旅限無(りょげむ)

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未履修問題は終わらない 其の壱

2006-12-12 00:20:27 | 教育
■喉元過ぎれば熱さを忘れるとは申しますが、「未履修問題」は年末になっても、実際はまだ全貌が明らかになったとは言えない状態なのです。マスコミ得意の集中豪雨報道をぱたりと止めてから、何となく問題自体が解決したような気で居ると、国家100年の計の根幹である「教育」が傷だらけの穴だらけのまま放置される事になります。一体、何が問題だったのでしょう?

福島県の富田孝志教育長が11日の県議会商労文教委員会で、高校の履修単位不足問題などの責任を取り、任期を1年残した来年3月に辞任する意向を表明した。富田教育長は自身も校長時代に虚偽の書類を県教委に提出しており、「生徒の卒業を機に3月で身を引く」と述べた。履修不足問題を主な要因として教育長が辞意を表明したのは全国で初めて。

■連続3人の県知事が「官製談合」と贈収賄で逮捕された大事件の先陣を切ったのが福島県でしたから、それを放置した県議会も針の筵(むしろ)に座らされているのでしょうなあ。実に手回しの良い事に、県知事逮捕の直前に県議会議員は「自発的に」贈収賄に関わったかどうか、議員全員にアンケート調査したのも福島県議会でありました。結果は勿論、「誰も貰っていない」という涙が出るほど立派なものでしたぞ。ところが、案の定、逮捕された前知事は、議会にも実弾をばら撒いたと取り調べで吐いたのでしたなあ。それでも、辞職した県議は1人も居ないようです。これこそ、喉元過ぎれば…の好例でしょうなあ。まさか、それの身代わりでもないでしょうが、教育長が辞任を表明したのは確かにケジメにはなります。


福島県では県立高校16校(1、2年生のみの1校含む)で未履修が発覚した。富田教育長は、福島高校校長時代の03年度に授業の実施状況報告書を偽装して県教委に提出していたことを認めている。04年度に教育長に就任したが、解決策を講じなかった。委員会終了後、富田教育長は報道陣に「未履修校の現場にいたので、けじめをつけることが必要だと考えた」と語った。同県内では、未履修問題のほか、教員の不祥事も相次いでいた。
毎日新聞 - 12月11日

■責任の取り方が昔とは様変わりした日本ですから、不祥事が発覚すると何故か頭髪が寂しくなった人を選んだかのように、必ず3人並んで頭を下げるのですが、何だかんだと言い繕ってぺこぺこしながらも「絶対に辞めない」と言い張るようになりました。教育再生会議では、教育委員会自体を廃止する案も出ているのですから、人心を刷新するためにも、こうしたケジメは大切だと思われます。しかし、未履修問題が発覚した高校は、何処も地元の名門進学校なのですから、処置を誤ると全国の教育システムの根幹が揺らぎますぞ。


8日に支給された岩手県職員のボーナスで、履修単位不足問題が発覚した県立高校の校長の勤勉手当が減額されていることが、関係者の証言で分かった。県教委は「履修単位不足が原因かはプライバシーが絡むので話せない」と、減額対象基準や減額幅などは明らかにしていない。
毎日新聞 - 12月8日

■県立高校の校長先生も、何らかの形でケジメを付けようと思っているのかも知れませんが、来年度からは未履修を絶対に許さないと岩手県は決めているのでしょうか?それは岩手県だけの問題ではなく、来年度に高校3年生になる諸君は、1年2年と時に比べて急に窮屈な時間割が強いられて当初の受験勉強プランを変更しなければならないはずです。全国の受験生がライバルとなる彼らは、自分達だけが馬鹿正直に「受験に不要な科目」の授業に無駄な時間を費やしているのではないか?と疑心暗鬼が渦巻くような事は無いのでしょうか?生徒の為に、学校の為に、と再び未履修を画策する受験の鬼のような熱血先生は大人しく文科省の指示に従うとは考え難いのですが……。


高校の履修単位不足問題で8日、青森県の県立青森北高で単位不足が判明した。毎日新聞の独自集計では、熊本県を除く675校(公立372校、私立303校)となった。
毎日新聞 - 12月8日

■まさか、こうした報道が年が明けてからも続くのでしょうか?他の大きなニュースに隠れるように、ぽろりぽろりと小さな記事で発覚するのは、集中豪雨報道に引っ掛かって吊るし上げ会見で晒し者にされてしまった校長先生や教育委員会の幹部は貧乏籤を引いてしまっただけのようにも見えて来ますなあ。もじもじ、だらだらと時を稼いで世間が未履修問題に飽きた頃まで白を切り通した者が、特別な糾弾も受けずにそっと事を処理してしまう。それで良いのでしょうか?「美しい国・日本」「教育の再生」を掲げる安倍総理のお膝元の山口県からも、この時期にぽろぽろと未履修校が出て来るのはどうしてでしょう?

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