読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『泣きかたをわすれていた』

2022年06月01日 | 作家ア行
落合恵子『泣きかたをわすれていた』(河出書房新社、2018年)



ウィキペディアなどを見てもよくわからないのだが、たぶん落合恵子が母親を7年くらいにわたって介護し、最後を看取ったという実際の経験を小説風に書いたものだと思われる。

実際の経験だとしてたぶん著者が55歳からの7年くらいの長期にわたる介護、しかも母親は認知症で自分の世話が何一つできない状態。

作中にも出てくるが、なぜ施設に預けないの?あなたの日頃の主張と違うじゃないの?というフェミニストからの詰問に、あなたはあなた、私は私と言って答えているが、実際には、母親が暴れてベッドから落ちたために拘束され睡眠剤を注射されたことがきっかけになっているように書かれていて、それはそれで納得する。そんなときにフェミニズムも何もないでしょうと私も思う。

ただ、この母親が自分の母親を看取った後に言った「ひと仕事した」というのと同じ思いが著者にあったのかなかったのか、たいてはあっただろうと私は思う。それでなければこんな小説を書いたりはしない。

自分の親の介護を政治は押し付けてくるくせに、社会的にまったく認知されない仕事をやり終えた人は、やはりよくやったと言ってもらいたいのだ。私には当然の承認要求だと思う。

ここにもよく書いているが私にも90歳を超える母親が地方で一人暮らしをしている。年に数回様子を見に行ったときに、一緒に散歩をしていると、向こうから一人でやってきた見ず知らずの男性が突然話しかけてきて「自分も仕事を辞めて、母親を看取った。あなたがそうやって母親の世話をしてあげるのはいいことだ」というような内容のことをひとしきり喋って立ち去っていったことがあったが、その人も同じだろう。ましてや仕事を辞めたというのだから、その人が今後どうやって暮らしているのか、こちらが心配になる。そんな時、「よく自宅で介護してくれました、その御礼に、あなたの面倒は政治が看ましょう」なんてことは政府はしてくれない。

私自身、もし母親が一人暮らしができなくなった時のことを考えて、サービス付き高齢者住宅などを市内で探している。地方でも最低で月に14・5万円は必要になる。上を見ればキリがない。

夏の参議院選挙に介護問題を争点にすべきと声を上げた人がいるが、当然のことだろう。こちら

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