温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

杣温泉旅館

2023年04月16日 | 秋田県

(2022年4月訪問)
このブログをご覧の方でしたら一度は名前を耳にしたことがあるだろう森吉山麓の名湯「杣温泉」。5月の連休に宿泊しようと試みたのですが、ギリギリまで予定が定まらずに予約ができなかったため、日帰り入浴で訪ねることにしました。

秋田県道309号線を東進して巨大なロックフィルダムである森吉山ダムを通過すると、車から見える景色は湖面と山の緑ばかりになり、奥深い山の中にいることを実感します。沿道には以前集落があったことを知らせる石碑がいくつか立てられていますが、現在は生活の気配が感じられません。古くからあった集落はみな湖底に沈んでしまったんですね。そんなことを思いながらハンドルを握り、旧湯之谷集落にある「森吉山荘」(現在休業中)の手前を左に曲がって細い橋を渡り、更に左折して山道を進んでゆくと、そのどん詰まりが今回の目的地「杣温泉」です。こちらもお宿以外には何も無く、まさに秘境の一軒宿。


玄関に入って宿のおばちゃんに日帰り入浴したい旨を伝えて400円を支払います。
靴のまま本棟の裏手に出て、奥の階段を上がった右手に浴舎があります。
浴舎のお風呂は男女別で、男湯の場合は脱衣室が2つあり、奥の方は後述する露天風呂へ比較的行きやすい位置関係になっています。なお室内にはドライヤーが用意されているほか・・・


2つある洗面台の片方には温泉が出てくる専用の水栓があり、コックを開けて温泉を飲むことができます。
もちろん私はここでしっかり飲泉させていただきました。


内湯は相当年季が入っていたタイル張り。男湯の場合は右手にシャワー付き混合水栓が3つ並んでいます。なお洗い場に備え付けられているアメニティは秘湯を守る会オリジナルのクマザサシャンプーとクマザサボディーソープです。

青いタイル張りの浴槽はおそらく6人は入れそうなサイズがあり、絶え間なくお湯が溢れ出ています。なお浴槽の縁でもオーバーフローが流れるところはツルツルとしたタイルの質感そのままですが、オーバーフローしないところは長年にわたって温泉飛沫の付着と蒸発が繰り返されることによって成分析出によるトゲトゲがこびりついており、迂闊に縁へ座ろうとするとお尻にトゲトゲが直撃してチクチクと痛いので、もしこれからご利用される方は念のためにお気を付けくださいね。


温泉は獅子の湯口から浴槽へ投入されています。獅子の口周りには析出がこびりつくことによって、白い立派な髭が蓄えられていました。なお湯使いは完全かけ流しで、加温も加水もせずに丁度良い湯加減が維持されています。素晴らしい!


内湯と露天風呂はちょっと離れており、露天風呂は駐車場の近くにありますので(上画像で温泉マークが書かれた塀で目隠しされているところ)、一旦服を着てから屋外に出て向かうことになります。


周囲の自然と広い空を存分に体感できる露天の大きな岩風呂。
脱衣室こそ男女別ですがお風呂は混浴です。そのかわり宿泊客が利用する時間帯には女性専用時間が設定されているようです。


私が訪ねた日は山の新緑が実に美しく、天気にも恵まれ、また脇を流れる沢のせせらぎも耳に心地よく、最高の環境で湯浴みすることができました。ただし、山の木々が浴槽の上にオーバーハングしているため、季節によっては
ブナの花や落ち葉などが大量にお風呂へ落ちてしまいます。この場合は塀に立て掛けてあるネットで各自掬い上げましょう。

お湯は無色透明ですが、露天風呂では白い湯の花が浮遊したり、あるいは一ヶ所にまとまって沈殿したりと、湯の花の存在感が目立っていました。とりわけ露天風呂のお湯の中を、まるで蛇の抜け殻を思わせる、白いリボンみたいな長い湯の花が何本かユラユラと浮遊していました。おそらく引湯パイプの内側に付着した湯の花が剥がれて流れてきたものでしょう。

泉質としては石膏を含む食塩泉で、飲泉すると薄い塩味やはっきりとした石膏味のほか、ほのかに硫化水素(チオ硫酸イオン)らしい茹で卵風味が感じられます。内湯の蛇口は硫化して黒ずんでいるのですが、これは温泉に含まれる硫黄の影響でしょう。湯中では食塩泉的なツルスベと石膏泉的な引っ掛かりの両浴感が混在して全身に伝わってきます。何も手を加えていないにもかかわらず、豊富な湯量と絶妙の湯加減が維持されており、まさに森吉山の恵み、極上のお湯です。


ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 53.6℃ pH8.5 溶存物質1.292g/kg 成分総計1.292g/kg
Na+:285.2mg(63.16mval%), Ca++:136.0mg(34.55mval%),
Cl-:459.4mg(67.15mval%), SO4--:287.9mg(31.04mval%), HS-:0.5mg, S2O3--:0.1mg,
H2SiO3:86.9mg,
加水加温循環消毒なし

秋田県北秋田市森吉字湯ノ沢7
0186-76-2311
ホームページ
(2023年冬は休業しており、2023年4月に営業再開予定とのことですが、詳しくは施設へお問い合わせください)

日帰り入浴7:00~20:00
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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