北朝鮮の核問題解決を目指す6カ国協議が16日にも再開される見通しになったが、北朝鮮は依然、米国側提案に対する明確な回答を示していないようだ。北京の6カ国協議関係者によると、北朝鮮の金桂冠(キムゲグァン)外務次官と米国のヒル国務次官補、中国の武大偉外務次官が先月28、29の両日に協議した際、ヒル氏は寧辺(ニョンビョン)核施設の停止・解体や国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れなどを要求。これに対し、金次官は回答を保留し、そのまま自国に持ち帰った。……「北朝鮮は日程には前向きな姿勢を示している」と指摘する一方、米側の要求には「明確な返事を避けたままだ」と明らかにした。
■完全に北朝鮮は有利な取り引きの皮算用に入っています。米国は焦って交換条件を口にしてしまったのですから、北朝鮮は表向きは「日程」を議題にしつつ、取り分を何処まで吊り上げられるか必死で計算しているでしょう。一方の米国は言い放しの印象が強いですなあ。
……北朝鮮は最近、6カ国協議の枠内での拉致問題提起を主張する日本について「否定役を演じることになる」(6日・朝鮮中央通信論評)と批判して参加を拒否。一方、韓国に対しては「(核攻撃は)同族として想像できない」(先月23日・北朝鮮祖国統一民主主義戦線中央委員会)と強調して自国の立場への引き込みを図るなど、参加国の分断を図ってきた。
毎日新聞 - 12月9日
■日本を協議から締め出す工作が着々と進んでいるのに、肝腎の米国からは日本に対するフォローが聞こえて来ません。イラク問題で手一杯だ!と言われれば、気遣い金遣いの日本政府としては黙って待っているしか無いのでしょうなあ。歯痒い限りであります。
米国の北朝鮮人権委員会によると、2004年8月から2005年9月まで瀋陽など中国と北朝鮮の国境付近の9地域で脱北者1346人を対象にアンケート調査を実施した結果、全体の97%が「北朝鮮に戻るつもりはない」と答えた。
■こんな調査が出来るということは、米中間の交渉は相当に進んでいると思われます。少なくとも、日本は拉致問題に関して調査しようとしても韓国でも中国でも、何の動きも取れないわけですから、米国の人権委員会が好き放題?に脱北者を見つけ出してインタビュー調査が出来るのとは雲泥の差です。それも、日本のマスコミが時々スクープする証言者の数とは比べ物にはならない1300余人というのですから、これは大調査ですなあ。
委員会のチャン・ユンオク研究員らが7日に明らかにした報告書は、脱北者のほとんどが北朝鮮に家族がいるにもかかわらず帰国する意思がないと回答したことについて、迫害に対する恐怖心が脱北者の帰国意思を喪失させる根本的な障害で、脱北者らに難民の地位を与えなければならない明白な理由になっていると強調した。 ……脱北者の3分の2に当たる64%が「韓国行き」を、19%が「米国行き」を希望していることが分かった。脱北した動機については、経済的な理由が95%を占め、政治に対する不満や迫害は4%にとどまった。
■飢餓線上を彷徨って逃げ出した人達ですし、教育と言えば神懸かり的な主体思想と指導者を神聖視する話しか聞かせて貰えないのですから、「政治」を語る資質も動機も無いのは当然でしょうなあ。それにつけても、日本に行きたいという人が皆無に近いのは興味深いことです。
……脱北女性らは中国で人身売買や強制結婚の犠牲となっており、1人当たり平均1900元(約244ドル)で売買されていることが確認された。北朝鮮での生活に関しては調査対象者の67%が、この2年間北朝鮮の食糧事情が改善されていないと答えた。国際社会が北朝鮮に食糧を支援している事実を知っていると回答した脱北者は57%で、このうち食糧支援を受けたと答えた脱北者は3%にすぎなかった。
YONHAP NEWS 12月8日
■国連や各種のボランティア団体が、食糧や医療の援助を続けていますし、中には「効果が上がっている!」と言い張っている人も多かったようですから、支援を受けたと証言したのが「3%」というのは重大な数値です。食糧を運び込んだ団体の中には、横流しや軍隊に優先的に配給している事実を隠すアリバイ用に撮影された給食活動の映像を持ち帰った人も居て、それを垂れ流したマスコミ有りましたなあ。日本の政治家の中にも軽薄な「人道主義」を振り回す人も居ますから、是非ともこうした調査結果に関するコメントが欲しいところですなあ。
中国外交部の秦剛・報道官は7日に開かれた定例記者会見で「中国に不法滞在している朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の人たちは難民ではない。彼らは(大使館など)外交機関や学校などに押し入って中国の法律に違反している。中国としては国内法、国際法、人道主義の原則に従って適切に処理している。事を荒立てないでほしい。いわゆる難民問題とは無関係だ」と述べた。
サーチナ・中国情報局 12月8日
■北朝鮮と米国の間で問題になっているのは核兵器で、人権問題はオマケみたいな扱いになってしまいましたが、米中関係となりますと、徐々に経済摩擦が顕在化していますが、やはり「人権問題」が主要なものになります。中華3千年だろうと4千年であろうと、人権思想などとは無縁な文明を誇って来た伝統を継承しているような国に、突如として欧州生まれの人権思想を押し付けると、何でもかんでも人権の旗を押し立てて暴動が各地に起こるのは目に見えています。鴨緑江を越えて脱出して来る朝鮮族の人達を、人権思想に基づいて手厚く保護したりしたら、国内で広がる深刻な格差の中に放置されている朝鮮族の人々が騒ぎ出しますし、そんな火種が生まれたらあっと言う間に全土で少数民族問題が火を噴くでしょうし、古代から続いている都市と農村との戸籍問題も大爆発を起こしてしまうに違い有りません。
■従って、「6箇国協議」の場で人権問題が取り上げられたりすると、議長国の立場上、他人事として扱えっていられなくなる危険が有ります。「国内法、国際法、人道主義の原則に従って適切に処理している」ということで善処して頂き、協議では北朝鮮の核兵器だけを扱いたいというのが本音であることが、「事を荒立てないでほしい」という珍しく哀願調のコメントに表れていますなあ。
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