旅限無(りょげむ)

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宮崎県の「天の声」 其の壱

2006-12-03 20:15:22 | 政治
■以前に『岐阜と福島、次は何処』という記事を書いた手前、この案件も取り上げねばなりません。福島の次は和歌山に飛び火し、岐阜県では自殺者まで出てしまった後の宮崎県でのお話です。「岐阜や福島とは違う!」と見事な啖呵を切って見せた県知事さんは、その自信たっぷりの表情が非常に印象的でした。端的に言って、「立派な人」に見えましたぞ。嗚呼、それなのに……。

宮崎県の官製談合事件で、県議会から不信任決議を突き付けられ、失職の意思を固めていた安藤忠恕(ただひろ)知事(65)(1期目)は3日、県議会の坂元裕一議長に辞職願(4日付)を提出した。……安藤知事は3日午後、記者会見した。失職から一転して辞職に傾いた理由について、「一連の県政混乱の責任は重大であり、自ら辞することで混乱の長期化を避ける」と説明。談合事件への関与については、「一切ない」と強調した。……1日に不信任決議が可決された後も「辞職すれば談合への関与を認めることになる。議会解散は県政を混乱に陥れるので、望ましくない」として、「失職を選択する」としていた。
読売新聞 - 12月3日

■失職となれば県知事選挙、ちょうど数年前の長野県知事だった田中ヤッシーさんと同じ手法を採ることになるので、田中前知事と同じように帰り咲いて見せる心算なのだろうとばかり思っていましたのに……。「混乱の長期化」を心配ているという事は、逮捕者がまだまだ出るという意味にも取れる発言ですなあ。それなら、知事1人が潔白を叫んで辞職しても、宮崎県政はまだまだ膿が噴出して行くことになるのですが……。宮崎県民の皆さんは、どんな思いで全国ニュースになっているこの騒動を御覧になっているのでしょう?最初に全国ニュースになった時が、例の啖呵だったので大して興味を持たなかったのですが、強気の知事の周辺から続々と逮捕者が出るわ、取調べの中からぽろぽろと疑惑を濃くする証言が出てくるわ、既に限りなく黒に近い灰色に染まった知事さんであります。事件の経緯をおさらいします。


宮崎県の官製談合事件で、県警捜査2課に逮捕された設計会社社長、二本木由文容疑者(56)が同県の安藤忠恕(ただひろ)知事(65)に業務の受注を要求する一方、知事の依頼で元国会議員秘書に資金提供していたと供述していることが18日分かった。同課は第三者供賄に当たる可能性もあるとして、知事立件へ向けて検討を開始。宮崎地検と協議し、安藤知事を事情聴取する。談合で上層部の関与を示す供述をしている県幹部もおり、併せて解明を目指す。……福島、和歌山に続き3人目の知事の辞任に追い込まれる可能性が出てきた。

■これが半月前の報道です。この知事さんは地元の国立宮崎大学を卒業後に県庁に入って、県の行政一筋の方だそうですなあ。何処か「浮世離れ」しているような雰囲気を漂わせているのはそのせいかも知れません。妙に自信たっぷりのように見える時と、世間の常識を何も知らないよく言えば素朴、悪く言えば間抜けな弱点が透けて見えるような時が有るようです。県知事には一度の落選を経験してから当選して就任したのだそうですが、その間、何をしていたのかは不明です。


調べでは、二本木容疑者が経営するヤマト設計は平成16年から17年にかけて約1年間にわたり、元国会議員秘書で不動産会社社長の石川鎮雄容疑者(68)に顧問料名目で月80万円、総額約1000万円を支払った。同課で支払いの趣旨を追及したところ、二本木容疑者は知事からの依頼で現金を振り込んでいたことを認めたという。ヤマト設計は16年度と17年度に県の発注事業で受注実績を増やしていた。このうち、逮捕容疑になった橋の設計とは別の2件で談合があったことも判明。同課は、知事からの「天の声」で官製談合が行われた可能性もあるとみている。

■実は、宮崎県の知事さんの名前が安藤忠恕さんだと存じ上げなかった頃から、マスコミから「天の声」報道が流れていたので、拙ブログでは、仮名扱いで「天野声太郎」にでもしようかと思っていたのでした。状況証拠ばかりか、関係者の証言まで揃いつつあるのに、「知らぬ存ぜぬ」と言い続けるのですから、本当に世間知らずなのか、顔面と心臓を鍛え上げた猛者なのか、簡単には分かりません。つまり、現段階では謎の人物ということです。


