※2021年10月17日を以て長期休業。再開の予定はありません。委細は公式サイトでご確認ください。
2019年春の某日、福島県福島市郊外にある不動湯温泉へ向かいました。
土湯温泉街から細い山道を進んでいった先にある不動湯温泉は、昔から多くの人に愛されてきた秘湯ですが、2013年8月29日、非常に残念ながら業火に見舞われて烏有に帰してしまいました。以前拙ブログではまだ火事に遭う前の姿を記事にしておりますので、よろしければご覧ください(当時の記事は「前編」と「後編」に分かれています)。
しかしながら「国破れて山河あり」ならぬ「宿失せて源泉あり」とでも申しましょうか、建物は跡形もなく焼けてしまったものの、源泉はしっかりと残っていたらしく、その後関係者の皆様の努力が結実し、3年後の2016年に残った露天風呂など一部の施設のみを活かして、営業日限定の日帰り入浴施設として営業再開に漕ぎ着けました。その報を知った私は早く行きたくて仕方なかったのですが、なかなかタイミングが合わず、ようやく今年(2019年)の春に訪問する機会に恵まれましたので、朝いちばんで伺うことにしました。
まずは土湯の温泉街から細い道に入り、どんどん進んで行って、上画像の看板のところで左折し・・・
林道へ入ります。不動湯温泉へ行ったことがある方なら、誰しもがこの林道に苦労した経験を持っていらっしゃるはず。途中までは単なる未舗装路なのですが、次第に道が荒れ始め、やがて凸凹が連続する坂道となって、運転する者を苦しめるのです。
でも苦あれば楽あり。急な坂を下りきった先には、不動湯温泉のゲートがお出迎え。このゲートは火事に遭わず残ったんですね。
ゲートをくぐり、階段を下りて左手にあるこの建物が、現在の不動湯温泉の受付です。
かつては旅館の建物に帳場がありましたが、上述のように焼失してしまったため、かつて倉庫として使っていた小屋を改築して受付小屋兼休憩所にしています。私が訪ねると和服姿の女将が出迎えて、丁寧に対応してくださいました。日帰り入浴のみとなった現在でも、きちんと着物姿でお客さんに接しようとする姿に、老舗旅館の女将としての矜持を強く感じます。
女将に湯銭を支払い、一旦外に出ます。この日は私が最初の客とのことで、一番風呂にあり着ける喜びを胸に抱きながらお風呂に向かって歩いてゆくと、右手に小さな祠が鎮座していましたので、まずは神様にご挨拶。この祠は私も前回訪問時に見覚えがあります。神様の力が炎から祠を守ったのでしょうね。
かつて旅館が営業していた頃には瓶入りのラムネなど各種飲料を冷やしていた水の鉢。
これも火事から残り、今でも山の清水を受けていました。
可憐な花々もみちのくの春を謳歌するように咲いていました。
でも、かつて旅館が建っていたところはご覧のありさま。基礎の石垣だけが残るこの荒涼とした光景を目にし、しばし言葉を失ってしまいました。亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。
さて、改めて歩き始めましょう。
以前と同様、長くて急な階段を下ってお風呂へと向かいます。以前は屋根に覆われていましたが、焼失してしまったため、はじめのうちは屋根のない屋外の階段を下ることになります。この急な階段には以前と同様に途中踊り場があり、腰掛も用意されているので、階段の上り下りに自信が無い方でも、休み休み動けば大丈夫です。
階段を下る途中には、このような物が残っていました。建物だけでなく、周囲の木々も焼き尽くすほどの酷い火勢だったのでしょう。
階段は途中から新しく掛けられた屋根の下をくぐります。白木が美しいですね。
階段を下りきると小屋の中へ導かれます。この小屋は以前もありましたから、さすがの業火もここまでは及ばなかったのかもしれません。でも小屋の使われ方が以前とは変わっており、以前は通路の左側に「羽衣の湯」、右側に「御婦人風呂」がありましたが、現在「羽衣の湯」は閉鎖され、右側のお風呂が「檜風呂」として改称されました。
お風呂の構造自体は以前とほとんど変わっていません。
女将の話によれば、営業再開に際して露天だけでスタートしようと考えていたところ、保健所から「内湯も設けるべし」という指導が入ったため、旧「御婦人風呂」を「檜風呂」として名前を変えて女性限定を解除し、新たな内湯にしたそうです。
