旅限無(りょげむ)

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踏ん張れるか、日本!

2006-12-11 18:28:53 | 外交・情勢(アジア)
■6箇国協議の開催が決まりましたが、ロシアは英国で起こった奇怪な暗殺事件の対応で大忙しですし、米国は中間選挙の後始末で手一杯、韓国はと言えば、大統領の支持率が間も無く一桁になるのではないか?と野党に同情されるほどの惨状で、本気になっているのは議長国の中国政府だけのような状況であります。勿論、海老で鯛を釣り上げようとしている、北朝鮮は絶対にこの機会を逃さずに、一挙に米国に要求できるものは全部頂戴しようと必死でしょうし、その北朝鮮に邪魔扱いされている日本は徐々に孤立無援の余計物になってしまいそうな心許無い立場になって行くようですなあ。

北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の再開が、18日にずれ込む見通しとなった。日本政府筋が11日、明らかにした。6か国協議は当初、16日に再開される予定だったが、ここへ来て、議長国の中国が「18日に遅らせたい」と他の参加国に連絡してきたという。政府筋は「北朝鮮の要請による変更だと聞いている」としている。韓国の聯合ニュースも10日、複数の外交消息筋の話として、協議は18日か19日に再開する見込みだと報じた。北朝鮮との調整がうまく行かずにずれ込んだ、としている。韓国政府当局者も10日、「18日に始まる週に再開すると予想して準備している。18日となる可能性が大きい」と述べた。
読売新聞 - 12月11日

■16日は土曜日で、18日は月曜日です。土日を嫌っているのか、単なる時間稼ぎなのかは分かりませんが、たった2日であろうとも交渉内容を考える必要が有るというわけですなあ。核関連施設の解体とIAEAの査察受け入れ、核不拡散条約(NPT)への復帰、米国が要求している内容はイラク戦争前に突き付けたものと同様ですが、当の米国は偽情報さえも利用して強引に攻撃を仕掛けようとした頃とは様変わりで、戦勝に熱狂していた声は掻き消えて、すっかり厭戦気分が満ちていますから、北朝鮮としては突然の攻撃開始を怖れることも無さそうです。しかし、クリントン政権を相手にした時と同じようなナメた真似をすると再び米国に「正義感」と「聖なる使命感」がむくむくと蘇るので、ご用心、ご用心。

■すっかり意気消沈しているブッシュ大統領も、「悪の枢軸」リストを取り下げた訳ではないので、うだうだと手前勝手な事ばかり北朝鮮が言い張ると、「今度は上手くやるぞ!」と汚名挽回を決意するかも知れません。既に対北朝鮮嫌がらせ作戦の「5030」が実施されているとの話ですから、グアム基地や沖縄基地からの空爆はいつでも可能という事でしょうなあ。あまり、物騒な事にならないように上手に交渉がまとまってくれるのを祈るばかりですが、体制崩壊に追い込むはずが、逆に金王朝の存続を助ける結果になりそうなブッシュ大統領は面白くないはずです。イラクでの失点を挽回してやろうと少しは欲が出る可能性も有り、野党ハンナラ党の強硬派が政権を取る頃まで交渉をだらだらと引き延ばして北朝鮮を締め上げ続けるようになる事も考えられますなあ。

■日本はちゃんと米国と擦り合わせをして、頭越しで米朝国交正常化などをされないように、しっかりと連携を取っているのでしょうか?


北朝鮮の朝鮮中央通信によると、11日付の党機関紙「労働新聞」は論評で、6か国協議をめぐって再び日本を批判した。北朝鮮に対して厳しい姿勢を取る日本をけん制する狙いと見られる。論評は、安倍首相らが北朝鮮の核保有国としての参加を認めないと発言していることに対して、「協議再開を妨げる不届きな行動」と批判。さらに、日本が拉致問題の論議を求めていることについて、「6か国協議は核問題を扱う場であって、拉致問題を論じる場ではない」と主張。日本が協議に参加しても、「問題解決を複雑にし時間を浪費するだけ」と強調した。
読売新聞 12月11日

■他にも、「日本は詐欺師だ!」「在日同胞を虐めるな!」など言いたい放題のようですが、韓国からも「そうだ、そうだ」と言っている元統一相のような人も居ますから、よほど日本政府は米国が不用意に軟化しないように、しっかりと連携を取って行かねばなりませんぞ。


ブッシュ米大統領は9日のラジオ演説で、イラク政策見直しに関する独立委員会「イラク研究グループ」の報告書について「性急なイラク撤退がいかなる結果を招くかを明確にしたことに勇気付けられた」と述べ、早期撤退に重ねて慎重姿勢を示した。 
時事通信  12月10日

■日本側からも閣僚の中から「イラク攻撃は失敗だった」などと言う混乱するような発言も出ている昨今ですから、米国がイラクから下手に撤退してそのまま内向きになって、外国の事は放り出してしまわないように気を付けないと行けないでしょう。確かに、イラク政策は愚かな戦争でしかなかったわけですが、同盟国としては当時の総理大臣が「全面的に支持する」と断言したのですから、あまり無責任な事を言って米国の心象を悪くする必要は無いでしょう。わざわざ傷口に塩をすり込まなくても、側近が辞任したり『79項目』もの政策提案が発表されたりして、ブッシュ政権の失敗は誰の目にも明らかなのですから、黙って見守る方が得でしょうなあ。今のブッシュさんの頭の中はイラク問題でいっぱいなのですから……。


イランのモッタキ外相は9日、米国がイラク駐留部隊の撤退を発表しなければ、イランはイラクをめぐる米国との直接協議には応じないとの姿勢を明らかにした。米国の超党派の「イラク研究グループ」は報告のなかで、イラクの安定に向け、米国とイラン、シリアとの直接対話を勧告していた。モッタキ外相は、バーレーンで行われた安全保障関連の会合で、記者団に「最も重要な行動は、米国がイラク駐留米軍の撤退を発表することだ。イランは米軍撤退のため米政府を支援できる用意があるが、米国にはまだそうした政治意思がみられない」と語った。一方ブッシュ大統領は、イランが核関連活動を停止しなければ直接協議は行わないとしている。
ロイター  12月11日

■こうしたイランの発言は、北朝鮮を勢い付かせるでしょう。でも、本当にイラクから米軍の半数が引き揚げたら、その一部がそのまま対北朝鮮攻撃に配置換えされるのではないでしょうか?北朝鮮は、イラク問題がもっと混迷して米軍がもう一つの戦争を始められない状態が続いて欲しいに違いありません。イラクの復興には全面協力すると約束した日本政府ですから、こちらの方面で米国を助ける提案をして少しでも重荷を軽くしてあげれば、北朝鮮との交渉にも力が入るのではないでしょうか?

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