お客さまにとって・・・」といった表現をしていました。
市役所職員は全員が来店カウンターを向いて仕事をしています。こうした意識を醸成するために数年間、職員が交代で玄関に立って来庁されるお客さま全員に進んであいさつをしてご用件を承るということを行ったそうです。
市役所の窓口は平日が午後7時まで(駅前出張所は午後9時まで)、土、日、祝日は午後5時15分まで利用可能です。窓口を閉めるのは年末年始の6日間だけで年間359日開けています。
全てはお客さま第一の視点です。(民間企業ではあたり前ですが・・・。)
視察研修に市役所を訪れた時、実は20分程早く到着してしまいましたが、対応される職員がもう既に雨の中を玄関先で我々の到着を待っていてくれました。驚きました。
*こぼれ話しをひとつ。窓口の時間延長や休日開放はシフト勤務などで対応し人件費の増加はありません。お客さま(市民)にとって便利な市役所は、職員にとっては負担の多い職場といえます。とてもたいへんです。でも「たいへん」なら辞めてもらって結構、とのスタンスです。市役所は職員のために存在するのではなく市民のために存在するということでしょうか。
高浜市の採用試験には7人の募集枠に全国から70名を超える優秀な人材の応募があるといいます。それでも採用は7名ですから「やる気がないのなら代わりはいくらでもいますよ」ということです。
■高齢者を切り口としたまちづくり
高浜市では平成4年からホームヘルパーの養成講座を実施し、2級、3級あわせて約800名のヘルパーを養成しています。養成したヘルパーで13グループのボランティア組織をつくり約100名のヘルパーが宅老所の運営にあたっています。
平成7年には市内の県立高校に福祉科を設置、平成8年には日本福祉大学高浜専門学校を誘致して福祉関係の人材育成にあたっています。
■福祉の拠点「高浜市いきいき広場(写真)」の設置
高浜市では、高浜駅前再開発で県が整備する13階建ての再開発ビルの建設に際し、通常ショッピングモールなどを計画する一等地のフロアを全て福祉拠点「いきいき広場」として整備しました。
市長いわく「高浜市で駅前に店をつくってもお客なんか集まらん」との考え方によるものです。
この「いきいき広場」には、福祉の相談がワンストップで行える総合相談窓口や介護・福祉機器のショールーム、健康づくり施設(フィットネス・マシン等)、機能回復訓練施設等々が設置されています。
■地域福祉計画の取組み
地域の福祉政策の柱となる「地域福祉計画」の策定について説明を受けました。
まずは担当部局のトップ(又は次席級)と社会福祉協議会とでプロジェクトチームを結成し、毎週金曜日の時間外で会合を重ねます。合計72回開催したそうです。
各部局のトップをメンバーとしたことにより、決定の迅速化と人件費の抑制(時間外手当てが不要。・・・この判断には是非がありますが。)が図られました。
そして圧巻は、住民参加です。何と小学生から85歳の高齢者まで146名もの方に委員になっていただき、これを5グループに分けて毎月第二、四土曜日に委員会を開催して議論し策定したそうです。
*高浜町にはまだ「地域福祉計画」がありません。今後の計画策定の参考となりました。
■介護予防拠点施設の設置
高浜市では、市内に介護予防拠点として5箇所の「宅老所」と、ものづくり工房などを設置しております。
宅老所が「じぃ&ばあ」「いっぷく」「あっぽ」「こっこちゃん」「悠遊たかとり」の5箇所。
他に、ものづくり工房「あかおにどん」、IT工房「くりっく」、サロン赤窯、全世代楽習館があります。施設名から何をするところか推察下さい。
注目する点として、施設はどれも空店舗や空き教室などを利用しており、新設の建物はひとつもありません。改修費に全部で1億円程度かかっておりますが全額を国の補助金で賄ったとのことでした。
なお、これら施設の運営は、各種団体、自治会など地域のボランティア約450人と、市が養成したヘルパーのグループが行っております。
こうしたおかげで、例えば5箇所の宅老所の運営事業費の合計は年額で僅か580万円だそうです。
これだけ多くのボランティアをどうやって集めたのか秘訣を聞くと、市長、副市長以下市役所幹部職員がひたすら頭を下げまくってお願いしたとのことでした。
最初はお願いしてやってもらったが、人数が多いのでそれ程負担にもならないこととやりがいも感じていただき今は順調にどの施設も運営されているそうです。
