小幡憲仁 議会活動日記

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原子力関連施設視察研修レポート

2022年07月21日 | 研修報告
原子力関連施設視察研修レポート

1.視察日程
令和4年7月19日(火)~21日(木) 2泊3日

2.視察先
日本原燃株式会社 原子燃料サイクル施設
日本原子力研究開発機構 青森研究開発センター
東北電力株式会社 東通原子力発電所

3.視察研修結果の報告
(1)日本原燃株式会社 原子燃料サイクル施設
青森県六ケ所村の日本原燃株式会社原子燃料サイクル施設を視察した。ここは、日本の原子力政策の根幹である原子燃料サイクルの中核施設が立地する地域であり視察先としては非常に有意義だと考える。以下、視察した施設について報告する。

【日本原燃PR館】
始めに、日本原燃PR館で原子燃料サイクル施設の概要説明を受ける。六ヶ所村を含む下北半島は数多くの原子燃料サイクル関連施設を初めとする原子力施設が立地する地域である。大間町には電源開発が建設を進めてきたフルMOX燃料の大間原子力発電所(現在、建設は凍結中)、東通村には東北電力の東通原子力発電所(他に東京電力の東通原子力発電所の建設地点もある。*建設は凍結中)、むつ市には東京電力と日本原電の共同出資による使用済燃料中間貯蔵施設が立地している。
PR館で原子燃料サイクル事業や各施設の概要について説明を受け、その後、館内の展示模型により再処理施設の概要について詳しく説明を受けた。
原子燃料を再処理する目的(天然ウラン資源の節約、高レベル放射性廃棄物の減容)や、これらの目的が達成できるメカニズム、再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物の処理方法など原子燃料サイクル全般について基礎的な内容を再認識できた。

【ウラン濃縮工場】
原子力発電所で使用するウラン燃料の材料となる濃縮ウランを製造する工場である。関連施設としてウラン濃縮装置の研究開発施設もあるが、濃縮工場と併せて、どちらもハイレベルな機密保持施設であり内部の見学は出来ない。ウラン濃縮が遠心分離法で行われる仕組みや、工場が厳格なIAEAの監視下で操業されていることなどの説明を受けた。(施設については外観のみをバス車内から見学)

【低レベル放射性廃棄物埋設センター】
原子力発電所の運転に伴って管理区域から様々なゴミが発生するが、これらのゴミを埋設(最終処分)する施設である。埋設は、地下約12メートルに大きな鉄筋コンクリート製の箱をつくり、その中にゴミの入ったドラム缶を置く。ドラム缶の中はゴミにセメントを混ぜて充填し、箱に並べたドラム缶の周囲もセメントを充填する。これに土を被せて埋設する。環境への影響が将来にわたって出ない工法がとられており、また、地下水の監視なども行われている。
この施設の敷地の埋設可能量はドラム缶で約300万本である。但し、現時点で認可された貯蔵容量は60万本であり、既に約34万本が埋設されているとの説明を受けた。なお、全国の原子力発電所で保管中のドラム缶が、約71万本(2020年度末)ということであり、現時点でも全てのドラム缶を受け入れするには認可本数(60万本)の見直しが必要であるが、全国の原子力発電所から搬出されるドラム缶が年間1万数千本程度のペースであるため、当面は現状の認可本数で対応可能であることを確認した。また、将来的にも300万本という十分な敷地を確保しており、低レベル放射性廃棄物の処分については全く問題がないことを再確認できた。(施設はバス車内から外観のみを見学)

【高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター】
使用済燃料の再処理に伴い高レベルの放射性廃棄物が発生するが、これをガラス固化して、キャニスターと呼ばれるステンレス製の容器に入れて一定期間(30年~40年)保管しておく施設である。
今のところ過去に海外で日本の使用済燃料を再処理した際に発生したキャニスターを受け入れて貯蔵している。フランスから約1310本(フランス分は終了)、イギリスから520本を受け入れしている。今後、全体の総数で約2,200本の受け入れを予定している。現在の施設でも全体で2,880本の受け入れ容量があり、海外からの受け入れは現在の施設でまかなえる。なお、今後、この六ヶ所の再処理施設が運用開始することによって発生する高レベル放射性廃棄物の貯蔵についても、別の建屋を建設する用地が確保されている。
高レベル放射性廃棄物は、約30年経過するとキャニスターの表面温度が摂氏約200度から約100度に低下し、この温度になると地下埋設で周辺の粘土に悪影響を及ぼさなくなるとの説明を受けた。施設の建屋内まで案内され見学スペースの遮蔽ガラス越しに施設の様子を確認できた。ただ、この施設で永久保管できる訳ではなく県と合意した保管期間内には最終処分場に搬出する必要がある。この最終処分場については、現時点では北海道の寿都町と神恵内村のわずか2町村が文献調査に応募している段階であり、この最終処分地選定の取り組みの加速化が喫緊の課題であることを再認識した。(施設は建屋内も含めて見学)