…安藤知事が就任後、当時の県土木部幹部に電話して「(二本木容疑者の)話を聞いてやってくれ」などと要請していたことも関係者の話で分かった。二本木容疑者はその後、同部を訪れ、営業活動をしたという。談合容疑で逮捕された県土木部次長、柴岡博明容疑者(58)は「上層部の意向で落札業者が決まっていると聞いた」と供述。同課は、入札の経緯についてさらに慎重に捜査を進める。……安藤知事は18日深夜、知事公邸前で「辞職についてはまったく考えていない。私は何もやっていない」と語った。……
産経新聞 - 11月19日

■最近、「無関係だ!」「潔白だ!」「天地神明に誓って…だ!」などなどの、国語辞典の説明では最高レベルの重みを持った言説が濫用され、揃いも揃って木っ端微塵に砕け散るような恥ずかしい事件が連続しております。「私はやってない」などという台詞を聞きますと、オウム真理教の教祖サマが、「わ~た~し~わ~やってない~♪」と気味の悪いばかりの唄を歌っていたのを思い出してしまいますなあ。

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事実は映画より奇きかも? 其の参

2006-12-03 13:56:15 | 外交・世界情勢全般
■口喧しい邪魔者を黙らせた単純な暗殺事件ではないような、奇怪な連鎖が浮き上がりそうな気配です。

29日付英フィナンシャル・タイムズ紙(電子版)はロシアのガイダル元第1副首相が今月24日に訪問先のアイルランドで原因不明の吐き気と発熱に襲われ、モスクワの病院に入院していると報じた。容体は安定しているが、ガイダル氏は「生命の危機にかかわる突然の病気に襲われた」と同紙に語ったという。……今月24日に朝食を食べた後、気分が悪くなり、突然、体が動かなくなったという。発見した女性によると、同氏は床で気を失っており、吐血していたとされる。同氏はエリツィン前政権下で市場経済導入などに取り組み、プーチン大統領には批判的な姿勢を取っている。……
毎日新聞 - 11月29日

■世界的に有名なトンデモ話の一つに、「ツタンカーメンの呪い」というのが有ります。英国人のカーナボン卿がエジプトのルクソール近郊の王家の谷で、未盗掘の地下墳墓を発見した後、その発掘作業に関わった人々が次々と謎の死を遂げたというものです。今ではまったくのデマだと判明しているので、まだ悪質な商売ネタにしている出版物が出回っているようなので、ご用心、ご用心。それはともかく、「プーチンの呪い」は実在しているのかも知れませんなあ。ロシア国内だけでも10人以上のマスコミ関係者が「謎の死」を遂げているそうです。でも、「謎」と言ってもオカルトめいた話ではなく、単に犯人がまったく見つからないというだけの話です。脱北者ならぬロシアからの亡命者が集中しているのがロンドンだそうで、そこで怪死事件が起こり、隣国のアイルランドでも奇妙な入院騒動が起こる。これを単なる偶然だと言い切るには、相当の勇気が必要です。


ソ連崩壊後のロシアで経済自由化と民営化を指揮したガイダル元首相代行が原因不明の急病で倒れたことについて、チュバイス統一エネルギー機構社長(元第一副首相)は29日、「通常の病気ではあり得ない」と述べ、暗殺未遂だったとの見方を示唆した。ロシア通信が伝えた。チュバイス氏は「ガイダル氏は一時生死の境にあった」と語り、病状の深刻さを強調。その上で、プーチン政権を批判した著名女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさん殺害、連邦保安局(FSB)元中佐リトビネンコ氏の怪死と関連付け、「ガイダル氏の死は反憲法勢力にとって極めて魅力的だ」と陰謀説を唱えた。 
時事通信 - 11月29日

■単一の意志に基づいての暗殺が連鎖しているのか、ロシアの国内で起こっている暗闘が国外へも影響し始めているのか、今のところはまったく分かりませんが、ロシアが急速に伝統的な強権支配に戻っている事は確かです。上からの締め付けと圧力が強まれば、それに対する反発は際限も無く強固なものとなって、最後は命懸けの闘争になります。19世紀に欧州で荒れ狂った第二次市民革命運動がことごとく鎮圧されて失敗したのに、ロシアでは一足飛びに社会主義革命が成功したという特殊な歴史を説明するには、ロシアの恐るべき強権支配の伝統とそれに敵対する反発の強さを証明しているでしょう。出来れば、そんな血生臭い伝統は国内に留めておいて欲しいものですが、冷戦時代に完成した世界規模の諜報謀略システムは生き残っている上に、その際末期に元締めとしてのし上った人が大統領になっているのですから、常にその特殊性は抑えておかねばなりません。