■毎日型給食サービス事業
ひとり暮らしのお年寄りなどへの「給食サービス」は、例えば高浜町でも実施していますが、高浜市の給食サービスは異色です。
まず、毎日実施という点、それからメニューが選べるという点です。
日替わり弁当あり、中華あり、寿司弁当あり、丼物あり、魚ありとバラエティーに富んでいます。利用者はメニュから好きな弁当を注文できるのです。
なぜ、こんなことが出来るのか。(私の妻も高浜町の給食サービスにボランティアで参加していますが、高浜では実現不可能と言ってました。)
それは、この給食サービスに参加するボランティアが全員飲食店の方々だからです。
この仕組みを、飲食店組合にお願いして実現するまでには随分苦労もあったようですが、本当に素晴らしいアイデアだと思いました。
この事業の研修だけで、北海道から来られた町職員もいたそうです。
■居住福祉のまちづくり条例について
高浜市といえばこの「居住福祉のまちづくり条例」が有名です。今回の研修でも勉強したかったのですが、ここまでの時間が取れませんでした。しかし、職員の方からは本日の説明で十分にこの条例も理解していただけるとのことでした。
以上、長々と書きましたが、他にも高浜市のまちづくり協議会の取組みなどを熱く語っていただきました。
聞き足りない点があれば、後日、個人的に来ていただいても構わないともおっしゃっていただきました。
全国が注目する高浜市の取組みは、現在5期目の森市長の熱意があったればこそのことです。
説明いただいた職員が市長の元秘書ということもあって市長の思いをよく理解されておられ、説明を聞いていた本当に感動しました。
少し自我自賛になりますが、良い視察研修だったと思います。
(腰は何とか2日間の研修に耐えました。)
愛知県高浜市(高浜町と親近感を感じます)は、福祉のまちづくりとして全国的に知られた自治体です。従って、ここも全国各地から多くの視察団が訪れます。
私は今回の視察を計画するにあたり、どうしてもこの高浜市を研修したかったので視察日程を先に決めずに高浜市にアポ取りし、高浜市が研修を受入できる日を視察研修日程とすることで今回の視察が実現しました。
聞くところによると今週は高浜町の視察で3団体目だそうです。日本全国でまだ視察に来ていない都道府県は青森県だけだとのことでした。
以下に高浜市の取組みを報告します。
■高浜市政の行動規範
高浜市では市民を「お客さま」と呼びます。研修の説明を担当される職員も常に市民ではなく「お客さまのために・・・」とか「お客さまにとって・・・」といった表現をしていました。
市役所職員は全員が来店カウンターを向いて仕事をしています。こうした意識を醸成するために数年間、職員が交代で玄関に立って来庁されるお客さま全員に進んであいさつをしてご用件を承るということを行ったそうです。
市役所の窓口は平日が午後7時まで(駅前出張所は午後9時まで)、土、日、祝日は午後5時15分まで利用可能です。窓口を閉めるのは年末年始の6日間だけで年間359日開けています。
全てはお客さま第一の視点です。(民間企業ではあたり前ですが・・・。)
視察研修に市役所を訪れた時、実は20分程早く到着してしまいましたが、対応される職員がもう既に雨の中を玄関先で我々の到着を待っていてくれました。驚きました。
*こぼれ話しをひとつ。窓口の時間延長や休日開放はシフト勤務などで対応し人件費の増加はありません。お客さま(市民)にとって便利な市役所は、職員にとっては負担の多い職場といえます。とてもたいへんです。でも「たいへん」なら辞めてもらって結構、とのスタンスです。市役所は職員のために存在するのではなく市民のために存在するということでしょうか。
高浜市の採用試験には7人の募集枠に全国から70名を超える優秀な人材の応募があるといいます。それでも採用は7名ですから「やる気がないのなら代わりはいくらでもいますよ」ということです。
■高齢者を切り口としたまちづくり
高浜市では平成4年からホームヘルパーの養成講座を実施し、2級、3級あわせて約800名のヘルパーを養成しています。養成したヘルパーで13グループのボランティア組織をつくり約100名のヘルパーが宅老所の運営にあたっています。
平成7年には市内の県立高校に福祉科を設置、平成8年には日本福祉大学高浜専門学校を誘致して福祉関係の人材育成にあたっています。
