以前「王様と私」を取り上げたとき、
ユル・ブリンナーといえば、やっぱり「荒野の七人」だろうと、昔なつかし~い映画をDVDにて鑑賞。
原題は「マグニフィセント・セブン The Magnificent Seven」だったんだ。
「素晴らしい7人」「堂々とした7人」「素敵な7人」、な~んか締まんないなあ。
やっぱり「荒野の7人」ってタイトルはナイス
ん?、最近の「ファンタスティック・フォー The Fantastic Four」の題名と似てる~。
しか~しその前に、やはりオリジナルである黒澤明の「七人の侍」を見ないわけにはまいりません。
*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!
七人の侍 (1954) と 荒野の七人 (1960)
*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!
おいおい、今さら黒澤って・・・常識だろ、見てなかったのかよ!?のお叱りを受けそう
子供の頃、父親と一緒に多くの黒澤作品も、「荒野の七人」も見た記憶があるのですが、
忘却のかなたへ~。
という訳で、もう一度しっかり鑑賞してみました。
黒澤監督も三船敏郎も、晩年の記憶しかなく、
今流行の「3の倍数にこだわるお笑い芸人(結構好きですが…)」じゃあないですが、
お二人の名前の前に必ず付く枕詞「世界の」というフレーズに少々違和感を覚え、
なんとなく敬遠しておりました。
三船は「男は黙って****ビール」のキャッチフレーズ(古い~)通り、
戦争映画では寡黙な役が多かったように思います。
こんなにひょうきんな役を演じる人だったんだとちょっと、いえ、かなりびっくりです。
とんでもない誤解でした
「七人の侍」のなんと面白かったこと!
「荒野の…」は80%リメイクではありますが、決定的な違いがあります。
<ストーリー>
戦国時代の貧しい農村。収穫期が近づくと盗賊と化した野武士に襲われる。
次に襲われたら飢え死にするしかないという追い詰められた状況で、
野武士に立ち向かうべく侍たちを雇うことを思いつく。
7人の侍の指導を受け恐怖におののきながら立ち上がる百姓たち、壮絶な戦いが始まる。
4つの点から比べてみました。
<1、農民の貧困度>
オリジナルの百姓は本当に食うや食わずのぎりぎり、着ているものもボロボロで
崖っぷち、
次回襲われたらもう飢え死にしかないという状況で、浪人を雇わざるをえない必然性がある。
一方、メキシコの農民はといえばそんなに困っている風には見えません。
服装もきれいだし・・・
と思ったら、1954年制作ゲーリー・クーパー、バート・ランカスター主演の「ベラクルス」でのメキシコの描かれ方がひどいということで、メキシコ政府の検査官が入って厳しくチェック、「汚れた服などまかりならん」ということになってしまったらしい。
<2、助けを求める村落の地理>
日本の村は山に囲まれた盆地。村へ入る道は限られ、立地にあわせて戦略を練る。
メキシコはだだっ広い平原の村。
これじゃ、戦略もなにもあったもんじゃないです。見晴らし良すぎて隠れる所あらへんよ~。
<3、七人の盗賊との戦い方>
勿論2で述べた地理的な違いが関係するのですが、
日本の方はどこから襲ってくるか、どのように対抗するかについて兵法に則った戦略を練り、
農民を動員して堀や罠を作る。
村での決戦を前に、敵の陣を襲いダメージを与え野武士の人数を把握。
決戦時、一人づつ倒した野武士を数えていく。
志村喬演じるリーダー島田勘兵衛の緻密な戦術に説得力がある。
メキシコのだだっ広い村でどうやって策を練るのかと思ったが、戦いにこれといった戦略はない。
敵の頭目と直接会って会話、挙句に村人には裏切られ一度は撤退を決めるが、再度戻って戦う。
「七人の侍」は戦国時代の日本。
百姓も侍(浪人たち)も生きるのに精一杯なのは同じ。
農民は弱く、ただただ搾取されるばかりかと思っていたら・・・
落ち武者を狩って取った武具や鎧が見つかり、負けてばかりでないこともわかる。
雇った侍に米を食べさせ、自分達は粟やひえしか食べていないのかと思えば、あに図らんや!
