旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

アフリカという宿題 其の弐

2006-12-09 19:49:09 | 外交・世界情勢全般

映画は04年にベネチア国際映画祭でワールドプレミアされ、欧州の映画祭を中心に数々の賞を受賞。今年のオスカーの有力候補になった。ナイルパーチは欧州でも人気で、日本にも切り身が年間約3000トン輸入されている白身魚。欧州では、映画の影響でナイルパーチのボイコット運動が起こり、タンザニア大統領が映画に批判声明も出している。

■ナイルバーチという魚は聞いた事がないのですが、回転寿司のネタにでもなっているのでしょうか?それとも「白身魚」の冷凍食品にもでも加工されているのでしょうか?タンザニアから運び込んででも食べたい美味なのでしょうか?


関係者によれば、E・E・E・ムタンゴ大使は先月28日、配給会社のビターズ・エンドを訪れ、同社の定井勇二社長と面談。大使は「公開を差し止めることができないのは分かるが、見解を理解してほしい」と主張。「映画はうわさを事実に見せかけたもの。魚貿易は重要で成功しているビジネス。それがなければ、医薬品などが買えなくなってしまう。欧州では収益が減り、非常に困っている。日本の映画会社にはアフリカのよい面をもっと見せてほしい」などと訴えた。定井社長は「この映画はアフリカの悪いイメージを流布するための作品ではなく、グローバリゼーション(地球規模化)の問題点を描いたもの」と説明した。世界を動かしたドキュメンタリーは日本で、さらなる論議を呼びそうだ。……
スポーツ報知 12月6日

■確かに、この作品を観て「ナイルバーチ」を食べたくなる人は居ないでしょうから、親切なマスコミがどんな場所で購入できるのか、或いはどんな加工食品に使われているのかを詳報してくれるでしょうから、不人気商品となるでしょうなあ。もう一つ、アフリカ関連のニュースが気に懸かりましたぞ。


アフリカ中西部のコンゴ共和国で、エボラ出血熱のためゴリラ(ニシローランドゴリラ)が大量死したことが独マックスプランク研究所などの調査で判明、8日付の米科学誌サイエンスに発表された。感染が広がった同国のロッシ保護区西部(2700平方キロ)では、5000頭以上が最近5年間でほぼ全滅したと推定。アフリカ中西部は最大のゴリラ生息地で、同研究所は「絶滅の恐れが急激に高まっている」と指摘している。

■エボラ出血熱は、米国東部に侵入したと言うので大騒ぎとなって、本の『ホット・ゾーン』や映画の『アウトブレイク』でもその恐ろしさが描かれましたが、何となく忘れ去られてしまっておりました。もともと、野生動物の生息地帯に人間が勝手に侵略したのが原因だと言われている新種のウィルスですから、巨大な魚を養殖するのと同じ構造から生まれた問題なのであります。単純に密林の開発を止めろ!と言うのは、貧困を我慢しろ、と言うのと同じ事になってしまうので根強い南北格差の解決策が見つからないと問題は解消しそうにありません。


エボラ出血熱はエボラウイルスが原因の感染症。頭痛や筋肉痛の後に体内で大量出血し、致死率が高いことで知られる。アフリカのサハラ砂漠より南で流行している。研究チームは、同国とガボンの国境付近の住民にエボラが流行した01年以降、人だけでなく周辺の森でゴリラも相次いで死んだことに注目。流行地に近いロッシ保護区やその周辺でゴリラの感染や生息状況を調べた。その結果、同保護区西部では、エボラ流行前に1平方キロ当たり約2頭生息していたゴリラが、ほとんど観察できなくなった。また、02年10月から4カ月間に個体識別できた143頭中、130頭がエボラのため死んだとみられ、致死率は90%を超えた。

■予防策が無いと言われる恐ろしい感染症ですから、その凄まじい症状ゆえに国際的な監視網が布かれているわけですが、アフリカでゴリラを宿主とする感染爆発が起こったとなると、日本の熊問題とは比較にならない大問題ですぞ。ゴリラは生息条件がなかなか厳しく、その条件が崩れると個体数が激減する弱い生き物とされています。これに関しては『愛は霧のかなたに』という、ゴリラとは何の関係も無いような邦題が付いた映画が有りましたなあ。


ゴリラは森林伐採や農業などの影響で生息地を奪われ、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧(きぐ)種に登録されている。世界自然保護基金(WWF)ジャパンによると、3種類の亜種の合計で数万頭しかいないとの推計もある。ロッシ保護区は他の生息域より生息密度が数倍高い地域だった。同研究所のピーター・ワルシュ博士は「狩猟で追い打ちがかかると、絶滅の恐れがさらに高まる」と警告する。

■種の絶滅は悲しいことですが、人間と肉体構造が酷似しているゴリラがエボラで絶滅となると、それこそ他人事ではなくなります。
【田中泰義】

▽アフリカの感染症に詳しい山本太郎・外務省多国間協力課課長補佐(医療生態学)の話 ゴリラやチンパンジーなどの霊長類が絶滅に向かうと、ウイルスは自らの生き残りをかけ、新たな宿主を求めることがある。その時、人類が新たな宿主になる可能性が高い。
毎日新聞  12月8日

■グローバル化は金と人とが世界中を自由に動き回る現象ですから、様々な感染症の「宿主」さんも自由に移動する可能性が高いわけです。日本の隣にも、どうやら感染症の爆発が起こると危惧されている大きな国が有りますが、最初にアフリカで問題の解決策を見つけておかないと、それに続く他の地域でも打つ手が無くなって爆弾の誘爆みたいなことになりそうです。21世紀はテロの世紀であると同時に、「アフリカの世紀」になるのでしょうなあ。

