旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

図書館危篤

2006-12-12 17:25:34 | 日本語
■政府は維持になって景気が良くなった、と数字のマジックを使っては宣伝しておりますが、本音は弱いものイジメの予算削減と増税をするための言い訳を積み重ねているだけだという、非情に説得力の有る説も流布しております。これだけ子供殺しが連日報道され、地方自治体の財政破綻だの汚職だの、富の偏在と権力の濫用を証明する事件が頻発すれば、真面目に地道に働くのが馬鹿馬鹿しくなって、現金自動預け払い機にワイヤーを引っ掛けてみたくなったり、社会的な弱者を標的にして電話や葉書を使った詐欺でもやって、面白おかしく暮らしてみたいなあ、などと本気で考える若者が育つのも無理はないかも知れませんなあ。
 
■路上の引ったくりや振込み詐欺の標的になるのは老人や御夫人ばかりだと聞きますから、卑怯旋盤な心根の卑しい文化が蔓延しているのでしょう。それに加えて万引きと呼ばれる窃盗が増えて困っているという話も有ります。仕入れ値を押さえ少しでも値引きをして客を呼び込もうと必死の小売店が取り揃えた商品を、好き勝手に盗まれたらぎりぎりの経営をしている店などひとたまりも無く倒産でしょうなあ。その代表格が町の本屋さんだというのは、亡国を予感させる恐ろしい話です。しかも、盗み出される本というのが高価で手が出ないけれど、どうしても読んでおかねばならない名著、と呼べない使い捨て文化の代表のようなコミック本とも聞きますぞ。

■勿論、世界に冠たる漫画文化を育んだ日本ですから、何度も読み直して味わいたい素晴らしい作品も多いのですが、たった1年も持続しない話題と流行に乗っただけのコミック本が、町の書店から抜き取られて、ろくに字も読めない愚か者の目の前を一度だけ通過して後は、新型の古書量販店に持ち込まれたり、ネット・オークションに出品されるという噂であります。作品の価値ではなく、時価の交換価値だけで右から左に動いて行く本は可哀想ですなあ。昔の名著は、先輩から後輩へ、親から子へ、或いは祖父母から孫へと現物が手渡されたものでした。それは家の財産でしたから、いろいろな書き込みや赤線も引かれていても問題は無く、受け継いだ者が先人の読み方を知る大切な目印ともなっていましたなあ。自分で購入した本を読み返す時にも、以前の自分の至らなさや浅はかさを反省する便(よすが)となるので、ちょっとした書き込みをしておく人は多いでしょう。

■しかし、時は流れて大量生・大量消費の時代が続くと、物を粗末に扱う愚か者が増えてしまうようで、他人の物と自分の物との区別が付かない乱暴者も出て来てしまうもののようですなあ。


各地の公立図書館で、雑誌などから写真や記事を切り取ったり、専門書に蛍光ペンで線を引いたりするなど、図書を傷つける行為が増加している。中には、閲覧室で堂々と雑誌を切り取り、職員から注意されると「どうしていけないの」と反論する人もいる。公共の財産を傷つけてはいけないという最低限のルールを破る行為の横行に、図書館側は「社会全体のモラル低下の表れでは」とため息をついている。

■自分の物が増え過ぎると、だんだん世の中に存在する物は全部自分の物と思い込む弱点が、人間と言う欲深い生き物には備わっているのでしょうか?自分が欲しいと思った物は、その瞬間に自分の物になってしまう、何だか遠い昔に読んだ童話に出て来るような話であります。


東京都世田谷区の区立中央図書館(同区弦巻)で被害が目立ち始めたのは5年ほど前から。徐々に悪化し、資料係の越後信子係長は「最近では1日2、3件のペースで切り取りや書き込みが見つかる」と話す。
読売新聞 12月12日

■「教育の再生」だの「地方からの文化を発信」だのと、格好の良い政治スローガンが叫ばれる事も多いのですが、今、日本中の図書館が利用者の知らない所で決定した予算削減に喘(あえ)いでいるのを、こうした馬鹿者は知らないのでしょうなあ。今年度になって、多くの図書館が定期的に購入していた「雑誌」の数を大幅に削っているはずです。雑誌閲覧コーナーには、それぞれの雑誌専用の棚が設けられている図書館が多いと思いますが、最近、雑誌自体が置かれずに悲しい貼り紙が目立っていませんか?その多くは今年度の予算が執行され始めた4月や5月に、「購入を停止いたしました」というお知らせです。まさか、切り取り魔が大増殖したのに手を焼いて、その監視や補修の手間を惜しんで雑誌を減らしているわけではありますまいな?!

