読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『ミチクサ先生』

2022年01月19日 | 作家ア行
伊集院静『ミチクサ先生』(講談社、2021年)



図書館で予約をしていたのだが、順番がなかなか回ってこないので、ついに買ってしまった。

夏目漱石といえば、私もほとんどの大作は読んでいるし、文庫本でうちにもある。世には山ほどの評論も書かれている作家だ。

漱石の個人的なことといえば、新潮日本文学アルバムの『夏目漱石』を読んでしるくらいの知識しかないが、どんな人間だったのか、何に悩み、何を好み、家庭内ではどうだったのかというようなことは、やはりわかりにくかった。

どうしても大作家となってからの(とくに洋行帰りからの)姿から子供時代や青春時代を見てしまうので、ジジくさい感じにしか見ていなかったが、この小説では、みずみずしい金之助が描かれている。

とくに、夏目家が名主であったことや、養子に出された塩原家もそれなりの家系であったこと、小さい頃から寄席に通っていて、顔パスだったとか、小さい頃から書画骨董に触れていてこちらの趣味が美的感覚を養ったこと、長兄の大助が漱石に大きな影響を与えたこと、妻の鏡子との関係が仲睦まじいものであったこと、などが、この小説を読むことで得られた新しい漱石像を作ってくれそうである。

エピソードなんかもかなり具体的描かれている場合が多く、日記とか手紙なんかをしっかりと調べたうえで書いているのだろうなと想像される。

なかなかいい小説だった。

『明暗』についての私の感想

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