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アフリカという宿題 其の壱

2006-12-09 19:46:24 | 外交・世界情勢全般
■日本では北朝鮮、米国ではイラクに注目が集まっている中で、数年前から欧州ではアフリカが取り上げられていましたなあ。イスラム過激派のテロ事件は世界中の悩みのタネになっていますが、それもアフリカが無関係ではありません。どうも、アフリカは日本から遠過ぎるからか、あるいは広過ぎるからか、つかみ所が無い理解するのに苦労する場所のようです。しかし、イラクで愚かな泥沼体験を繰り返している米国では、欧州に連動するようにアフリカに向かう視線が増えているようです。クリントン時代にソマリアで大恥を掻き、スーダンでも失態を演じた米国ですが、さすがに立ち直りが早いと申せましょうか、世界に売れる数少なくなったメイド・イン・アメリカ商品の映画でも、アフリカが熱いようであります。

人気俳優レオナルド・ディカプリオ主演の米映画「ブラッド・ダイヤモンド」(原題)が8日、米国で封切られた。アフリカ各地の紛争の元凶ともされる「紛争ダイヤ」がテーマなだけに波紋を広げ、イメージ悪化による不買運動を警戒するダイヤ業界は戦々恐々としている。映画の舞台は1999年のシエラレオネで、反政府勢力が拉致した住民を使ってダイヤを採掘し、軍資金にする様子が描かれている。 
時事通信  12月9日

■日本でも、『金色夜叉』の時代から女性たちがダイヤモンドの輝きに魅了されているわけですが、その裏側はどうなっているのでしょう?少なくとも日本列島からはダイヤの鉱脈は発見されていないので、遠い国から輸入されているのだろうなあ、ぐらいにしか考えず、これまた米国辺りから入って来た指輪文化やら洋装のアクセサリー文化がすっかり根付いた日本国ですから、少しは美しく輝くダイヤモンドに貼り付いている血生臭い現実にも目を向けて良い頃合なのかも知れませんなあ。俳優のディカプリオ君は『タイタニック』でもアカデミー賞を貰えず、次のハワード・ヒューズをモデルとした大作映画でも酷評され、今度は政治的なメッセージの強い作品に挑戦したのでしょうが、なかなか刺激的な作品を選んだものであります。傑作だった『ロード・オブ・ウォー』を越える作品を期待したいものです。

■でも、この種の映画が商業的に大当たりするのは難しく、それに加えてアカデミー賞の選考委員会にも、業者や政府から変な圧力も加わりそうですし……。マイケル・ムーアの抱腹絶倒?のドキュメンタリーは奇跡的に評論家達の反骨精神に訴えるものがあったようですが、さてさて、アフリカ問題の映画がどんな評価を受けるのでしょう?楽しみなことです。何でも米国大好きな人が多い日本ですから、こういう流行にも影響される人が増えると宜しいですなあ。


今年の米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた仏豪合作映画「ダーウィンの悪夢」(フーベルト・ザウパー監督)の23日公開をめぐって、タンザニア連合共和国の特命全権大使が抗議していることが5日、分かった。同作はアフリカ最大の湖・ビクトリア湖に、巨大な肉食魚が放たれたことから、地域経済が潤う一方で貧困、売春、エイズ、湖の環境悪化などの惨劇が連鎖する姿を描いたもの。大使は配給会社を訪れ、公開はアフリカのイメージダウンになると訴えている。

■日本でもブラックバスなどという、不味くて食べられない大きな魚を釣り上げたら楽しい!という乱暴な趣味を持った人によって、あちこちの湖沼の生態系がずたずたにされて騒動になっていますが、アフリカのビクトリア湖ともなると、日本の琵琶湖の騒ぎと桁が違います。勿論、あちらは娯楽の魚釣りを楽しむ余裕など有りませんから、輸出して外貨を稼ぐ水産資源を当て込んで放流した魚が国家的な大問題を引き起こしたというお話です。この愚かなプロジェクトを熱心に推進し援助したのがEUだというのですから、懲りないものですなあ。


駐日タンザニア大使が問題作の日本公開にかみついた。過去、国や企業がイメージを傷つけるとして映画に批判声明を出したケースはあるが、政府高官が日本の配給会社を訪れ、直接抗議するのは極めて異例だ。同映画は「ダーウィンの箱庭」と言われたビクトリア湖をめぐるドキュメント。半世紀前に、ナイルパーチという大型の肉食魚が放たれ、繁殖。湖畔の町はこの魚を加工、輸出する一大産業に発展。その一方、新しい経済が生み出した貧困、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグ、湖の環境悪化など悪夢の連鎖が起こっていく…。

■何でも、ここに出て来る「ドラッグ」というのが、阿片や大麻などではなく、巨大魚を梱包するプラスチック容器を加工して作るのだそうで、日本の愚かな若者が貴重な脳みそを壊してしまうシンナーやトルエン遊びと似たようなもののようです。あちらは廃物利用ですから、随分と安価で出回っているそうですが、若い廃人が大量に出るのは悲惨です。上手く漁業利権に食い込んだ人達は農村を捨ててこの巨大魚産業に携わり、成金気分になると何処も同じで酒と女に散財するようになるので、田舎の娘さんが売春宿に集まって、お決まりのエイズの蔓延……。

ブッシュ・サンタがやって来る? 其の参

2006-12-09 13:09:06 | 外交・情勢(アメリカ)