総木造の湯小屋の角2面に大きなガラス窓がはめられ、その下に2~3人サイズの浴槽が据えられています。質素ながらも趣きがあり、静かにゆっくりと湯浴みできる環境です。室内にはシャワーが設置されています。後述する露天には洗い場が無い為、体をしっかり洗いたい場合はこの内湯を利用しましょう。また露天の開放的な環境が苦手な方への配慮として、この内湯は女性優先となっています。
「檜風呂」の小屋を抜け、更に階段を下って沢の畔を目指します。
沢の畔にあるのが、不動湯温泉の名物である露天風呂。
この露天風呂も、以前のままの姿を保っていてくれました。
掘っ立て小屋の下でお湯を湛える、岩を穿ちモルタルで固めたような質素な作りの露天風呂。2人入ればいっぱいになっちゃいそうな、実にかわいらしいお風呂です。湯口は浴槽内にあり、トポトポという感じで少しずつ源泉が注がれています。お風呂の容量はそんな源泉湧出量に見合っているのでしょうね。
お湯は無色透明ですが湯中には白い大きめの湯の花たくさん浮遊しています。湯加減も実に良い塩梅。
周囲は山の新緑。小鳥も楽しそうに囀っていました。時間を忘れていつまでも浸かっていたくなる名湯です。
お風呂上がりには受付小屋へ戻って、女将とお話ししながら、おつけものと冷たい麦茶をいただきました。
窓から眺められる吾妻連峰の山並みが美しく、また付近では山桜も咲いていて、実にうっとりするひと時でした。
小屋では黒柴のコロンが愛想を振りまきつつ、マイペースに動いたり、座布団の上でお休みしたりと、一挙手一投足がかわいらしい。私も以前黒柴を飼っていたので、つい今は亡き愛犬を思い出し、その愛くるしい様に思わず目尻が下がってしまいました。
悲しみから立ち上がり再出発を果たした不動湯。既に3年が経とうとしています。旅館としての矜持を忘れない着物姿の女将からは、この歴史ある名湯を守り続けようとする強い意志が伝わってきました。宿泊営業の再開までには難しい問題が立ちはだかっているかと思いますが、いま私たちができる支援は、日帰り営業時間帯に積極的に利用することかと思います。
小さなお風呂ですから、お客さんで混雑すると待ち時間が発生してしまいますが、そのあたりは女将が適宜案内してくださいますから、小屋に入ってお喋りしながらゆっくりと時間を過ごして待ってみるのも宜しいかと思います。
不動湯(露天)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩温泉 46.9℃ pH7.4 1.8L/min(自然湧出) 溶存物質1161mg/kg 成分総計1182mg/kg
Na+:287.9mg(80.98mval%), Ca++:39.7mg(12.81mval%),
Cl-:148.2mg(29.15mval%), HS-:0.8mg, SO4--:148.5mg(21.55mval%), HCO3-:418.0mg(47.77mval%),
H2SiO3:51.2mg, HBO2:40.1mg, CO2:21.2mg, H2S:0.3mg,
(平成22年5月31日)
完全掛け流し
福島県福島市土湯温泉町字大笹25
024-595-2002
公式ホームページ
※2021年10月17日を以て長期休業。再開の予定はありません。委細は公式サイトでご確認ください。
土日祝のみ営業(ただし臨時営業する平日もあるので、詳細は公式サイトでご確認を)
10:00~17:00(最終受付16:30)
700円
内湯にシャンプー類あり、休憩所にドライヤーあり
私の好み:★★★
2019年春の某日、福島県福島市郊外にある不動湯温泉へ向かいました。
土湯温泉街から細い山道を進んでいった先にある不動湯温泉は、昔から多くの人に愛されてきた秘湯ですが、2013年8月29日、非常に残念ながら業火に見舞われて烏有に帰してしまいました。以前拙ブログではまだ火事に遭う前の姿を記事にしておりますので、よろしければご覧ください(当時の記事は「前編」と「後編」に分かれています)。
