日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「B-1グランプリ」が曲がり角に来ている件

2012-10-22 | ビジネス
北九州市でB級グルメの全国選手権「B-1グランプリ」が開かれ、「八戸せんべい汁」が今年のグランプリに輝いたそうです。

個人的には、そもそも「B-1グランプリ」のスタート時から、B級グルメの1等賞を決めると言うこの企画コンセプト自体に疑問を持ち続けているのですが、最近のこの大会を巡る流れを見るに、またぞろ様々な問題が噴出し「B-1グランプリ」自体が曲がり角に来ているのではないかと感じていますので、そのあたりに少し触れてみます。

まずそもそも論から。B級というのはA級じゃないからB級なのであって、人間に例えて言うなら、「一流大学出のエリートばかりがイイってもんじゃないんだよ。俺たちには俺たちの偏差値じゃ測れない良さがあるんだぜ」的な、ミシュランの3つ星とは対極にある「食」のアンチテーゼ的イベントであってしかるべきと思うわけです。

従いB級グルメのイベントは、B級というくくりのアンチ・エリート軍団を一同に会して、広く全国の皆さまに知っていただく機会としてのものでこそあれ、そこでのメインイベントが来場者の投票と言う最大公約数的な評価方法での順位づけという、言ってみれば偏差値エリートを生みだすのと変わらないシステムであるのはいかがなものなのかなと。“1等賞決め”至上主義のやり方は、地域の個性を第一に立たせるものではない、見せかけのアンチテーゼでしかないように思うのです。

次に、参加ルールと毎年開催しグランプリを決めると言うことの是非。「B-1グランプリ」を主催する愛Bリーグなる団体は団体加盟や大会運営にかなり厳しいルールをひいているようで、勢い各地域で組織化された地盤や資本的な背景のあるメニュー以外は、いかにおいしいメニューであってもハードルが高くなかなか参加できないという現状があります。

従い、取り扱い店舗が少ないメニューやポッと出のメニューは排除される傾向にあり(大会のために作られたようなポッと出の排除は、主催者の狙いでもあるようですが)、結局毎年ほとんど顔ぶれが変わらない上位常連の面子が顔をそろえて、毎年毎年同じ争いを単に場所を変えるだけで繰り広げるという流れになっているように思います。つまり、大会そのものが全国のデパートの催事場を回るB級グルメ展的な色合いが濃くなっていながら、毎年グランプリを決める意味はどこにあるのか、いささか疑問な感じもしているのです。

ちなみに、1度グランプリをとったメニューは“殿堂入り”と称して次回以降は投票対象からは除外されるというルールもあり、主要メンバーが順番待ちで優勝の栄誉をいただくという流れが出来上がっているわけです。今年グランプリを取った「八戸せんべい汁」も、これまでも2位、3位を続けていた上位の常連組で、目の上のたんこぶが次々「優勝⇒殿堂入り」で勝ち抜けする中で、ようやく今年順番が巡ってきたというそんな印象です。

もうひとつ、何でもそうですがプロジェクトが巨大化すれば、当然そこには利権が発生するわけです。具体的には、優勝することによる利権もさることながら、上位入賞の利権、さらには正会員、準会員というヒエラルキー創造による愛Bリーグ加盟そのもののハードルを高くしての正式加盟の利権まで発生しており、そんな中、主催者側との運営を巡る考え方の相違から、「三島コロッケ」「久留米焼き鳥」など愛Bリーグを脱退する有力団体も相次いでいると聞きます。

中でも最も由々しき問題であるのが、過去にグランプリ受賞経験のある「厚木シロコロホルモン」の昨年12月の脱退。詳細の事情は明らかにされていませんが、優勝による経済的なメリットは十分に享受したものの、“殿堂入り”後は不要な負担ばかりが増すだけで加盟を続けるうまみもないということなのでしょうか。常識的に考えて、何か加盟を続けることの大きなデメリットがないのならグランプリ受賞者が会を脱退するというのは、ちょっと考えにくい気がします。

今年は過去最大60万人以上の来場者を集めたという「B-1グランプリ」ですが、来場者からの悪い評判もチラホラ聞こえています。「食べたい人気メニューは何時間も行列しなくてはならず、結局1、2メニューしか口にできずにお腹をすかせて帰った」とか、「1食400~500円でほんのわずかな量しか入っていないものが多く、これでB級と言えるのか」等々。

メディアで大々的に取り上げられ、注目度が増せば増すほどあるべきB級のコンセプトから離れていくかのように思われる「B-1グランプリ」。権威化進行につきものの“既得権ビジネス化”による大会の退廃をいかに防ぎながら、B級グルメにエリート・グルメとは一味違う道を歩ませていくことができるのか。様々な問題点の発生を聞くにつけ、大会そのもののコンセプトの見直しを含めて、今大きな曲がり角に来ているように思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