アナン国連事務総長は7日、米国の超党派の「イラク研究グループ」がイラク政策転換を勧告したことを受け、ブッシュ大統領が検討する意向を表明したことについて、「極めて前向き」と評価するとともに、イランやシリアとの協議を改めて求めた。「イラク研究グループ」は、アナン事務総長への聞き取りなどを踏まえ、6日に79項目にわたる勧告書を発表した。……アナン事務総長は「大統領は報告を検討し、手続きの踏み方や実践方法、予想される事態などについて決定を下さなければならないだろう。だが、すでに知られているように、私はこれまで、米政権に対してイランとシリアとの協議を行うよう求めてきた」と述べた。……
ロイター  12月8日

■国民の6割以上がキリスト教徒のガーナ出身で、スウェーデン人の奥さんが居るアナンさんですから、きっとキリスト教徒なのだと思われます。土着宗教やイスラム教もガーナには一定の割合を持っているそうですから、もしかしたら違ってるかも知れませんが、少なくともイスラム教徒ではなさそうです。国連としてもクリスマスの雰囲気を大いに利用したいところですから、この際、アナンさん個人の信仰は問題にならないでしょう。「イラン研究グループ」が手回し良くアナンさんの意見を聞いていたという事実が重要です。国連を小ばかにしていたボルトン大使が罷免されるのも当然で、アナンさんにとっても今年は良いクリスマスを迎えられそうですなあ。心の中で「ざまあみろ」などと小さく呟きながら……。

■とは言え、同じキリスト教国のオーストラリアは立場が違っているようです。南半球だから、という訳でもないでしょうが、北隣に巨大なイスラム国を持って何かと憎まれている国ですから、イラクで実質的な勝利を得たテロリストが、近所に舞い戻って来られたら大変です。ユダヤ教徒のイスラエルも事情は同じで、米国の戦略がなし崩しに軟化して行くのを苦々しく思っているようです。日本の政府は総理がもじもじしているので、変な声が閣僚の中からぽろぽろ出て来て収拾が付かない状態です。困った物ですなあ。


米上院軍事委員会は7日、超党派諮問機関「イラク研究グループ」の共同代表を務めるジェームズ・ベーカー元国務長官と、リー・ハミルトン元下院議員を招いて公聴会を開き、グループが6日にまとめたイラク政策見直しの報告書について質疑を行った。共和、民主両党の議員らは、79項目の勧告内容を総じて評価しつつも、具体的な提案の実効性については懐疑論も出され、内戦状態と評されるイラクの現状を立て直す難しさを改めて浮き彫りにした。

■戦争を始める時も訳の分からない情報分析が行われたのですから、終わらせる時にも身勝手な画餅(がへい)が提出されるのも不思議ではありません。ブッシュ政権のイラク政策は大失敗!という事は誰もが認めているのですから、「報告書」は福音(ふくいん)です。でも、報告書が暗に提案している撤退計画を急ぐと、クリスマスは米国の国内に限定されたお祭りになる可能性が有りますなあ。


公聴会で焦点のひとつとなったのが、イラク国内の民兵組織に影響力を持つとされるイランやシリアと交渉入りすることの是非だった。リーバーマン議員(民主)が、「イランが米国のイラクでの成功を助けようとするか、疑問に思う」と指摘したのに対し、ベーカー代表は、自らがイラン政府高官と接触した際に「助けるつもりはない」との反応を得たことを認めた上で、「協力しない場合、(イラクの進展を)拒否する勢力として人々の目にさらせばいい」との見解を示した。
読売新聞  12月8日

■イランに頭を下げずに、脅迫して協力させる心算のようです。ベーカーさんもお年のせいで外交感覚が鈍ったのでしょうか?米国が脅迫すれば、イランはそれを世界中に喧伝してイスラム諸国のリーダーにのし上る道具にするに決まっているではありませんか?!「協力」と言っても、そもそも米国が勝手に始めた間違った戦争の後始末に対する「協力」なのですから、頼み方が悪ければ火に油を注いでしまい兼ねませんなあ。イラクには大量破壊兵器も核兵器も無かったのに、下手くそな戦争を仕掛けたお陰で、その後始末のためにイランと言う新たな核保有国を中東に出現させてしまう事になりそうです。ほとほとブッシュ・サンタさんは困ったプレゼントを世界にばら撒いたものであります。小泉サンタさんは、オペラ見物をしてクリスマスを過ごすのでしょうか?それとも、白い袋を背負って平壌くんだりに出かけて行くのでしょうか?

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ブッシュ・サンタがやって来る? 其の弐

2006-12-09 13:08:39 | 外交・情勢(アメリカ)

米政府に近い筋は8日、読売新聞に対して、6か国協議が18日の週に北京で再開されると述べた。同筋は「協議はおそらく16日に始まる。少なくとも、18日の週に協議が実施されるのは米政府の了解事項だ」と述べた。外交筋も「月内再開の可能性は否定できない」と話している。米首席代表のクリストファー・ヒル国務次官補は先月末に北京で北朝鮮首席代表の金桂寛・外務次官と会談し、金融制裁問題や食糧支援などを6か国協議の枠内でとりあげることなどを条件に、協議再開に際して北朝鮮が核実験場の封鎖や国際原子力機関(IAEA)要員の核施設査察などに応じるよう求めていた。
読売新聞 12月9日

■最初から北朝鮮が求めていた2カ国間の直接交渉に応じていたら、テポドンも飛ばなかったし、地下核実験も行われなかったという事になりますなあ。まさか、北朝鮮が長距離核ミサイルと核弾頭を持つのを米国は望んでいたのではないのか?!と勘ぐりたくもなる流れです。日本にバカ高い迎撃ミサイル・セットを買わせるため?莫大な開発費を回収するには、支払い能力の有る根性なし国家に売り付けないと大損害になってしまいますからなあ。


