温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

マレー半島 鉄道北上記 その3

2010年05月25日 | 東南アジア旅行記
先日、鉄道と飛行機を乗り継いで、シンガポールからタイのバンコクまでマレー半島を北上してきました。
その3ではペナンからバンコクまで(4月19~20日分)を掲載します。

日程
 4月17日:シンガポール →(列車)→ クアラルンプール
 4月18日:クアラルンプール →(空路)→ ペナン
 4月19日:ペナン → (フェリー) → バターワース →(夜行列車)…車中泊
 4月20日:バンコク到着



ペナンは離れ小島なので、鉄道に乗るためには、半島側の対岸の街バターワースへ海を渡る必要があります。12時ぎりぎりにホテルをチェックアウトし、タクシーでフェリー埠頭へ。
 
左:ペナン側フェリー乗り場の入り口付近。売店が並ぶ。
右:マレー鉄道の窓口もあるので、バターワースまで行かなくてもここで切符を購入できる。

 
左:乗船通路。フェリーの料金は変則的で、バターワース(半島側)→ペナン(島)の場合は有料ですが、逆にペナン→バターワースの場合は無料。よって途中何もゲートらしきものを通らず、そのままフリーで乗船。
右:フェリーの客室にはガラスなど無く、屋根と柵と椅子があるだけ(小さな売店もある)。海を渡る風がそのまま吹き抜けてゆく。とても気持ち良い。なお船の下層階は自動車運搬スペース。

 
さらばペナン。途中全面黄色塗装のフェリーと行き違う。

 
20分弱でバターワースに到着。ペナンと比べてビルなどの大きな建物が明らかに少なく、鄙びた印象を受ける。浜に舫われたロングテイルボートがなんとも長閑な光景を作り出していた。

 
バターワースの船着き場と鉄道駅およびバスターミナルは屋根付き通路で連絡されており、いずれも至近。
左:バターワースのバスターミナル。マレーシア各地へのバスが発着して賑やか。
右:バスターミナルの奥にある屋外食堂街でナシゴレンを食べる。猛烈に暑くて無風状態の中、汗を滝のように流しながら、ペプシとともに飯を腹に掻っ込む。

 
左:バターワース駅。駅前にはSLが静態保存されている。
右:待合室入り口。チケット窓口はもちろんのこと、売店や両替所がある。これから長時間の乗車ゆえ、水2本と小腹が空いたとき用のスナック菓子を購入。

 
左:駅の待合室はなんと冷房が利いていた。外は酷暑なので、まるで天国のよう。
右:待合室の片隅には、かつて使用されていた鉄道用品が展示されている。転轍機標識のランプ類が多く、その他通票や車番プレート、写真など。

 
左:駅に掲示されている時刻表。一日4往復しか発着しない。寂しいねぇ…
右:ホームには乗車案内の看板が立っていますが、何しろ1日4本しか発車しないので、乗り間違えることはないでしょう


頭端式ホーム。クアラルンプール方面列車もハジャイやバンコク方面列車もこのホームに発着する。何度も言うが、両方面併せて一日4往復。

 
左:バターワース14:20発のバンコク行国際急行36列車。マレーシア国内はマレー鉄道のディーゼル機関車が牽引。
右:客車最後部。この列車はタイのハジャイまでたったの2両しか連結されない(ハジャイで8両増結)。それだけ列車で国境を超える客は少ないのだろう。なおこの客車はタイ国鉄所有のもので韓国・大宇製。

 
左:2両の列車はすべて2等寝台(1等寝台はハジャイから)。車内は日本の583系寝台電車を2段にしたような構造で、昼間ボックスシートになっている座席が夜には下段の寝台となり、上部の出っ張りがパカっと開いて上段の寝台となる。従って寝る向きは進行方向と平行になる。
右:洗面台にはタイ語のハミガキの広告が掲示されており、これからタイへ向かうことを実感させてくれる。なおトイレはタイ式(和式のようにしゃがむスタイル)と洋式それぞれ1つずつ。紙も用意されていて、割ときれい。

