映画の話でコーヒーブレイク

映画の話を中心に、TVドラマや旅行の話などを綴ります

告発のとき

2008-07-12 | 映画 か行
今月1日、前回の「歩いても、歩いても」と二本立てでチネチッタ川崎にて鑑賞。

監督のポール・ハギスは
「ミリオンダラー・ベイビー」「007カジノ・ロワイアル」「父親たちの星条旗」の脚本家にして、
アカデミー賞作品賞に輝いた「クラッシュ」が初監督作品ですって(もちろん脚本も)!
そして本作が監督第2作目。すんごいな~

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     告発のとき  IN THE VALLEY OF ELAH

?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!

< ストーリー >
国旗に始まり、国旗に終わった。
イラク帰還兵の息子が失跡したとの電話。
彼を捜す元軍人の父(トミー・リー・ジョーンズ)と自宅で連絡を待つ母(スーザン・サランドン)。
息子は無残な姿で発見され、父は地元刑事(シャーリーズ・セロン)と共に犯人捜しに奔走する。
犯人は?何故息子は殺されたのか?そしてそこから見えたものは・・・


映画を含め、欧米の文化を理解するにはキリスト教の知識が不可欠ですね。
クリスチャンじゃないし・・・難しい。

この映画の原題は「In The Valley of Elha エラの谷で」。
イスラエル王国の歴史を記した旧約聖書のサムエル記で
東から入ってきたイスラエル軍と西から入ってきたペリシテ軍が
真正面から衝突することになった場所がエラの谷(エルサレムの南西約20KM)。
ここはイスラエルの観光ルートに入っているようですね。
    

イスラエル兵達が尻込みする中、幼い羊飼いダビデが志願し、ぺリシテ人の代表戦士大男のゴリアテと戦う。
手には一本の杖(信仰)と5つの石(勇気)と石投げ(パチンコ)。
額に石を当て、見事ゴリアテを倒す。
ダビデ・・・そうミケランジェロの彫刻で有名ですよね。
ちなみに彼の瞳はです。

映画の中ではトミー・リーがシングルマザー刑事の息子デビッドに、ダビデの逸話を話して聞かせる。
(デビッドってダビデの英語読みですね!)
勝てそうにない大きなものに、あきらめず、勇気を持って果敢に、自分を信じて立ち向かえという教えのようです。



無事にイラクから帰還したはずの息子に一体何が起きたのか?
失踪後、何箇所も刺された挙句焼き捨てられた無残な息子の遺体。
優秀な軍警察官だった父が自ら捜査に乗り出す。

この家族は軍人一家。
父は引退しても軍隊式ベッドメーキングや手荷物管理を行ない、息子二人をも軍人にした筋金入り。
自分が長年所属した軍を信頼し、国家のために働くことを誇りにしている。
長男は既に戦死。

ベット・ミドラーが戦地を慰問する歌手を演じた「サンキュー・ボーイズ」で、
第二次世界大戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争での兵士の規律や人間性が徐々に悪くなっていくのを感じたが、
アフガンやイラクではもっとひどいことになっているのか・・・と気が重くなる。
父は、イラクでの状況が自分の知るものとは違うという、時代の流れにも気付いてはいなかった。

徐々に浮かび上がってくる衝撃の事実。
調べを進めていくうちに、思いもよらなかった、自分の知らない残酷な息子の姿を知り愕然とする父。
息子が戦地からかけてきた電話、
泣きながら「もうだめだ、帰りたい」という息子を突っぱねた父。
あの時はまだ自分の知っている正気で優しい息子だったのに・・・



戦闘のなかで心をすり減らし、恐怖と自己嫌悪の日々のなか、
鈍感にならなければやっていけない極限の狂気と絶望が描かれる。

それは息子一人がおかしかったわけではなく、
一見普通に見えるが、理由らしい理由もなく仲間を殺し無残に遺体を焼き捨てた同僚たちも、
犬を殺し、同様に妻を溺死させた別の帰還兵も同じだ。
みんなどこか壊れてしまっている。

昔から、戦争でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、
別人のようになってしまう小説やドラマは多い。
ただこの映画は2004年プレイボーイ誌に「DEATH AND DISHONOR 死と不名誉」というタイトルで
掲載された事実をもとに作られているという点で、迫ってくるものが大きい。

勝てそうにない大きなものに、勇気を持って、自分を信じて立ち向かえという「エラの谷の教え」は
もはや通用しない。

上下を逆にした国旗を掲げるのは国家が困難に直面している印とか。
映画の冒頭、間違って掲げていた旗を正した主人公が、最後に意図的に逆にするシーンが切ない。

軍隊一筋の夫の影響で息子2人を失った母サランドンの悲しみは深いなぁ。

シャーリーズ・セロンはすっぴん?かと思うほど飾らず、
セクハラと戦いながら息子を育てるシングルマザー刑事を好演。
青あざつくって、鼻にはバンドエイド、でもやっぱり美しい。


  *おまけ*

出演シーンは短いけれど、あらっと思う俳優さんがあちこちに。

★ジェームス・フランコ・・・スパイダーマンの親友ハリー役
★ジェーソン・パトリック・・・スピード2でサンドラ・ブロックの恋人役
★ジョシュ・ブローリン・・・「ノーカントリー」で殺し屋に追っかけられてました



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 ***** 今週 見た 映画 *****

 7月 7日 「バーバー 吉野」 DVD

 7月 8日 「トランスフォーマー」DVD

       「エシュロン 対NSA網 侵入作戦」DVD 

 7月12日 「長江哀歌 STILL LIFE」DVD