奥田英朗『邪魔』(講談社、2001年)
こういう小説を何と呼ぶのだろうか?犯罪小説?刑事小説?たしかに放火という犯罪がきっかけになって物語が進行していくし、主人公の一人は刑事で、警察の人間が主人公としてたくさん登場してくる。だが、人間には、いざとなってみなければ分からないところがある、人間には隠れた本性があるというような意味で、人間とはなにか、人生とはなにかということを問いかけてくる小説だと思う。
それほど長くはない章ごとにまったく異なった場面が描かれるという形式をとり、とくに最初の数章では登場人物たちの提示という意味もあるので、普通は場面ががらっと変わった時に、その世界に入っていきにくいということが多いのだが、この小説はその点では作家の筆の力が相当なもののようで、じつに読みやすい。すーと小説の世界のなかに入っていくことができた。
東京郊外の本城市のハイテックスという会社の本城支店の倉庫が火事になり、宿直をしていた及川茂則がやけどをおい入院するが、じつは商品の横流しで金を得るという横領をもみ消すために及川がやったことだったのだが、この会社と裏取引のある暴力団清和会によるもの警察は勘違いし、捜査は難航するが、第一発見者である及川が怪しいということが分かる。及川はしつこい行確に音を上げて、自首しそうなところまでいくのだが、妻の恭子が...。
及川の妻恭子はひょんなことから夫が犯人ではないかと気づくのだが、その不安に耐えられず、パート問題に首をつっこんでいき、仲間たちとパートとして働いているスーパ相手の運動にのめりこんでいく。社長相手に有給休暇を要求したり、店のまえで仲間たちと宣伝活動をしたり、ハンドマイクをもって客に訴えたりと、それまでの自分には思いもつかない行動にうってでる。そして最後には、子どもたちを守りたい一心で、肝っ玉がすわり、夫の火事が愉快犯の仕業だと思わせようと、自分が放火をしにでかけるところまでいき、その挙句、止めようとした九野を包丁で刺してしまう。
幸せな家庭生活のなかではとても想像できなかったような自分が、状況が変われば、出てくること、そしてそういう状況は偶然に起こることで、そういう意味で人生は偶然に左右されるものだという、ある意味よく言われるような人生観を描いているとも言えるのだが、予想を裏切る展開が二度・三度あり、夢中になって読んでいけるが、なんだが読後に寂しくなるような作品でもある。
この作家の他の作品も読んでみたいと思う。
こういう小説を何と呼ぶのだろうか?犯罪小説?刑事小説?たしかに放火という犯罪がきっかけになって物語が進行していくし、主人公の一人は刑事で、警察の人間が主人公としてたくさん登場してくる。だが、人間には、いざとなってみなければ分からないところがある、人間には隠れた本性があるというような意味で、人間とはなにか、人生とはなにかということを問いかけてくる小説だと思う。
それほど長くはない章ごとにまったく異なった場面が描かれるという形式をとり、とくに最初の数章では登場人物たちの提示という意味もあるので、普通は場面ががらっと変わった時に、その世界に入っていきにくいということが多いのだが、この小説はその点では作家の筆の力が相当なもののようで、じつに読みやすい。すーと小説の世界のなかに入っていくことができた。
東京郊外の本城市のハイテックスという会社の本城支店の倉庫が火事になり、宿直をしていた及川茂則がやけどをおい入院するが、じつは商品の横流しで金を得るという横領をもみ消すために及川がやったことだったのだが、この会社と裏取引のある暴力団清和会によるもの警察は勘違いし、捜査は難航するが、第一発見者である及川が怪しいということが分かる。及川はしつこい行確に音を上げて、自首しそうなところまでいくのだが、妻の恭子が...。
及川の妻恭子はひょんなことから夫が犯人ではないかと気づくのだが、その不安に耐えられず、パート問題に首をつっこんでいき、仲間たちとパートとして働いているスーパ相手の運動にのめりこんでいく。社長相手に有給休暇を要求したり、店のまえで仲間たちと宣伝活動をしたり、ハンドマイクをもって客に訴えたりと、それまでの自分には思いもつかない行動にうってでる。そして最後には、子どもたちを守りたい一心で、肝っ玉がすわり、夫の火事が愉快犯の仕業だと思わせようと、自分が放火をしにでかけるところまでいき、その挙句、止めようとした九野を包丁で刺してしまう。
幸せな家庭生活のなかではとても想像できなかったような自分が、状況が変われば、出てくること、そしてそういう状況は偶然に起こることで、そういう意味で人生は偶然に左右されるものだという、ある意味よく言われるような人生観を描いているとも言えるのだが、予想を裏切る展開が二度・三度あり、夢中になって読んでいけるが、なんだが読後に寂しくなるような作品でもある。
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