米ホワイトハウスは8日、北朝鮮が10月9日に核爆発装置を起爆させたと認定し、米国内法に基づいた追加制裁を発動するとのブッシュ大統領の決定(7日付)を発表した。非核兵器国による核実験実施の際に自動的に適用される制裁で、兵器禁輸や米金融機関による信用供与の禁止などが主な内容だが、人道援助は除外される。米国は既に北朝鮮に各種経済制裁を実施しており、今回の措置の実質的効果は薄いと見られる。……10月の北朝鮮の実験で核爆発が起きたとの判断を公表済みだったが、大統領による核実験認定は初めて。今回の制裁は兵器輸出規制法の通称「94年グレン修正条項」や原子力規制法に基づくもので即時発効する。米政府は98年にインドとパキスタンが核実験を行った際にも同様の措置を取った。
毎日新聞 12月9日

■威勢の良い話のようですが、結局は北朝鮮を「核保有国」と認定したという事でしょう?次から次に、クリスマス前にころころと話が変わって行きます。クリスマスが一年で最も高揚感のある季節だと信じ込んでいる人達には、クリスマスに向かって良い事が加速度を増して増えて行くのは当然なのかも知れませんが、特段の感慨も抱かない異教徒にとりましては、どうも、わざとらしさが鼻に付きます。「宗教は毒だ阿片だ!」と断罪した社会主義に加えて、天子様を尊崇する儒教を国家思想にしている北朝鮮ですが、ブッシュ大統領が次々と要してくれるクリスマス・プレゼントに狂喜乱舞しているのではないでしょうか?これを期に金ファミリーがキリスト教に改宗して、近付く「亡命生活」に備えるかも知れませんなあ。案外、欧州で暮らしている子供や親族の中には「隠れキリシタン」が居るのかも?


トム・ラントス次期米下院外交委員長(78)=民主党=は8日、一部の記者団と会見し、日本と中韓の関係が改善されれば「われわれすべてが恩恵を受ける」と語り、関係改善に期待を表明した。また、来年前半にも北朝鮮を訪問したいとの意向を明らかにした。 
時事通信  12月9日

■おいおい、これでは「6箇国協議」の場で日本が完全に孤立してしまうではないか?!先月、北朝鮮が「日本なんかお呼びでない!」と暴言を発したのと同じ事を、米国民主党の外交委員長が発言するとはどうしたことでしょう?既に北京政府と相当の打ち合わせが済んでいるという事でしょうか?日本の外務省もほいほい乗ってしまいそうな気配が濃厚ですぞ。安倍総理の最後の切り札、北朝鮮に対する厳しい態度の化けの皮が剥がれたら、もう御仕舞いですなあ。


8日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、日本銀行が年内の追加利上げを見送るとの見方を背景に大幅な円安となり、午後5時、前日比1円6銭円安・ドル高の1ドル=1116円27~37銭で大方の取引を終えた。一時は、約2週間ぶりの円安となる116円51銭まで下落した。ヘンリー・ポールソン米財務長官がテレビ番組のインタビューで「強いドル」を支持すると発言したことも、円売り・ドル買い材料となった。
読売新聞 12月9日

■経済面でも、強いドルと弱い円が日米両国にとってはクリスマス・プレゼントになりますから、これもサンタさんの贈り物かも知れません。日銀と米国財務省との間で話が付いているような気もしますなあ。日本の銀行もゼロ金利で大儲けして笑いが止まらず、ちょっと前まで税金で露命をつないでいたというのに、今ではすっかり元気になって生意気に政治献金などしているそうですから、利上げなどはトンデモないことだと思っていることでしょう。


ブッシュ米大統領とブレア英首相は7日、ホワイトハウスで会談後、共同記者会見した。ブッシュ大統領は、宗派間対立が続くイラクでの難局打開に向け、「我々は新しいアプローチを必要としている」と述べ、最大規模の軍を派遣している米英両国が、イラク政策を見直す方針を明確にした。米政府筋によると、大統領は国防総省と国務省、国家安全保障会議(NSC)がそれぞれ行っている内部見直しの結果報告を受け、クリスマス前にイラク新政策についての演説を行う。共同会見で大統領は、「米英両国は難しい時期を迎えている。我々の任務はやっかいだ」とイラク政策の行き詰まりを認めた上で、「現状を分析し、戦術・戦略を練り直すのは意味のあることだ」と、様々な提案に耳を傾ける姿勢を示した。
読売新聞 12月8日

■英国のブレアさんも立派な英国国教会の信徒さんでしょうから、サンタさん役を演じたい気持ちは強いでしょう。二人とも「クリスマスまでには…」という共通の話題で盛り上がっているのかも知れません。ローマ法王も命懸けで?トルコのイスタンブールに出掛けて行きましたし、何だかキリスト教国が手に手を取ってクリスマスを目指して急いでいるように見えますなあ。

ブッシュ・サンタがやって来る? 其の壱

2006-12-09 13:08:09 | 外交・情勢(アメリカ)
■クリスマスがやって来ます。でも、そもそもクリスマスとは何だ?としみじみと考える余裕など無いまま、クリスマス商戦の最前線に呼び込まれてしまう非クリスチャンが日本中に溢れているようであります。クリスマスの起源については様々な説が出されているのですが、少なくとも歴史的に実在したイエスさんの誕生日ではない事だけは確かなようです。「西暦」の暦算起点とされる紀元1世紀の初年もイエスさんの誕生年ではありません。どうやら多神教文化を持っていたローマ帝国が、北方の森林に住む野蛮人?を懐柔するために広めたキリスト教が現地の土着信仰と融合して、冬至=太陽の死と、翌日の再生を祝う恐ろしく古い伝統が「神の子の誕生」やら「キリストの復活」という聖書の物語に織り込まれた結果らしいですなあ。

