ヌマンタの書斎

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小沢の離党

2012-07-05 11:38:00 | 社会・政治・一般

もはや大義なし、だと言わざる得ない。

今週、小沢一郎が50あまりの手下を引き連れて民主党を離れた。大義名分は「消費税増税反対」である。

では、対案があるのかといえば、言葉を濁す。かつて自民党時代、消費税を導入した竹下内閣時、消費税に反対する野党を非難した時には、必ず対案を出すよう何度も発言していたことを忘れたのだろうか。

私は基本的には大型間接税の増税に賛成だ。日本の社会構造が変化して、直接税(法人税、所得税)では捕捉されない所得が増えていることを思えば、消費税という流通段階での課税は、国家歳入の確保において必然的な流れだと言わざる得ないからだ。

高齢化社会は、どうしても福祉予算が求められる。従来の直接税中心では政府財源を補いえないことは明らかだ。日本人の傾向として、どうしても福祉国家を求めざる得ない以上、そのための財源確保は致し方ないと思う。

思うが、増税一辺倒は納得しかねる。

やはり、政府が自ら節約に励んで、自ら血を流して国民の範たる姿勢を示してもらわねば、私としては納得しかねる。

まずは、国会議員の定数を減らして欲しい。最高裁で違憲判決が出たように、一票の格差の是正は当然だが、それだけではダメだ。国民に増税という出血を強いるのならば、自らがその数を減らして範を示して欲しい。

だいたい、衆議院なんてあんなにいらないぞ。せいぜい300人程度で十分だろう。参議院なんて、100人前後で十分だ。数を減らして、その分質を高める方向に持っていくべきだ。立法府のくせに、立法を役人に任せているなんて、仕事しないで給料もらっているようなものだ。

少数意見が反映されないとの反対が出るだろうが、まず少数意見を多数にする努力をするのが正道だろう。地方切り捨てだとの反対も出ようが、現実に地方は人が減り、そこに国会議員をあてこんでも、過疎化は止まらない現実を直視しろ。

既得権に縋り付いているから、時代の変化についていけない。既得権に甘えているから、厳しい変化に対応できない。

小泉・改革が構造改革の名のもとに、この既得権に切り込んだが、その結果が民主党政権だった。再びその二の舞を踏むのかとの意見もあろうが、小泉・改革の最大の失敗は、弱いところから切り捨てたことだ。

歴史上、財政赤字の改善に成功した政治家のやり方をみると、まずトップが模範を示したうえで、それを中間層にやらせ、一番弱い立場の人たち(数は一番多い)にはやんわりと切り込んで、嫌々ながらも納得させる。小泉には、この知恵がなかった。

逆に失敗例をみると、権力者層や富裕階級にはお茶を濁して、立場の弱い下層民からの過酷な取り立てで財政改善を図る。結果、社会は不安定化して、飢饉や反乱が続発し、治安維持のための軍事力行使が増えて、商業活動は著しく衰退する。そのくせ、改革は成功だったとの宣伝だけは怠らない。

古来、衰退する国家というものは、外敵からの侵略により滅びるよりも、内政における怠惰から滅びの道をたどるものだ。第二次世界大戦の敗戦から立ち上がり、世界屈指の経済大国へ復興した努力と実績は、歴史に名を残す偉業だと思う。

だとしても、その政府主導の経済成長と、公共事業による地方活性化は既に限界に達してる。それを明確に自覚していたがゆえに、政府自ら構造改革を求めていた。しかし、皮肉なことにその構造改革を実施したがゆえに、政権交代の気風が起こり自民党は下野し、民主党政権が産まれた。

民主党政権を生み出したのは、有権者がマニフェスト実現を求めたからではない。構造改革の名のもとに弱者切り捨てをやらかした自民党政権への反発こそが、民主党に与党をとらせたのだ。

ところが、民主党はその現実に目を背け、内々で作った稚拙な政策に拘り、国民の声よりも長年の支持者の声だけに耳を傾けた。戦後の内閣のなかで、これほど内向きな政権はなかった。だから、やることといえば、従来の少数意見の実現を図り、かえって混乱と反発を招くことか、さもなければ民主党内部の権力争いだけだ。

小沢の離党は、その後者の典型で権力争いの結果としての行動であることは明白だ。小沢が言うような消費税増税に反対する国民の声を受けての行動では、断固ない。消費税増税に反対との看板を掲げているだけで、本質は次の選挙で勝つための、いわば生き残り戦略に過ぎない。

要するに、自らの権勢を求めての行動に他ならない。それは政治家の本能かもしれないが、政治の変革を求める国民の声を反映しないことも明らかだ。

かつての気鋭の政治家・小沢一郎に期待するのは、民主党の足を引っ張ることだけで、もはや未来を託せる政治家でない。今回の離党は、小沢の終わりの始まりであって欲しいものです。

コメント (5)
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