ロシア原子力庁のキリエンコ長官は28日、記者会見し、ロシアが放射性物質の「ポロニウム210」を毎月8グラム輸出していることを明らかにした。工業用塗料などに使われているが、英国向けには2001年以降は供給していないという。……「ポロニウム210は国内で厳重に保管されており、だれかが盗み出すようなことは考えられない」と述べ、リトビネンコ氏から検出されたポロニウム210がロシアから流出した可能性を否定した。
読売新聞 - 11月29日

■ポロニウムという物質は、巨大な装置を稼動させても、極僅かしか抽出出来ないことから、非常に高価な「商品」として扱われているのだそうです。ロシアから出荷されるこの物騒な「商品」を買ってくれるお得意様が米国だという話も有るようですから、あの核大国の米国でも外国から買わねばならないような品物なのですなあ。だとすれば、ちょっと盗み出して暗殺の道具に使うというのは、随分と贅沢な話です。ロシアが核物質の「管理」となれば、あちこちの軍港に放棄されている原子力潜水艦の無残な残骸を見たことの有る人には、悪い冗談にしか聞こえません。かと言って、がつがつと外貨稼ぎに励んでいるロシアが、ほんの微量でも数億円もするという高価な物質を野放図に扱っているとも思えません。

金魚の糞の後始末? 其の壱拾四

2006-12-03 07:53:27 | 政治

自民党の武部勤前幹事長は14日、共同通信のインタビューで、「郵政造反組」の復党問題に関し「造反組の協力を得られなければ来年の参院選で負けるというのはおかしい。筋を通さなければ負ける。自民党のイメージが悪くなれば復党問題を抱えていない所にもダメージを与え、集団自殺になる」と述べ、慎重に検討すべきだとの考えをあらためて強調した。昨年の衆院選後の郵政民営化関連法案採決で賛成に回った11人の無所属議員を念頭に「賛成したので郵政民営化に関しては決着はついている」としながらも「党籍を持ったまま自民党公認候補がいるのに立候補したのは反党行為であり、倒閣運動だった」と指摘した。……
四国新聞 11月14日

■武部さんは、自他共に許す「偉大なるイエス・マン」であり続けようと頑張っています。幹事長の大役が回ってきた時の、身も世も無いほどの喜びよう、はしゃぎようは傍から見ていても大変なものでしたからなあ。本当に「青天の霹靂」で、武部さんの名前などまったく知らなかったほとんどの国民以上に、御本人が一番驚いたのが良く分かりました。小泉総理からの突然の指名がなければ、その他大勢の陣笠議員で終わるはずだった武部さんは、小泉劇場の余韻が無くなったら自分の政治生命も終わりだと感じているでしょうし、小泉改革にケチを付けられたら、今も忘れぬ主人の恩に報いるため、実に小まめに噛み付いております。でも、自民党議員の全員が小泉さんに対して一人の例外も無く「イエス・マン」にならなければならない!という思い込みは如何なものか?

■それなら議員個人の資質や能力などは問題にならなくなりますし、首相の考えを効率良く実現する「働き蟻」や「兵隊蟻」の大群が、国会の過半数を占めておれば良いということになります。それは限りなく一人の独裁者に支配された一党による独裁と同じことになります。まさか、小泉さんは平壌で握手した相手をその点では羨ましいなあ、などと思ったのではありますまいな?!


