いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

ボルト・フライング。 Bolt flying

2011-08-29 19:54:10 | 日記
 (1)アスリート(athlete)の願望は、勝利と記録だ。公正で公平な同一条件のルールの中で輝きを一層際立たせる。
 レースの「勝利」は普遍的なもので生涯変わることのないステータス(status)であるが、時と場所とレースが変われば絶対唯一のものではない同一種目でも複数のチャンピオンが存在することもある相対的達成目標だ。

 「記録」は、条件、環境が許容範囲内(レース成立条件)で違っていても最高記録が唯一絶対のものだ。しかし、長い歴史、進歩のレース・プロセスでは更新、塗り替えられることが常で前提として、絶えず消滅、誕生をくり返すものだ。

 アスリートの絶対的身体能力の高さを時代を超えて追求する、判断する基準としては「勝利」よりも「記録」がプライオウリティ(priority)となるのがわかりやすく、唯一絶対という客観性も高いアスリート本能だ。

 韓国(大邱)で開催されている世界陸上で、男子100メートルで驚異的な世界記録(9秒58)保持者のウサイン・ボルト(Bolt ジャマイカ)が、決勝でフライング(flying)失格した。誰の目にも明らかなスタート前の飛び出しだった。

 かっては2回までは認められていたフライングが新ルールでフライング1回で失格となった、適用はじめての世界大会だ。故意のフライングによる意図的なレースの混乱を防止するための新ルールだ。

 近年のボルト(Bolt)は異次元の破壊力のある走力で、他を寄せ付けないアスリート能力の高さを示してきた。しかし、昨年後半には故障が続き、今回が5月復帰後本格的なレースであった。
 強気、自信のボルトからも、今世界大会は今季の自己ベストが目標との控えめなものだった。

 ところが、①今世界大会には強力なライバルも故障で欠場して、「勝利」は動かないレース環境となった。さらに、②今予選レースでは、どちらかといえば苦手なスタートが見事に決まりレース後半は後ろを見ながらの軽く流してのトップ記録で通過した。

 わかりやすく言えば、苦手なスタートが遅れても中盤、後半の破壊力のある走力でボルトの勝利は動かない、今レースの身体能力の高さだった。

 ここで、この2つの好条件が、もともと「勝利」は別問題として、それよりも「記録」というアスリート本能にボルトは動いたと考えられる。このレベルの異次元の記録というのは、「ひとり」競うこともなく独力で達成できるほどたやすいものではなく、強力なライバルとの競り合いの中で達成されるものであることは容易にわかる。

 「記録」というアスリート本能の目標は、好条件が重なって思わず(多分)見えてきたが、強力なライバルとの競り合いのないむづかしいレース展開だ。自然に極限の集中力、モチーブ・パワー(motive power)には欠けるレースで、ひとり「力」が入ったことは考えられる。予想を超える「ひとり」レースの重圧が問題だったと思える。

 「ひとり」記録への思わぬ挑戦が、気持ちの重圧が必要のないフライングとなって失格レースとなったと考える。いくら超人でもマインド・コントロールのむづかしさだ。

 (2)次元は違うが、マインド・コントロールの強さを示したのが女子100メートルの日本代表の福島だ。レース持ちタイム(同組4番目)比較記録以上の同組2番目で予選を通過した。比較身体能力のレベルをマインド・コントロールが上回った結果だ。すばらしい成長を示した。準決勝では同組最下位とはなったが、成長した福島だからのステージ・パフォーマンスであった。

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