曖昧批評

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小田原ドラゴン「今夜は車内でおやすみなさい。」の感想

2021-07-06 19:06:00 | 

小田原ドラゴンの「今夜は車内でおやすみなさい。」の第1話を無料試し読みで読んだら、いてもたってもいられなくなった。何件か本屋をめぐってようやく探し当て、1、2巻とも買った。



主人公は、作者と微妙にオーバーラップする売れない漫画家シャーク小笠原。月に1本、4コマ漫画の連載を持っているが、それだけでは食べて行けず、工場でバイトしている。50歳になるが未だ独身で、15年前に少し交際していた由美子さんに未練を持っている。

第1話でシャーク小笠原は「この先もう何のドラマもなく」「ただこのまま歳をとって死んでいく」「自分はもう終わった人間なのではないか」と考えて怖くなり、身体ががくがく震え出し、車に飛び乗ってやみくもに走り出す。

僕は何とか結婚して子供もいるが、30過ぎてもまだ独身だったころ、ときどきこうなった。もう何もないんじゃないか。もう誰とも出会わないんじゃないか。どこかで致命的に間違ったのではないか。

当時は車がなかったので、僕は震えて眠るだけだったが、シャーク小笠原はめちゃくちゃに運転して知らないところで車中泊。朝起きたら目の前に富士山があって、ちょっとすっきりして車中泊に目覚める。

僕はこのエピソードを読んで、全巻即購入を決意した。

目覚めてからのシャーク小笠原は、車中泊マンガの連載が決まり、そのためにホンダN-VANを購入。車中泊しながらいろんなことにチャレンジしては、大抵トホホな結果に終わる。道の駅でアヒージョを作ろうとしたけど車内で火を使うことに躊躇して、帰って家で作るとか、夜中にセキュリティアラームを鳴らしてしまって超焦るとか。

そして時々、心を抉ったり、胸が詰まるような述懐が挟まる。

「ボクはずっと若者だった。この世界に若者として生まれてきて、これからもずっとこの世界で若者として生きていくのだと思っていた。しかしボクはおっさんになっていた…」

そして、もう引き返すことのできない道を歩んできてしまったのかも、と背筋が寒くなり、ふと日本一周を思いつく。

2巻まででは、まだ日本一周に出発していない。おそらく秋に出る3巻からが本番。連載中のエピソードを見ると、四国まで行っている。作者の小田原ドラゴン先生も、N-VANで車中泊をしながら漫画を描き、毎週掲載している。実話と虚構が混ざったセミドキュメンタリーである。

若い人や、毎日が充実している人には全く刺さらないと思うが、僕自身は全く満ち足りておらず、特に仕事については氷河期時代もあって苦しいことのほうが多い人生だったので、この作品には共感しかない。いや、共感だけじゃなくギャグもあるし、結構笑える。毎週水曜日のヤンマガWebの最新話が楽しみである。3巻ももちろん買う。

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