 
左:「バターワース←→バンコク」と書かれたサボ(行先表示板)。この列車がバンコクまで行く証し
右:今回の乗車で使用した切符。国境を越えるバンコク行は1日1本で、しかも上述のように2両しか連結されないので、できれば事前に予約しておくのが吉。しかし、この国際列車はタイ国内やマレーシア国内で運転される各列車と違ってネット予約はできないので、日本人が経営するバンコクの旅行代理店(たとえばプログラムDインターナショナル)などに手配してもらうこととなる。日本国内だとHISで手配可能(そのかわりかなり割高)。
この切符はマレー鉄道で発券されたものだが、当列車はタイ国鉄が運行管理している。何を言いたいかというと、どうやらこの列車はマレー鉄道とタイ国鉄で座席割り当てにそれぞれ枠があるらしく、もしタイ側で手配して満席だったとしても、マレー側から手配すると席を確保できる場合がある。この切符はまさにそれによって入手できたもの。


列車は定刻通り出発。この列車は座席指定の切符を持っている客以外に、マレーシア国内ではいわゆる「ヒルネ(※)」利用が可能。途中駅から次々に地元民が乗り込んでくる。そして国境手前のARAU駅まででその全てが下車し、車内は指定券所持客のみになる。
(※)ヒルネ:日中において寝台車を一般の列車のように座席利用する乗車形態。
バターワースを出発後の車窓は、しばらくスラムのような水上家屋や小規模な街がポツポツ現れてからゴム林が続き、アロースター辺りから水田や畑が目立つようになって、国境に近付くにつれ耕作地が減ってゆく。この画像は国境付近。


ARAU駅を出発してしばらくした頃にタイの入出国カードが配られる。そして18:15、国境の駅であるパダンブサールに到着。画像はパダンブサールのホームで、左側の建物がイミグレ。まずマレーシアの出国手続き。その1で書いたように、私のパスポートにはマレーシアの入国スタンプが捺されていないので、シンガポール発の列車に乗った時の切符(e-チケット)をパスポートと一緒に提出したら、向こうは心得たもので、すんなりOK。
続いてタイの入国手続き。在東京タイ大使館によると陸路入国にはビザが必要と説明されていますが、少なくともパダンブサールでは不要でした(実際私はノービザでした)。そのかわり滞在可能日数は15日間です(空路入国の場合は30日間)。
入国に当たってはてっきり手荷物検査があるのかと思いきや、荷物はノーチェック。それを知らずに私は重いスーツケースをコロコロ転がしてしまいましたが、結局無駄でした。事情を知っている人たち(特にマレーシア人)は荷物を車内に置きっぱなしでした。

 
左:パダンブサールで車内クルーもタイ国鉄の人間に全て入れ替わり、出発してすぐに夕食のオーダーを取りに来る。西側の車窓には地平線に沈む真っ赤な夕陽が綺麗に輝いていました。
右:食堂車へ行かなくても、各席へクルーが夕食を届けてくれます。しかもいくつかメニューが選べます。トムヤムスープと牛肉の炒め物などのセットで150バーツ、そしてシンハービールが110バーツ。タイの物価で考えるとちょっと高め。ちょっと冷めかけていましたが、まずまずの味。これらの料理は、列車がハジャイを発車した後(18:45頃)に各席へ配膳されました。ハジャイでは前方に8両増結するため、その作業時間中に、軽食を抱えた売り子達が車内へ入り込んできます。

 
左:夕食を食べ終わって片づけが済むと(20:00頃)、専門のクルーがやってきてベッドをセッティングする。実に手際よく座席をベッドに変えて、マットレスを敷きシーツを張る。上段ベッドになるところに枕やマットレスなどが収納されていました。
ちなみに私は下段。上段と下段では料金が違い、下段のほうがちょっと高めですが、その値段格差を上回る利便性や快適性が下段にはあります。階段を使わなくていいし、窓はあるし、上より若干広めだし…。ベッドがセットされたら、後は寝るだけ。窓の外は真っ暗なので何も見えません。
右:翌朝6:30頃にクルーがやってきて、ベッドを座席に戻します。そして間もなく朝食のオーダーが取られ、15分ほどで届けられました(90バーツ)。目玉焼き・ソーセージ・簡単なサラダ・食パン・ジュース・そしてコーヒーorティー。


