温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯倉温泉 湯倉温泉共同浴場

2011年11月19日 | 福島県
※湯倉温泉共同浴場は2014年12月にリニューアルオープンし、当記事で取り上げている湯小屋とは異なる、綺麗な浴場へと生まれ変わりました。当記事はリニューアル前の様子を取り上げております。

 
奥会津の湯倉温泉は私が大好きな温泉地のひとつ。一軒の旅館と一軒の共同浴場があるだけのとっても鄙びた小規模な温泉ですが、河原にひっそりと佇む小さな湯小屋が持つ素晴らしい風情に惹かれ、私はこれまで何度となく足を運んでいます。今年は2度訪れました。
今年(2011年)7月末の新潟福島豪雨ではこの湯倉温泉を含む只見川流域は大規模な水害に見舞われましたが、この湯倉温泉は辛うじてその難を逃れたようで、川岸に建つこの小屋はギリギリのところで被害を免れたようです。
アプローチ入口の白い看板や玄関引き戸の黄色い張り紙は、半年前には無かったので、ここ数か月で新たに取り付けられたのでしょう。

 
湯小屋のすぐ真裏にある源泉井。お湯はポンプアップされて浴場へ直接送られています。

 
只見川の岸に建てられた小屋から捨てられたお湯によって、河岸は赤茶色の析出で覆われているのが特徴的。
上の画像は両方とも今年撮影したものですが、画像左(上)は紅葉の11月、右(下)は残雪が見える4月の様子です。両方の画像に写っている青い小屋が共同浴場です(赤い建物は一軒宿の「鶴亀荘」)。川の目の前に立地していることが一目瞭然ですが、注目すべきは川の水位。4月に比べて11月は思いっきり下がっていますが、これは大水害によってすぐ下流にある本名ダムがぶっ壊れて湛水できなくなったためです(水害についてはこちらの記事もご参照ください)。

 
玄関を上がったところにある休憩スペース。数年前に畳が敷かれるようになりました。腰掛やちゃぶ台も置かれています。男女とも脱衣所の扉が開きっぱなし。開放的というべきか何というべきか。でもこれがここのいつもの流儀です。


壁に設置されている料金箱へ協力金を各自投入。


半年前には休憩スペース内にこのようなノートが吊り下げられており、訪問者が思い思いに感想を書き綴っていましたが、11月に訪れるとノートの存在は確認できませんでした。水害に伴って一時的に避難させているのかしら。この他にも温泉分析表など、館内の掲示物が少なくなっているようでした。


 
脱衣所こそ男女別ですが、浴室は男女混浴の一室のみ。至ってシンプルな造りのお風呂です。川を望む開放的なロケーションですね。成分の付着により浴槽をはじめお湯が触れる箇所はすべてコーティングされ、桶などもお湯の析出ですっかり覆われています。お湯の濃さが見るだけでもわかります。


裏の源泉井から送られたお湯はこの湯口から出てきて、3方に分かれて流れていきます。そのひとつは勿論浴槽へ。汲み上げられた60℃以上のお湯がそのまま出てくるので滅茶苦茶熱く、源泉を投入しっぱなしにしていたら、間違いなく入浴できません。このため湯口は木の板や石で遮られるようになっており、利用者が適宜お湯を入れたり止めたりして湯加減を調整するようにしています。以前訪問した時には常連のお爺ちゃんが「どうだい、熱くねぇかい」とこまめに温度調節役を買って出てくれました。地元の方の親切な心に感謝です。

お湯はやや緑色を帯びつつ赤色系統も強い黄土色に濁り、透明度は30~40センチ程。薄い塩味+出汁味+石膏味+金気味、そして金気臭と土気臭が感じられます。以外にもツルスベ感が勝る浴感で、引っかかりは弱めです。


何しろ熱いお湯ですから、湯もみ板が立てかけられていました。


浴槽へ流れなかったお湯の内、一方はこの掛け湯用の枡へ注がれます。カランなんてものは無いので、この枡で掛け湯するわけです。枡の上には鏡が貼られ、水の蛇口が2個設置されています。温泉の析出により枡まわりは赤茶色に染まっていますね。

 
湯口から浴槽にも掛け湯枡にも注がれることなく捨てられてゆくお湯は、浴槽上の筧を流れ、浴槽横の枡に落とし込まれてから、川へと排水されていきます。湯温調整のため捨てられるお湯が多いのですが、ついついもったいないと惜しんでしまう私は貧乏性かしら。こうして惜しげもなく捨てられたお湯が斜面でドームのような析出を形成しているわけですね。

