旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

最近のチャイナ 偽物は誰にも迷惑

2006-12-07 14:39:56 | 外交・情勢(アジア)
■日本製の化粧品だろうが、ゲーム機械だろうが、欧州製の高級時計でも鞄でも、何でも手軽に偽物を作ってしまうチャイナの人々には、何を言っても効果は有りません。最近ではホンダの自動車とそっくりのデザインが問題になりましたが、無断でそっくりな製品を作ったわけではなくて、単に「参考」にしたとアノ国では判断されます。偽札と言えば、今は北朝鮮の「特産品」だと思われていますが、チャイナの偽札犯罪の方が凄いものが有りますぞ。パスポートなどの公式文書も上手に偽造して販売しますし、学歴から出生証明書まで、何でも好きな物が手に入りますからなあ。

■欧米諸国から損害賠償訴訟を起こされるのも平気なようで、「知的所有権」だろうと「自分の物」以外の所有権など、隙が有ればさっさと無視してしまう逞しい人々が多い国でも有ります。最近は、世界の工場などと自画自賛気味ですが、道路を走り回っている自動車の中にも無数の「偽物」が混入しておりますぞ。エンブレムだけを付け替えるくらいは可愛い部類で、外見と中身がぜんぜん一致しない奇怪な自動車の偽物も走っているようですし、運転している人が持っている免許証も怪しい場合が多く、始めから無免許運転をしている猛者も居ます。ですから、本当に自動車が沿岸部を中心にして普及して行くとなると、何とも恐ろしい事態が予想されますなあ。

■北京政府もWHOに加盟した手前もありますから、外国の企業や政府から文句を言われるまでもなく、法律を厳しくしたり、摘発や逮捕の瞬間を大々的に報道して見せしめにしたり、あれこれと努力はしているのですが、何をやっても効果は限定的だと言う事は、為政者や取締っている所轄の警察は身に染みて知っています。順法精神を教育する努力も続けられているのは確かで、何処に言ってもそんなスローガンがぺたぺた貼って有ります。そんな事を思い出す新聞記事を見付けてしまいましたぞ。


中国で人民解放軍所属の自動車を装った「ニセ軍用車」が多数出回
り、問題化している。軍用車は、道路通行料や駐車料などが免除される。警察も、軍用車の交通規則違反には目をつぶりがちだ。この特権に着目した犯罪組織が軍用車を偽造し、密輸などに悪用している。ニセ軍用車の通行料不支払いなどの損失は毎年5億元(約73億円)以上とされ、軍は取り締まりに必死だ。中国各紙によると、一般車は通常、青や黒、黄のナンバープレートを使うのに対し、軍用車は白プレートを使うが、犯罪組織が、このプレートを偽造したり、盗んだりしてニセ軍用車を仕立て、麻薬や密輸たばこの運搬などに使う例が増加している。ニセ軍用車で一般車に衝突し、法外な賠償金を脅し取る集団も現れた。
読売新聞 - 12月6日

■日本では自動車に関連する税金を、特定財源から一般財源に変更しようと大騒ぎになっておりますが、チャイナには税金を逃れるための、闇の自動車が無数に存在しているとの話が有ります。闇で購入して車両を登録せずに税金を逃れ、摘発と道路使用料金を嫌って夜間しか乗らないという徹底した対策を講じて「見えない車」にしてしまうのだそうですなあ。そんな車にぶつけられたら大変ですぞ!

■この記事に取り上げられているのは、闇に潜るのではなく、闇に住みながら表で稼いでいる連中の話です。北朝鮮での将軍様の側近にだけ許される特殊なナンバープレートが有名ですが、自動車自体が少ないので偽物が出現するのは考えられません。それに比べると、急速に自動車社会へと変貌しつつあるチャイナは、まったく事情が違っています。確かに公用車は他国では考えられないような特権を持っていまして、北京の環状線であろうと高速道路だろうと、党の幹部が大挙して移動するような時には、突然、道路が封鎖されて厳戒態勢になってしまいますからなあ。いつもは渋滞しているような道ががらんと無人の廃墟のようになってしまうのですが、うっかりそんな走り易い道を自転車で通過しようものなら、あっと言う間に公安警察に抑え付けられて何処かに連れて行かれるのを目撃したのを思い出します。

■ナンバープレートが機械仕掛けでくるくる変わるのは007のボンド・カーだけかと思ったら、こういうやり方が有ったのですなあ。公用車の中でも比較的多い軍関係の自動車に化けるとは、上手い?ことを考えたものです。本物の軍用車が密輸や麻薬取引に関係しているという噂が絶えないのですが、それを逆手に取ってしまう犯罪組織も良い度胸ですなあ。恐らく、本物の軍用車に見つかって追い回されるのを想定して、結構な武装をしていると思われますから、きっと路上のカーチェイスと銃撃戦が見られるようになるでしょう。武器も闇で簡単に手に入る国ですから、何とも物騒な話であります。

■軍が本気になったら相当の事が出来ますから、これを期に、本格的な偽物撲滅運動を起こしてくれたら、国際社会も拍手喝采することでしょう。

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------
チベット語になった『坊っちゃん』書評や関連記事