自民党の中川秀直幹事長は17日午前……「当面は現職の復党希望を考えるのが自然な姿だ」と述べ、現職の無所属衆院議員12人についての検討を先行させ、落選組はその後に調整する考えを示した。中川氏は落選組が安倍晋三首相の首相指名選挙で投票していないことを指摘し、「所信表明を支持する投票行動をしていない」と述べた。……一方、造反組の無所属衆院議員らは17日午前、国会内の平沼赳夫元経済産業相の事務所で会合を開き、平沼氏に対応を一任することを改めて確認した。出席者によると造反組10人が参加。落選組も含めた一括復党を求める意見が出たという。
毎日新聞 - 11月17日

■派閥が元気だった頃の自民党は、総選挙や総裁選挙の直後でさえも、常に「倒閣運動」が盛んでした。政策論争も、へっぽこ野党からの追及などは裏から手を回せば簡単に「調整」が出来ましたが、同じ党の身内から飛んで来る鋭い批判は時に致命傷となったものです。ですから、小泉内閣の政策に問題が有る!と指摘するぐらいは可愛いもので、徐々に仲間を集めて「倒閣運動」に発展させる陰湿なエネルギーこそが自民党の活力源でもありました。本当に小泉さんは「自民党をぶっ壊して」しまったようです。果たして、それが日本にとって良かったのか悪かったのか、よくよく考えねばなりますまいなあ。


郵政民営化法案に反対し自民党を離党した造反組の復党問題で……元郵政相の野田聖子氏VS佐藤ゆかり氏による「女の戦い」が激化する岐阜1区を始め、各選挙区はピリピリムード。……「何のために私はここに来たの? という感じではないでしょうか」ある地元関係者は、ゆかり氏の今の心境をこう推測した。「ほかにもっと楽な選挙区はいくらでもあったのに、落下傘でここに来た結果が、これですから…」昨年9月の衆院選で岐阜1区に刺客として投入され、造反クイーンの野田氏と激突したゆかり氏。小選挙区では野田氏に敗れたものの、比例代表で復活し、野田派が根強い地元に浸透するため奮闘してきた。

■選挙区で敗れて比例区で復活当選した議員を「ゾンビ議員」と呼びます。一度死んだのに生き返ったからだそうです。中南米のブードゥー教からの借用ですが、本家では生き返ったわけではなく、死体が生きているように動き回るようにする魔術だとも言われていますから、こちらの方の意味を取った方が、今の「復党問題」にはぴったりかも知れません。生きているのは自民党公認の無いまま当選した議員の方でしょうなあ。


ところが、ここにきて野田氏の復党はほぼ確実な流れに。10月に中川秀直幹事長が岐阜入りし造反組の復党を「検討したとか、考えてるとか一切ない!」と叫んだのも今となっては、ただのその場しのぎだった。……野田氏とのコスタリカ方式など共存の方法はある。しかし、もともと野田氏支持だったのにもかかわらず、党の方針に従いゆかり氏側についた市議や県議らにとっては受け入れがたいようだ。「この1年は何だったのかということになる。その人たちが一番、つらい思いをしています」

■地方自治体の議員さん達は、直接地元の有権者と接するのですから、中央からの風向きでころころ態度を変えていては、目の前で支持が消えて行くのを実感するのでしょうなあ。誰かが怒っていたそうですが、確かに、中川幹事長は自分の格好ばかりを気にしているような印象です。どちらに転んでも怨念を残すに決まっている「復党問題」なのですから、幹事長が一人で泥を被り、返り血を浴びる覚悟で陰で表で動き回らねばならないはずが、中川幹事長は表ばかりで動いているようで、しかも、まったく融通が利かない一本調子の発言が続いているので、周囲は苛立つし、国民は興味を失って行くでしょうなあ。
(別の関係者)。

“マドンナ対立”の激化はすでに、来春に統一地方選挙を控える地方議員らを直撃。10月下旬、選挙区支部会合で支部長のゆかり氏は「反党行為があった」などとして、野田派県議2人の県連への公認申請を見送った。野田派が幹部を占める岐阜市連はこれに反発。泥沼化している。……ゆかり氏は暗闘に打ち込むあまりか、秘書らに「守秘義務誓約書」なるものに著名、押印させるなど強権を過酷に発動。激務や不信感から今夏までに秘書らが6人も事務所を去るなど、正念場に向けて足元は揺らいでいる。……
スポーツ報知 - 11月20日

■この騒動は各週刊誌でも詳報されていましたが、岐阜県はこんな喧嘩をしている場合ではないでしょう?談合問題で最初に大騒ぎを起こした場所なのですから、膿を出し切って県政の刷新やら人事の刷新に邁進しなければならないのに、地元と余所者の内輪の喧嘩などをしていては、県民の皆さんも失望するでしょう。