バンコクに近付くにつれ、線路周辺にはスラムが目立ってきます。レールのまわりにはゴミが散らかって汚らしく、列車のスピードも落ちて、何度も信号停車。

 
10:45、やっとバンコク・ファランポーン駅に到着。約22時間の乗車。冷房のきいた車内に慣れた体にとって、うだる暑さのバンコクの空気はかなりしんどい。

 
左:パダンブサールからバンコクまで牽引してきたタイ国鉄の機関車。
右:ファランポーン駅の待合室には床に座り込んで列車に乗り込む時を待つ客がたくさん

この後タクシーでホテルへ。今回宿泊したホテルはスクンビット通り沿いに建つON 8というところ。BTSナーナー駅目の前に立地しており交通の便は至極良好。こじんまりしているため見つけにくいかもしれませんが、フロントは笑顔で親切に対応してくれ、新しい建物なので総じて綺麗。そこかわり全室禁煙で窓は磨りガラスで嵌め殺し。部屋には2種類あって、私は値段の高いほう(といっても大して高くありません)を選びましたが、バスタブもあるし、部屋もまぁまぁの広さ、隅々まで手入れが行き届いていたので、気持ちよく連泊できました。ナナプラザにも近いので、ゴーゴーバーで遊びたい殿方にもいいのでは。


これにてマレー半島北上の旅程はおしまい。
このあとバンコクに数日滞在し、今度はLCC(格安航空会社)でマレー半島を南下してシンガポールへと戻りました。その時の様子は改めて記事にしたいと思います。

ところで私がバンコクに着いた時期、都心部ではタクシン派(赤シャツ隊)による反政府デモが繰り広げられていました。道路が一部封鎖されて、デパートも連日閉鎖。数日前にはカオサン付近で治安部隊との激しい衝突があり、日本人記者を含む死者が出ているほど事態は悪化していました。
なるべくデモの現場には近付かないようにしようと心がけていましたが、ひょんなことで最前線に出てしまいました。

乗り換えのため地下鉄シーロム駅で下車してBTSサラデーン駅へ向かっているとき、地上へ出る出口が一部に制限されているではないか。こりゃ何かあるなと思って、出入り可能な出口から外へ出てみると、案の定そこはデモ隊と治安部隊がにらみ合う最前線でした。道路の北のルンピニ公園側では赤シャツを着たデモ隊がシュプレヒコールをあげ、道路の逆サイドでは警官が隊列を組み、道路を見下ろすペデストリアンデッキは閉鎖されて、ライフルを持った兵士が警戒していました。歩道にはバリケードも置かれ、物々しい雰囲気。BTSサラデーン駅でもやはりライフルを持った兵士があちこちで哨戒していました。
ではサラデーン周辺は恐ろしい空気が流れているかと思えばそうでもなく、治安部隊と記念撮影をしている人もいれば、デモ隊の様子を面白がって撮影する観光客も多く、取材のテレビクルーも談笑しながらダラダラ撮影していました。これが4月20日時点の様子。
しかしこの後日に日に緊迫度は増してゆき、翌々日(22日)、私が地下鉄に乗っていると途中で止まってしまい、何かと思えばサラデーンでグレネードランチャーが発射されて死傷者が出てしまったとのこと。前日にサラデーンを歩いた時、赤シャツ隊のみならずその反対勢力も集結して大騒ぎになっていたので、これは怪しいなと感じていた矢先でした。

 
 左:ルンピニ公園側で集結している赤シャツ隊
 右:道路を挟んで対峙する警官部隊


BTSサラデーン駅近く(パッポン通り付近)にはデモ隊が駅へ闖入するのを阻止するため、こうしたバリケードが置かれていた。


ちょっと北へ移って、MBKからサイアム駅方面を望む。タイヤのバリケードが組まれて道路は閉鎖され、赤シャツ隊が占拠している。道路左側には簡易トイレがずらっと並んでいる

今回私は幸い被害に遭いませんでしたが、その後もバンコクは市街戦のようなデモが1カ月近く続き、ついにはセントラルワールドが炎上崩壊するまでになってしまったわけです。デモは一応終息したようですが、ゲリラ化しているとの話も聞きますし、予断を許さない情勢のようです。早く平和なバンコクに戻ってほしいものです。