■図書館に行くと、その土地の文化の程度が一目で分かりますし、公務員の質も見極められるのが面白いところで、長年通っている人には、世の中の動きまで良く分かるという、非常に便利な施設が図書館です。館内に、「私語厳禁」「飲食禁止」などと書かれた貼り紙が有る所は、残念ながら民度は低いと申せませしょう。しかし、「切り取り禁止」「落書き禁止」「本を盗むな」などという紙が貼られるようになったら、そこは既に図書館の体をなしていないと考えても良いでしょうなあ。こういう貼り紙は、電車や駅構内にべたべたと貼られた「痴漢行為は犯罪です」と同じように、非常に恥ずかしい物なのですが、これを恥ずかしいと思わない連中が増えているのが実情なのでしょうなあ。図書館で本を守り、さまざまな文化活動に従事しておられる皆さんには頭が下がりますぞ。恥を忍んで貼り紙をしても、愚か者は読まないし、心ある人は悲しく情けない気分になってしまうでしょう。皮肉なものです。

■図書館に警察官が呼ばれて来るような時代にはなって欲しく有りませんが、切り取り野郎がやっている事は器物損壊の犯罪ですし、私語や飲食は迷惑条例違反かも知れませんから、それに対応するのは図書館員の職責の範囲を超えていることになりますなあ。雑務に忙しい学校で、図書館教育の基本を教え込む余裕は無いのかも知れませんが、ハコモノではない内容の充実した図書館を持っている地域は幸いです。悪名高い「ゆとり教育」プランの中には、学校を地域社会の再生の核にする!という妄想に近い計画も盛り込まれていたそうですが、その役目は学校よりも図書館が追うべきものでしょうなあ。つまり、日本が滅びるのも栄えるのも、地域の図書館が予告してくれるという事なのでしょうなあ。

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親の無念と役所の非情

2006-12-12 08:43:46 | 日記・雑学
■有名人の死去を伝える報道が、少しずつ変わって来ています。死因は究極の個人情報でもあるので、遺族の了解が必要なのでしょうが、具体的な病名を伝える場合が増えているようです。以前は、死因のほとんどが「心不全」とされていましたなあ。呼吸と心臓の鼓動が停止して死が確定するわけですから、このように報道しておけば間違いは有りません。でも、最近は死に到るまでの病歴を付け加える事が増えているようです。そうする事で、故人が最後に過ごした時を創造し易くもなり、苦しい闘病生活を送りながらも自分の仕事をやり遂げた人生に感動することも出来るというわけです。
 
■似たような例がテレビのプロレス放送にも有ります。すっかり人気が無くなって、日付が変わる深夜に放送される地味な番組になってしまって久しいのですが、夜の8時頃に放送されていた頃から、決め技は「片えび固め」ばかりでした。スリー・カウントを取るには相手を組み敷いて抑え込んでおかねばなりませんから、勝利の瞬間はこの技を使っているのは当然です。しかし、ファンならずとも、勝負を決めたのは抑え込む直前に決まった大技小技だと、誰にでも分かっていました。最近のプロレス放送では、フォールに入る直前に披露された技の名前を「決め技」として表示しているようですなあ。因果関係を極端に形式的な枠に嵌め込むと、一番大事な要素が切り捨てられて実態とはまったく違う話になってしまうという事です。

■間違ってはいないけれど、意図的に事実を歪曲して事実を隠蔽する、これは有能な官僚が得意とする常套手段なのです。


いじめ自殺を99年度以降ゼロとした統計の見直しを文部科学省が進めている問題で、「いじめが原因の可能性がある」など修正報告が続いている。うち一つは04年6月に埼玉県蕨市で中2女子が自殺した事例だ。だが、修正報告について両親に連絡はない。「なぜ死を選んだのか」。2年間、学校や県・市教委に問い合わせ、公文書公開請求をして手にしたのは、我が子の名前や住所すら黒塗りされたA4判1枚の事故報告書だけだ。