……自民党の中川秀直幹事長と平沼赳夫元経済産業相は22日、国会内で会談した。中川氏は復党の対象は現職議員とし、落選した前議員は含めない考えを表明。復党の条件として郵政民営化賛成を盛り込んだ誓約書を添え、復党願を提出するよう求めた。平沼氏は民営化賛成に難色を示し結論を持ち越したが、当面は平沼氏の復党は先送りとなり、他の造反議員が先行する公算が大きくなった。また、会談の結果、復党願の提出期限は当初の24日午前から27日午前まで延期された。

■元々、深い怨念を互いに隠し持っている二人が、こんなどろどろした話をするのですから、最初からまとまるはずなど無かったとも言われていますが、「誓約書」「期限」などと、相手の完全な屈服を強要するような喧嘩の収め方は最悪でしょう。一時は、次期総理の最有力候補と言われた平沼さんですから、小泉政権を倒して自らの政権を打ち立てる気概をずっと持っているでしょうから、こんな屈辱を受けて態度を変えるはずなど有りません。


中川氏は(1)安倍政権の政権公約の順守(2)所信表明の順守(3)党規党則の忠実な履行――の3点や、郵政民営化への賛成に加え昨秋衆院選に無所属で出馬した「反党行為」への反省も誓約書に明記するよう求めた。会談後、中川氏は記者会見で「(郵政民営化は)絶対に譲れない条件だ」と強調。安倍晋三首相に経過を報告し、首相も了承した。一方、平沼氏は記者団に「私の場合は(郵政民営化賛成を)そこまで明確に書くのはなかなかハードルが高い」と述べた。これに関連して関係者は22日夜、「(平沼氏を除く現職議員の)11人が復党願を出せばいいのではないか」と語った。……
毎日新聞 - 11月23日

■こうした流れの末に、平沼さんは自分の「筋」を通して仲間の11人が自民党に戻るのを、泰然と手を振って見送ったのでした。中川幹事長が公認と政党助成金の割り当てを人質に取って、立場の弱い造反議員をイジメただけの馬鹿馬鹿しい話でした。その間、世界は大きく動き、北朝鮮問題も急転直下でトンデモない決着に向かって転がり出したとも噂され、イラクは完全なる内戦状態、ロシアが欧州で何をしているのか?と世界中が訝(いぶか)る陰謀めいた事件が起こっています。「小泉チルドレン」の身元保証などで、どうしてこれほどのエネルギーを空費しなければならなかったのか、まったく納得など出来ませんなあ。

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金魚の糞の後始末? 其の壱拾参

2006-12-03 07:53:06 | 政治
■自分から「刺客」の役目を終えた後は邪魔なだけの「金魚の糞」だと自覚して去ってくれるのが最も嬉しい展開でしょうが、それが無理なら辞めざるを得ない立場に追い込むしか有りません。仮に「元・刺客」が全員揃って突然、辞職したら、一体、誰が悲しんだり惜しんだりするのでしょう?逆に、「ああ、手間が省けた」と大喜びで送り出す議員が続出しそうですぞ。そうなれば、あちらを立てればこちらが立たない、「筋と情」が絡み合ったややこしい選挙をやらなくても済みますからなあ。参議院のドンなどは、自分の手は汚さない裏工作で一気にいびり出しを始めるかも……。

■だんだん「飛んで火に入る夏の虫」状態になりつつある新人議員の皆さんですが、まだ一縷(る)の望みが有るかも知れません。でも、それは次の選挙までに立派な政治家になっているという前提での話です。


郵政民営化に反対し、自民党を離党した「造反組」の復党問題は、反対の気勢を上げる1年生議員を党幹部が公然と批判するなど党内の亀裂が深まっている。同時に自民党が「改革政党」か、「保守政党」かをめぐる路線対立が顕在化しつつある。1年生議員9人は10日、国会内で「復党問題を考える会」の準備会合を開いた。「賛同者が少なく予定した設立総会を開けなかった」(関係者)のが実情のようだが、発起人の一人は「復党は国民の信頼を失いかねない」と訴えた。反対派のこうした動きに復党容認派も批判のトーンを強めている。丹羽雄哉総務会長は同日、記者団に「反対する議員は自分で選挙を勝ち信任を得る意識が希薄だ。身分保障を党に求めるなど考えが甘い」と語った。

