僕は北海道生まれの北海道育ちで、高校は地元では一番といわれている公立の進学校に入った。
北海道の高校受験はシンプルで、公立高校を1校、私立高校を1校受ける。当時の北海道の私立高校は、函館ラサールと札幌光星以外は公立よりレベルが低かったので、本命は公立1校、滑り止めで私立1校決めたら、あとは試験の本番一発勝負だった。推薦も一応あったが、公立で推薦がある学校が少なかった。光星はしらんけど、ラサールに推薦はなかった。
そんな環境で育った僕の長女がいま中学3年生。普通の公立中学校に行っているので、来春高校受験である。田舎もんだから東京の受験は全然わからん、と思っていたのだが、そうも言っていられない。ネットで色々調べたり、塾から教わったりして、ようやく仕組みが分かってきた。その驚愕のシステムが。
それは併願優遇というシステムである。
都立高校が本命の場合、中学校の内申点が基準点に達していて、「都立に落ちたらおたくに入りますよ」と約束しておけば、その私立高校の入学が確定するというものである。
親も同伴で「個別相談」を受けなければならないが、実際の手続きは中学校の先生がこそっと(?)やるので、レールに乗ってる感というか、密室談合というか囲い込みというか、タンパリング感というか、そんな雰囲気さえある。
昔の北海道の私立と違い、東京の私立高校は優秀な生徒を集めて鍛えるのに非常に熱心なように思える。実は僕も先日スーツを着て「個別相談」に行ってきたのだが、映画撮影に使われたりしてませんかと訊きたくなるような立派な体育館があったり、英語の授業が英語しか使えなかったり、職員室の前に相談コーナーと自習机があったりして、北海道の滑り止め用私立高校とは方向性が根本的に違っていた。合格がほぼ確約されている入学試験も形式的なものではなく、いい点を取れば普通クラス受験でも特進クラスへ入ることができるので頑張る甲斐がある。
特進クラスからは毎年結構な人数が早慶上理に入っている。最初から特進クラスの受験もできるが、優遇はないので落ちる可能性もある。併願優遇だと普通クラスへの入学が保証されていながら、結果が良ければ特進に入れる。そこで特進に入れなくても、入学後の成績が良ければ2年生になるときに特進に入れる。
いや~おいしいシステムだ。うちの子は都立が本命だが、親子して「別にここでもいいじゃん」という気になったし、その気にさせる学校説明会&個別相談会だった。都立に落ちた時でいいので、うちに来てください。絶対に損はさせませんから!!!という感じ。根本には商売があるんだろうけど、よく考えられたシステムとプロフェッショナリズムを感じた。もはやこれは滑り止めではない。
学費はすごい。私立大学理系でも、ここまで高くないだろうというくらい高い。だが、今は国と都からの補助がある。ありがとう政府。ありがとう東京都。おかげで僕の稼ぎでも娘をなんとか豪華設備の私立高校にやれそうです。1年目だけはちょっとかかるけど。
問題は、個別相談会以降、長女が気を緩めてしまっていることだ。頑張れば特進に入れるんだからとハッパをかけてはいるが…。