オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

コインマシンやギャンブルゲームやカジノの歴史的エピソードとか、時々カジノ旅行記とか、たまにスポーツやマンガとか。

SEGA MAD MONEYがやって来た!(3):MAD MONEYの解剖その2 リールユニット背面

2022年12月11日 18時00分55秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今回から、リールユニットの構造を見ていこうと思います。とは言うものの、ワタシはこのメカニズムをそれほど理解できているわけではありません。むしろ、ほとんど何もわかっていないと言う方が実情に近いです。謎に引っかかるたびにいちいち調べながら書いているため、話の進行がひどくのろくなることが今後も予想されますが、なにとぞご了承ください。では、あくまでも目についた部分に関して調べた結果をメモしておくに留まると言う前提で、まずはバックドアを開けてすぐに見える背面側から始めます。

リールユニットを背面側から見たところ。

スロットマシンの部品には大事でないものなど一つもありません(と思います)が、上図の赤破線で囲った「クロック(clock)」は、スロットマシンの心臓部とも言える最重要な部品です。コインを入れてレバーを引くと、赤矢印で示している「クロック・ファン(clock fan)」が扇風機のように回転し、これと連動する大小の歯車がリールを止める「リールストップレバー(reel stop lever)」を作動させています。従って、クロック・ファンの回転を無理やり止めてしまうと、リールストップレバーは作動せず、リールは止まりません。

1940年代終わりころから1950年代初めにかけての機械のクロックには、レバーを引くタイミングによってリールストップレバーが作動するタイミングをコントロールできる欠陥がありました。これに気づいたある男は攻略法を編み出し、荒稼ぎをしたのですが、スロットマシンメーカーは当初どうやってそれを実現しているのかがわからず困惑しました。

しかし、後に件の男がその攻略法を「リズムシステム」と命名して有料で公開したため、クロックの構造に問題があることが明らかになりました。メーカーはクロックの回転具合が毎回ランダムとなるよう、クロックに「バリエイター(variator)」と言う部品を取り付けたので、スロットマシンの歴史上最もプレイヤーに有利だった時期は終焉を迎えたのでした。(関連記事:リズムボーイズ ―― スロットマシンの必勝法の話)。

この「バリエイター」なるものがどんな部品なのか、実はまだよくわかっていません。ネット上を検索すると、バリエイターの解説が少数ですがみつかります。スロットコレクターたちの掲示板「CoinOpCollectorForum.com」では、アームの先端に付いているフェルト製のパッドがクロックファンの回転軸に間欠的に接触することでファンの回転速度に変化を与えていると説明して、その部分の画像を載せています。

クロックファンのシャフトに接触するフェルト製のパッドの画像。ソースは「CoinOpCollectorForum.com」のスレッド「Antique Mills slot - clock part question ?」より。

しかし、ワタシの手元にある機械のクロックにはこのような部品は見あたりません。このMAD MONEYが製造された時期は1960年代ですから、リズムシステムに対する何らかの対策はされているはずです。

ところで、クロックとは全く関係ないところで、ワタシは意味の分からない部品があることに気づいていました。それは、リールユニットのフレームに蝶ネジで固定されているスクリューネジに取り付けられている1本の針金で、その針金は先端に近いところでリールの軸受けに接触しています。

意味が分からない部品(赤矢印)。赤矢印のすぐ下のところでリールの軸受けに接触している。針金の下の方は一部隠れて見えないが、下端は輪状になって、蝶ネジで留められている長いスクリューネジに引っ掛けられている(青矢印)。

この針金をMillsのサービスマニュアルで調べると、「リールブレーキワイヤー (Reel Brake Wire)」と名付けられていました。確かに、リールブレーキワイヤー自体は結構硬く、それなりに強いバネの力でリールを押さえつけているようには思われます。そしてこの機械には、リールブレーキワイヤーは第2リールにしか付いていません。おそらくは、純粋にクロックだけで回転数が決まるわけではないリールが1本でもあれば、リズムシステムを無効化できるということなのかなあと、とりあえず理解することにしました。

(次回・「リールユニット側面」につづく)


SEGA MAD MONEYがやって来た!(2):MAD MONEYの解剖その1

2022年12月04日 21時19分47秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今回譲り受けた「SEGA MAD MONEY」は、セガが1960年前後頃に開発したと推察される「スターシリーズ筐体」に収められていますが、その内部に残されている検査証には、インクが薄い上に染みが多く判読しづらいものの、「FEB. 4 1969」と読めるように思える印字がされています。

