~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

ベートーベン講座 第2回

2006年10月30日 17時05分46秒 | レッスン&セミナー
H先生のベートーベン講座第2回に参加してきた。

今日は第9番から第21番までを解説された。
中期のソナタになると、ベートーベンが舞台がらみの創作(バレエやオペラ)をしていたことが作品に色濃く反映されているということで、前回もお話にあったシェイクスピアのほか、ギリシア神話についての講義がかなりあった。

たとえばベートーベンのバレエ音楽に『プロメテウスの創造物』という作品があるが、この中のテーマは交響曲第3番『エロイカ』のフィナーレに使われているし、ピアノ曲の『エロイカ変奏曲』のテーマでもある。
では、プロメテウスとはどのような神か?
ということに始まり、「ギリシア神話」の中にでてくる、アルカディア、ミューズ等がお菓子や石鹸の名前になっていること、パニックの語源はパンの神であるなど、いかにギリシア神話を源とする言葉が生活の身近なところに使われているか、ヨーロッパのオペラハウスの柱には、神話の女神が必ずといっていいほど巻きついていること(笑)などなど、興味深い話が続いた。
また先生のお持ちの岩波版の神話の訳者は野上弥生子で、序を書いたのは夏目漱石なのだが、これが例によってストレートでなく(笑)、ひねりの入った褒めてるんだかなんだかわからないしつこい序で、先生の朗読にかなり笑ってしまった。

17番は『テンペスト』といわれているくらいなので、シェイクスピアの『テンペスト』は是非読んでほしい・・といわれ、ほかには16番と18番については、軽快な部分やアリア的な部分がオペラ『フィデリオ』を想起させるところが多い、と『フィデリオ』のストーリーやなりたちについても説明があった。

あと第12番の第3楽章の「葬送行進曲」のメロディーは、第14番『月光』の冒頭に通じるし、『月光』の冒頭は左手の下降進行が大切なのであって、暗いところへ沈んでいくような精神的なものが表現されている、といったお話もあった。

『月光』や『熱情』の第3楽章は、ベートーベンは自分で弾きながら極度の興奮状態に陥ってしまい、弾き終えて誰かが話しかけても返事すらできないような状態だったらしい・・・というお話をきいたとき、ある邦人ピアニストの最近のリサイタルの話を思い出した。
私の知る数人がその演奏会に出かけたのだが、ショック状態(?)にある知人たちの話を総合したところ、
第1楽章は・・・・・・左手が相当鳴っていて、結構激しかった。
第2楽章は・・・・・・これもかなり激しい傾向にあった。
第3楽章は・・・・・・激しすぎた。世界最速ではないか?弾きながら演奏者はうなり始め、ラストでは雄叫びをあげて立ち上がり、そのままの凄まじい形相でふらふらと袖に下がった。

その話をきいて、私自身も目の当たりにしたかのごとくにショックだったのだが、どうもベートベーベンが乗り移ったならば、そのような演奏も不思議ではないようだ。
H先生も「ベートーベンがそんな演奏してたってきくと、なんだか変な気がしますけど、たぶん苦悩の姿だったのでしょう。そういう曲がまた不思議と人気があるんですけど」とおっしゃっていた。

講座が終わって、私はぜひ伺いたいと思っていた長い長い継続音(タイでつながってる全音)の弾き方やイメージの持ち方について、ちょっとだけ質問させていただいた。
閉めていたピアノをすぐ開けて弾きながら説明してくださった。
感激ですっ!


講義録より<本日のテクニック>
1.和音の連打は「連打だ」と思わずに、弦楽器の伴奏をイメージし、弓の向きが交替するさまを思い浮かべると、あまり苦にならない。
2.低音のスケールはレガートで弾くとぼやけがちなので、ノンレガートっぽく弾くときれいに聴こえることが多い。