日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ブック・レビュー~「コンサルタントの解答力」

2009-10-01 | ブックレビュー
★「コンサルタントの解答力/野口吉昭(PHPビジネス新書760円)」

我が敬愛するコンサルタント野口吉昭氏の新作です。

まずはじめに、組織と人のマネジメントにお悩みの方々に超おススメですと言っておきます。
本書に言うところの「解答力」とは、相手を納得させて相手を動かすような話の組み立て方を言っています。すなわち、本書に書いてあることをマスターし実践するなら、このノウハウのプレゼンテーションでの活用効果は当然のこと、経営者や管理者が部下を納得させ自分が思う方向に動かすことにも十分力を発揮するであろうという内容なのです。

肝となる部分は、①「相手軸でモノを考えること」②「本質をあぶりだすこと」③「ロジックとパッションで動かすこと」の3点に集約されます。①はいろいろな所でも言われているコミュニケーションの基本項目であり、ここでは著者なりの言い方でそれを説いています。②は当ブログでも再三言っております「幹」と「枝葉」を分けるモノの分析力のこと。本書ではこれを身につける方法に言及しています。そして今回“肝中の肝”なのが③。相手を説得するのに論理的な裏付け(「ロジック」)は当然不可欠ですが、それだけでは人は動かない。納得させかつ動かすには「ロジック」に加えて「パッション」が必要であると、著者は説いています。

これは野口氏ならではの論理展開であり、見逃せません。2代目経営者や企業の経営企画部門、外部コンサルタントが陥りやすいエラーとして、「論理的に隙のないスキームが構築できたから、皆が納得してついてくるはず」という誤った結論付けがあります。この点は、いろいろな企業で「論理的に正しい戦略であっても、なぜ人はついてこないか」という問題意識としてたびたび議論される部分でもあります。著者は、この課題を解決するのが「パッション」であると説いているのです。言葉を換えて、「Must」だけでなく「Can」や「Will」を意識させる戦略や指示の出し方こそが重要であると強調している部分でもあります。この点こそ本書最大のヤマ場であり、経営者や管理者にとって本書から学ぶべき最重要ポイントであると思います。

本書は著者が前書きで言っている通り、昨年のベストセラー「コンサルタントの質問力」の続編ではなく、まったく別の角度で書かれたマネジメント指南書であると位置づけられます。個人的にはむしろ、本書の前段階として野口氏の近作「考え・書き・話す3つの魔法」記載内容を身につけることで、より一層効果的な役立たせ方が可能になると思います。すべてのビジネス・パーソン、特に経営者、管理者の皆さんにおススメしたい1冊です。10点満点で9.5点。論点、結論の明確さ、話の平易さ等が素晴らしいと思います。内容から言ってタイトルの「コンサルタントの…」という前置きはむしろ焦点をぼかす、という点がマイナス0.5点です。実質満点、この秋の“イチオシ”ビジネス書です。

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