読書な日々

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『女帝 小池百合子』

2022年04月19日 | 作家ア行
石井妙子『女帝 小池百合子』(文藝春秋、2020年)

2020年の6月に書いた石井妙子の『原節子の真実』でも、本当は『女帝 小池百合子』を読みたかったのだが、と書いているように、著者のインタビュー記事を読んで、この本に多大な関心を持っていたのだが、いつの間にか忘れていた。それがこの間図書館に行ったら、返却コーナーでばったり遭遇した。最近は返却コーナーで掘り出し物によく遭遇する。

『原節子の真実』についての感想はこちら

前置きはこれくらいにして、感想を一言で言うなら、「こんな人間を日本のトップの政治家、ましてや東京都知事なんかにしておいてはいけない」ということになる。

学歴詐欺。ろくにアラビア語も学習せず、大学に通わず、超難しいことで知られるカイロ大学を卒業したと、卒業証書と卒業証明書を数回チラ見させただけで言い張る。学歴詐称なんか簡単に明らかにできると思うかもしれないが、この本を読むと、軍部が支配するエジプトに日本からもODAなどで多額の援助金が入っていることを考えると、ほとんど立証不可能だと言う。

嘘八百。表向には弱者救済を言いながら、実際の弱者の前では弱者を冷たく突き放す。表向きの姿しかマスコミは追わない。実際の弱者(少数者)や彼らと為政者のやり取りの真実など、華やかさに欠けるとでもいうように、マスコミは見向きもしない。だから真実の姿は表に出てこない。関係者の世界だけのうわさ話で終わってしまう。

権力者へのすり寄り。次々と蜜を求めて権力者に近づいていき、篭絡する。政治的信念も信条も皆無で、あるのは権力によって自分を輝かせたいという願望だけ。小沢も小泉も安倍も、自分を利用しただけと知って初めて彼女の真実が分かったという。でも、それは政治家というものが多かれ少なかれ持っている資質と思われてしまう。

この本は、小池百合子という闇の世界を明るみに出したという点で大きな意義を持つが、それだけではなく、彼女が追い続けた権力の姿も描いてくれているので、1980年代から現在までの、非常にわかりやすく、かつ本質をついた日本政治史にもなっているという意味でも、重要である。

そしてこんな「怪物」を作り出したマスコミの責任も問われなければならないと思う。Youtubeやネットメディアの創生によって、テレビなどの比重が相対的に落ちているとはいえ、いまだにテレビで言っていることは真実だとみんな思っているだろう。決してそうではないということがもっと語られなければならない。

とにかく、もうこれ以上「怪物」を権力に近づけてはいけない。日本政治の危機は、この「怪物」にとっては格好の餌食なのだ。

ここまで真実を書ききってくれた著者に敬意を評したい。著者の身に何事も起きないことを祈っている。

この本のアマゾンのサイトへはこちらをクリック

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