2017年3月29日00時57分朝日新聞
雪崩が発生した斜面の下で調査する消防関係者=28日午前11時10分、栃木県那須町、朝日新聞社ヘリから、堀英治撮影
栃木県那須町のスキー場付近で起きた雪崩事故で、圧死した高校生ら8人はゲレンデ脇の尾根上付近で雪崩の直撃を受けていたことが、生存者の証言や県教育委員会の説明でわかった。8人の班は集団の先頭を進んでおり、同じ班の生徒1人が意識不明という。後続の生徒らは手前の樹林帯の斜面で巻き込まれた。
県教委によると、高校生らは深い雪をかき分けて進むラッセル訓練中だった。県内の高校山岳部の男女40人と教員8人が参加。27日午前8時に那須温泉ファミリースキー場のふもとを出発し、学校別に5班に分かれてゲレンデ脇の樹林帯の斜面を登り始めた。
班ごとに別々のルートで1列に進み、先頭の1班には、前後の教員2人の間に県立大田原高校の男子生徒12人がいた。右後方から2班(真岡高、宇都宮高)が続き、さらに左後方から3班(矢板東高、那須清峰高)、4班(矢板中央高、宇都宮高)が登り始めた。女子だけの5班(真岡女子高、矢板東高)は斜面の下の方で待っていた。1班が登り始めて30分ほど進んだころに雪崩に襲われた。
後続の班にいた別の高校の男子生徒は「強い風が上から吹いてきたと思って身をかがめた瞬間、雪崩にのまれていた」と証言した。雪が全身に覆いかぶさり、一気に40~50メートルほど流されたという。胸まで埋まったが、自力で脱出した。樹木にぶつかるなどしてけがした生徒もいたという。
このとき、8人が死亡した先頭の1班は尾根上付近にいたという。「(斜面にいた)僕の方は雪が少なくて助かったが、(尾根上は)雪の量が多かったのではないかと思う」。山岳救助隊員によると、死亡した8人は尾根上の開けたくぼ地で雪に埋まっていた。
一方、国立研究開発法人「防災科学技術研究所」の職員らが28日、雪崩現場下方の雪面を調査し、深さ約30センチの場所に崩れやすい層(弱層)があったことを明らかにした。「その層がきっかけになって崩れたのではないか」という。
ラッセル訓練は県高校体育連盟主催の「春山安全登山講習会」の一環。講習会には県内7校の62人が3日間の日程で参加していた。
雪崩で生き埋めになった場合、遭難者の位置を知らせる発信器「ビーコン」が早期の発見に役立つが、生徒らは持っていなかったとみられるという。県教委の田代哲郎スポーツ振興課長は「雪崩の危険を予期していなかったため」と説明した。
28日は県警と消防などが現地に入り、ドローンを飛ばして雪崩の状況などを調べた。
生徒と教諭計8人が亡くなった大田原高校では、28日午後6時から山岳部員の保護者向け説明会が開かれた。説明会は非公開で、2時間以上続いた。生徒が登山講習会に参加していた矢板東、真岡女子、矢板中央の各高校も同日夜、生徒の保護者らを対象に説明会を開いた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます