立て続けに全曲レビューです。今回はSTAnの「STAn」です。インディーズ出戻り作。
気がつけば新作音源としては2年半ぶり?ライブアルバムを除けば、ですが。
そんな長いタームが空いた末に出たミニアルバムだったんで
喜びもひとしおというか
この痛快さも懐かしい、的な。やっぱり彼らのロックは確実に必要だ、と強く感じた次第。
同時にこれもっと話題になってもいいだろ
もっと直接的な言い方すると売れてもいいだろ、って。絶対に気持ち良いのになあ。
またライブも相当に良いので、そっちでも薦めたいって思います。
フットワークは軽いんだけど、突き刺さってくる言葉は重いです。刺激的です。
1.After all
めちゃくちゃ痛快なロック・ナンバー。
もうリフとメロだけで踊れちゃうシンプルなロックの楽しさが詰まってる曲。
と、同時に歌詞もまた痛快で
これって実は普段自分らが思ってることを正々堂々と言ってくれてる、みたいな。
誰だってこういう不遜な一面はあると思います。
それを出すか出さないか。
言うか言わないか。
kygの辞書の中に「綺麗事」って単語は含まれてないみたいですね。最高です。
2.Rough diamond future
「どうせみんな寂しがり屋」
これは真理だな、っていうか
一人で居て平気だよ~って人間なんて一人もいないと思う。
それが強くなっちゃってあらぬ顛末を辿る人も居る訳で。
それをTVか何かでよく見かける訳で。
これもKyg流のラブソングといいますか、そうなる前に思いっきり抱きしめる
それ以外はどうでもいい的な。
力強いですね。
それでいてメロディはとてもポップです。売れそうなのになあ。
3.Born to be mild
ここまで自信過剰だと逆に凄いっていうか
もっと言えばこれくらい乗り込む心が欲しい、って思います。あらゆる方面に。
でもこういう気持ちもきっと誰もが持ってると思います。
自分の中で自分ってのは確実に特別ですからね。
ゆるゆるっとした適当な歌いだしから一気に勢いを付けるサビ
かと思えば締めもまた適当風だったりと
聴き手を翻弄するような曲になっています。でもその不敵さが実に良い。見当たらないもの。他に。
4.Dragon dance
ドラムの吉田さんが作った曲。大体kyg作曲が多いので珍しいですね。
非常に固い感じの、シリアスな雰囲気漂うロックナンバーなんですけど
歌詞の方はめちゃめちゃ適当
というか完全に語感重視で、そのギャップを楽しむ曲・・・なのかな。
サビのメロディがやっぱり新鮮。
5.Ice candy
「愛されないと愛せないのは愛ない証拠
愛されなくても愛せちゃうのは愛ある証拠」
これは歌詞も曲調もどっちもめちゃ適当な曲なんですが
そんな中にもハッとするフレーズを入れ込むのがまたニクいというか西井さんらしいなっていうか。
ただ何にも考えずにビートに乗れるような即効性も忘れてはいけないところ。それもまた重要。快作。
6.毘沙門天
長らくライブのみで演奏されて来たインスト。
主にベースの中嶋さん、通称エムちゃんがリードして演奏する曲。
ファンキーな要素が強い曲なんですが
全体的にベースのブリブリ感が目立つ曲が多いですね、今回。
その意味でも聴き応えのある音源です。
7.Nazca
「誰もいない 何もない」
たまにそういう気分になる時がある。
家に一人で居ると。
っていうか大体一人なんですけど。それが突き詰まると、この世界には自分一人だけなのでは
とかそういうバカな考えにも行き着いてしまうんですが。時々。
「I love youはスゲー! 以外はjust滑稽」
でも、それでも、だからこそ
自らそこに突っ込んでいかなきゃならない
誰かを愛する事が必要、と。
これらは個人的な解釈なんですけど、いきなりバーッて世界を変えようとか救おうとか
そういう大層な考えは実は間違っていて
それよりも身近な誰かをまずは・・・的な。という解釈で自分は聴きました。
時折冒頭のフレーズが頭で鳴って寂しくなる時があります。
音はですね、ゴリゴリで疾走感のある、キレの良いロックです。
割と初期は重い曲を最後に配置する事が多かった印象でしたが
最近は逆に勢いを付けて終わるパターン、になってきたのかな。
とはいえこの曲は勢いだけじゃなくて大事なメッセージも込められてるとは思いますが。
多分、分かってても誰も言わない
思ってても誰も歌わない
そんな人間くさい幾つもの感情たち、を今思いっきり吐き出してくれてる貴重なバンドだと思う。
かつそれを戦略的な意味でやってるんじゃなくて
むしろこれが素ですよ、的な。
そういう雰囲気があって、それがとっても素敵だなって思うわけです。
これからもこの気持ちの良い不敵さ不穏さ不遜さは貫いていって欲しいです。ライブにも行きます。
それと単純に理屈ぬきで踊れる肉体的なロックンロールの体現者でもあります。
シンプルなロックで踊りたい方も是非一度聴いてみては如何でしょうか。
って事で〆です。次回作もまた楽しみです。