床下に食料や酒を隠し、いざという時に取って置きを出す。
百姓の出ながら百姓に嫌気がさし侍に憧れる三船演じる菊千代が、農民のしたたかさを暴露する。
<4、エンディング>
決戦で野武士を撃退し生き残った3人の侍たちが村を去る時、
農民達は戦などなかったかのように楽しげに歌いながら田植えをする姿を見て、
リーダーの勘兵衛が「勝ったのは百姓だ、俺たちは又負け戦だ」と言う。
この一言に、一見弱く見える農民こそが、したたかに、逞しく生きていることと、流浪の侍のはかなさが表されて切ない。
「荒野の七人」では、助けてもらった村の長老が同じ台詞である「百姓の勝利だ」と言い、ガンマンたちが納得する。
え~、それじゃ~あっか~んでしょうが・・・。長老が言ってどうすんのよ!
やっぱりアメリカ映画のエンディングはハッピー
生き残ったチコは村娘と結ばれ村に残る。
一方、津島恵子さん演じる村娘は、恋仲になった若侍木村功に一瞥をくれ田植えに参加。
侍と農民では結ばれないということを承知している。
この映画にそんなハッピーエンドなんかいりません。
黒澤監督は風と雨がお好きです。
迫力を出す為に、雨には墨汁を混ぜたそうです。やっぱりこの映画はモノクロですね。
敬愛するジョン・フォード監督にも「君は本当に雨が好きだね」と言われたそうです。
当時志村喬は49歳、三船は34歳。
他の侍や百姓たちを演じる役者さんたちも、
子供の頃見ていたTVドラマの常連ばかりで懐かしい~、お若~い。
映画の中で、まぁ~皆さん走る走る本当によく走る。
最近40歳の織田裕二主演で「椿三十郎」がリメイクされたけれど、
この貫禄、落ち着きの違いは何でしょう?
昔の俳優が老けていたのか、今の俳優が若く見えるのか?
織田祐二が頑張っているのはわかるんだけど、
三船(当時42歳)の「椿三十郎」を見た者にとっては、貫禄不足は否めません。
「荒野の七人」は元々アンソニー・クインが映画化しようと、ユル・ブリンナーに声をかけたそうですが、
二転三転、訴訟にまで発展し敗訴となり出演には至りませんでした。
当時、後々有名になる俳優ばかり、良くぞこれだけ集まったものだと感心してしまいます。
スティーブ・マックイーン(大脱走、華麗なる賭け、ゲッタウェイ)
ジェームス・コバーン(大脱走、電撃フリントGO・GO作戦、シャレード)
ロバート・ボーン(0011ナポレオン・ソロ、NHK BS TVシリーズ華麗なるペテン師:お元気です~)
チャールズ・ブロンソン(大脱走、マンダムのCM)
ホルスト・ブッフフォルツ(美しき青きドナウ、ライフ・イズ・ビューティフル)などなど。
盗賊のボスを演じたイーライ・ウォーラックは80歳を超え、昨年「ホリディ」に出演し今もお元気です。
当初アメリカでは当たらず、ヨーロッパで大ヒットとなり凱旋公開でヒット、
続篇は3つ、TVシリーズもあり、
1973年のSF映画「ウエストワールド」ではユル・ブリナーがそのままの扮装で
ロボットのガンマンを演じておりました。
「荒野の七人」は「七人の侍」に遠く及ばず、
黒澤監督、素晴らしい~
これからは、不定期に黒澤作品再発見と参ります。
「世界の~」じゃなくて「次回の~黒澤」は「生きる」です。
「最高の人生の見つけ方」はとっても楽天的・アメリカ的でよかったけれど、
「生きる」も・・・凄くいい~
ユル・ブリンナーといえば、やっぱり「荒野の七人」だろうと、昔なつかし~い映画をDVDにて鑑賞。
原題は「マグニフィセント・セブン The Magnificent Seven」だったんだ。
「素晴らしい7人」「堂々とした7人」「素敵な7人」、な~んか締まんないなあ。
やっぱり「荒野の7人」ってタイトルはナイス
ん?、最近の「ファンタスティック・フォー The Fantastic Four」の題名と似てる~。
しか~しその前に、やはりオリジナルである黒澤明の「七人の侍」を見ないわけにはまいりません。
*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!