■今月上旬、お尻に火が着いた新人議員達が、また苦し紛れに余計な「考える会」という別組織を新たに作ろうとした話です。本当に、何と暇な議員さん達なのでしょう?黙っていれば新人議員には大した仕事は無いという事実も目立たないというのに、嬉しそうにテレビに出演して素人同然の発言をしている能天気な人が居るかと思えば、「何様だと思っているんだ!」と無関心派の諸先輩も怒り出すような事をやる幼稚な人が居るというわけです。


9日昼、都内のホテルで開かれた町村派総会では、森喜朗元首相も出席者の「復党問題をもっと議論した方がいい」との発言に激高した。「安倍政権を支えたいと言っている仲間を排除する資格が君たちにあるのか。中川秀直幹事長もかつては新自由クラブだ。閣僚経験者でもいろんな政党を渡り歩いた人が何人もいるじゃないか。かつて自民党がそういう人に踏み絵を踏ませたり、一筆とらせたことがあったのか」復党に慎重姿勢を続ける腹心の中川氏を名指しし、マイクをたたきつけるほどだったという。

■有る事無い事を言われて政権を投げ出さざるを得なかった森さんは、自分の派閥から総理大臣を連続で出し、重要ポストも多目に手に入れた強みで、このところすっかり御意見番のようになっております。小泉政権を支えるのには、本当に苦労した森さんですから、やっと肩の荷が下りたと思ったら、やっぱり親分として後始末をしなければなりません。ご苦労様なことですなあ。


……各種世論調査では、造反組の復党に否定的だ。党執行部では、現職議員を復党させれば安倍政権の支持率は10%、落選議員まで復党させれば20~25%下落すると読んでおり、リスクを冒してまで復党させる価値をはかりかねているのが実情だ。

■安倍総理が「小泉改革を継承する」と宣言しているのですから、たとえ形式的であっても小泉さんが生みの親となる「チルドレン」を切って棄てて「造反組」を呼び戻すわけには行きません。世論調査には、今でも小泉劇場の余韻が殷々と響いていることが窺えますが、はたして、そんな世論が来年の夏まで続くのでしょうか?「復党」を強く求めている人達は、きっと、そんなものは直に消える!と読んでいるのでしょう。


……平沼赳夫元経産相ら造反組の多くは靖国参拝問題などで安倍晋三首相と政治理念を共有してきただけに、復党すれば、自民党の「保守バネ」は強くなる。首相を小泉純一郎前首相の改革路線の継承者と位置づけたい勢力にとって、首相の「保守化」は容認しがたい。中川幹事長が7日の講演で「左の方に懐を深くする安倍自民党を作っていきたい」と発言したのも、党内では「復党を暗に牽制(けんせい)した」(中堅)との見方が強い。…首相は19日投開票の沖縄知事選まで事態を静観する構えだが、「最後は首相の決断しかない」との声は日増しに強まっている。
産経新聞 - 11月11日

■その安倍総理が「幹事長に任せている」と言い張っているのですから、事態は紛糾し続けるしか有りませんでした。国民世論の安倍支持が低下しているのは、予想外に優柔不断の政治姿勢に幻滅しているからではないでしょうか?

金魚の糞の後始末? 其の壱拾弐

2006-12-03 07:52:54 | 政治

……党本部が若手議員育成を目的に設置した「日本夢づくり道場」が11月7日に開かれるのにあわせ、出席予定の安倍首相や党幹部に、復党問題の見解をただすことも検討している。会合には小泉純一郎前首相も参加する方向で、「チルドレン生みの親」から言質をとって、復党阻止に弾みをつけたいとの思惑もある。一方、復党容認派からは「反対派は小泉前首相らを利用して『改革派』と名乗りたいだけ。選挙に向けた地道な努力をおろそかにして党に頼る姿はみっともなく、つきあっていられない」との声も漏れる。小泉政権時代には結束を演出してきた83会は、「安倍政権下では後ろ盾を失い、分裂へと動き出した」(自民党中堅)格好だ。こうした1年生議員の動きに安倍首相は31日夜、記者団に「自民党にはいろいろな意見がある。当選同期の意見がそろうことはまずないのではないか」と語った。

■この箇所は、11月1日付けの産経新聞から抜粋して書いているのですが、「日本夢づくり道場」という名前を付ける感覚も分かりませんし、もともと「1年生議員」という言い方は政治記者の誰かが、悪戯半分に使った用語のはずなのに、本当に新入生用のオリエンテーションみたいな「道場(教室)」を開催するとは!?自民党自らが「素人」を選挙に利用して借り集めてみたら、うっかり大量当選という椿事が起こり、その後始末を苦笑いしながら事務的にやっているように見えますなあ。そんなヒヨッ子扱いされている分際で、いっぱしの議員面しているから、ますます人気が無くなって行くのでしょう。

