超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

STAn「STAn」 全曲レビュー

2011-03-07 23:12:54 | 音楽(全曲レビュー)





立て続けに全曲レビューです。今回はSTAnの「STAn」です。インディーズ出戻り作。




気がつけば新作音源としては2年半ぶり?ライブアルバムを除けば、ですが。
そんな長いタームが空いた末に出たミニアルバムだったんで
喜びもひとしおというか
この痛快さも懐かしい、的な。やっぱり彼らのロックは確実に必要だ、と強く感じた次第。
同時にこれもっと話題になってもいいだろ
もっと直接的な言い方すると売れてもいいだろ、って。絶対に気持ち良いのになあ。
またライブも相当に良いので、そっちでも薦めたいって思います。
フットワークは軽いんだけど、突き刺さってくる言葉は重いです。刺激的です。





1.After all

めちゃくちゃ痛快なロック・ナンバー。
もうリフとメロだけで踊れちゃうシンプルなロックの楽しさが詰まってる曲。
と、同時に歌詞もまた痛快で
これって実は普段自分らが思ってることを正々堂々と言ってくれてる、みたいな。
誰だってこういう不遜な一面はあると思います。
それを出すか出さないか。
言うか言わないか。
kygの辞書の中に「綺麗事」って単語は含まれてないみたいですね。最高です。



2.Rough diamond future

「どうせみんな寂しがり屋」

これは真理だな、っていうか
一人で居て平気だよ~って人間なんて一人もいないと思う。
それが強くなっちゃってあらぬ顛末を辿る人も居る訳で。
それをTVか何かでよく見かける訳で。

これもKyg流のラブソングといいますか、そうなる前に思いっきり抱きしめる
それ以外はどうでもいい的な。
力強いですね。
それでいてメロディはとてもポップです。売れそうなのになあ。



3.Born to be mild

ここまで自信過剰だと逆に凄いっていうか
もっと言えばこれくらい乗り込む心が欲しい、って思います。あらゆる方面に。
でもこういう気持ちもきっと誰もが持ってると思います。
自分の中で自分ってのは確実に特別ですからね。

ゆるゆるっとした適当な歌いだしから一気に勢いを付けるサビ
かと思えば締めもまた適当風だったりと
聴き手を翻弄するような曲になっています。でもその不敵さが実に良い。見当たらないもの。他に。



4.Dragon dance

ドラムの吉田さんが作った曲。大体kyg作曲が多いので珍しいですね。
非常に固い感じの、シリアスな雰囲気漂うロックナンバーなんですけど
歌詞の方はめちゃめちゃ適当
というか完全に語感重視で、そのギャップを楽しむ曲・・・なのかな。
サビのメロディがやっぱり新鮮。



5.Ice candy

「愛されないと愛せないのは愛ない証拠
 愛されなくても愛せちゃうのは愛ある証拠」

これは歌詞も曲調もどっちもめちゃ適当な曲なんですが
そんな中にもハッとするフレーズを入れ込むのがまたニクいというか西井さんらしいなっていうか。
ただ何にも考えずにビートに乗れるような即効性も忘れてはいけないところ。それもまた重要。快作。



6.毘沙門天

長らくライブのみで演奏されて来たインスト。
主にベースの中嶋さん、通称エムちゃんがリードして演奏する曲。
ファンキーな要素が強い曲なんですが
全体的にベースのブリブリ感が目立つ曲が多いですね、今回。
その意味でも聴き応えのある音源です。



7.Nazca


「誰もいない 何もない」

たまにそういう気分になる時がある。
家に一人で居ると。
っていうか大体一人なんですけど。それが突き詰まると、この世界には自分一人だけなのでは
とかそういうバカな考えにも行き着いてしまうんですが。時々。

「I love youはスゲー! 以外はjust滑稽」

でも、それでも、だからこそ
自らそこに突っ込んでいかなきゃならない
誰かを愛する事が必要、と。
これらは個人的な解釈なんですけど、いきなりバーッて世界を変えようとか救おうとか
そういう大層な考えは実は間違っていて
それよりも身近な誰かをまずは・・・的な。という解釈で自分は聴きました。
時折冒頭のフレーズが頭で鳴って寂しくなる時があります。


音はですね、ゴリゴリで疾走感のある、キレの良いロックです。
割と初期は重い曲を最後に配置する事が多かった印象でしたが
最近は逆に勢いを付けて終わるパターン、になってきたのかな。
とはいえこの曲は勢いだけじゃなくて大事なメッセージも込められてるとは思いますが。





