ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「人造人間キカイダー」 石森章太郎

2006-05-25 09:38:07 | 
昨年、電車の中吊り広告を見てビックリ。漫画家の故・石森章太郎全集が発刊されることを報じた広告でした。まさか、発売されるとは・・・

かつて手塚治虫が死去された時、話題に上がったのが「果たして、石森章太郎の全集は刊行出来るのか?」でした。作品数が桁外れに多い漫画家であるのは勿論ですが、もう一つの問題は家族に漫画に対する理解者が居ないらしいとの噂があったのです。

石森氏は漫画雑誌も少年誌から青年誌、少女漫画雑誌と幅広く、またイラストや挿絵も多く描かれていて、関わった出版社だけでも100を超えると言われていました。にもかかわらず、その作品の管理が十分にされているとは言い難いことが、全集発刊を困難にしていた原因でした。ちなみに、今回の全集発刊は、あの角川です。さすがというか、なんというか・・・

天才肌の漫画家であったと思いますが、私はそれほど熱中した漫画家ではありません。それでもわりと好きだったのが、表題に掲げた「人造人間キカイダー」です。もちろんTV版ではなく、週刊少年サンデーに掲載されていた漫画のほうです。

童話のピノキオをモチーフにした「キカイダー」ですが、エンディングは必ずしもハッピーエンドとは云えないものでした。見事に敵を滅ぼして、自由となったキカイダーでしたが、その代償に「悪の心」を手に入れてしまった。これまで「良心回路」に縛られていたキカイダーでしたが、これからは人間同様、悪と善の双方に心を揺り動かされる人生を送ることとなってしまった。

童話のピノキオは、人間になれて幸せに暮らしたとして話は終わっています。でも漫画のキカイダーは、人間になれたことの哀しみを秘めた寂しい笑顔で話を終えています。微妙にダークなハッピーエンド。数ある石森作品のなかで、一番記憶に残っているエンディングです。
コメント (7)
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