前回取り上げた湯の峰温泉「つぼ湯」では、熱めの湯にすっかり茹で上がり、フラフラになりながら宿に戻ったのですが、客室で横になりながら休んでいたら体調が元に戻ったので、その晩のうちに再び外出して、公衆浴場の奥にある「くすり湯」へ向かいました。公衆浴場と同じ建物内にあり、番台を挟んで手前が公衆浴場、奥が「くすり湯」であります。
古風な名前から伝統的な湯屋様式の建物を想像しますが、予想に反して館内は現代的であり、フローリングの明るくウッディな玄関ホールには、休憩用のベンチや扇風機が用意されていて、壁には昔日の湯の峰温泉を写した古い写真が展示されていました。
お風呂は男女別の内湯が一室ずつあるのですが、その他に家族湯もあるんですね。この時は施錠されていたので内部は見学できず。
脱衣室の張り紙では、お風呂で石鹸・シャンプーが使えない旨が告知されていました。体や髪を洗うのなら隣の公衆浴場を使って頂戴、ここはじっくり湯浴みして温泉の効能を味わうところですよ、ってことなんですね。
浴室の戸を開けた瞬間、室内に立ち込める芳醇なタマゴ臭と微かな刺激臭が私の鼻孔をくすぐりました。そんな匂いこそ充満していますが、冬なのに湯気篭りが無く、快適な室内環境が保たれており、しかも終始独占できたので、絶好なコンディションに恵まれて湯浴みすることができました。
室内側面は水滴の飛び散る下半分が石板貼りで、上半分は剥き出し羽目板張り、床には石板タイルが敷かれています。そして左側に洗い場が設けられ、右側に浴槽が据えられています。洗い場といっても上述のようにここでは石鹸等が使えないために、あくまで掛け湯するための設備になるわけでして、一応お湯と水の水栓のペアが3セット取り付けられており、お湯の水栓からは源泉が出てくるのですが、この時はお湯をいくら出しても只管冷たいままで、なかなか熱くなってくれませんでした。長い時間にわたってこの洗い場は使われてなかったかもしれず、それゆえに水栓用にストックしていたお湯は冬の外気ですっかり冷めてしまったのでしょう。この冷たい水を体に掛けるのはイヤですので、私は桶で湯船のお湯を直接汲んでかけ湯しました。
浴槽はどういう訳か、槽内の右半分は木造、左半分はコンクリ造りとなっていて、縁や槽内のステップには木材が用いられています。どうしてこんな使い分けをしているのかな。左端の木箱から熱い源泉が落とされており、木箱内部のお湯が流れる箇所には繊維上の白い湯の華が付着して、その部分を真っ白に染めていました。加水加温循環消毒の一切ない完全掛け流しの湯使いであり、湯船を満たしたお湯は浴槽右隅の切り欠けより溢れ出ていました。
お湯はほぼ無色透明ではっきりとしたタマゴ臭を漂わせており、口に含むとしっかり味蕾に主張してくる茹で卵の卵黄味と卵白のような蛋白系の味、そして清涼感を伴う弱い苦味と微かな塩味が感じられました。また湯船の底では消しゴムのカスのような大小とりどりの湯の華がたくさん沈殿しており、お湯を動かすと一気にブワッと舞い上がりました。桶でお湯を汲むと上画像のように容易く湯の華が掬えます。
さすがに100%の生源泉ですので、湯船に浸かった際に肌に染み入ってくるお湯の濃さと鮮度感の良さは素晴らしく、気持ち良い浴感もさることながら、身も心もシャキッと蘇りました。さすが「くすり」を名乗るだけありますね。
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 89.6℃ pH7.8 87L/min(掘削自噴) 溶存物質1.763g/kg 成分総計1.781g/kg
Na+:448.4mg(91.63mval%), Ca++:20.3mg(4.75mva%),
F-:11.0mg, Cl-:251.0mg(31.62mval%), HS-:2.8mg, S2O3--:2.0mg, HCO3-:774.9mg(56.72mval%), CO3--:54.0mg(8.04mval%),
H2SiO3:162.8mg, H2S:0.5mg,
熊野交通(川丈線(川湯・湯の峰温泉経由))・龍神バス(熊野本宮線)・奈良交通(八木新宮線)、いずれかのバスで「湯の峰温泉」停留所下車
和歌山県田辺市本宮町湯峯110 地図
0735-42-0074(湯の峰温泉公衆浴場)
湯の峰温泉公衆浴場紹介ページ(熊野本宮観光協会公式サイト内)
6:00~22:00
390円(2014年4月以降)
ロッカーあり(無料)、石鹸類使用不可、ドライヤーなし
私の好み:★★+0.5
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