七人の侍 (1954) と 荒野の七人 (1960)
*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!*!
おいおい、今さら黒澤って・・・常識だろ、見てなかったのかよ!?のお叱りを受けそう
子供の頃、父親と一緒に多くの黒澤作品も、「荒野の七人」も見た記憶があるのですが、
忘却のかなたへ~。
という訳で、もう一度しっかり鑑賞してみました。
黒澤監督も三船敏郎も、晩年の記憶しかなく、
今流行の「3の倍数にこだわるお笑い芸人(結構好きですが…)」じゃあないですが、
お二人の名前の前に必ず付く枕詞「世界の」というフレーズに少々違和感を覚え、
なんとなく敬遠しておりました。
三船は「男は黙って****ビール」のキャッチフレーズ(古い~)通り、
戦争映画では寡黙な役が多かったように思います。
こんなにひょうきんな役を演じる人だったんだとちょっと、いえ、かなりびっくりです。
とんでもない誤解でした
「七人の侍」のなんと面白かったこと!
「荒野の…」は80%リメイクではありますが、決定的な違いがあります。
<ストーリー>
戦国時代の貧しい農村。収穫期が近づくと盗賊と化した野武士に襲われる。
次に襲われたら飢え死にするしかないという追い詰められた状況で、
野武士に立ち向かうべく侍たちを雇うことを思いつく。
7人の侍の指導を受け恐怖におののきながら立ち上がる百姓たち、壮絶な戦いが始まる。
4つの点から比べてみました。
<1、農民の貧困度>
オリジナルの百姓は本当に食うや食わずのぎりぎり、着ているものもボロボロで
崖っぷち、
次回襲われたらもう飢え死にしかないという状況で、浪人を雇わざるをえない必然性がある。
一方、メキシコの農民はといえばそんなに困っている風には見えません。
服装もきれいだし・・・
と思ったら、1954年制作ゲーリー・クーパー、バート・ランカスター主演の「ベラクルス」でのメキシコの描かれ方がひどいということで、メキシコ政府の検査官が入って厳しくチェック、「汚れた服などまかりならん」ということになってしまったらしい。
<2、助けを求める村落の地理>
日本の村は山に囲まれた盆地。村へ入る道は限られ、立地にあわせて戦略を練る。
メキシコはだだっ広い平原の村。
これじゃ、戦略もなにもあったもんじゃないです。見晴らし良すぎて隠れる所あらへんよ~。
<3、七人の盗賊との戦い方>
勿論2で述べた地理的な違いが関係するのですが、
日本の方はどこから襲ってくるか、どのように対抗するかについて兵法に則った戦略を練り、
農民を動員して堀や罠を作る。
村での決戦を前に、敵の陣を襲いダメージを与え野武士の人数を把握。
決戦時、一人づつ倒した野武士を数えていく。
志村喬演じるリーダー島田勘兵衛の緻密な戦術に説得力がある。
メキシコのだだっ広い村でどうやって策を練るのかと思ったが、戦いにこれといった戦略はない。
敵の頭目と直接会って会話、挙句に村人には裏切られ一度は撤退を決めるが、再度戻って戦う。
「七人の侍」は戦国時代の日本。
百姓も侍(浪人たち)も生きるのに精一杯なのは同じ。
農民は弱く、ただただ搾取されるばかりかと思っていたら・・・
落ち武者を狩って取った武具や鎧が見つかり、負けてばかりでないこともわかる。
雇った侍に米を食べさせ、自分達は粟やひえしか食べていないのかと思えば、あに図らんや!