■福祉の拠点「高浜市いきいき広場(写真)」の設置
高浜市では、高浜駅前再開発で県が整備する13階建ての再開発ビルの建設に際し、通常ショッピングモールなどを計画する一等地のフロアを全て福祉拠点「いきいき広場」として整備しました。
市長いわく「高浜市で駅前に店をつくってもお客なんか集まらん」との考え方によるものです。
この「いきいき広場」には、福祉の相談がワンストップで行える総合相談窓口や介護・福祉機器のショールーム、健康づくり施設(フィットネス・マシン等)、機能回復訓練施設等々が設置されています。
■地域福祉計画の取組み
地域の福祉政策の柱となる「地域福祉計画」の策定について説明を受けました。
まずは担当部局のトップ(又は次席級)と社会福祉協議会とでプロジェクトチームを結成し、毎週金曜日の時間外で会合を重ねます。合計72回開催したそうです。
各部局のトップをメンバーとしたことにより、決定の迅速化と人件費の抑制(時間外手当てが不要。・・・この判断には是非がありますが。)が図られました。
そして圧巻は、住民参加です。何と小学生から85歳の高齢者まで146名もの方に委員になっていただき、これを5グループに分けて毎月第二、四土曜日に委員会を開催して議論し策定したそうです。
*高浜町にはまだ「地域福祉計画」がありません。今後の計画策定の参考となりました。
■介護予防拠点施設の設置
高浜市では、市内に介護予防拠点として5箇所の「宅老所」と、ものづくり工房などを設置しております。
宅老所が「じぃ&ばあ」「いっぷく」「あっぽ」「こっこちゃん」「悠遊たかとり」の5箇所。
他に、ものづくり工房「あかおにどん」、IT工房「くりっく」、サロン赤窯、全世代楽習館があります。施設名から何をするところか推察下さい。
注目する点として、施設はどれも空店舗や空き教室などを利用しており、新設の建物はひとつもありません。改修費に全部で1億円程度かかっておりますが全額を国の補助金で賄ったとのことでした。
なお、これら施設の運営は、各種団体、自治会など地域のボランティア約450人と、市が養成したヘルパーのグループが行っております。
こうしたおかげで、例えば5箇所の宅老所の運営事業費の合計は年額で僅か580万円だそうです。
これだけ多くのボランティアをどうやって集めたのか秘訣を聞くと、市長、副市長以下市役所幹部職員がひたすら頭を下げまくってお願いしたとのことでした。
最初はお願いしてやってもらったが、人数が多いのでそれ程負担にもならないこととやりがいも感じていただき今は順調にどの施設も運営されているそうです。
■毎日型給食サービス事業
ひとり暮らしのお年寄りなどへの「給食サービス」は、例えば高浜町でも実施していますが、高浜市の給食サービスは異色です。
まず、毎日実施という点、それからメニューが選べるという点です。
日替わり弁当あり、中華あり、寿司弁当あり、丼物あり、魚ありとバラエティーに富んでいます。利用者はメニュから好きな弁当を注文できるのです。
なぜ、こんなことが出来るのか。(私の妻も高浜町の給食サービスにボランティアで参加していますが、高浜では実現不可能と言ってました。)
それは、この給食サービスに参加するボランティアが全員飲食店の方々だからです。
この仕組みを、飲食店組合にお願いして実現するまでには随分苦労もあったようですが、本当に素晴らしいアイデアだと思いました。
この事業の研修だけで、北海道から来られた町職員もいたそうです。
■居住福祉のまちづくり条例について
高浜市といえばこの「居住福祉のまちづくり条例」が有名です。今回の研修でも勉強したかったのですが、ここまでの時間が取れませんでした。しかし、職員の方からは本日の説明で十分にこの条例も理解していただけるとのことでした。
以上、長々と書きましたが、他にも高浜市のまちづくり協議会の取組みなどを熱く語っていただきました。
聞き足りない点があれば、後日、個人的に来ていただいても構わないともおっしゃっていただきました。
全国が注目する高浜市の取組みは、現在5期目の森市長の熱意があったればこそのことです。
説明いただいた職員が市長の元秘書ということもあって市長の思いをよく理解されておられ、説明を聞いていた本当に感動しました。
少し自我自賛になりますが、良い視察研修だったと思います。
(腰は何とか2日間の研修に耐えました。)