■猪口センセイなどは、初当選して直ぐに双子のお母さんという「素質」を見込まれてか、少子高齢化問題担当大臣か何かに就任して、大いに根拠の有る「無能」呼ばわりされて赤ッ恥を掻いたものでした。相当に怪しい仮免許を貰って直ぐに音速で走るF1マシーンに乗ったようなものですから、轟音を響かせてロー・ギアでサーキットをのろのろと「疾走」したという具合でした。何はともあれ、金魚の親玉に直訴すれば、歯の浮くような事を言われて選挙に担ぎ出された時の「外交辞令」を真に受けて、特別待遇を約束されると思って臨んだ「道場」で、死刑宣告にも等しい「使い棄て」宣告をされたのは、ちょっと可哀想でした。


自民党の小野次郎、佐藤ゆかり両氏ら新人の有志議員は9日午前、郵政造反組の復党に慎重対応を求める意見書と賛同議員計43人の署名簿を党本部で中川秀直幹事長に手渡した。中川氏は「承った。慎重に検討したい」と応じた。佐藤氏はこの後、記者団に「慎重に検討していただけるということだから、一歩前進ではないか」と語った。賛同者は小野氏ら昨年の衆院選で造反組と戦った14議員をはじめ新人の衆院議員が大半だが、河野太郎衆院議員(当選4回)、山本一太参院議員(同2回)らも署名している。小野氏は、これに先立つ有志議員の会合後、賛同者は44人と発表したが、直後に1人から署名取り消しの連絡が入ったという。
四国新聞 11月9日

■土壇場で逃げ出したのは誰でしょう?それは兎も角、こんな場所にも河野太郎さんが顔を出しているのが面白い!そして、小泉改革を支持し、安倍総理の誕生に大いなる貢献をしたと自負するテレビ大好きの山本一太さんも、うっかり「金魚の糞」に乗っかってしまった事を、間も無く後悔することになるのでしょう。先輩議員の中で「復党反対!」と叫ぶ人達は、小泉改革の継承者としての自負が有るのでしょうが、小泉さんを単なる選挙の看板としか考えていなかった魑魅魍魎みたいな古参議員は、碌な選挙地盤を持たない「小泉チルドレン」など、一過性の話題でしかない事を始めから分かっていますから、小生意気な態度は無視して可能な限り関わらないようにしています。その内、墓穴を掘って自滅するだろう、と腹の中では小さく笑っていたのに違いないのです。そうした意地悪な先輩議員が大喜びするような事件が、とうとう起きてしまった!


先月29日の衆院経済産業委員会での官製談合防止法改正案採決に、自民党の片山さつき、佐藤ゆかり両委員が無断欠席したことがわかり、同党の石原伸晃幹事長代理は1日の記者会見で「あるまじき行為だ。職責を全うするためにも日々研さんしてもらいたい」と述べた。片山氏は1日、記者団に「マスコミ対応に追われていた」と釈明。佐藤氏も「(委員の)差し替えをしようとしたが、事務所のミスで行われていなかった」として謝罪した。同党は両氏を口頭で注意するとともに、両氏を委員から外す方向だ。
読売新聞 - 12月1日

■この二人は、国会と言う場所が「立法府」だという三権分立・民主主義の基本を知らないようです。法案の採決に向けて、国会議員は選挙で政見を訴え、当選後は同志を募り、官僚や野党と折衝して走り回るのが仕事です。議員が採決に参加しなければ、どんに優れた法案も議決されずに流れてしまいますからなあ。東大出身の元大蔵官僚の片山女史は、採決よりも「マスコミ対応」を優先させるのが国会議員だと思っていたようですし、佐藤女史は自分のスタッフに責任を押し付けたばかりか、自分が所属する委員会を軽んじているようですなあ。彼女達は「小泉チルドレン」の中でも比較的マトモと思われていたはずですが……。これで大義名分が立ちますから、まずは何処の委員会にも所属させない「穀潰し」の素浪人身分に陥れ、議員としてテレビには映らないし政策に関する質問にも応えられない立場に追い込んで、自分から恥を知って辞職するように仕向ける風が吹き始めるのではないでしょうか?