多分、分かってても誰も言わない
思ってても誰も歌わない
そんな人間くさい幾つもの感情たち、を今思いっきり吐き出してくれてる貴重なバンドだと思う。
かつそれを戦略的な意味でやってるんじゃなくて
むしろこれが素ですよ、的な。
そういう雰囲気があって、それがとっても素敵だなって思うわけです。
これからもこの気持ちの良い不敵さ不穏さ不遜さは貫いていって欲しいです。ライブにも行きます。

それと単純に理屈ぬきで踊れる肉体的なロックンロールの体現者でもあります。
シンプルなロックで踊りたい方も是非一度聴いてみては如何でしょうか。
って事で〆です。次回作もまた楽しみです。



セカイイチ「folklore」 全曲レビュー

2011-03-07 10:44:41 | 音楽(全曲レビュー)





久々の全曲レビューです。って毎回久々って書いてるような・・・。汗。


今回はセカイイチの「folklore」です。




セカイイチなりの王道を追求したアルバム
けど王道って言ってもただ聴きやすいだけじゃなくてメッセージも棘もあって
でも聴き終えた時の印象は間違いなくそれで。
更に言うと、すごくあたたか味のある作品っていうか、聴いてるとそういう気分になってくるんです。
この時期だと正に暖炉とかこたつ的な作品っていうか。
心に一つ明かりを灯してくれるような。
そういう音楽って自分的にはなかなか見当たらないもので、それを今セカイイチが
全力でやってくれてる、ってのは大きいところであります。
いつもながら岩崎慧の歌声もキレキレで良い。
胸が熱くなります。

出来ればLOST IN TIME「ロスト アンド ファウンド」と併せて聴いて欲しい一枚。では以下。




1.Touch My Head

サクッと聴けるようなロックチューン。けど詞の密度は濃いです。
サクッと聴けて、でもじんわり残る、みたいな。
そういう趣の深さは彼らならでは、ですね。


「確かなことは そうさ 僕は大バカでいたい」

この「大バカ」っていうのは色々な意味で捉えられると思いますが
誰が何と言おうと自分を貫き通す
いつでも「自分」でありたい
賢くなんてならなくていい
例えそれで嫌われたとしても。信じるものを真っ直ぐに信じていたい。
そこに年だとか世間体は関係なくて。
人と同じ道をなぞる事に意味を見いだせなくて。でもそれはそれでいいじゃないかと。
それはある種茨の道でもあるけれど。

その点でこの曲はモーサムの「教祖様はスレンダー」って曲と通じる部分あるかも。
あの曲でも「茨の道をスキップしようぜ」って歌われてますからね。
あの曲とこの曲の意味合いはそんなに違ってないと思う。



2.Step On

有り体な言い方ですけど名曲です。
これは絶対に名曲だと思います。
彼らがメジャーデビュー時に出した名曲「石コロブ」と並ぶ・・・いや超えた?
そのくらい大きな曲だと思います。

この曲はオアシスを意識して作ったそうですが
大事なのはそんなんじゃなくて
歌詞の内容そのもので。

人が人で居る限り、誰かと同じ視点思想じゃないのは当たり前の事で
でもだからこそ伝え合い分かり合う行為が必要って歌で
それを「勇気」って表現してくれたのに救われた、っていうか。
確かに勇気が要るんですよね。
すっごくね。
でもそこを乗り越えられたらすっごく素敵な事だなあ、と。そう思うわけです。

そしてこの歌では愛しさと憎しみは表裏一体だ、って事も歌われています。
要は賛美両論が正常なんだと。
どっちかしかないのはウソなんだと。
それは絶望と希望が表裏一体なのと似てますよね。それもどっちかだけじゃウソくさいし。

そういう想いもあって、自分のテーマソングにしたいくらい大切な曲です。



3.Kids Are Alright

非常にシンプルなメロディとノスタルジックなアレンジで歌われる原点回帰ソング。
子供の頃の気持ちに戻ってみろよ、と。
そういう歌もベタっちゃあベタなんですけど
質感がとても好きで。
歌もきちんと伝わって来て。だから普通に届いてしまう、っていう。この曲も一つのアンセムですね。



4.わずか


「でも 君が決めたすべての意味を うれしくも思ったんだ」

別れの歌なんですけど
それと同時に感謝も歌ってる曲で。染み入るようなバラッドです。

この曲で好きなのは
確かに別れは寂しいし、迎えたくないけれど
それを考えて決めてくれた事、自身で選択してくれた事に対しての嬉しさ、というか感謝の気持ち。
自分本位ではなく
相手本位というか。
そういう思いやりの気持ちがストレートに伝わってくること、ですね。
どんどんと力が入るボーカルもまた聴き所です。