筐体内に残されていた検査証の日付部分。「FEB. 4 1969」であろうか。

1969年だとして、しかしスターシリーズの次世代機である「コンチネンタルシリーズ」の開発は遅くとも1966年には行われており、更にその次のシリーズで旧セガ時代の最後のメカスロとなる「ウィンザーシリーズ」は、1967年の時点で英国で新製品として発売されており(関連記事:セガ60周年記念・1960年以前のプレセガ期(4) セガのスロットマシンその2)、旧型機であるスターシリーズ筐体にそれらよりも遅い日付けが記されているのは、あり得ないことではないとしても、多少の違和感を感じざるをえません。

1969年にスターシリーズが製造され続けていた理由を何とか考えるならば、スターシリーズは稼働に電力を要しなかったので、新製品が出た後でもそのような旧型機にはまだ需要があったのかもしれません。もしくは、単に在庫部品があっただけなのかもしれませんし、更にアクロバット的推測をするなら、旧型機を整備して準新品としていたのかもしれません。この問題はこれ以上考えても答えは見つかりそうにないので諦めて先に進みます。まずはメカの中身の概観から見てまいります。

筐体の背面は、上部の青い部分は鋳物で出来た「トップ」、その下の黒い部分は板金で出来た「バックドア」となっています。

筐体の背面。上部の青い部分がトップ、下の黒い部分がバックドア。

まず鍵でバックドアを取り外し、次にトップを固定する左右ふたつの「トップロッキングレバー」を引いてトップを外します。

鋳物製のトップとバックドアを取り外したところ。左右の赤矢印はトップロッキングレバーの動きを示す。

次に、土台の下部にあるレバーを外すと、リールユニットが取り外せるようになります。このレバーは、1956年に発行されたミルズのユーザーズマニュアルにはなぜか記載がなく、名称がわかりません

リールユニットを取り外した後の筐体内。赤矢印はリールユニットを固定するレバー(名称不明)の動きを示す。

筐体の内側の、左右の壁の向かって左側は、ゲームを起動するハンドルが付いている側です。ここにはハンドルの操作によって作動する機構が見えますが、このどの部分がリールユニットのどの部分に作用しているのか、メカには暗いワタシには理解できていません。

リールユニットを取り外した後の筐体側面の、ハンドル側。この機構のどこがどのようにリールユニットに作用しているのだろうか。

反対側の壁にはメカはありませんが、トッパ―と筐体内の照明に使われている蛍光灯の安定器とスターターが4個ずつと、電源と思しき部品1個が並んでいます。しかし、これらはおそらくもう使い物にはならなくなっていることと思います。蛍光灯は取り外されていました。これら電気系統はミルズの時代にはなかったもので、ユーザーズマニュアルには記載がありません。

筐体側面の、ハンドルの反対側。並んでいる電気系統の部品は、トッパー、ペイテーブル、それにウィンドウ内を照らす蛍光灯のためのもので、これらが機能しなくてもスロットマシンとしては稼働する。

土台の下には、右側に「キャッシュボックス(Cash Box)」、左側には何やら意味ありげな部品があるように見えます。これは「ハンドルポンプ(Handle Pump)」と言って、ハンドルを引いた後、手を離したハンドルが勢いよく戻らないように抑制するための部品です。

筐体の中の下部。右はキャッシュボックス、左はハンドルポンプ。

ハンドルポンプの拡大図。暗くて見えづらい。

(次回「リールユニット編」につづく)


SEGA MAD MONEYがやって来た!(1):ここに至るまでの経緯

2022年11月27日 16時28分25秒 | スロットマシン/メダルゲーム

さる9月、拙ブログをご高覧くださったある方から、「我が家にあるセガのMAD MONEYを譲りたい」とのオファーをいただきました。

MAD MONEY(関連記事:【小ネタ】セガ・マッドマネーとアルフレッド・E・ニューマン(Alfred E. Neuman))。「ダルマ筐体」とも呼ばれるこの筐体を、拙ブログでは「スターシリーズ筐体」と呼んでいる。

この時のワタシの心の動揺は、楽器店のショウウィンドウに陳列されているトランペットを飽かず眺める黒人の少年が、見知らぬ紳士から突然「これを君にあげよう」と言われた時の心境を想像していただければよろしいかと思います。

スターシリーズ筐体の左右両側面。

お声がけくださったのは愛媛県の方で、仮にKさんとしておきます。Kさんはこれを、セガの前身であるサービスゲームズ・ジャパン関連記事:セガ60周年記念・1960年以前のプレセガ期(2) 4つの「Service Games」)の専務だったS原さんと言う方から、かつて日本の米軍基地で稼働していたものとして譲り受けたとのことです。