■子供のイジメが自殺や殺傷事件に発展するまでには、相当の時間が経過しているものです。誰かがそれを放置していることが問題の核心と言えるでしょう。馬鹿馬鹿しい書類作りに追われる教師達は生徒の小さな村社会で起こっている事態を観察している暇が無く、学校全体を掌握していなければならない教頭や校長は、不祥事の芽を注視するよりも、不祥事が起きていないと言い張る技術を磨いているようです。イジメ問題も新聞記事に有るように、所詮は書類の処理の問題になっているのでしょうなあ。物は言いよう、書類は書きようですから、「可能性」などという曖昧模糊とした言葉が挟み込まれればイジメは存在し、これを削ればイジメは消え去ってしまいます。つまり、日本中が心を痛める学校のイジメ問題も、結局は書類の「書き方」の問題だったのか!と合点が行きましたぞ。


蕨市内に住む父(46)と母(46)によると女子生徒は長女で、04年6月3日朝自殺した。自室に残されたノート3ページに、ゴキブリ呼ばわりされたなどと遺書を記していた。5日後、自宅を訪れた校長らは調査をまとめたらしい帳面を手に報告した。「好きでもない男子に告白する罰ゲームをさせられていたようです」同年7~8月、県と市に情報公開請求した。渡されたのはいずれもA4判1枚で似た中身の事故報告書。遺体発見状況などはあるが、学校生活の記載は無い。主たる原因欄には「不明」とあり、娘の名や住所、校長名も黒塗りされていた。県が開示した用紙は教育長名、公印まで塗りつぶしていた。1年後再び県に申請したが、結果は同じだった。

■悪質な「罰ゲーム」の事実をつかんでいないがら、「書類」の上でイジメとは扱われない、それ故にイジメ問題は無かった、という真に便利な理屈が完成しています。本当は、最初にイジメは無いはずだ!という書類作成の動機が決まっていて、規則通りに自殺事件を調査して発覚した事実を書類に列挙し、「主たる原因」という恐るべき記入項目を存分に利用して、イジメ事件そのものの重みを極限まで減少させる努力が重ねられるというわけですなあ。「主たる原因」からイジメ事件を排除してあるのですから、幾ら調査をしても「主たる原因」は大きな謎として残され、自殺に到る経緯を詳細に再現しようとしても、どうやっても埋められない空白部分が大きくなるだけでしょう。そこで、「学校は警察ではない」「生徒を信じよう」などの便利な逃げ口上が並べられれば、「主たる原因=不明」という書式が横行することになります。


両親は今回の修正報告を新聞報道で知った。蕨市によると、今回の文科省の再調査では「いじめも理由の一つと考えられるか」という項目が新設されたため、「考えられる」と報告したという。市教委は「当時からいじめも一因と認識していたが、主たる原因かは不明だった。過去の担当者の記録と当時の校長からの新たな聞き取りをもとに報告した。当時行っているので両親への聞き取りはしなかった」とする。

■文科省の誰かさんが、「主たる原因」という記入項目の名前を思い付いた瞬間に、日本中の学校からイジメ問題は消滅したのです。確かに学校は警察ではないし、教員は刑事でも検察官でもないのですから、真相を解明する能力も時間も有りません。それならば、「考えられ得る原因」とでもしておけば、どんなに小さな事実でもイジメ行為が記録されたのではないでしょうか?

 
母は事件後1年近くひきこもりがちだった。それでも行った3回の情報公開請求に「娘の死が1枚の紙だけで語られていると思うと情けなくなった」と振り返る。父も「修正報告の根拠にした記録をなぜ公開しないのか。校長が持っていた帳面はどうなったのか。当事者への聞き取りもせず、何の再調査なのか」と声を震わせる。悲劇を繰り返さないため夫婦の思いは一つだ。「子どもの自殺は1件ごと具体的に国へ報告するやり方にしてほしい。検証することでいじめ防止に生かしてほしい」いじめが自殺に関係があると修正したのは、蕨市のほか99年堺市の高1女子▽05年北海道滝川市の小6女児。
毎日新聞 12月12日

■再調査して修正まで到ったのが3例しか無い?!この数値の裏で、大切に育てて憲法を守って義務教育を受けさせようと学校に送り出し、それが直接の原因になって我が子に自殺されてしまった親達の恨みや悲しみがどれほど隠されているのでしょう?どうやら、文科省が次々と新しい書類制作を命じる度に、学校内には空白地帯や闇が広がり、それに対応する暇が無くなるように更なる書類提出が課される、そんな悪循環が続けていながら、「イジメを無くせ」と無理な注文をしていた事が、イジメ自殺の真の原因だと分かっているのに、教育行政が見直されるという話が出て来ないのは、実に不思議な話ですなあ。

