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森羅万象 ~ 歩く印象派

やっぱりカネをもらっていた? 反論なしの大物記者たち

2010年09月10日 00時57分05秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2010年9月9日 08時00分
相場英雄,Business Media 誠

 8月、Business Medias誠にて、ジャーナリストの上杉隆氏、ノンフィクションライターの窪田順生氏と鼎談する機会を得た。官房機密費や記者クラブ問題などを通じ、日本のメディア界の暗部の一端をご紹介できたのではないかと筆者は自負している。

 ただ、大手マスコミの一角、老舗通信社に20年近く勤務した経験を持つ筆者でさえ知り得なかったネタも数多く出たことが強く印象に残っている。そのネタとは、ずばり大手メディア各社の政治部の暗部に他ならない。筆者の抱いた率直な印象は「やっぱり政治部はおかしいよ」だった。

●政治部のお偉方はブラックライターか?

 当コラム、あるいは先の鼎談でも触れたが、筆者は政治家と古いタイプの政治記者との間で金銭のやりとりが行われていたとの上杉氏の証言に仰天した。また、首相官邸の官房機密費からも記者対策費の名目で税金が記者に渡っていたことは、20年近く大手と呼ばれるメディアに所属していた筆者にも非常にショッキングなことだった。

 長年の記者経験に照らせば、鼎談中、上杉氏が触れた政治家、あるいは政治家秘書が記者や政治部の幹部クラスに現金を渡していたという言葉に嘘や誇張は全くないと断言できる。

 筆者自身、長年の経済部勤務で企業の広報対策の一環として、接待を受けた身である。キレイごとを言える身ではないし、欧米メディアの厳格なルールに照らせば、記者失格かもしれない。ただ、広報に接待されたあとは、必ず自腹で返礼し、バランスを取ってきた。日本流の企業とメディアの取材態勢の慣例を無視すれば、ほぼすべての取材ができなくなるためだ。

 過剰接待をちらつかせる企業も少なくなかったが、これらはきっぱりと断わってきた自負がある。まして、現金の授受などもってのほかであり、他の経済部記者、あるいは社会部記者も同様だ。

 鼎談中に知ったことだが、小泉政権からは官房機密費が記者対策に用いられることはほとんどなくなったという。筆者の元同僚、あるいは他社の政治部の知った顔を思い起こすと、政治家、あるいは秘書連、もしくは官房機密費によって“ズブズブ”にされた政治部の面々の大多数は、現在それぞれの社で相当な幹部に登りつめている。

 筆者が現役記者だったころは、企業のスキャンダルや経営陣の下ネタを握り、これをねだりのタネにし、金銭の授受で記事をボツにする“ブラック”なフリー記者、ライターが多数存在した。官房機密費あるいは政治家から提供されるお小遣いをもらった人達は、ブラックなライターとなんら変わらないというのが筆者の見方だ。…

 永田町にたかってきた彼らが社の上層部、あるいは経営陣が居座る限り、一般の読者は大手マスコミへの不信感を払拭させることはないだろう。

●企業存続のリスクに発展も

 「アイツを黙らせろ」――。

 鼎談記事が掲載され、複数の元同僚から「古巣の幹部が怒っている」という話を聞かされた。筆者が個人的に記しているブログにも古巣のアクセスログが大量に残されるといった事象が顕在化した。

 ただ、表立って筆者やBusiness Media 誠編集部に対する抗議はなかった。仮に今後も抗議がなければ、改めて言うまでもないが、各メディアの政治部上層部、あるいは政治部出身の経営陣の皆様方はズブズブだった、と筆者は判断する。当コラムの読者も同様の見方をするだろう。

 実は、鼎談が掲載されて以降、複数の古巣の同僚、あるいは他社の記者から励ましの言葉やメッセージをいただいた。その大半は「よく言った」、「もっとやれ」だった。政治家、あるいは税金である官房機密費から不透明なカネを受け取った一部の記者たちにより、世間からいらぬ批判を浴びている真面目な記者たちに他ならない。

 Twitterのタイムラインをのぞいていると、官房機密費問題に端を発したマスコミ不信は、着実に増幅している。筆者が大手マスコミ出身者として改めて強調したいのは、金銭の授受を受けた記者は古いタイプのごく一部の政治部出身者ばかりであり、他の記者は日夜ネタ探しに奔走し、ネタの裏取りに駆け回っているということだ。メディアのビジネスモデルが崩壊しつつある現在も、1人1人が問題意識を持ち、懸命に取材を続けている。

 世界的な不況による広告費の激減、購買数や視聴率の落ち込みで大手マスコミは尻すぼみの状態が続いている。一部のズブズブだった記者たちのために、メディア界全体が沈むようなことがあってはならない。




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