読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『韓国カルチャー』

2022年06月05日 | 評論
伊藤順子『韓国カルチャー』(集英社新書、2022年)



映画の話をしながら、ネタバレしないように、映画のバックにある韓国社会のことや文化のことを解説した本で、見ていない映画も、いったんそれを離れて、読める。

私が見たことがある映画でいえば『82年生まれ、キム・ジヨン』『JSA』『タクシー運転手 約束は海を超えて』『SKYキャッスル』だけなので、普通なら、読んでもわけがわからなくて面白くないはずだが、そうでもなかった。

ただほぼ毎日韓国ドラマを見ているので、この本で取り上げられている韓国社会の諸問題については興味深く読めた。

いわゆる上流社会が頻繁に描かれるが、韓国では、李朝朝鮮の階級はいったん完全に解消されたから、現在の財閥はすべてそれ以降、とくに戦後のものであるという。現代やサムスンなどがそれにあたる。日本のように財閥解体といっても、実質上江戸時代からの三井だとか三菱なんかが残っているのとは違う。

それに政治的にも李朝とは完全に手を切ったので、そうした遺物はない。日本のように天皇制もないから、タブーのようなものがない。

ただたくさん韓国ドラマを見ていると分かってくることがあって、李朝朝鮮時代の宮廷での権力闘争―たいていは時期国王の継承をめぐる、王族内での親子や兄弟間、その周りにいる貴族や王族たちの血みどろの権力争いと同じ構図が、財閥の後継者争いにも描かれているということだ。

たとえば今見ている『復讐せよ』というドラマでもSB生命という財閥の会長であるキム会長とその娘のテオンが殺し合いをするというもの。本当にそんなことがあるのかどうかと思うのだが。

話は変わって「オッパ」という呼び方のいろんな意味、なんとなく感じていたことをわかりやすく説明してくれているので、勉強になった。韓国の男性にとって「オッパ」は日本語にはない男心をそそる言葉みたい。

似ているようで似ていない、似ていないようで似ている韓国社会、面白い。

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