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マレー半島 鉄道北上記 その2

2010年05月24日 | 東南アジア旅行記
先日、鉄道と飛行機を乗り継いで、シンガポールからタイのバンコクまでマレー半島を北上してきました。
その2ではクアラルンプールからペナンまで(4月18日分)を掲載します。

日程
 4月17日:シンガポール →(列車)→ クアラルンプール
 4月18日:クアラルンプール →(空路)→ ペナン
 4月19日:ペナン → (フェリー) → バターワース →(夜行列車)…車中泊
 4月20日:バンコク到着


ペトロナスツインタワーのスカイブリッジに上がるべく、朝9時前に入場口へ行ってみると、既に当日分の入場券は配布終了とのこと。もっと早い時間から並ばないといけないのか…。体調不良のせいもあってか、もうなんだかKLを観光する気がなくなり、ホテルへ戻って昼まで不貞寝。
 
 左:双塔をつなぐ41階のスカイブリッジは展望台になっているので、そこへ上がろうとしたら…
 右:朝9時の時点ですでに今日の入場券配布が終わっていた。ガッカリ。

 
 左:昼頃にホテルをチェックアウトし、LRTでKLセントラル駅へ。第三軌条による集電なので線路上には電線類がなく、すっきりしていますね。無人運転なので一番前にかぶりつくことも可能(この画像は最後部から撮っています)。景色の向こうにKLタワーが聳え立っています。
 右:LRTの車内。色調こそ違うものの、どことなく台北LRTの文山線(旧木柵線)に似た雰囲気で、こじんまりとした車体です。


 KLセントラル駅のレベル3にあるフードコートでお昼ご飯。スープ付のナシゴレンを食べました。味は可もなく不可もなくといったところ。ここはマレー系の領域らしく、お店も客もみんなマレー人。従って基本的には右手を使って素手でつまんで食べるわけですが、私のような異教徒・異民族のために、専用カウンターにはフォークやスプーンが用意されています。


今回の旅では、当初はマレー半島を鉄道だけで縦断するつもりでしたが、その計画を実行するとなると、列車ダイヤの都合上、2晩連続して夜行列車で夜を明かすか、夜遅くにペナンに着くか、のいずれかを選択せねばなりません。汗っかきの私としてはシャワーを浴びない夜はせめて一晩だけにしたく、そしてペナンは初めて踏み入れる土地ゆえ余裕も持って到着したいので、KL~ペナン間は飛行機で一気にワープすることにしました。


 
左:クアラルンプール国際空港へは、KLセントラル駅から直通の空港アクセス鉄道"KLIAエクスプレス"に乗るのがとても便利です。駅には日本語表示があってとても親切。
右:KLセントラル駅構内には小規模ながら飛行機のチェックインカウンターもあります。ただし利用できる航空会社はマレーシア航空などに限られています。また利用時間にも制限があり、フライトの2時間前までです(利用可能な航空会社なら国際線・国内線を問わずチェックインができ、荷物を預けられます)。私もここでチェックインを済ませ、身軽になって空港へ。

 
左:KLIAエクスプレスの車内。約30分の乗車で空港に到着。
右:空港駅のホーム。日本語表記の広告が目立ちます。KLセントラル駅でチケットを自動改札に通したら、その場で回収されてしまったので、無札状態で列車に乗って無事に空港駅で出場できるのかと不安でしたが、空港駅には改札が設けられていなかったので、問題なく出場できました。

 
左:クアラルンプール国際空港のチェックインカウンターエリア。このターミナルは黒川紀章設計。テントのような曲線を描く意匠の屋根にスリットを入れてそこから明かりを照らしている。たしか施工も日本のゼネコンだったはず。日本に縁が深いためか日本語案内表示もしっかりしている。この空港はアジアで最大の敷地面積を誇るのでターミナルもバカでかいのかと思っていたら、想像ほど大きくなかった。私は駅でチェックインしているので、ここは素通りして国内線の搭乗ゲートへ。
右:ペナン行マレーシア航空MH1152便。機体はB737-400、いわゆるクラシック737。定刻16:00に出発、タクシングをさっさと済ませてサクっと離陸。テイクオフまで常にもたもたしている羽田や成田とは大違いで、せっかちな私としては心の中で拍手喝采。機内サービスはピーナッツとジュース。喉を潤して間もなく、離陸して30~40分でもうペナンに到着。鉄道だったら7時間近くかかる道程なのに…。