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未履修問題は終わらない 其の参

2006-12-12 00:21:39 | 教育
■日本の受験生に見放されても建学の精神を下ろさずに、外国からの相当に怪しい留学生で人数を水増しして助成金を取り込もうと悪あがきする巨大な中間層が生まれ、そこから零れ落ちる無名大学は淘汰されて行くというわけです。もともと、かつての国鉄時代に急行列車が止まる駅ごとに設立された地方大学は「駅弁大学」と呼ばれましたが、その後も大学の新設は続きまして、とうとう駅も無ければ町も無いような場所に「抜群の環境」を売り物に設立された大学も多くなりました。それらの多くは、地方経済の活性化を名目にして地元選出の国会議員などが絵に描いた餅同然にゴリ押しした教育に名を借りたハコモノ行政に他なりません。それらは夕張市に並べられた馬鹿馬鹿しい夢の跡と同じ構造で生み出された「大学」と言う名の無駄な公共事業のようなものでしょうなあ。そんな新設大学を今でも認めているのが文科省というお役所です。

文部科学省が今年度中の改定を目指していた学習指導要領について、伊吹文部科学相は8日の閣議後会見で、「(今年度中の改定は)難しいのではないかと思う」と述べ、来年度以降にずれこむ見通しを示した。学習指導要領の見直しを巡っては、現在、中央教育審議会で審議が進められているが、10月に高校の必修逃れ問題が発覚し、必修科目のあり方などを改めて考え直すよう求める声が高まっていた。また、教育再生会議でも、授業時間の見直しなど学習指導要領の改定について来年1月に提言を行う予定にしており、この提言を受けた再検討の必要性も指摘されていた。伊吹文科相は「学習指導要領は法律を構成する一部とされており、教育基本法を変えようとしている時期に、現在の基本法を前提に(指導要領を)変更するのはおかしいと思う」とも述べた。
読売新聞  12月8日

■要するに、「受験に役立たない科目」を黙って履修しろ!というお達しであります。事態を放置したらどうなるかは火を見るよりも明らかでしょうなあ。先生だけは「世界史」の授業を教室で行い、生徒達はそれを無視して受験勉強をするという、恐るべき欺瞞が日本中に蔓延するだけですぞ。それを承知で「教育基本法」の改正を言い訳にして手を打たないと言うのですから、いよいよ文科省の廃止か民営化を考えねばなりませんなあ。例の文科相が書いた「お願い」作文は、東大を始めとする全国の大学にも大量に配布されたのだそうです。一体、何を考えているのやら……。

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未履修問題は終わらない 其の弐

2006-12-12 00:21:01 | 教育

(山口)県学事文書課は30日、岩国市の私立高水高校の履修単位不足が03年度から始まったと発表した。学事文書課によると、同校の履修漏れは、今春卒業した生徒が入学した03年度から行われていた。在校生のうち518人が単位不足だという。受験を控えた3年生が世界史Bを受講せずに日本史Bを履修したり、情報Aを取らずに数学2と古典の授業を受けるなどしていた。1、2年生でも情報Aではなく数学Aや古典を履修させるケースがあったという。
毎日新聞 12月1日

■絵に描いたように、一時、新聞が書き立てた未履修の手口とまったく同じです。ただ、発覚する時期が数ヶ月遅れただけで、扱いがこれだけ小さくなるわけです。これはあまり美しくもないし、卑怯千万な誤魔化しではないでしょうか?発表が教育委員会ではなく、県庁の学事文書課なのは、私立高校だからでしょうが、調査にこんなに時間が掛かるというのは、実に不思議ですなあ。


(山口県)下松市の県立華陵高の履修単位不足問題で、県教委の藤井俊彦教育長は6日の県議会一般質問で「進学指導を最優先するあまり、十分な審議がなされず、結果的に不適切な取り扱いとなった」と述べた。同校では一部の生徒が必修の「世界史A」を履修せず、選択科目の「数学C」に振り替えていたことが判明。県高校教育課によると、04年2月に翌年度のカリキュラムを決める教育課程検討委員会で「3年の理系生徒の数学の力を高めてあげたい」という意見が出たため、振り替えていた。当時の校長や教頭も同席していたという。藤井教育長は「生徒、保護者、県民の学校教育に対する信頼を著しく損なうもので遺憾。責任や問題を明らかにして厳正に対処したい」と述べ、近く関係者を処分する方針を明らかにした。
毎日新聞 - 12月7日