スターシリーズ筐体の背面。メンテナンスはこちらから行う。

しかしKさんは「MAD MONEY」にどのような謂れがあるのかをほとんど知らず、自分なりに調べてはみたものの役に立つ情報を得ることができないまま今日に至っていたのだそうです。それが最近、ふと思い出してまたネット上を検索してみたら拙ブログがヒットし、長年の謎の答えをやっと知ることができ、そして「我が家のMAD MONEYも家で眠っているよりもちゃんと価値のわかる人の所にあるべき」と決心して、ワタシにお声がけくださったのでした。

背面のドアを外して内部を覗いたところ。どこもかしこもピカピカに整備されている。

この上なくありがたいお志ですが、しかし、ワタシには二つの問題がありました。一つは保管場所の確保です。単体では小さく見えるスロットマシンも、居住空間に持ち込むと結構なスペースを占有するので、狭い我が家には置けません。可能性のありそうなところをいくつか当たり、某オフィスで置いても良いと言っていただけるところを見つけて、この問題は解決しました。

もう一つの問題は輸送手段です。最初に問い合わせたY運輸は、「当グループではスロットマシンを禁制品に指定しております」と言われて断られました。以前は取り扱っていたものの、どうも個人間でやり取りするパチスロ機の輸送でトラブルが少なからず発生して方針を変更したらしいです。その後に問い合わせた他の運送会社でも次々と断られ、やっとS運輸が「補償なし、営業所止めであれば」との条件で受けてくれることになりました。

MAD MONEYのトッパ―部分。このゲームの最大のフィーチャーが掲げられている。

問題はクリアしたとは言え、これだけの重量物(コミコミで約60㎏)を運送業者まで運ぶだけでも結構な労力を要しますので、「あとはKさんに全てお任せ」と言うわけにはいきません。ワタシが人足として働かなければバチが当たりますし、何より直接お会いしてお礼を申し上げたいこともあって、先週末、女房を伴って愛媛に行ってまいりました。

松山空港に到着すると、有り難いことにKさんが車でお迎えに来てくださっていました。まずはホテルまでお送りいただいてチェックインし、その後、実機の保管場所に行って発送の最終準備をするという段取りでした。しかし、保管場所に到着してみると、Kさんは既に土台の木枠とかぶせる段ボール箱を作成されており、あとは車に積んで運ぶだけの状態まで整えておいてくださっていました。

その夜は、Kさんが行きつけだという「赤ちょうちん」という屋号のおでん屋に入り、松山名物のじゃこ天やらかまぼこやらのおでんをいただき、時には初対面の他のお客さんとも楽しく談笑しながら過ごして初日を終えました。

上からじゃがいも、牛すじ、肉団子、カマボコ。からしは味噌を練り込んだ自家製。写真にはないが、じゃこ天とロールキャベツもおいしい。

翌日、Kさんの車にMAD MONEYを積み込んで運送会社に持ち込んで発送しました。我々はこの日も松山にとどまり、翌朝に東京へ戻る旅程であったところ、Kさんは「空港までの交通機関は貧弱だから」とおっしゃって、なんと我々が帰京する日の朝もホテルまで車でおいでになり、空港まで送ってくださいました。機械をお譲りいただくだけでもこの上なくありがたいことなのに、万事至れり尽くせりのご親切を賜り、何とお礼申し上げればよいのか言葉が見つかりません。Kさん、その節は本当にありがとうございました。機械は無事到着し、某オフィスに設置されております。これからも重要な歴史資料として大切に保管させていただきます。

(つづく)

 

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【小ネタ】初の透明液晶を搭載したスロットマシン

2022年09月25日 23時12分03秒 | スロットマシン/メダルゲーム

今週の拙ブログは、当初一つのネタを考えていたのですがなかなか筆が進まず、しかも本日は完成度5%の状態で飲み会に行ってしまい10時過ぎに帰宅したため、長く目指していた毎週日曜日更新に赤信号が激しく点滅する状態になってしまっています。

そこで今回は、当初のネタは諦めて、拙ブログで採り上げるには新し過ぎるのですが、「BURGLAR IN PARIS (ARIZE, 2003)」のご紹介でお茶を濁しておこうと思います。

