ホンダカーズ某店にS660が入ったという情報をゲットし、早速電話してみた。ホンダカーズ東京中央のサイトの試乗車一覧ページには2台のS660が存在するが、それらとは違う車両だから、試乗希望者が殺到して3時間待ちとかにはならないのではないか、と思ったのだ。
電話に出た女性に試乗したい旨告げると、しばらく待ってから、いつでもお越しくださいと言われた。やはり試乗予約がいっぱいということはなさげ。
指定時刻に某店に到着。試乗云々の前に空いている。僕以外に二人しか客がいない。
試乗車はプレミアムビーチブルーのアルファでCVT。モデューロのフロントフェイスキット付き。晴天だったが、ルーフを付けた状態での試乗だった。僕は妄想の中では無限のハードトップを装着しているので、そのシミュレーションとして好都合。
乗り込むのに一苦労。ルーフがなければまだ楽なのだろうけど、車高が低いから開口部の天地も狭く、身をかがめながらステアリングとシートの間の狭い空間に足を通して突っ込み、さらに前方に投げ出すという。靴底の汚れがシートに付かないように乗り込むのは難しいと思う。
運転席は意外にゆったりしていると書く評論家もいるが、そんなことはない。普通の軽と違って助手席との間にセンターコンソールがある分、各自の領土の横幅が狭い。シートベルトを受け口に差し込むのも隙間がぎりぎり。僕は太っていないのだが。
足を投げ出す運転姿勢なので足元は狭くないが、シート周囲の前後の余裕はまったくない。インパネが顔に近い。フロントガラスも近いし、コクピットはものすごく窮屈だ。スポーツカーというよりレーシングカーみたい。
意外にロングドライブもイケるという評価があるが、狭すぎて身動きが取れない・姿勢を変えられないので、尻や背中が床ズレ状態になりそう。それでも圧倒的に運転が楽しいから耐えられる。と言いたいところだが、夏の国道134号線(湘南)の大渋滞で2時間ハマったりなんかしたら辛くて発狂すると思う。それくらい狭苦しい。
持っていた小さなショルダーバッグを置く場所がなかった。助手席の営業マンが持ちましょうかと言ってくれたのだが、遠慮した。が、センターコンソールの缶ホルダー付近は平地が狭すぎて転げ落ちてきそうだった。やむを得ず、太ももの下の床に置いた。
では発進。シフトレバーが硬い。ブレーキべダルも硬くてストロークが短め。アクセルは普通。縁石を降りるときにシャシーが歪まない。サスペンションの伸縮だけを感じる。
噂どおり小さなステアリングだが、室内が狭いから小さくしたのだろう。この狭さで普通サイズのステアリングだと乗り込むことができない。現状でも、膝をちょっと曲げるとステアリング下端に当たる。D型にしたのは正解。
視点が低い。道幅が広く見える。普通のクルマの横腹が自分の顔の高さだ。前を走るトラックの荷台が見上げるほど高い。焼けたアスファルトの熱気の中を走っているような気がする。上前方の視界があまりなく、全体的にも視界が広いとはいえない。室内は明るいとは言いがたい。狭苦しいシートから狭い景色を見ながら路面を這うように走る車を運転する。レーシングカーってこんな感じなんだろう。50キロで走っていても市街地レースやってる気分。評論家達は、これを楽しいと言ってるのだろう。僕も楽しかった。
窓を閉めてエアコンをかけていたが、5分も走るとアイドリングストップするようになった。停止時はそうでもないが、再始動は大きめのショックがある。人によって慣れられるかどうか微妙な大きさのショックなので、CVTを買う人は試乗でよく確認したほうがいい。
違反しなければ踏んでもいいと営業マンが言うので、スポーツモードにしてガツンと踏んでみた。なかなか鋭いレスポンスでぐんぐん加速。CVTでもダイレクト感ある。トルコンの滑りもほとんどない。リアウインドウを開けるとカラカラ/ヒューンというターボ軽自動車の音がした。ブローオフバルブのプシュ~音は、するけど恥ずかしいほど大きな音でもない。意識していれば聞こえる、という程度。もっとわざとらしい音なのかと思っていたが。
窓を閉めると、いまどきの静かな車だ。静かに走りたいときと、メカの鼓動を味わいたいときと、選べるのがいい。開けると、エンジンが回ってるぞ!一生懸命走ってるぞ!という感じがする。最近の静かな車だと、いつの間にか着いていた、運転した気がしない、なんてこともあるが、S660で後ろを開けて走ると、人車一体がんばってようやく目的地に着いた、という達成感を味わえそう。