しかしながら「国破れて山河あり」ならぬ「宿失せて源泉あり」とでも申しましょうか、建物は跡形もなく焼けてしまったものの、源泉はしっかりと残っていたらしく、その後関係者の皆様の努力が結実し、3年後の2016年に残った露天風呂など一部の施設のみを活かして、営業日限定の日帰り入浴施設として営業再開に漕ぎ着けました。その報を知った私は早く行きたくて仕方なかったのですが、なかなかタイミングが合わず、ようやく今年(2019年)の春に訪問する機会に恵まれましたので、朝いちばんで伺うことにしました。
まずは土湯の温泉街から細い道に入り、どんどん進んで行って、上画像の看板のところで左折し・・・
林道へ入ります。不動湯温泉へ行ったことがある方なら、誰しもがこの林道に苦労した経験を持っていらっしゃるはず。途中までは単なる未舗装路なのですが、次第に道が荒れ始め、やがて凸凹が連続する坂道となって、運転する者を苦しめるのです。
でも苦あれば楽あり。急な坂を下りきった先には、不動湯温泉のゲートがお出迎え。このゲートは火事に遭わず残ったんですね。
ゲートをくぐり、階段を下りて左手にあるこの建物が、現在の不動湯温泉の受付です。
かつては旅館の建物に帳場がありましたが、上述のように焼失してしまったため、かつて倉庫として使っていた小屋を改築して受付小屋兼休憩所にしています。私が訪ねると和服姿の女将が出迎えて、丁寧に対応してくださいました。日帰り入浴のみとなった現在でも、きちんと着物姿でお客さんに接しようとする姿に、老舗旅館の女将としての矜持を強く感じます。
女将に湯銭を支払い、一旦外に出ます。この日は私が最初の客とのことで、一番風呂にあり着ける喜びを胸に抱きながらお風呂に向かって歩いてゆくと、右手に小さな祠が鎮座していましたので、まずは神様にご挨拶。この祠は私も前回訪問時に見覚えがあります。神様の力が炎から祠を守ったのでしょうね。
かつて旅館が営業していた頃には瓶入りのラムネなど各種飲料を冷やしていた水の鉢。
これも火事から残り、今でも山の清水を受けていました。
可憐な花々もみちのくの春を謳歌するように咲いていました。
でも、かつて旅館が建っていたところはご覧のありさま。基礎の石垣だけが残るこの荒涼とした光景を目にし、しばし言葉を失ってしまいました。亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。
さて、改めて歩き始めましょう。
以前と同様、長くて急な階段を下ってお風呂へと向かいます。以前は屋根に覆われていましたが、焼失してしまったため、はじめのうちは屋根のない屋外の階段を下ることになります。この急な階段には以前と同様に途中踊り場があり、腰掛も用意されているので、階段の上り下りに自信が無い方でも、休み休み動けば大丈夫です。
階段を下る途中には、このような物が残っていました。建物だけでなく、周囲の木々も焼き尽くすほどの酷い火勢だったのでしょう。
階段は途中から新しく掛けられた屋根の下をくぐります。白木が美しいですね。
階段を下りきると小屋の中へ導かれます。この小屋は以前もありましたから、さすがの業火もここまでは及ばなかったのかもしれません。でも小屋の使われ方が以前とは変わっており、以前は通路の左側に「羽衣の湯」、右側に「御婦人風呂」がありましたが、現在「羽衣の湯」は閉鎖され、右側のお風呂が「檜風呂」として改称されました。
お風呂の構造自体は以前とほとんど変わっていません。
女将の話によれば、営業再開に際して露天だけでスタートしようと考えていたところ、保健所から「内湯も設けるべし」という指導が入ったため、旧「御婦人風呂」を「檜風呂」として名前を変えて女性限定を解除し、新たな内湯にしたそうです。
総木造の湯小屋の角2面に大きなガラス窓がはめられ、その下に2~3人サイズの浴槽が据えられています。質素ながらも趣きがあり、静かにゆっくりと湯浴みできる環境です。室内にはシャワーが設置されています。後述する露天には洗い場が無い為、体をしっかり洗いたい場合はこの内湯を利用しましょう。また露天の開放的な環境が苦手な方への配慮として、この内湯は女性優先となっています。
「檜風呂」の小屋を抜け、更に階段を下って沢の畔を目指します。
沢の畔にあるのが、不動湯温泉の名物である露天風呂。
この露天風呂も、以前のままの姿を保っていてくれました。