「BURGLAR IN PARIS」のフライヤー。

「BURGLAR IN PARIS」が発売された時期のスロットマシン界では、表現力に優れるビデオスロットが従来のメカリールを一挙に過去のものにしてしまいそうな勢いで爆発的に広まりつつあった頃だったのですが、「BURGLAR IN PARIS」はリールを覆うガラスの部分を透明液晶にして、メカリールの周囲に自由度の高いグラフィック演出ができる点が画期的でした。

「BURGLAR IN PARIS」のリール部分の拡大図。リールの周辺は液晶画面になっており、様々な映像による演出を可能としている。

この目新しい演出はたちまち注目の的となり、他社も模倣品を製造するようになりました。しかし、それでも結局のところビデオスロットの台頭を抑えてメカリール機の人気を復活させるということもなく、単なるメカリールの演出手法の一つとして消費されてしまったように思います。それも、透明液晶がゲームをさらに面白くするわけでもなく、単なるこけおどしでしかなかったところにその理由の一つがあると思います。

どんなにすごい技術を使っていようとも、「それで実現したいこと」が面白くなければ早晩顧みられなくなるという厳しい現実を突きつける例の一つとして、ワタシの記憶に残ったゲームでした。


スイカで暑中見舞い

2022年07月31日 19時36分39秒 | スロットマシン/メダルゲーム

5年くらい前のことですが、日本のIT企業で働くインド人のシンさんが「ニッポン、暑いですね。インドより暑いです」と言うのを聞いて、これが本当のインド人もびっくりだと思ったものです。そして今年の夏も、東京は暑い日が続いています。

夏と言えばスイカで、スイカと言えばスロットマシンのフルーツシンボルの中では最高位のジャックポットシンボルです。拙ブログでは、過去にこのスイカシンボルについて調査して、その起源を突き止めました。

スイカシンボルの関連記事
夏だスイカだ! スロットマシンのスイカシンボルの話 (2019.08.11)

スロットマシンのスイカ・初登場時期が判明! (2020.04.28)

スイカシンボルに関するファイナルアンサー (2020.05.10)

スイカ以外のフルーツシンボルとしては、レモン、チェリー、オレンジ、プラムが一般的です(関連記事:スロットマシンのシンボルの話(4) フルーツシンボルの類似性)が、これら以外でワタシが過去に見たものに、梨(洋ナシ)、リンゴ、パイナップル、イチゴなどがあります。とは言えこれらは例外的と言うべきもののようです。

洋ナシの例。Ballyのモデル917「EXTRA LINE (1971)」。この機種で洋ナシはオレンジ相当の役だが、コイン5枚、または6枚のベット時の3並びに限り、配当にプレミアムが付いて、プラム相当の役となる。プレミアム配当は通常上位の役に付くもので、このような小当たりに付く例は極めて変則的。

リンゴの例。これもBallyの、モデル804「BIG APPLE (1966)」。リンゴシンボルは右リールにしか存在しないハズレシンボルだが、コイン100枚以上の当たりが出現すると以降10ゲームは「ソロ・シンボル・ジャックポット」フィーチャーが発動し、リンゴシンボルがペイライン上に停止するたびにコイン100枚が支払われた。

これら例外的なシンボルも含み、いかなるフルーツシンボルよりも上位であるスイカシンボルはワタシにとってチェリーと並ぶ特別な存在でした。スイカが揃うと100枚もの大量メダル(当時の感覚で)が払い出されるBallyのモデル831 「3 LINE PAY(1968)」は、ウィンドウに頻繁にスイカが現れるにもかかわらずなかなか揃わず、いつも悔しい思いをさせられていたものです。

モデル831 「3 LINE PAY」の悔しい例。中リールがふたつ上に停まるか、右リールがふたつ下に止りさえすれば100枚だったのに。

この夏、その悔しい思いを成仏させるために、近所のスーパーでスイカを求め、こんな画像を作成してみました。

リアル3スイカ。モデル831ならこれでコイン100枚。製作費用はおよそ1300円。撮影後、スイカはおいしくいただきました。

まだまだ暑い日は続きそうです。東京では頼みもしないのに水道の蛇口からお湯が出てきて、連日「熱中症に注意」との呼びかけが行われています。また、西日本では今年も大雨による被害を警戒しなければならないと聞き及んでおります。先週のラスベガスでは猛烈な雨と風で、洪水と雨漏りでフロアが池のようになったカジノが出たり、倒木で車や家が壊れたりなどの被害が出たそうです。これも気候の温暖化によるものなのでしょうか。どうぞ皆様、病災害には十分にご注意の上、この夏を乗り切られますように。