リアの窓の開度で、聞こえるエンジン音のボリュームが劇的に変わる。真ん中まで開けて、メカを感じつつ同乗者との会話も楽しむというやりかたもあり。
駆動輪ではないタイヤで舵を切っている雑味のなさは、僕が運転したことのあるどの後輪駆動車よりもよくて、すっきりしていた。軽くもなければ重くもない。敢えて言えば、軽自動車で前にエンジンがない割には重いかな、という感じの回し具合だった。要するに、パワステのアシストがちょっと弱め。たぶん意図的に。
あんまりタイトなコーナリングがないコースだったので、性能の全部を体験できてはいないのだが、思っていたほどシビアな旋回性ではなかった。センター付近の遊び、曲げ始めの反応など、フィット3 RSと比べて3割シャープという程度。万人受けする適度な味付け、安全なセッティングだと思った。アジャイルハンドリングアシストの作動は、よく分からなかった。
パドルシフトの具合はフィット3 RSと同等。操作から遅れず、すばやくギアチェンジしてくれる。エンブレの効きはフィットより強い。インパネが近いのでスポーツモードボタンに手を伸ばしやすく、アイドリングストップしたくないときのモード切り替えはやりやすそう。
ルーフは外から触るとゴワゴワしてて、硬い繊維で編んであるなと思ったが、中から触ると柔らかかった。骨もカチカチではなく、意外に撓るかも。積雪にも耐えるという話だが。
外から見てもかっこいいサイドミラーは、運転席から見てもかっこいい。細くて尖っている。が、やはり天地が狭くて見やすくはない。車両感覚が掴みやすいので駐車場では困らないが、車線変更は気を使う。面積が狭いのをカバーするためか、広角気味になっているようで、後ろの車が一般的なサイドミラーより遠くに見える。
後方視界は予想通り悪い。エンジンフードの峰の間から覗く感じ。小さな逆台形の景色+左右がちょびっと、しか見えない。車体が低いので、後下方の死角に隠れる何かがあることはほとんどないと思うけど、後ろの車の運転手がどんな人か、なんてのは分かりにくい。
・ ・ ・ ・ ・
帰路、自分のフィットを運転すると、視点が高くて笑ってしまった。運転席が無駄に広くて大型車を運転している気になった。試乗中、S660のハンドリングはそれほどでもないなと思ったが、フィットのは比べるとものすごくマイルド、あるいは大雑把だった。自分の感覚なんてアテにならないなと思った。
電話に出た女性に試乗したい旨告げると、しばらく待ってから、いつでもお越しくださいと言われた。やはり試乗予約がいっぱいということはなさげ。
指定時刻に某店に到着。試乗云々の前に空いている。僕以外に二人しか客がいない。
試乗車はプレミアムビーチブルーのアルファでCVT。モデューロのフロントフェイスキット付き。晴天だったが、ルーフを付けた状態での試乗だった。僕は妄想の中では無限のハードトップを装着しているので、そのシミュレーションとして好都合。
乗り込むのに一苦労。ルーフがなければまだ楽なのだろうけど、車高が低いから開口部の天地も狭く、身をかがめながらステアリングとシートの間の狭い空間に足を通して突っ込み、さらに前方に投げ出すという。靴底の汚れがシートに付かないように乗り込むのは難しいと思う。
運転席は意外にゆったりしていると書く評論家もいるが、そんなことはない。普通の軽と違って助手席との間にセンターコンソールがある分、各自の領土の横幅が狭い。シートベルトを受け口に差し込むのも隙間がぎりぎり。僕は太っていないのだが。
足を投げ出す運転姿勢なので足元は狭くないが、シート周囲の前後の余裕はまったくない。インパネが顔に近い。フロントガラスも近いし、コクピットはものすごく窮屈だ。スポーツカーというよりレーシングカーみたい。
意外にロングドライブもイケるという評価があるが、狭すぎて身動きが取れない・姿勢を変えられないので、尻や背中が床ズレ状態になりそう。それでも圧倒的に運転が楽しいから耐えられる。と言いたいところだが、夏の国道134号線(湘南)の大渋滞で2時間ハマったりなんかしたら辛くて発狂すると思う。それくらい狭苦しい。
持っていた小さなショルダーバッグを置く場所がなかった。助手席の営業マンが持ちましょうかと言ってくれたのだが、遠慮した。が、センターコンソールの缶ホルダー付近は平地が狭すぎて転げ落ちてきそうだった。やむを得ず、太ももの下の床に置いた。
では発進。シフトレバーが硬い。ブレーキべダルも硬くてストロークが短め。アクセルは普通。縁石を降りるときにシャシーが歪まない。サスペンションの伸縮だけを感じる。
