ヌマンタの書斎

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「反原発」の不都合な真実 藤沢数希

2016-06-17 12:49:00 | 

真実を見抜くのは難しい。

広島、長崎に原爆が落とされて以来、日本は核アレルギーというか、核ヒステリーに陥って久しい。だからそれが平和利用であろうが、なんだろうが、核エネルギーそのものに拒絶反応を示す。

だから、オイル・ショックがあっても原子力発電所には反対。平和利用であろうと原子力船というだけで拒否。とにかく目的がなんであろうが、原子力には反対あるのみ。このような原子力反対教とでも評すべき反核信者が日本ではきわめて元気である。

彼らは自らの正しさを絶対的に信じているので、反対意見は許せない。聞く耳持たず、ただ反対するのみである。科学的検証も、実地調査も、統計的資料も彼らの眼には入らない。とにかく反対なのだから。

だから表題の書に記されているような内容には、決して目を向けない、見ようとしない。とにかく反対、なんでも反対、反対あるのみである。

だけど、冷静に考えて欲しい。石油という化石燃料は、おそらく今世紀中に枯渇する。天然ガス(シェールガスも含む)や石炭は、まだ当分持つが、石油ほど広範囲に活用できる訳ではない。

そして、化石燃料の多用は、温暖化ガスであるCO2の増加という危険を孕んでいる。それだけではない。化石燃料は大気汚染の危険性を高める。これは現実的な問題で、既に毎年100万人以上が呼吸器系の疾患で死んでいる。

意外に思われるかもしれないが、日本は発電所等で排出されるガスの浄化に長けているので、実感がわかないのだと思う。だが、思い出して欲しい。高度成長期の最中、日本で多くの公害病が発生し、多くの患者が苦しんだことを。

今、アジア、アフリカ、東欧などの途上国では、日本の数百倍の規模で大気汚染が進んでいる。そのため、呼吸器系疾患のみならず、水質汚濁による公害病も広がっている。

この化石燃料が引き起こす公害病により死亡する人たちは、毎年増える一方なのだ。隣のシナは、石炭による煙害と、大気汚染が著しく、北京政府は国を挙げて対策を急いでいる。

その対策の中心を担うのは、原子力発電である。シナだけではない。東日本大震災と福島原発の事故があれだけ騒ぎになったにも関わらず、原子力発電所の建設は増える一方である。

原発アレルギーに毒されている日本のマスコミは報じないが、現実には放射能汚染の危険よりも、化石燃料の使用による環境汚染の被害のほうがはるかに危機的であるのが世界の常識である。

勘違いしないで欲しいのだが、原発が安全だと言っているのではない。原発よりも化石燃料のほうがより危険であり、多くの人たちを死に追いやっているのが現実なのである。だが、核アレルギーに陥っている人たちには、あまりに不都合な真実なので認めがたいのであろう。

太陽光発電や風力発電といった自然回帰型の発電は、あまりに効率が悪く、現代文明を支えるだけの力がない。これも核ヒステリー信者が目を背ける現実である。

放射能は怖い(嘘ではない)、原子力発電は危険だ(これも嘘ではない)。そう思うのは自由だが、化石燃料を使い続けることの危険性を無視していい理由にはならないと思う。

自分が信じたいことを盲信するあまりに、「反原発」にとって不都合な真実を、観て見ぬふりすることは、むしろ危険なことだと思います。

本当に?

そう思ったのならば、表題の書を読んでみることをお奨めします。平易な文章で、感情に走らず、冷静に客観的に記されているので理解しやすいと思いますから。

コメント (2)
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