床下に食料や酒を隠し、いざという時に取って置きを出す。
百姓の出ながら百姓に嫌気がさし侍に憧れる三船演じる菊千代が、農民のしたたかさを暴露する。
<4、エンディング>
決戦で野武士を撃退し生き残った3人の侍たちが村を去る時、
農民達は戦などなかったかのように楽しげに歌いながら田植えをする姿を見て、
リーダーの勘兵衛が「勝ったのは百姓だ、俺たちは又負け戦だ」と言う。
この一言に、一見弱く見える農民こそが、したたかに、逞しく生きていることと、流浪の侍のはかなさが表されて切ない。
「荒野の七人」では、助けてもらった村の長老が同じ台詞である「百姓の勝利だ」と言い、ガンマンたちが納得する。
え~、それじゃ~あっか~んでしょうが・・・。長老が言ってどうすんのよ!
やっぱりアメリカ映画のエンディングはハッピー
生き残ったチコは村娘と結ばれ村に残る。
一方、津島恵子さん演じる村娘は、恋仲になった若侍木村功に一瞥をくれ田植えに参加。
侍と農民では結ばれないということを承知している。
この映画にそんなハッピーエンドなんかいりません。
黒澤監督は風と雨がお好きです。
迫力を出す為に、雨には墨汁を混ぜたそうです。やっぱりこの映画はモノクロですね。
敬愛するジョン・フォード監督にも「君は本当に雨が好きだね」と言われたそうです。
当時志村喬は49歳、三船は34歳。
他の侍や百姓たちを演じる役者さんたちも、
子供の頃見ていたTVドラマの常連ばかりで懐かしい~、お若~い。
映画の中で、まぁ~皆さん走る走る本当によく走る。
最近40歳の織田裕二主演で「椿三十郎」がリメイクされたけれど、
この貫禄、落ち着きの違いは何でしょう?
昔の俳優が老けていたのか、今の俳優が若く見えるのか?
織田祐二が頑張っているのはわかるんだけど、
三船(当時42歳)の「椿三十郎」を見た者にとっては、貫禄不足は否めません。
「荒野の七人」は元々アンソニー・クインが映画化しようと、ユル・ブリンナーに声をかけたそうですが、
二転三転、訴訟にまで発展し敗訴となり出演には至りませんでした。
当時、後々有名になる俳優ばかり、良くぞこれだけ集まったものだと感心してしまいます。
スティーブ・マックイーン(大脱走、華麗なる賭け、ゲッタウェイ)
ジェームス・コバーン(大脱走、電撃フリントGO・GO作戦、シャレード)
ロバート・ボーン(0011ナポレオン・ソロ、NHK BS TVシリーズ華麗なるペテン師:お元気です~)
チャールズ・ブロンソン(大脱走、マンダムのCM)
ホルスト・ブッフフォルツ(美しき青きドナウ、ライフ・イズ・ビューティフル)などなど。
盗賊のボスを演じたイーライ・ウォーラックは80歳を超え、昨年「ホリディ」に出演し今もお元気です。
当初アメリカでは当たらず、ヨーロッパで大ヒットとなり凱旋公開でヒット、
続篇は3つ、TVシリーズもあり、
1973年のSF映画「ウエストワールド」ではユル・ブリナーがそのままの扮装で
ロボットのガンマンを演じておりました。
「荒野の七人」は「七人の侍」に遠く及ばず、
黒澤監督、素晴らしい~
これからは、不定期に黒澤作品再発見と参ります。
「世界の~」じゃなくて「次回の~黒澤」は「生きる」です。
「最高の人生の見つけ方」はとっても楽天的・アメリカ的でよかったけれど、
「生きる」も・・・凄くいい~