■年の始まりを冬至とする文化は世界中に生まれたそうで、要するにクリスマスは宗派の違いとは無関係にやって来る冬至、つまり太陽の再生をお祝いするお祭りということになるのですなあ。太陽の復活を祝う文化は日本にもちゃんと有って、それが大和朝廷時代に冬至より早い「新嘗祭」を盛大に祝うようになり、徐々に天皇の崩御と践祚(せんそ)の儀式を太陽の死と再生と重ねて、即位を祝う「大嘗祭」が最大の権威を持つ儀式になって現代に到っているようです。それはそうと、米国生まれのクリスマスには、完全防寒のサンタ・クロースが、北欧やシベリアにしか生息しないトナカイさんに、これまた酷寒の地でしか使わない大型の橇(そり)を引かせて、何故か世界中の子供に贈り物を持って走り回るのだそうです。赤道に近いところや、南半球のサンタさんは毎年汗だくでご苦労が堪えません。ブッシュ大統領の地元、テキサスあたりでも、雪が無いので公園の樹木に白いペンキを吹き付けて強引に「ホワイト・クリスマス」を演出しているようですぞ。

■赤と白でデザインされたサンタさんのファッションも、これまた米国アトランタに本社を置いているコーラ会社が、自社製品に使っている色をイメージさせるように、白い髭と赤と白の衣装を着たサンタさんがコーラの瓶を持って笑っている宣伝ポスターを制作したのが始まりだそうですから、今のクリスマス商売の発祥の地は米国南部という事になります。ブッシュ大統領はアル中を治してくれた聖書の神様を熱烈に信仰しているので、自分自身をサンタさんになぞらえている節が有りますぞ。誰もが笑ってしまうでしょうが、イラクの子供達にも「民主的な国家」をプレゼントしようと思い立ったのかも知れません。本音ではイスラム諸国の可哀想な子供達にキリスト教信仰をプレゼントしたいのでしょう。まったく傍迷惑な話です。まあ、戦争に負けた日本がクリスマス大好き!民族に大変身したのですから、別の国でも同じ現象が起こると思い込むのも無理は無いのではありますが……。


ブッシュ米大統領は7日夕、ローラ夫人を伴い、歳末恒例のホワイトハウスのクリスマスツリー点灯式に出席。イラク戦争開戦から4度目の点灯式で、大統領は「故郷を離れ、家族と別れて国につくす勇士に感謝したい。彼らの献身は国民の誉れである」と演説した。「ナショナル・クリスマスツリー」の名で親しまれるホワイトハウスのツリー点灯式は、1923年のクーリッジ大統領当時から戦時も絶えることなく続いている。大統領の演説や式典の演出は、政治メッセージを込めて工夫がこらされる。
フジサンケイ ビジネスアイ 12月9日

■1920年代、それは最近話題の『ギャツビー』の舞台となった米国が狂った時代でした。有り余るバブル・マネーで沸き立っている好景気の熱気が、ホワイトハウスにクリスマス・ツリーを生み出したのでしょうなあ。そこを聖別して、ホワイトハウスをエルサレムかローマに見立て、大統領はちょっとしたローマ教皇の代役を気取って世界の平和や何やらを祈るというわけです。そんな米国特有の宗教儀式をしながら、また来年も、世界の何処かの国に「プレゼント」を持ち込むのでしょうなあ。新任のローマ教皇様が、中世の文書を引用して「イスラム教は残虐」と言って大騒ぎとなりましたが、残虐さではキリスト教徒の方が勝っていますぞ!十字軍もナチスも敬虔なキリスト教徒でしたし、広島と長崎に投下された原爆も出発直前に「神の祝福」を受けております。


ホワイトハウスのダナ・ペリノ副報道官は8日、ブッシュ米大統領がクリスマス前にイラク新政策に関する演説を行うと発表した。大統領は演説に先立ち、11日に国務省、12日にイラク駐留米軍司令官、13日には国防総省からそれぞれイラク政策見直しに関する報告を受ける。6日に発表された超党派諮問機関「イラク研究グループ」の報告書と合わせ、ハドリー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が包括的なイラク新政策にまとめあげる。
読売新聞  12月9日

■米国大統領は巨大な赤字財政を背負っているので、世界中の子供達に玩具をプレゼントするわけには行かないので、「演説」をそれに代えています。「悪の枢軸」と名指しされたイラクが、この世の地獄になってから今年で3年目、3000人近い米国の若者が天に召され、生きて戻っても心と体に大きな傷を負って苦しんでおります。特別ボーナスに惹かれてイラクに行って戻ったら、そのボーナスを使う目的が消えていた……。彼らはどんなクリスマスを過ごすのでしょう?ブッシュ大統領は彼らを個別に訪問して慰めたり元気付けたりする「勇気」はないでしょうなあ。何をされるか分かりませんから……。

何だか変だぞ、防衛「省」 其の参

2006-12-09 01:32:21 | 政治

久間長官の発言について大田氏は委員会終了後、「国としてそういう発言をするのは聞いたことがない」としながら、「沖縄戦は現実に起きたこと。『悲劇が少なかったかもしれない』と仮定の話にするのはおかしい。沖縄戦の実態をよく知らないから、ああいう発言になるのではないか」と話した。