噂どおり小さなステアリングだが、室内が狭いから小さくしたのだろう。この狭さで普通サイズのステアリングだと乗り込むことができない。現状でも、膝をちょっと曲げるとステアリング下端に当たる。D型にしたのは正解。
視点が低い。道幅が広く見える。普通のクルマの横腹が自分の顔の高さだ。前を走るトラックの荷台が見上げるほど高い。焼けたアスファルトの熱気の中を走っているような気がする。上前方の視界があまりなく、全体的にも視界が広いとはいえない。室内は明るいとは言いがたい。狭苦しいシートから狭い景色を見ながら路面を這うように走る車を運転する。レーシングカーってこんな感じなんだろう。50キロで走っていても市街地レースやってる気分。評論家達は、これを楽しいと言ってるのだろう。僕も楽しかった。
窓を閉めてエアコンをかけていたが、5分も走るとアイドリングストップするようになった。停止時はそうでもないが、再始動は大きめのショックがある。人によって慣れられるかどうか微妙な大きさのショックなので、CVTを買う人は試乗でよく確認したほうがいい。
違反しなければ踏んでもいいと営業マンが言うので、スポーツモードにしてガツンと踏んでみた。なかなか鋭いレスポンスでぐんぐん加速。CVTでもダイレクト感ある。トルコンの滑りもほとんどない。リアウインドウを開けるとカラカラ/ヒューンというターボ軽自動車の音がした。ブローオフバルブのプシュ~音は、するけど恥ずかしいほど大きな音でもない。意識していれば聞こえる、という程度。もっとわざとらしい音なのかと思っていたが。
窓を閉めると、いまどきの静かな車だ。静かに走りたいときと、メカの鼓動を味わいたいときと、選べるのがいい。開けると、エンジンが回ってるぞ!一生懸命走ってるぞ!という感じがする。最近の静かな車だと、いつの間にか着いていた、運転した気がしない、なんてこともあるが、S660で後ろを開けて走ると、人車一体がんばってようやく目的地に着いた、という達成感を味わえそう。
リアの窓の開度で、聞こえるエンジン音のボリュームが劇的に変わる。真ん中まで開けて、メカを感じつつ同乗者との会話も楽しむというやりかたもあり。
駆動輪ではないタイヤで舵を切っている雑味のなさは、僕が運転したことのあるどの後輪駆動車よりもよくて、すっきりしていた。軽くもなければ重くもない。敢えて言えば、軽自動車で前にエンジンがない割には重いかな、という感じの回し具合だった。要するに、パワステのアシストがちょっと弱め。たぶん意図的に。
あんまりタイトなコーナリングがないコースだったので、性能の全部を体験できてはいないのだが、思っていたほどシビアな旋回性ではなかった。センター付近の遊び、曲げ始めの反応など、フィット3 RSと比べて3割シャープという程度。万人受けする適度な味付け、安全なセッティングだと思った。アジャイルハンドリングアシストの作動は、よく分からなかった。
パドルシフトの具合はフィット3 RSと同等。操作から遅れず、すばやくギアチェンジしてくれる。エンブレの効きはフィットより強い。インパネが近いのでスポーツモードボタンに手を伸ばしやすく、アイドリングストップしたくないときのモード切り替えはやりやすそう。
ルーフは外から触るとゴワゴワしてて、硬い繊維で編んであるなと思ったが、中から触ると柔らかかった。骨もカチカチではなく、意外に撓るかも。積雪にも耐えるという話だが。
外から見てもかっこいいサイドミラーは、運転席から見てもかっこいい。細くて尖っている。が、やはり天地が狭くて見やすくはない。車両感覚が掴みやすいので駐車場では困らないが、車線変更は気を使う。面積が狭いのをカバーするためか、広角気味になっているようで、後ろの車が一般的なサイドミラーより遠くに見える。
後方視界は予想通り悪い。エンジンフードの峰の間から覗く感じ。小さな逆台形の景色+左右がちょびっと、しか見えない。車体が低いので、後下方の死角に隠れる何かがあることはほとんどないと思うけど、後ろの車の運転手がどんな人か、なんてのは分かりにくい。
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帰路、自分のフィットを運転すると、視点が高くて笑ってしまった。運転席が無駄に広くて大型車を運転している気になった。試乗中、S660のハンドリングはそれほどでもないなと思ったが、フィットのは比べるとものすごくマイルド、あるいは大雑把だった。自分の感覚なんてアテにならないなと思った。