ちなみに今回のチケットはマレーシア航空のウェブサイトで事前予約したのですが、運賃は諸々含めてなんと114リンギット、つまり3000円強!! LCC並みに安いですね。それでいてちゃんと機内サービスもある。とても満足です。

 
左:ペナン国際空港の到着フロア。街へ出るにはタクシーを使います(バスは本数が少なくて不便)。マレーシアのタクシーは料金面であまり信用が置けませんが、ここは事前にカウンターでチケットを購入するシステムになっているので、その点は安心できます。ちなみにジョージタウンまで42リンギット。
右:今宵はジョージタウンのベイビューホテル・ジョージタウンに宿泊。アップルワールドを通して予約したらかなり安くなり、しかもフロントも愛想が良く丁寧に接客してくれ、やや古めであるものの広い部屋が用意されていたので、個人的にはかなり満足。

 
まだ明るいのでジョージタウンを軽く散策。一応この一帯は世界遺産に登録されている。ペナンはマレーシアの中でも華人人口の占める割合が多いところなので、街並みも中華風。

 
しばらく南下すると、やがてインド人街に入る。華人が圧倒的多数のペナンにあって、ここだけ異色。たくさんのインド人がウロウロしたり屯している。商店の店頭からはお約束のように大音量でインドの歌謡曲が流れてくる。地べたに座ってアクセサリを売る光景は、いかにもインドっぽい。

 
そこを過ぎると再び華人街に。路地に入ってみると、目に入ってくる家々や漢字表記はもちろんのこと、生臭い空気といい、廟から漂ってくる線香の匂いといい、時折聞こえてくる中国語の会話といい、まるで中国の地方の小さな街に紛れ込んでしまったかのような錯覚に陥り、ここがマレーシアであることを忘れてしまいそう。

 
歩く方角を東に変え、フェリー埠頭へ向かって行くと、海岸沿いには華人による同姓一族の水上家屋と桟橋群が並んでいた。画像は林一族の家屋と桟橋で、こうした昔からの長閑な水上家屋が軒を連ねており、辺りには伝統的な庶民生活の匂いが濃厚に漂っている。

  
ペナンのジョ-ジタウンは、シンガポールと同様にイギリスが海峡植民地として開発したところで、フェリー埠頭の東側や北東には英国統治時代の洋館が建ち並んでいる。こうした西洋と東洋の渾然一体とした歴史的な街並みが評価されて世界遺産に登録されたわけだが、その割にはどこ建造物もどこか煤けて草臥れたような雰囲気を醸し出しており、観光客を惹きつけるような輝きがあまり感じられない。いや、それこそ歴史の味わいなのかもしれないが。


バックパッカーが集うルブ・チュリア(チュリア通り)。ペナンの安宿街で、屋台も出る。また場所柄、バスや飛行機のチケットを手配するような小さい旅行会社やネットカフェ、バーも多い。

 
チュリア通りの屋台街から南へちょっと入ったところにある中華料理屋で夕食。焼きそばと豚肉の黒胡椒炒め。結構美味。ホールのおばちゃんに北京語で話しかけたら通じた。てっきり広東か福建・閩南あたりの言葉しか通じないのかと思いこんでいたので意外。おばちゃんはひたすら仏頂面だったが、店を出るときに「好吃了(おいしかったよ)」と言葉をかけたらようやくニコっとしてくれた。
経済力ゆえに妬まれてしばしば迫害の対象になり、常に不安定な立場に置かれているインドネシアの華人は、いざというとき本土へ逃げても暮らしていけるように北京語を習得しているという話を聞くが、同じような理由でマレーシアの華人も北京語を話せるように準備しているのであろうか。あるいは単に華人同士の標準語として北京語を使っているだけなのだろうか。


マレー半島 鉄道北上記 その3へ続く
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マレー半島 鉄道北上記 その1

2010年05月23日 | 東南アジア旅行記
先日、鉄道と飛行機を乗り継いで、シンガポールからタイのバンコクまでマレー半島を北上してきました。その1ではクアラルンプールまでをご紹介します。