水害の一報を聞いた時には、この湯小屋の被害状況がとても気になりましたが、今日でもこうして無事に利用することができ、心の底からホッと安堵しました。
以前ここを利用した時、常連のお爺さんが「会津には金は無ぇけど温泉なら沢山あるぞ」「こんな立派なお湯は金があっても買えねぇぞ」と高笑いしながら誇らしげに語っていたのを思い出します。奥会津らしい濃厚なお湯と、長閑な佇まいのこの湯小屋。いつまでも残っていてほしいものです。


ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 61.3℃ pH6.9 68.7L/min(動力揚湯・エアリフトポンプ) 溶存物質5.730g/kg 成分総計5.889g/kg
Na:1255mg(65.99mval%), Ca:384.6mg(23.20mval%), Cl:1404mg(46.78mval%), SO4:1464mg(36.00mval%), 遊離CO2:159.0mg
(平成21年8月5日)

福島県大沼郡金山町大字本名字上ノ坪1944  地図
7:00~20:00
協力金100円以上
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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芦の牧温泉 芦ノ牧おみやげセンター ドライブ温泉

2011年11月19日 | 福島県
 
会津・芦ノ牧温泉の外れに位置する国道沿いのお土産屋さんです。昭和から時が止まっているかのようなこちらの店舗には温泉浴場が付帯しており、公衆浴場感覚で利用することができると聞いていたので、国道118号を走って会津若松へ向かっていた某日、立ち寄ってみることにしました。
訪問時は日が暮れてまだ間も無い時間帯だったのですが、お店の看板には照明が燈っておらず、てっきり閉められちゃったのかと半ば諦めつつ 車を降りて店の前に立ってみると、店の奥の方で「ドライブ温泉大浴場入口」と書かれたアクリルの看板にぼんやりと明かりが点いていたので、多分営業中なんだろうと判断して、中へ入ってみることにしました。

 
強烈にB級感が漂ってくる入口周りの佇まい。中に入るとテーブルで子供たちが無邪気に遊んでいました。店の奥へ声をかけるとアンニュイなおばさんが現れ、専用レジでまずはお支払いです。料金表のボードには「その筋の達しにより貸タオル、貸石ケンはいたしませんので店内でお買い求めください」と書かれており、「その筋」という表現に思わず笑ってしまいました。

 
お風呂は昨年(2010年)夏に改修され、タイルの張替などが行われたそうですが、その事実を知らなければ「レトロな感じだね」と口にしてしまうこと必至な、いかにも昭和然とした造りです。実際、私も改修されたことを知ったのは利用した数日後でして、入浴時には結構草臥れているような印象を受けました。

 
洗い場のカランは3つあり、うち1つは古い浴室に不釣り合いなデジタルタイマー付きのシャワー付き混合栓が設置されていました。

 
浴槽は二分割されており、「あつい湯」と「ぬるい湯」に分かれています。湯口上に取り付けられたヘロヘロ文字の浴槽名が、いかにも手作り感に溢れていて微笑ましいです。ぬるい方は源泉投入量が少なくて本当にぬるく、それどころかお湯がかなり鈍り気味でした。一方、熱い方はちょうど良い湯加減で、お湯の投入量もチョロチョロながら必要最低限は確保されており、鈍っているような質感は受けませんでした。無色透明、石膏および芒硝の味と匂いがそれぞれ感じられます。キシキシとした浴感でしっかり温まりました。窓側側面の塩ビパイプから排湯されており、洗い場へのオーバーフローは一切ありませんが、循環しているような気配も無いので、おそらく掛け流しに近い湯使いではないかと思われます。


屋外には露天風呂もありますが、建物の山側に位置している上、周囲を塀に囲まれているため景色はまったく楽しめず、しかも訪問時はお湯の投入が止まっていて、湯舟はかなり冷めており、底の方に至っては水と化していたので、この露天には入りませんでした。

改修しても古臭さが抜けないユルユルな雰囲気のお風呂ですが、B級感を味わうなら一度訪問するのも面白いかもしれません。


(小谷揚湯組合所有源泉)
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 55.8℃ pH8.1 42.9L/min(動力揚湯) 溶存物質1.213g/kg 成分総計1.213g/kg
Na:201.1ng(48.99mval%), Ca:175.9mg(49.16mval%), Cl:111.1mg(18.69mval%), SO4:621.8mg(77.31mval%)


福島県会津若松市大戸町小谷湯平89
0242-92-3032
ホームページ

8:00~19:00(受付は18:30まで)
400円
簡易ロッカー・有料ロッカー(100円/5分)あり、石鹸など販売

私の好み:★★
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