(1)これまでも検察組織としてえん罪(死刑判決確定後の無罪)事件はいくつか存在して、世間の注目を集めた未解決事件もある。記憶に残る中にも大阪地検による厚労省障害者郵便制度悪用事件での証拠ねつ造事件もあって取り調べの可視化につながった。
(2)こういう検察組織に国民の身分、人権、財産、安全、生活、自由が委ねられているかと思うと、安心してはいられない。袴田事件は死刑判決確定後に再審請求審が実施されて再審公判での検察側の判断、出方が注目されたが、検察側は新証拠提出による再び有罪立証の方針を示した。
(3)検察側は有力と判断する新証拠をどうしてもっと早く提出しなかったのかの問題はあり、すでに当時の事情を知る検察関係者も多分いなくて袴田さん(87)自身も高令病身で説明能力もなく、再審公判で新証拠といわれるものが提出されてもこれまでの証拠のあたらしい科学的知見にもとづくもので、これまでの判断の否定、肯定する2通りの見方があるというものであり、これだけで死刑判決の再審公判を維持することはできないのではないか。
(4)元判事の弁護士からも「これまでの裁判所の審理で退けられてきたものばかりで、再審無罪の流れは変わらないだろう」(報道)と述べている。別の事件報道で「犯罪者に利する」とか一方で「助命嘆願」が読者から多数来ていることを書いたが、事件は裁判による公平、公正な審理で判例にもとづき判断されるもので余人の介入できるものではなく、まして当時の裁判関係者が現存しないか当事者が説明能力もないとなれば余程のことでもなければすでに真実を解明することなどむずかしい。
(5)日本の裁判審理は他国に比べて長いことが問題となってえん罪(無罪)事件もいくつかみられて、信頼回復からのあせりからの検察による証拠ねつ造事件もある。検察の出直し論が言われて、今またそれにこだわった再審公判での新証拠提出なのかもしれないが、事は真実、事実の証明、審理でありやはりこれもどうして新証拠の提出が今なのかの問題、疑問はある。
(6)もちろん再審請求審はすべてがあきらかになったわけではなく、事件の真実、事実の証明は求められるものではあるが、さらに求められるものは国民の身分、人権、財産、安全、生活、自由だ。