 【使用済燃料受入貯蔵施設】
 全国の原子力発電所から発生する使用済燃料(燃料集合体の状態で)を一時的に受入貯蔵する施設である。原子力発電所にある使用済燃料プールと基本的には同じ仕組みの巨大なプール施設である。全体の受入容量は3000トン・Uであり、これまで3393トン・Uを受け入れし、過去にアクティブ試験によって425トン・U
を再処理したものを差し引きし、現在、2968トン・Uを保管中である。ほぼ最大容量を保管していることから、再処理施設が稼働し使用済燃料の再処理が進まないと、現状では新たな受け入れはできない。
 今後、関西電力管内では、来年度に高浜発電所1・2号機が再稼動し管内7基体制が確立されると、使用済燃料の行き場の問題が最重要課題となる。順調に再処理施設の本格運転が開始され、中間貯蔵施設の県外立地が実現すれば問題はないが、いずれも不確実な状況にあることから、いずれも実現できないケースを想定して、当面の現実的な対応策として発電所構内に乾式貯蔵室を建設し貯蔵容量を拡大することについて真剣に議論を開始すべき時期が迫っていることを改めて感じる次第である。(施設は建屋内も含めて見学)

【使用済燃料再処理工場】
使用済燃料からウランとプルトニウムを取り出す処理(再処理)を行う六カ所の事業所の中核施設である。これまで、アクティブ試験も成功し本格運転の目処がたった時点で東日本大震災が発生し、その後、アクティブ試験は終了した。
そして、2014年には新規制基準の適合審査を申請し、2020年7月に事業変更が許可された。現在は工事計画認可の手続き中であることの説明を受けた。早期に全ての認可を受けて、事業化されることを期待したい。
現在、国の原子力政策の基本方針は原子燃料サイクルの堅持であり、我が国の原子力政策は、まずはこの施設の本格運転が開始されなければならない。規制庁の審査で相当な苦労をされていることは漏れ聞いているが総力を挙げての取り組みを期待したい。
なお、PR施設で使用済燃料を集合体の状態で細かくカットし硝酸で溶かし、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物に分離し核分裂生成物はガラス固化しキャニスターに注入して高レベル放射性廃棄物貯蔵センターで保管される仕組みについて詳細な説明を受けた。(施設はバス車内から外観のみを見学)


(2)日本原子力研究開発機構 青森研究開発センター
日本原子力研究開発機構青森研究開発センターのむつ市に立地する関根施設を訪れ「むつ科学技術館」を視察した。
 この施設は、原子力船「むつ」の母港であった関根港と「むつ」の船体の一部(原子炉などの主要部分)を流用した見学施設である。原子力船「むつ」の概要やこれまでの歴史が学べる施設である。これまで「むつ」は、放射性物質の漏洩があって、この問題が発端になって結局、原子力船としての試験は廃止されたと認識していたが、現実は、遮蔽体の厚み不足による中性子線の透過であり漏洩は無かったことを知った。この程度の問題で、このような国家的な事業が中止に追い込まれることに大いに疑問を感じた。高速増殖炉「もんじゅ」もしかりである。

(3)東北電力株式会社東通原子力発電所
青森県東通村の東北電力株式会社東通原子力発電所を視察した。
東通原子力発電所は、東北電力が、1号機が沸騰水型軽水炉(BWR)で110万kW、2号機が改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)138万5千kWの2基を建設し、さらに隣接して東京電力が、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)138万5千kWを2基建設する計画でスタートした。その他にも増設できる十分な敷地が確保されており、この東通村は大電源地域となる予定であった。
ところが、東北電力の1号機が運転を開始し、東京電力の1号機を着工した時点で、東日本大震災が発生し、工事は中断し現在に至っている。東北電力の1号機については、2021年度の再稼働を目指して、新規制基準に基づく申請を行なったが、敷地内の断層の活動性の審査に長期間を要し、2021年7月にようやく活断層ではないとの結論となったが、現時点でも、基準地震動、基準津波高が確定しておらず、東北電力は2021年度の再稼働時期を2024年度に延期する事態となっている。こうした事態は原子力規制庁の審査行政の怠慢という他なく、激しく憤りを感じるところである。後日、東北電力が審査の迅速化を原子力規制庁に求めたとの報道があったが、当然のことであり、電力事業者には行政の不作為に対して強い態度で対峙してもらいたいと感じる次第である。