■これも山口県での動きです。教育委員会と校長・教頭が「談合」していたのですなあ。理系生徒の為を考えて「充分な審議」をしたからこそ、受験に不要な世界史を捨てたのでしょうに!?山口県の高校教育課の説明は支離滅裂であります。


(山口県)宇部市文京町の宇部フロンティア大学付属香川高校(浜村一穂校長、787人)が調理師免許などを持たない無資格の教員に「調理理論」などの授業をさせていたとして厚生労働省の指導を受けていたことが分かった。同省中国四国厚生局の調査で発覚。履修漏れと同様の扱いとなるため、同校は補習授業を始め、生徒や保護者に謝罪した。調理師養成施設の設置基準などを定めた指導要領では、調理理論や調理実習を指導するには、調理師であり、さらに10年以上の調理業務か調理理論の教育、研究などの経験が必要。ところが同校によると、教員2人のうち1人は調理師免許を持たず、別の1人は調理業務が10年を満たしていないなど数年前から無資格で授業を続けていた。

■宇部フロンティア大学というのは聞いた事が無い大学でしたが、ホーム・ページを見たら地方の短期大学からの格上げによって生まれた新しい大学だと分かりました。1903年に創立された香川学園が母体で、1926年に香川実科高等女学校を作り、それが1960年に宇部短期大学に発展したものの、日本中の短大で定員割れが起きた時期、2002年に宇部フロンティア大学を設立したものの、学部は「人間社会学部」一つだけだったようです。2004年には、早々と大学院人間科学研究科臨床心理学専攻を開設すると共に、宇部短期大学が宇部フロンティア大学短期大学部になって、香川高校は宇部フロンティア大学付属香川高等学校に改称されたのだそうです。中学校や幼稚園まで持っているようですから、地元では一大教育産業なのでしょうなあ。社会人教育や高校生3年生を受け容れて単位を認定する試みもしているだそうです。

■いろいろと手を変え品を変え、経営努力を続けている様子が分かります。ただ、何かと許認可が喧しい教育法人ですから、安倍総理とも何らかの関係が有るのでしょうか?


食物調理科3年の48人は昨年以降、「調理理論」と「調理実習」を受講したが、いずれも問題の教員が担当した。このため計140時間を改めて履修しなければならず、先月から補習授業を始めた。来年2月中旬には修了する見込み。同校は先月15日、臨時保護者会で経緯を説明し、謝罪した。同校は「教員資格に不備があるとは(厚労省に)指摘されるまで気付かなかった。関係者には迷惑をおかけし誠に申し訳なく、今後はこのようなことがないよう徹底を図りたい」と話した。
毎日新聞 12月5日

■本当に「教員資格に不備」が有ると気が付かなかったのでしょうか?実業系の授業に重点を置いて、各種の資格が取得できると生徒募集には書かれているというのに、教職員の資格を確認もしていないとは解せない話であります。間も無く、大学進学希望者は、大学と言う名前さえ付いていれば何処でも良い、と割り切れば全員があっさりと大学生になれる時代になります。しかし、大手の予備校が倒産を心配してる話は聞こえて来ませんし、頼りになる予備校が無い地方都市が今回の未履修問題の震源地となっているわけですから、大学受験は恐ろしい勢いで格差が広がっている証拠でしょう。つまり、一般に「大学」と認知されている所と、名前だけの大学とにくっきりと色分けされてしまっているという事です。

未履修問題は終わらない 其の壱

2006-12-12 00:20:27 | 教育
■喉元過ぎれば熱さを忘れるとは申しますが、「未履修問題」は年末になっても、実際はまだ全貌が明らかになったとは言えない状態なのです。マスコミ得意の集中豪雨報道をぱたりと止めてから、何となく問題自体が解決したような気で居ると、国家100年の計の根幹である「教育」が傷だらけの穴だらけのまま放置される事になります。一体、何が問題だったのでしょう?