5.考えすぎの僕がいる

ここにもいます(笑)。まあそれは置いといて
非常に親しみやすいメロディが耳を惹くロックナンバー、
屋台とかが似合いそうなくらい庶民的な匂いもします。

でもそれがすごいポップに聴こえて
かつシンプルな励ましでは到底立ち上がれない、っていう
ネガティヴな部分も垣間見える曲で。
メロディ自体は夜道で口ずさみたくなるくらい開かれてるんですが
歌詞自体は普通に閉じちゃってるんですよね。
そのギャップが面白い曲です。



6.folklore

セカイイチのライブを体験してるかのように
臨場感のある音とボーカル。そんな空気感。この曲を聴けばライブの雰囲気が掴めるかも。
と同時にライブに行ってる者としては
自宅にいながらそういう雰囲気が楽しめる的な。


「大人にならなくていいと思ってる
 でもガキのままでいたいとは思わない
 両方手に入れる」

キレイさも汚さも表現するセカイイチならではの名フレーズ。



7.Daylight

ラップを取り入れたソウルっぽさも漂うポップ・ソング。
何度か聴いてると違和感がなくなってくるのが不思議。
こういう曲聴いてると他と比べて岩崎慧の声って抜きん出てるんだなあ、とまじまじと思いますね。

「いったいどれだけ いいたいことは 伝わるのかい?伝えられるのかい?」



8.真冬の陽炎

普通に聴いてると耳障りのいいポップソング・・・なんですが
歌詞読んでると、これって結構にヤバいだろと思うようなシチュエーションの曲で。
タイトルにも納得が行く、っていうか。
表現力が秀でてるなあ、といつも聴いてて思います。ある意味「毒」の役割を担ってる曲ですね。



9.Married With Children

オアシスのカバー。こう・・・なりきってノリノリで歌ってるんだなあ、
って楽しい雰囲気が伝わってくるだけでも成功と言っていいかと。



10.猿の惑星

クールでちょっと刺々しいロック・ナンバー。
こういう冷めた感じのボーカルだったり視線は彼ら的には珍しい気がする。
その上で聴き手を扇情するような刺激的な言葉が並べられていて。
でもこれも逆の意味で応援歌なのかもな、ってちょっと思ったりもします。



11.グレース・ケリー

アルバム一アグレッシヴなロック・ナンバー。勢いも相当のもので、でもポップさもあるんですよね。
かつての「カプセル」なんかに近い感じ。
でも歌詞の内容はほぼ女の子の事、っていうか妄想と方向性は違いますが。
しかし男としてこういう内容の歌を歌う事は真っ当に正しいなって思います。



12.スター

これも普通に聴けば普通のラブソングなんですけど
歌詞を読み込むとこれまた厳しいシチュだなあって思います。一本のドラマに出来そう。
優しさがじんわり伝わってくるような感触と
同時に切なさも描いていて
それがフックとなって印象に残る。そんな曲ですね。



13.ハローグッバイ


「素晴らしさに正解はないぜ」

表現とかでもそうですけど
こうすればウケるとか
こういうのがウケるとか色々とあると思うんですけど
かといってそれ一択じゃ勿論つまらなくて
自分なりに好きに選んでいく資格があって。だから傍から見て一見矛盾してるようでもそれもまた正しくて。
それは人生とか生き方に於いてもね。

力強く歌われるどっしりとしたミドルナンバー。締めに本当に相応しい曲です。握り拳が似合うような。



14.眠りにつく、その前に

とはいえボーナストラックを含めてのアルバムって気もします。
実際この曲なしでは終わった感じがしません。
一般のリスナーをディレクターに迎えて制作されたこの曲は
正にリスナー自身に語りかけてくるような親しみ易さがあって。
一日の、それまでの頑張りを認めてくれるような。
これはこれで締めに相応しい楽曲ですね。
2重に締めるっていうか。





人には人の数だけやり方があって
それを維持するのも貫くのも決して容易ではない
けどそこであがいたり、悩んだり、分かって欲しいと思った
そんな幾つもの試行錯誤は無駄じゃない、無駄にはならない
むしろそれが日々の糧になる、っていう。

そういうメッセージもなんとなく込められてる気がします。それは受け手である私が勝手に思ったことで。
でもそういう思いを掻き立ててくれた、って事でもありますね。
個人的には傑作だと思ってます。