日程
 4月17日:シンガポール →(列車)→ クアラルンプール
 4月18日:クアラルンプール →(空路)→ ペナン
 4月19日:ペナン → (フェリー) → バターワース →(夜行列車)…車中泊
 4月20日:バンコク到着

朝7時にマレー鉄道のシンガポール駅へ。今回宿泊したタンジョンパガーのMホテルから徒歩10分の距離だったのだが、たかが10分だと高をくくって歩いて行ったのが失敗。暑さに弱い私は、朝から30℃近い赤道直下の気候に負けて、すでに汗だく。

 
 左:シンガポール駅。シンガポール領内ながら、構内は一応マレーシアの管理下。インフラ飛び地というやつでしょう 
 右:広々とした駅のホール。大きな壁絵が印象的。一日数本しか発着しませんが、売店も両替所もあります。でも人が少なくてちょっと寂しい感じ。

 
 左:出発客用ゲート。入り口で切符のチェックがあります。ちなみにチケットは駅でも購入できますが、私は事前にマレー鉄道のホームページからネット予約して購入しました。ネット予約には会員登録とクレジットカード(VISA or MASTER)が必要です。予約したら、指定された画面をプリントアウトして、それをゲート係員や車掌に見せればいいのです。予約時には画面上で座席指定もでき、実に簡単、楽ちん。詳しくはこちらで詳しく解説されています。
 右:タイまで延々と続く線路の起点。ここから旅がはじまる


 ホームの端っこにちょこっと設けられたマレーシア入国のパスポートコントロール。4列中左2列はマレーシアID保持者用で、右2列が各国パスポート保持者用。ここでキョロキョロしていると、係のおばさんがマレーシアの入出国カードをくれました。

 まだシンガポールの出国手続きをしてないうちに、駅構内でマレーシアへの入国手続きをしてしまうということは、二重入国状態になってしまう…。ということで、ここではパスポート番号をマレーシア側の端末に読み取らせますが、スタンプは捺されません。なんて形式的なんでしょう。そのかわりイミグレ係官から「ここではパスポートにスタンプ捺さないから、出国時にはそこのイミグレで鉄道のチケットを提示してくれ」と言われました。それが入国の証拠になるわけです(まぁ出国時に端末でパスポート番号が出てくるはずですので、そんなに問題にならないかと思いますが、念のため)

なおこの窓口が開くのは出発の約15分前。結構ギリギリでした。

 

左:シンガポール午前7:45発 EKSPRES(急行)RAKYAT号(列車番号2)を牽引する機関車。定刻通りに発車。
右:1等車の車内。1等の割にはうす暗く、シート背面も薄汚れていたり、座席収納のテーブルも一部壊れていたりと、メンテがいまいちな感じ。でもシートピッチは広くてゆったり。ちなみにこの客車は1992年・韓国現代(ヒュンダイ)製。先月もどこかで現代製の客車に乗ったっけ…。あ!台湾の自強号(プッシュプルトレイン)だ。
1等の乗車率は5~6割程度(マレーシアに入ると8割ぐらいに増加)、客層は欧米の観光客と華人がそれぞれ半分ずつ、といった感じで、途中駅からマレー系がポツポツと乗車。わかりやすい経済力の構図。
一人旅の私はもちろん一人席(画面右側・進行方向だと左側)を予約時に確保。

 
出発後はのんびり走り、途中信号所で30分ほど交換待ちの停車の後、大して距離のないウッドランドチェックポイントまで40分以上かかった。
左:ここウッドランド・チェックポイントでシンガポールの出国手続き。ホーム先っちょにあるイミグレでパスポートをチェックするだけ。荷物の検査はないので、手荷物以外は車内に置きっぱなしでOK。
右:乗客全員の出国手続きが済むまで、イミグレ施設内の待合室で待機。それまでホームには出られない。

 
左:全員の出国手続きが済み、一斉にホームへ出て各自の車両へ向かう乗客たち。ホームは1線1面しかないので、他の列車の客、つまり出国客と入国客が混在することはない。
右:ジョホール海峡を渡ってマレーシアへ入国。平行する道路はシンガポールへ入国する車で大渋滞。