■沖縄戦どころか、イラク戦争に関する理解も怪しいものです。小泉さんと野中さんとの暗闘の中で頭角を現したことになっているようですが、それなら小泉さんの対米外交に水を差すような事を言うのは変な気もしますし、出身が長崎県というのも沖縄問題に関する発言との違和感が有ります。経歴を見ると東大法学部を卒業後に農林省の官僚をしていたとの事ですから、本来は農政が専門なのかも知れませんなあ。一説には、先の大戦の指導層が際限も無い領土拡大に執着したのは、根っからの農業思考が禍したのだという話も有りますから、もしも久間さんが農政に関して優れた見識をお持ちならばポストを間違えた事になります。勿論、橋本内閣で防衛庁長官を務めた経験を買ったと言いたげな安倍総理の人事能力の問題なのですが……。

 
沖縄戦研究で「本土決戦」を遅らせるため沖縄守備軍・第32軍が採用した戦略持久作戦が住民や兵士の犠牲を増大させたと指摘されているが、防衛庁長官が軍隊の有無と犠牲の規模のかかわりについて答弁したのは異例。
琉球新報 - 12月8日

■久間さんの混乱した理屈に付き合うには、暇と度量が必要なようです。そんな事よりも、防衛庁が「省」に昇格する前にやるべき事がたくさん有るという現実の方が重大です。


イラク戦争を主導する米中央軍の司令部がイラクやクウェートの基地にある空輸予定物資の数量を多国籍軍に伝えた資料や、航空自衛隊那覇基地でのゲリラ侵入訓練の資料がインターネット上に流出していることが分かった。航空自衛隊は29日、流出元とみられる隊員の私有パソコンを押収し、本人から事情聴取を始めた。防衛庁は今年6月、自衛隊情報の流出で47人を処分し、内部資料の持ち出しなどを禁止する対策を取ったが、その後の情報管理のあり方が厳しく問われそうだ。

■防衛庁からの機密漏洩問題は、旧ソ連時代から繰り返されている醜聞であります。今年になってからも、麻薬汚染と同時に発覚した私有パソコンからの情報漏れが発覚して税金を使って職務専用の機材を支給したはずなのですが……。


イラクに派遣された空自那覇基地所属の隊員の私有パソコンがファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」の暴露ウイルスに感染したとみられ、11月下旬に流出した。データはフロッピーディスクで計約140枚分にのぼり、空自は流出経路を調べている。空自などによると、米軍資料は米中央軍司令部が作成し、イラク、クウェートなどの基地にある輸送前の物資のコンテナ数を記載。06年6月初めから7月初めの日付で「SECRET(秘密) REL(伝達) MCFI(多国籍軍)」と書かれており、秘密情報として多国籍軍に伝えられた。当時の物資の状況がテロリストに漏れれば攻撃の対象となる可能性もあったとみられる。

■サイバー・テロの時代に入っているというのに、これはどうしたことでしょう?輸送機の機体を砂漠用迷彩塗装までしている現場の隊員の身になってみれば、離発着時の危険を最小限意抑える細心の努力をしながら任務を遂行しているというのに、司令部から機密情報がダダ漏れでは、間抜けな標的にされてしまいますぞ!また、同じ作戦任務に付いている米軍を中心とする有志連合の兵士達にとっても、聞き捨てならない恐ろしい話です。暫く前でしたが、日本の閣僚が米国の本音として韓国に重要な軍事情報を流すと、直ぐに漏れるから信用できないと嘴って大騒ぎになった事が有りましたが、他人の事を言っている場合では有りませんぞ!


また昨年11月から今年3月まで、中東の空軍基地でイラク復興支援活動にかかわった9人の隊員の詳細な「勤務所感」も含まれていた。これ以外にも、那覇基地でのゲリラ侵入を想定した訓練の写真や隊員の配置図、弾道ミサイルへの対処訓練の事前資料もあった。空自幹部は「米軍資料は現段階で流出しても当時と状況が変わっており、任務上は影響ないと思われる。しかし、流出が事実であれば米軍との信頼関係を損なう問題だ」と話している。防衛庁は米軍にも資料の内容を照会する方針。

■「任務上は影響ない」などという言い草は、先の大戦でも杜撰な情報管理の責めを逃れるために愛用されたものですし、他にも司令部がこの種の誤魔化しをして勝った例は皆無でしょう。


同庁は今年2月、海自の秘密情報がインターネット上に流出したことを受け、抜本対策として私有パソコンの業務での全面使用禁止、官用パソコン約5万6000台の調達、業務用データの暗号化などを決めていた。……
毎日新聞  11月30日

そもそも、軍人が「Winny」などというソフトを何に使っていたのでしょう?それも軍事機密を扱う場所で!日本は既に民間部門でソフト開発で世界の最先端から大きく遅れを取っているなどという、信じたくも無い話が有りましたが、技術において民間を凌駕していなければならない軍事部門でこの体たらくなのですから、民間企業だけが世界をリードしているはずはないでしょうなあ。現在、日本中を震撼させている地方自治体の談合事件にしましても、防衛庁も怪しげな犯罪に組していることは衆知に事実!どうやら「省」になる前に、まだまだ解決しておかねばならない事が山積しているようです。正直者がバカを見るようなシステムは、必ず破綻するものですが、特に軍事となりますと文字通り命が懸かって来ますから、トボケた組織のままで、看板だけ大きくしたらエライことになりますぞ!