福島県の富田孝志教育長が11日の県議会商労文教委員会で、高校の履修単位不足問題などの責任を取り、任期を1年残した来年3月に辞任する意向を表明した。富田教育長は自身も校長時代に虚偽の書類を県教委に提出しており、「生徒の卒業を機に3月で身を引く」と述べた。履修不足問題を主な要因として教育長が辞意を表明したのは全国で初めて。

■連続3人の県知事が「官製談合」と贈収賄で逮捕された大事件の先陣を切ったのが福島県でしたから、それを放置した県議会も針の筵(むしろ)に座らされているのでしょうなあ。実に手回しの良い事に、県知事逮捕の直前に県議会議員は「自発的に」贈収賄に関わったかどうか、議員全員にアンケート調査したのも福島県議会でありました。結果は勿論、「誰も貰っていない」という涙が出るほど立派なものでしたぞ。ところが、案の定、逮捕された前知事は、議会にも実弾をばら撒いたと取り調べで吐いたのでしたなあ。それでも、辞職した県議は1人も居ないようです。これこそ、喉元過ぎれば…の好例でしょうなあ。まさか、それの身代わりでもないでしょうが、教育長が辞任を表明したのは確かにケジメにはなります。


福島県では県立高校16校(1、2年生のみの1校含む)で未履修が発覚した。富田教育長は、福島高校校長時代の03年度に授業の実施状況報告書を偽装して県教委に提出していたことを認めている。04年度に教育長に就任したが、解決策を講じなかった。委員会終了後、富田教育長は報道陣に「未履修校の現場にいたので、けじめをつけることが必要だと考えた」と語った。同県内では、未履修問題のほか、教員の不祥事も相次いでいた。
毎日新聞 - 12月11日

■責任の取り方が昔とは様変わりした日本ですから、不祥事が発覚すると何故か頭髪が寂しくなった人を選んだかのように、必ず3人並んで頭を下げるのですが、何だかんだと言い繕ってぺこぺこしながらも「絶対に辞めない」と言い張るようになりました。教育再生会議では、教育委員会自体を廃止する案も出ているのですから、人心を刷新するためにも、こうしたケジメは大切だと思われます。しかし、未履修問題が発覚した高校は、何処も地元の名門進学校なのですから、処置を誤ると全国の教育システムの根幹が揺らぎますぞ。


8日に支給された岩手県職員のボーナスで、履修単位不足問題が発覚した県立高校の校長の勤勉手当が減額されていることが、関係者の証言で分かった。県教委は「履修単位不足が原因かはプライバシーが絡むので話せない」と、減額対象基準や減額幅などは明らかにしていない。
毎日新聞 - 12月8日

■県立高校の校長先生も、何らかの形でケジメを付けようと思っているのかも知れませんが、来年度からは未履修を絶対に許さないと岩手県は決めているのでしょうか?それは岩手県だけの問題ではなく、来年度に高校3年生になる諸君は、1年2年と時に比べて急に窮屈な時間割が強いられて当初の受験勉強プランを変更しなければならないはずです。全国の受験生がライバルとなる彼らは、自分達だけが馬鹿正直に「受験に不要な科目」の授業に無駄な時間を費やしているのではないか?と疑心暗鬼が渦巻くような事は無いのでしょうか?生徒の為に、学校の為に、と再び未履修を画策する受験の鬼のような熱血先生は大人しく文科省の指示に従うとは考え難いのですが……。


高校の履修単位不足問題で8日、青森県の県立青森北高で単位不足が判明した。毎日新聞の独自集計では、熊本県を除く675校(公立372校、私立303校)となった。
毎日新聞 - 12月8日

■まさか、こうした報道が年が明けてからも続くのでしょうか?他の大きなニュースに隠れるように、ぽろりぽろりと小さな記事で発覚するのは、集中豪雨報道に引っ掛かって吊るし上げ会見で晒し者にされてしまった校長先生や教育委員会の幹部は貧乏籤を引いてしまっただけのようにも見えて来ますなあ。もじもじ、だらだらと時を稼いで世間が未履修問題に飽きた頃まで白を切り通した者が、特別な糾弾も受けずにそっと事を処理してしまう。それで良いのでしょうか?「美しい国・日本」「教育の再生」を掲げる安倍総理のお膝元の山口県からも、この時期にぽろぽろと未履修校が出て来るのはどうしてでしょう?