岩木山神社の鳥居前や参道の左右には、参詣者のための門前宿や茶屋などが店を構えており、各宿には温泉が引かれています。拙ブログではこれまで清明館と温泉旅館中野を取り上げておりますが、今回ピックアップするのは鳥居の左側に建つ「旅館山陽」です。一見するとアパートのような外観ですが、れっきとした温泉旅館であります。
旅館のみならず、鳥居のそばではお茶屋(食堂)さんも営んでおり…
お茶屋さんの前には無料で利用できる足湯も併設されています。荘厳な神社の雰囲気に合う落ち着いた趣きですね。なおこちらに引かれているお湯は後述する内湯と同じ源泉です。
私が玄関を訪いますと、たまたまお掃除していた女将が目の前を横切ったので、ひと声かけて日帰り入浴をお願いし、女将に直接料金を支払って、左右に客室が並ぶ廊下を歩いて奥の方にある浴室へと向かいました。廊下の壁には力士やタレントさんのサイン(いずれもやや古め)が貼り出されていました。みなさん参拝時にこちらのお宿を利用したのでしょう。
脱衣室には100円玉式の古いマッサージチェアーが置かれていたのですが、これって今でも動くんでしょうか。試してみようかという考えが一瞬頭をよぎりましたが、100円を無駄にするのは悔しいので手を出すのは止めました。
籠が並べられた棚の上には、効能が列挙されたプレートが掲示されており、画像をご覧になればわかるように泉質名も載っているのですが、そこには現在の泉質と異なる「硫化水素泉」の5文字が記載されていました。平成16年の分析表によれば総硫黄はゼロですから硫化水素泉とは全く呼べませんが、かつては硫化水素泉の条件を満たすほどの硫黄分が含まれていたのでしょうか。
お風呂は内湯のみで、浴室内はタイルを含めて全体的に白基調でまとめられています。浴槽上の壁には、このお湯が掛け流しである旨をアピールする札が誇らしげに掲げられていました。
浴室の左右に分かれて洗い場が配置されており、それぞれシャワー付き混合水栓が3基ずつ計6基取り付けられています。なおシャワーから出るお湯は真湯です。室内の桶や腰掛けがきちんと整頓されており、旅館としての矜持が伝わってきます。
周りを岩で化粧された浴槽は5~6人サイズで、左隅にある石積みの塩ビ管より、ドバドバと室内に音を轟かせながらお湯が投入されています。投入量は多いものの洗い場への溢れ出しは無く、湯口と対称位置で底から立ち上がっているオーバーフロー管より排湯されていました。
浴槽縁の湯面ラインには、温泉成分の析出による庇が形成されており、ところどころにはサンゴのようなトゲトゲも出来ていました。お湯はこの界隈のお湯らしい特徴を有しており、見た目はモスグリーンを帯びた暗い山吹色の懸濁で、槽内のステップは目視できますが底は見えない程度の透明度です。お湯を口にしてみますと、甘塩味に出汁味、そして弱金気味と土気味に苦味(少々渋味)や弱炭酸味が感じられました。湯免からは土気臭と金気臭が漂っています。湯船に全身を沈めますと、弱いツルスベ浴感とギシギシした浴感が混在して肌に伝わるのですが、私の実感では弱ツルスベ感の方が若干優っているように感じられました。なお、湯船の温度は42~3℃となっており、源泉温度などから考えますと、おそらく源泉100%の完全掛け流しかと思われます。
岩木山の恵みというべき、鮮度感の良いお湯が存分に楽しめる、質実剛健ながら静かで落ち着けるお風呂でした。
太田2号泉
ナトリウム・マグネシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 43.2℃ pH6.62 201L/min(動力揚湯) 溶存物質2.886g/kg 成分総計3.267g/kg
Na+:456.3mg(48.20mval%), Mg++:178.3mg(35.62mval%), Ca++:104.9mg(12.70mval%), Fe++:2.5mg,
Cl-:789.3mg(54.77mval%), Br-:1.7mg, I-:0.2mg, SO4--:74.0mg, HCO3-:1025mg(41.34mval%),
H2SiO3:187.2mg, CO2:381.1mg,
弘前バスターミナルまたは弘前駅より弘南バスの「枯木平」行で「岩木山神社」下車、徒歩1~2分
青森県弘前市百沢寺沢162 地図
0172-83-2035
日帰り入浴時間8:00~21:00?(未確認)
300円
備品類なし
私の好み:★★
この近辺ですと、「山陽」の他、同じく門前宿の「中野」や「清明館」、ちょっと離れて「三本柳温泉」や「旬楽」など、おすすめの温泉が目白押しですので、是非機会があればお風呂をハシゴしてみてください(^^)
百沢エリアの温泉はどこも甲乙つけがたいレベルだと思うのですが、おっしゃるように株百沢ばかりに人気が集まるのは、あの独特な形状の湯口が魅力的だからなんでしょうか、あるいはネットで情報収集すると、得られる情報に偏りが生じてしまう(同調現象が生まれる)からなのでしょうか。ま、小難しいことはともかく、「山陽」のお湯も良いですよね。
>オーバーフロー管に小細工
なるほど、トド好きな方には、あのオーバーフロー管が仇敵みたいな存在なのかもしれませんね(^^) お湯の投入量から想像すれば、床に溢れ出させたら、かなり気持ち良くトドができそうですね。
まーそんな「山陽」が私は好きですけど(笑
今度、オーバーフロー管に小細工して!?溢れ出しを背中で受け止めたいと摸索中です(笑