掘っ立て小屋の下でお湯を湛える、岩を穿ちモルタルで固めたような質素な作りの露天風呂。2人入ればいっぱいになっちゃいそうな、実にかわいらしいお風呂です。湯口は浴槽内にあり、トポトポという感じで少しずつ源泉が注がれています。お風呂の容量はそんな源泉湧出量に見合っているのでしょうね。
お湯は無色透明ですが湯中には白い大きめの湯の花たくさん浮遊しています。湯加減も実に良い塩梅。
周囲は山の新緑。小鳥も楽しそうに囀っていました。時間を忘れていつまでも浸かっていたくなる名湯です。
お風呂上がりには受付小屋へ戻って、女将とお話ししながら、おつけものと冷たい麦茶をいただきました。
窓から眺められる吾妻連峰の山並みが美しく、また付近では山桜も咲いていて、実にうっとりするひと時でした。
小屋では黒柴のコロンが愛想を振りまきつつ、マイペースに動いたり、座布団の上でお休みしたりと、一挙手一投足がかわいらしい。私も以前黒柴を飼っていたので、つい今は亡き愛犬を思い出し、その愛くるしい様に思わず目尻が下がってしまいました。
悲しみから立ち上がり再出発を果たした不動湯。既に3年が経とうとしています。旅館としての矜持を忘れない着物姿の女将からは、この歴史ある名湯を守り続けようとする強い意志が伝わってきました。宿泊営業の再開までには難しい問題が立ちはだかっているかと思いますが、いま私たちができる支援は、日帰り営業時間帯に積極的に利用することかと思います。
小さなお風呂ですから、お客さんで混雑すると待ち時間が発生してしまいますが、そのあたりは女将が適宜案内してくださいますから、小屋に入ってお喋りしながらゆっくりと時間を過ごして待ってみるのも宜しいかと思います。
不動湯(露天)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩温泉 46.9℃ pH7.4 1.8L/min(自然湧出) 溶存物質1161mg/kg 成分総計1182mg/kg
Na+:287.9mg(80.98mval%), Ca++:39.7mg(12.81mval%),
Cl-:148.2mg(29.15mval%), HS-:0.8mg, SO4--:148.5mg(21.55mval%), HCO3-:418.0mg(47.77mval%),
H2SiO3:51.2mg, HBO2:40.1mg, CO2:21.2mg, H2S:0.3mg,
(平成22年5月31日)
完全掛け流し
福島県福島市土湯温泉町字大笹25
024-595-2002
公式ホームページ
※2021年10月17日を以て長期休業。再開の予定はありません。委細は公式サイトでご確認ください。
土日祝のみ営業(ただし臨時営業する平日もあるので、詳細は公式サイトでご確認を)
10:00~17:00(最終受付16:30)
700円
内湯にシャンプー類あり、休憩所にドライヤーあり
私の好み:★★★
まさかの休業ですか・・・。
悲しくて泣いてしまいそうです。せっかく火災から立ち直って営業を再開していたのに残念です。営業を続けられないようなやむを得ない事情があったのでしょうね。情報ありがとうございます。
http://www.naf.co.jp/fudouyu/
いつもの冬季休業かと思いきや、
「皆さまには長い間、大変お世話になりました。
誠にありがとうございました」
「再開の予定は、今のところございません。」
…とのこと。
福島市民とはいえ車が無いので行くのを躊躇してた温泉の1つなのですが、こういう事があるからもたもたしてはいけないですね…。
こちらの温泉は実に風情があり、女将さん曰く東京からのお客さんも多かったようですが、残念ながら火事に見舞われてしまいました。それでも日帰り入浴施設として復活したのは素晴らしく有難いことだと思います。もちろん我々の目には見えてこないような色々なご苦労もあるかと思いますが、是非とも老舗のお風呂を続けてほしいと願ってやみません。
あら~、温泉の記事も感慨深く読ませて頂きましたが、
こたつで休んでいるワンちゃんが可愛いですね~。
山奥の渓流沿いに湧く温泉とは何とも風流ですね!
私もこの様な場が火災に見舞われたのは残念に思い、
少々検索してみましたが、山火事ではなく、
施設からの出火だったようですね。
他所様のブログでも取り上げられておりました。
今後も何とか頑張って欲しい所です。