ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

刑期を終えた戸塚宏

2006-05-11 17:11:23 | 社会・政治・一般
戸塚ヨットスクールの校長、戸塚宏の名前が久々に新聞紙面に出ていました。あの事件から二十年以上の歳月が過ぎていたのですね。

生徒を死なせてしまったことの罪を問われたのは当然でしょう。ただ、体罰の是非の問題は別にしても、ヨットという自然を相手にしたスポーツを通じた教育には、当時から共感を覚えていました。

私自身は登山を通じてでしたが、自然の脅威に曝されることで身に付くものって、確かにあると思います。立つことすら敵わぬ強風や、足元で地響きを立てて崩れる山津波、一瞬の気の緩みが死に直結する岸壁の登攀。荒れ狂う自然の猛威の下では、人間のか弱さを自覚せざるえない。生きる努力をしなければ、生きていくことが出来ない厳しさが人を鍛える。

厳しさと優しさは表裏一体。厳しさの裏づけのない優しさは、底が浅い。優しさを持っていない厳しさは、反発を生むだけ。自分に厳しくなれない人間の、他人への優しさなんて甘えに過ぎない。

自然の厳しさは、見てくれだけの優しさや、上げ底の寛容を剥ぎ取ってしまう。見栄を張る余裕さえなく、素の自分が剥き出しになる。

山が私の学校だった。あそこで自分の弱さ、見栄、卑劣さを見せ付けられ、その屈辱を知ることで、自らを鍛錬してくれた学びの場でもあった。

「戸塚宏」の名前に嫌悪感を露にする人は確実にいるでしょう。でも、彼を恩師と仰ぐ人たちも確実に存在すると思います。戦後の生やさしい民主主義的教育のあだ花ともいえたのが、あの戸塚ヨットスクールであったと思います。
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