雲仙温泉での湯めぐりにおいて、共同浴場だけでは物足りないので、前回記事で取り上げた新湯共同浴場と同じ新湯地区に位置する「有明ホテル」にも立ち寄ってみることにしました。なお屋号の漢字は「ありあけ」ではなく「ユウメイ」と音読みするんだそうです。看板に記されているローマ字で初めて知りました。
私は駐車場に車を止めると、スタッフがわざわざこちらまで出迎えてくださり、日帰り入浴をお願いしますと、丁寧な応対で快く受け入れてくれました。古い洋館を思わせるような広くて立派なロビーで料金を支払い、館内奥へと進みます。
途中で卓球台が置かれたホールを通過。昭和の温泉に卓球は欠かせませんよね。スタッフの方の案内に導かれながら、長い廊下を進んだ突き当たりにあるエレベータで階下へ。
浴場へつながる廊下には数々の骨董品が展示されていました。奥に見える竜みたいなものは「おくんち」の龍踊りで使われるものかな。庭園を眺める座敷もあったりして、実に優雅な館内です。
庭園の木々の向こうにはプールが見え隠れしていました。かなり老朽化している様子でしたので、いまでは使われていないのかも。そんなプールがある庭を左に見ながら浴場入口の暖簾をくぐります。スタッフの方はわざわざここまで案内してくださいました。ありがとうございました。
さすが老舗旅館だけあって、脱衣室は隅々まで手入れが行き届いており、清潔感に満ち溢れていて使い勝手も良好です。籐の籠が収められている棚の一部は松竹錠でロックできる扉付きになっていますので、盗難が心配な方でも大丈夫。またフェイスタオルの無料貸し出しも行っており、洗面台には各種アメニティーも揃っていますので、手ぶらでの利用も可能。至れり尽くせりです。
室内空間の全体的な構造をはじめとして、窓や浴槽など各部位についても、とにかく曲線(円弧)を多用して柔らかなイメージを与えている浴室は、大きな窓ガラスが採用されて明るく開放的です。このお風呂で印象的なのは、浴槽上に側壁に大きく描かれた陶板の南蛮絵図。船に乗ってアラブ風の服装を纏っているのはポルトガル人なのでしょう。雲仙は島原半島の中央部に位置していますが、半島の南端にある口之津港はかつて南蛮貿易で栄えたところです。また江戸時代の雲仙といえばキリシタン殉教の地でもあり、現在は観光地となっている地熱地帯の「地獄」では、キリシタンに対して、地獄以上の苛烈な処刑が行われたことが知られていますから、島原半島や雲仙は南蛮渡来の人々と縁の深いところなのですね。
洗い場は室内の数箇所に分かれて配置されており、シャワー付きカランが計9基が取り付けられていました。各ブースとも腰掛けと桶が綺麗にセッティングされており、これから湯あみをしにやってくる宿泊客を出迎える準備がしっかりと整えられていました。
浴室内には烏帽子のような形状をした大きな浴槽が曲線の窓に沿って設けられており、幅が一番広くなってる左端付近に石臼のような形をした湯口が立ち上がっていて、中央の孔から滔々と噴き上がるお湯は側面を滴りながら浴槽へと落とされていました。私が入室した時には一番風呂だったらしく、湯船のお湯は上澄みの無色透明で濁りは殆ど見られなかったのですが、私が湯船に入りますと、底に沈殿していた湯の花が舞い上がって、まるで積乱雲が急激にモクモクと立ち込めるように一気に濁りはじめ・・・
あっと言う間に浴槽のお湯は、底が全く見えないほどのグレー色に濁ってしまいました。そのビフォーアフターを比較してみますと、左(上)画像は濁る前の状態で、透明なお湯を通じて黒い槽内側面や底面タイルがはっきりと目視できますが、湯の花が撹拌されて強く濁った後の右(下)画像では黒い槽内側面が辛うじて見える程度で、お湯はグレーに強く濁っています。浴槽の大きさに対してお湯の投入量が少ないためか、縁からしっかりオーバーフローしているものの、湯船は(体感で)40~41℃というちょっとぬるめの湯加減で、じっくりと長湯するにはもってこいのコンディションでした。
浴室からドアを開けて屋外に出た先は、「普賢の湯」とネーミングされた露天風呂。緑の木立の中、小川のせせらぎに沿う形で岩風呂が据えられており、小ぢんまりとしているものの、なかなかの風情です。
塩ビ管からお湯がドバドバ投入されており、露天の出入口そばにある排水口より小川へ直接排出されています。露天風呂は外気の影響を受けるはずなのに、お湯の投入量が多いためか、内湯よりも熱めで入り応えのある湯加減でした。こちらも私が入ると上澄みの湯が靄がかかったように濁り始め・・・
内湯のように露天でもライトグレーに強く濁りました。こちらでもビフォーアフターを比較してみましょう。左(上)画像は濁る前で、上澄みを通じて底面の石板の目地がはっきり目視できていますが、濁った後の右(下)画像は明らかにお湯の色合いが異なっていますね。
さて濁り以外のお湯に関するインプレッションですが、館内に掲示されている説明によれば、ここで使用しているお湯は清七地獄から直接引湯しているとのこと。いかにも雲仙のお湯らしくレモン汁のような収斂酸味があり、湯面からは酸っぱそうな匂いとともに軟式テニスボールのようなゴムっぽい匂いが放たれています。強い酸性泉らしいヌメリを伴うツルスベ浴感がしっかりと肌に伝わるほか、優しいサラサラ感もあり、pH1.9のお湯とは思えない滑らかで優しいフィーリングが得られました。
建物からは年季が感じられるものの、浴室をはじめ館内は手入れが行き届いてとても清潔。しかもお風呂は使い勝手が良くて湯使いも良好。実に素晴らしい一湯でした。
清七地獄
酸性・含鉄-硫酸塩温泉 55.4℃ pH1.9 溶存物質1.38g/kg 成分総計1.46g/kg
H+:12.7mg(63.73mval%), Na+:11.7mg(2.58mval%), Mg++:10.3mg, Ca++:36.3mg(9.16mval%), Al+++:26.2mg(14.72mval%), Fe++:21.1mg(3.84mval%), Fe+++:3.1mg,
Cl-:4.2mg, HSO4-:283.6mg(17.18mval%), SO4--:668.8mg(81.88mval%),
H2SiO3:290.3mg, H2SO4:9.0mg, CO2:82.4mg, H2S:0.1mg,
加水あり(源泉が高温のため)
諫早駅から島鉄バスの雲仙行きで「西入口」バス停下車すぐ
長崎県雲仙市小浜町雲仙380 地図
0957-73-3206
ホームページ
日帰り入浴15:00~16:30
700円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★+0.5