 
左:近代的な高層ビルが林立するシンガポールとは打って変わって、マレーシアに入ると俄然車窓が貧乏臭くなる。
右:ジョホールバルの街を抜けると、窓の外にはひたすらゴムの林が続く。はじめのうちは熱帯らしいその光景を食い入るように見ていたが、あまりに同じ風景ばかり続くので、やがて飽きてくる…。

 
左:1等車で配られる無料シートサービス。ミネラルウォーターとパサパサのパン。ブミプトラ政策ゆえ、イミグレ官吏はもちろん、運転士も車掌もシートサービスのあんちゃんも、係員はみんなマレー系。
右:列車のトイレ。意外と綺麗。マレーのトイレらしく、左側には洗浄用のホースが設置されている(マレー人は、用を足した後のお尻や局部をホースで洗浄する)。紙も用意されているので日本人も安心。

 
左:15:25、クアラルンプール・セントラル(KL Sentral)駅に到着。約20分の遅延。この程度の遅れならば、マレー鉄道にしてはまずまずの範囲内ではないでしょうか。
右:駅構内の案内表示は、マレー語や英語とともに日本語が表記されています。人口比率を考えたら中国語にしたほうがいいんじゃないかと思いますが、マハティール政権下の日本贔屓の影響なんでしょうか。あるいは駅(空港も)を設計した黒川紀章に敬意を表したものなんでしょうか。この時だって、周りを見渡しても、日本人と思しき人影は私以外に見当たりませんでしたが…。

 
左:駅構内はとても広く、ガラスが多用されているので全体的に明るい。そして人が多い。
右:マレー鉄道・KTMコミューターの自動改札。やけにカラフル

 
左:LRTの切符売り場及び改札前。自動券売機があるのだが、使い勝手が悪いのか、あるいは使用中止の機械が多いからか、客は皆有人窓口に並んでキップを買っている
右:LRTのクラナ・ジャヤ線。短い編成のかわいい列車。これに乗って今晩のホテルへ。

 
左:KLCC駅すぐそば且つツインタワーの目の前という立地で選んだホテルでしたが、フロントは私語ばっかりで客を30分以上待たせるは、愛想も悪いは、やっと部屋のカギを渡してくれたと思ったらその部屋にはすでに別の客がいたり、4台あるエレベータも(メンテのためか)1台しか使えずに待ち時間を浪費したり、シャワーからは黄土色のお湯が出てきたり(はじめだけではなく、ずぅっと)・・・など、散々でした。二度と行きません。そんな思いを込めて、画像にはモザイク処理をかけました。
右:気分を取り直し、LRTとモノレールを乗り継いで、KL随一の繁華街ブキッビンタンへ。KLの電車は乗換のたびに切符を買いなおさなければならないのが面倒。しかもモノレールは有人窓口しかなく、その数も各駅とも1~2程度。新しく整備されたインフラなんだから、もう少し機械化してもよさそうなもんですけど、これも雇用対策なのかしら。

 
左右とも:ブキッビンタンの様子。欧米人観光客の姿が目立ちました。スンガイワンプラザをウロウロして雑然とした雰囲気を味わった後、道路向かいの伊勢丹の地下にあるフードコートで夕食。ホッケンミー(福建麺)を食べました。マレーシアは華人社会とマレー人社会がはっきり分かれており、伊勢丹地下のフードコートは華人向けの店ばかりで、客層も華人によって占められていました。

 
左:ブキッビンタンの交差点からちょっと歩いたところにあるアロー通りの屋台街で、ちょこっとつまみ食い。ここも華人社会。
右:KLタワー。この時は雨が降ってきたので、どうせ登っても大した眺望は得られないだろうと判断し、外から見上げるだけにとどめました

 
左:ペトロナスツインタワー。452m・88階建て。とっても綺麗です。数年前まで世界一の高さを誇っていましたが、台湾101の完成によりその座を譲っています。片方を日本のハザマ組が、もう片方を韓国の三星(サムスン)が建造したそうですが、どっちがどっちだか知りません。
右:ツインタワー下にあるショッピングモール"スリアKLCC"。いかにも新興アジアの商業施設といった感じ。ブキッビンタンの各商業施設に比べて客層が良いように思います。ここに入っている紀伊国屋書店でポケットサイズの英和辞典を購入。


マレー半島 鉄道北上記 その2へつづく…
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