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何だか変だぞ、防衛「省」 其の弐

2006-12-09 01:31:57 | 政治

久間防衛庁長官は8日午前の記者会見で、7日の参院外交防衛委員会で米軍のイラク戦争をめぐり、「政府として支持すると公式に言っていない」と発言したことについて「政府として閣議決定で談話を決めているので、公式な見解だったんだと思う。『公式でなかった』というのは私の間違い」と述べ、発言を訂正した。
毎日新聞 - 12月8日

■初代防衛「省」大臣になるはずのこの人物は、12月8日という日付を何と心得ているのでしょう?この「真珠湾の日」に、日本の防衛を担当している閣僚が、「間違」っては絶対に行けません!米国がイラク撤兵を決める、正にこれこそ苦渋の選択です。最近、日本の政治家が便利に使い過ぎてすっかり軽くなってしまいましたが、ブッシュ大統領が民主党にも頭を下げて、これまた日本では軽い言葉になってしまった「挙国一致」の打開策を求めたわけですから、それに悪乗りしては行けませんなあ。


久間章生防衛庁長官は8日午前の閣議後の記者会見で、イラク戦争について「(米国は)早まったんじゃないかという思いが(開戦)当時もしていた。今でもそう思っている」と述べた。その上で「イラク戦争支持か」との質問に対し「あまりそういう気持ちはない」と述べ、積極的に支持はできないとの立場を示した。
政府は2003年3月、「国際社会の責任ある一員として、イラクに対する武力行使を支持する」とした小泉純一郎首相(当時)の談話を閣議決定しており、波紋を広げそうだ。 
時事通信 - 12月8日

■「何処がそうで、何処が違うか、そーんなこと、私に分かるわけ無いじゃないですかぁ」と小泉総理が歴史に残る迷言を吐いたのは「非戦闘地域」という奇怪な法律用語でした。久間さんが「米国は早まった」と政治家として判断していたのなら、小泉さんがあんな恥ずかしい発言をする前にでも、直後でも、きちんと自説を公表するべきでしたでしょう。「あの時は、そんな事を言える空気ではなかった」という台詞は、先の大戦争に突っ込んで行く時に、テロを怖れた政治家達が使った言い訳と同じものです。東京裁判には問題が多いのは当然ですが、もしも、日本側で戦争犯罪人を選定したら、被疑者のリストには政治家の名前がごっそりと載ったに違いないと言われています。今も昔も、「戦争」という国家の一大凶事を扱える政治家を、日本は持てない悲劇が続いているのでしょうなあ。それならば、政治家にとって最も難しい問題に対して思考停止が許される、世界に冠たる「平和憲法」をいじくらない方が良いかも知れません。


政府は8日午前の閣議で、イラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊派遣の基本計画を変更し、14日までの航空自衛隊の派遣期間を、特措法の期限である来年7月31日まで延長することを決定した。国連や多国籍軍の要望を踏まえ、イラクでの空輸支援を継続する必要があると判断した。

■この航空自衛隊が従事している「空輸」任務も、米国製のスティンガーやらロシア製の対戦車ロケット砲やら、高性能の物騒な武器がばら撒かれている「非戦闘地域」で行われているのですから、文字通りの命懸けです。開戦自体には反対だけど、国連と何処かの国が頼むから、仕方なくだらだらと続けると言うのなら、航空自衛隊の精鋭が可哀想です。


自衛隊のイラク派遣の基本計画は、2003年12月に閣議決定。04年と05年の12月に各1年間延長しており、3度目の延長となる。基本計画では、延長の目的について、11月28日に多国籍軍のイラク駐留期限を延長する新たな国連安全保障理事会決議が採択されたことを挙げ、「我が国としても国際社会の一員としての責務を果たす必要がある」とした。
読売新聞 12月8日

■小泉政権が閣議決定し、2回も計画を延長しているのですから、久間さんはその間にどうして黙っていたのでしょう?閣議決定される時も、政府としては戦争に対して支持はしていないし、自分は消極的ながらも戦争には反対だと考えていたのに黙っていたのなら、それは卑怯と言うものでしょう。国民は、小泉改革でも、対米政策一辺倒の外交政策でも、自民党が一枚岩だと思って何度かの選挙で投票したはずです。今更、発行済みの書籍に挟み込む「訂正メモ」みたいな意見を発表されたら、これまでの選挙が全部ウソになってしまうでしょう。久間さんは、同じ委員会で別の大問題についても変な事を言っているようです。


久間章生防衛庁長官は7日午後の参院外交防衛委員会で、沖縄戦の犠牲について「沖縄にもし日本の軍隊がいなかったら、確かに悲劇は少なかったかもしれない。日本はもっと早く占領されて、早く戦争が終わっていたかもしれない」と述べた。

■『硫黄島からの手紙』が大いに話題になっているからと言っても、防衛庁長官まで懐古趣味に浸っているのではありますまいな?!知事選挙が終わったばかりの沖縄ですから、過去を話題にするにしても注意が必要です。琉球新報が記事から社民党の大田昌秀(元沖縄県知事)議員と久間さんとの議論を確認します。


大田氏は嘉手納飛行場などへのパトリオット・ミサイル(PAC3)配備について「沖縄の人は喜んでもらいたい」とする10月26日の同委員会での久間長官の答弁を取り上げ、「戦争体験のある沖縄は、米軍を置いてほしいとか自衛隊を派遣してほしいとか要請したことはない。基地を造ることが危険を招くことになる」と述べ、真意をただした。

