旅限無(りょげむ)

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未履修問題は終わらない 其の弐

2006-12-12 00:21:01 | 教育

(山口)県学事文書課は30日、岩国市の私立高水高校の履修単位不足が03年度から始まったと発表した。学事文書課によると、同校の履修漏れは、今春卒業した生徒が入学した03年度から行われていた。在校生のうち518人が単位不足だという。受験を控えた3年生が世界史Bを受講せずに日本史Bを履修したり、情報Aを取らずに数学2と古典の授業を受けるなどしていた。1、2年生でも情報Aではなく数学Aや古典を履修させるケースがあったという。
毎日新聞 12月1日

■絵に描いたように、一時、新聞が書き立てた未履修の手口とまったく同じです。ただ、発覚する時期が数ヶ月遅れただけで、扱いがこれだけ小さくなるわけです。これはあまり美しくもないし、卑怯千万な誤魔化しではないでしょうか?発表が教育委員会ではなく、県庁の学事文書課なのは、私立高校だからでしょうが、調査にこんなに時間が掛かるというのは、実に不思議ですなあ。


(山口県)下松市の県立華陵高の履修単位不足問題で、県教委の藤井俊彦教育長は6日の県議会一般質問で「進学指導を最優先するあまり、十分な審議がなされず、結果的に不適切な取り扱いとなった」と述べた。同校では一部の生徒が必修の「世界史A」を履修せず、選択科目の「数学C」に振り替えていたことが判明。県高校教育課によると、04年2月に翌年度のカリキュラムを決める教育課程検討委員会で「3年の理系生徒の数学の力を高めてあげたい」という意見が出たため、振り替えていた。当時の校長や教頭も同席していたという。藤井教育長は「生徒、保護者、県民の学校教育に対する信頼を著しく損なうもので遺憾。責任や問題を明らかにして厳正に対処したい」と述べ、近く関係者を処分する方針を明らかにした。
毎日新聞 - 12月7日

■これも山口県での動きです。教育委員会と校長・教頭が「談合」していたのですなあ。理系生徒の為を考えて「充分な審議」をしたからこそ、受験に不要な世界史を捨てたのでしょうに!?山口県の高校教育課の説明は支離滅裂であります。


(山口県)宇部市文京町の宇部フロンティア大学付属香川高校(浜村一穂校長、787人)が調理師免許などを持たない無資格の教員に「調理理論」などの授業をさせていたとして厚生労働省の指導を受けていたことが分かった。同省中国四国厚生局の調査で発覚。履修漏れと同様の扱いとなるため、同校は補習授業を始め、生徒や保護者に謝罪した。調理師養成施設の設置基準などを定めた指導要領では、調理理論や調理実習を指導するには、調理師であり、さらに10年以上の調理業務か調理理論の教育、研究などの経験が必要。ところが同校によると、教員2人のうち1人は調理師免許を持たず、別の1人は調理業務が10年を満たしていないなど数年前から無資格で授業を続けていた。

■宇部フロンティア大学というのは聞いた事が無い大学でしたが、ホーム・ページを見たら地方の短期大学からの格上げによって生まれた新しい大学だと分かりました。1903年に創立された香川学園が母体で、1926年に香川実科高等女学校を作り、それが1960年に宇部短期大学に発展したものの、日本中の短大で定員割れが起きた時期、2002年に宇部フロンティア大学を設立したものの、学部は「人間社会学部」一つだけだったようです。2004年には、早々と大学院人間科学研究科臨床心理学専攻を開設すると共に、宇部短期大学が宇部フロンティア大学短期大学部になって、香川高校は宇部フロンティア大学付属香川高等学校に改称されたのだそうです。中学校や幼稚園まで持っているようですから、地元では一大教育産業なのでしょうなあ。社会人教育や高校生3年生を受け容れて単位を認定する試みもしているだそうです。

■いろいろと手を変え品を変え、経営努力を続けている様子が分かります。ただ、何かと許認可が喧しい教育法人ですから、安倍総理とも何らかの関係が有るのでしょうか?


食物調理科3年の48人は昨年以降、「調理理論」と「調理実習」を受講したが、いずれも問題の教員が担当した。このため計140時間を改めて履修しなければならず、先月から補習授業を始めた。来年2月中旬には修了する見込み。同校は先月15日、臨時保護者会で経緯を説明し、謝罪した。同校は「教員資格に不備があるとは(厚労省に)指摘されるまで気付かなかった。関係者には迷惑をおかけし誠に申し訳なく、今後はこのようなことがないよう徹底を図りたい」と話した。
毎日新聞 12月5日

■本当に「教員資格に不備」が有ると気が付かなかったのでしょうか?実業系の授業に重点を置いて、各種の資格が取得できると生徒募集には書かれているというのに、教職員の資格を確認もしていないとは解せない話であります。間も無く、大学進学希望者は、大学と言う名前さえ付いていれば何処でも良い、と割り切れば全員があっさりと大学生になれる時代になります。しかし、大手の予備校が倒産を心配してる話は聞こえて来ませんし、頼りになる予備校が無い地方都市が今回の未履修問題の震源地となっているわけですから、大学受験は恐ろしい勢いで格差が広がっている証拠でしょう。つまり、一般に「大学」と認知されている所と、名前だけの大学とにくっきりと色分けされてしまっているという事です。

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