■沖縄が地方自治体となった時には、既に米軍基地は存在していたのですから、この大田議員の主張は原則としては間違っていません。但し、直近の県知事選挙の結果からすれば、駐留米軍の存在が地元経済の根幹に関わる大きな要素になっている事も間違いは無いでしょう。「自衛隊を派遣して欲しい」と要請したことがないのは、軍事的な危機が起こらなかったことや、大規模な災害が起こらなかった事実を考慮しなければならない問題ですから、これは所属政党の立場を差し引いても、ちょっと言い過ぎかも知れません。


久間長官は「相手は手薄な所を攻める。軍隊がなかったとしても、米軍は拠点として真っ先に沖縄を占領したと思う。抵抗する組織がなかったら悲劇は少なかったかもしれない。それは後になって言えること」と述べた。その上で「占領しやすいところが攻撃されるわけで、基地があれば(攻撃は)後回しになるのではないか。ミサイルも手薄な所を狙うと思う。PAC3を置くことで(県民は)安心感を持つのではないか」と強調した。

■先に引用した箇所では、大日本帝国陸軍が地上戦を挑んだのが沖縄の悲劇を生んだと認めていました。「早く戦争が終わったかも」とも述べています。そうなると、「一戦和平」という戦略の上で行われた硫黄島抵抗戦や数々の特攻作戦も、全部、意味の無い無駄な抵抗だったという理屈になってしまいますが、まあ、御本人はそんな心算が全然無いのでしょうなあ。従って、沖縄の攻撃・迎撃能力が上がったら、徹底的な破壊を蒙ると推論が出来るのですが、何故か、「基地が有れば安心」という結論を導き出しても平気なのでしょう。こんな人が防衛庁の指揮を取っていて大丈夫なのでしょうか?

何だか変だぞ、防衛「省」 其の壱

2006-12-09 01:31:20 | 政治
■自分が庁から省に昇格するのが確実となる反面、親分の米国はイラク戦争は大間違いでしたと世界に恥を晒し始めて留まるところを知りません。ラムズフェルド長官が辞任したばかりでは足りずに、国連大使のボルトン氏もお先真っ暗で辞職ですからなあ。選挙一つで劇的に内政が変化するのは米国の特徴ですが、世界の警察官やら唯一の超大国やらと、大層な身分になっているのですから、ろくに世界地図も頭に入っていない選挙民も多いと言われるお祭り騒ぎの選挙の結果次第で、一つの国や地域の運命が変わり、白いものが黒くなっては大いに迷惑です。

■米国で一冊の報告書がまとまったら、まるでオセロ・ゲームのような現象が日本の国会で起こるのはどうしてでしょう?勝手な結論を書いてしまえば、こんないい加減な政府の命令でイラクくんだりまで出掛けて行った陸上自衛隊の皆さんが1人も落命せずに帰還したことは幸いでありました!しかし、航空自衛隊の任務は、こんな腰砕けの政府の命令で延長が決まってしまいましたぞ!


久間防衛庁長官は7日の参院外交防衛委員会で、米軍のイラク開戦について「政府として支持すると公式に言ったのではなく、コメントとして(小泉前首相)がマスコミに言った」と述べ、イラク戦争支持は政府の公式見解でないとの認識を示した。久間長官はさらに自衛隊派遣の目的は復興支援だったとの考えを強調した。
毎日新聞 - 12月8日

■何ですと!?日本国陸上自衛隊は、日の丸を掲げてイラクの「非戦闘地域」に、最低限度の軽武装で派遣されたのではなかったのではなかったの?他国の軍隊と有料軍事サービス会社に守って貰っていたとは言っても、移動中や作業中には命の危険を感じつつも、玩具みたいな武器を頼りに灼熱の大地で頑張って来たのに!運悪く自爆テロに遭ったり、流れ弾にでも当たったら、国を挙げて葬儀を営むはずではなかったのでしょうか?「政府(国家)が支持した戦争じゃなかったからねえ」などと言って、公務員の事故死扱いで書類と規定通りの弔慰金で御仕舞い?派遣された隊員の声には、「復興支援」という名目ではあっても、実戦に相当する貴重な経験だったと言って居るのを読んだことがありますが、久間さんは読んでいないのでしょうか?あれを読んで居れば、こんな発言は出来ないと思うのですが……。

■これでは、勇敢な消防員が火災現場に到着して、母屋が紅蓮の炎に包まれているのを無視して、飛び火して焦げた犬小屋を建て直して帰って来たような話ではないでしょうか?!消防隊員だって、そんな人を馬鹿にしたような指令には従えないでしょうなあ。


久間防衛長官は……「政府として(米国の武力攻撃を)支持すると公式に言ったわけではない。(当時の小泉)首相がコメントとして言ったということは聞いているが、政府の立場として、戦争を具体的に支持する法律を作ったわけでもないし、自衛隊もそれに基づいて出て行ったわけでもない」と述べた。
これに関連し、安倍首相は7日夜、首相官邸で記者団に「久間長官がどういう発言をしたか、聞いていない。報告を受けたい」と語った。
読売新聞 - 12月7日

■久間さんは、小泉さんの「コメント」を聞いているけど、安倍総理は久間さんのユニークな放言を聞いていない?!この内閣はどうなっているのでしょう?小泉改革を継承すると公言して、小泉さんが金魚鉢の中に浮かべて逃げた糞の処理で支持率が下がったからと、小泉改革の継承を印象付けようと、道路関連の特別会計に手を突っ込むポーズまで取ったというのに、「外交政策は別」なのか?それなら、北朝鮮に対する姿勢も「対話と圧力」ではなく、「圧力ともっと圧力」に変えるのでしょうか?少なくとも、閣僚の久間さんが小泉政権の継承を拒否したのだから、総理は「聞いていませんなあ」などと言っている場合ではございませんぞ!