忘れた頃にやって来るもの 其の四

2006-12-07 11:20:10 | 日記・雑学
■③は、もうメチャクチャな「拾い読み」と「こじ付け」でしょうなあ。『奥の細道』という紀行文の傑作には、確かに謎が多くて、著者が芭蕉なのか?という疑惑から、実際に歩いた季節と文章になっている描写がズレているとか、作品としての価値とは別の問題は指摘されています。それでも、見事な文章と俳句を真摯に味わった方が、「美しい日本語」のためには良いと思いますなあ。「隠れキリシタン伝説」は「平家落ち武者伝説」や「義経生存説」などと共に、確かにロマンを感じる小説ネタではありますが……。

■④は香川県に残る砂で築いた大きな「寛永通宝」のお話のようです。これを築いた経緯を記した史料には疑問とされる点が有るのは確かなようですが、それがどれほど巨大な「謎」に直結しているのか、そちらの方が謎ですなあ。⑤は酒井勝軍(かついさ)さんというチャンピオンが実在したのですが、番組で取り上げたかどうかは不明です。酒井さんは山形出身のユニークな方で、苦学している間、1888(明治21)年にJ.P.ムーアかさんから洗礼を受けている正真正銘のクリスチャンです。1898年には渡米して聖書と賛美歌を学んで帰国。東京唱歌学校を設立して、神の賛美伝道に努力しました。

■沢山の伝道書を出版して『クリスマス讃美歌』という物も出しています。親米主義的・民主共和主義的・反戦平和主義的でしたが、通訳として日露戦争に従軍して衝撃を受けてからが大変で、「日本が神の秘蔵国である」との啓示を受けたそうで、『イザヤ書』を独自に解釈してアルマゲドン=日米最終戦争の時が近い!と予言し始めたそうです。そこから「神選民族ユダヤ人と天孫民族日本人は勝利」して、世界は「神州天子国」となって平和になるのだそうです。最初は反ユダヤ的な思想を持って『猶太人の世界征略運動』、『猶太民族の大陰謀』など発表したそうです。今でも似たような「商品」が出回っているのが面白いですなあ。

■でも、酒井さんご自身は次第に親ユダヤ主義に変わって「日猶主義」になったそうです。勲五等を授与されている立派な方なのですが、余技?として日本の超古代史にも興味を持ち、有名な『竹内文書』を熱心に研究する中で、日本ピラミッドの存在を証明する!という大調査を実施したのでした。さてさて、こうした前置きを東京12チャンネルがどれだけ紹介していたかは知りませんが、時間配分から考えて無理だったのでしょうなあ。

■⑤に関しては、日本は世界一の地震大国でもある島国ですから、海岸線は何度も大きな変動に見舞われているので、割と海岸に近いと場所に水没している遺跡がたくさん有るのは当然なのです。まさか『東日流外三郡誌』(つがるそとさんぐんし)などを参考資料にして青森の超古代史を再構築したのではありますまいな?!以下省略です。

■人の脳みそは、楽しい妄想やらファンタジーを生み出して楽しむ能力を持っているのですから、これを上手に使えば豊かな文化を楽しめます。しかし、現実を忘れてバーチャル空間に取り込まれてしまうと大変なことになります。それはお酒にも似たもので、心地良い酩酊を楽しんで、歌が出て冗談が飛び交う酒席は良いものですが、酒乱だのアルコール中毒だのと進むとぜんぜん楽しくなくなってしまいますなあ。妄想を楽しんだ後は、しっかりと覚醒して現実に戻るアフター・ケアが大切ですぞ。 人気者のみのもんたさんが、変な知ったかぶりをして取り返しの付かない困った置き土産などしないように祈るばかりであります。

-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

------------------------------------------

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------
チベット語になった『坊っちゃん』書評や関連記事

忘れた頃にやって来るもの 其の参

2006-12-07 11:19:41 | 日記・雑学
■偶然なのでしょうが、同じ日の夜、東京12チャンネルが困った番組を放送するのを新聞のテレビ欄で知りましたぞ。題して『新説!?みのもんたの歴史ミステリーSP』という2時間枠のバラエティーです。これも「忘れた頃にやって来る」困った企画の焼き直しです。「○○を食べると健康になる」と一言すると日本全国のスーパー・マーケットで品切れになるとも言われる人気者?のみのもんたさんが、この種の「トンデモ」番組を真面目な顔で放送するのは如何なものでしょう?所詮テレビのヨタ話だから…と冷静に無視したり、間違って視聴してもくすくす笑って居られる余裕が有れば良いのですが、妙に辻褄が合っているように見える「トンデモ説」は、基礎的な知識を持たない人達の気に入るようになっております。

■エーリッヒ・フォン・デニケンという人が、1968年に『神々の戦車』(邦訳『未来への記憶』)という本を出版して、世界中でバカ売れしました。その後も似たような話を次々と本にして、「超古代史」から「宇宙文化人類学」へと自説をどんどん強化して大いに商売が繁盛しました。映像化し易い内容なので、世界中でドキュメント?番組が制作されましたし、勿論、日本でも結構、硬派だと思われていた良質のドキュメンタリー番組でも取り上げたものです。簡単に言ってしまえば、人類の歴史の中で「神」と呼ばれたのは全部宇宙人だったという一つの仮説を、世界中に散らばる魅力的な遺物に結び付けて語る、とても面白い娯楽本です。

■夢やロマンを楽しみたい向きには打って付けではあります。しかし、これを本気にして「歴史が分かった!」と思い込んだりすると非常に危険で、デニケンが大流行した時期に幼年期を過ごした人達の中から、オウム真理教やら怪しげな宗教を自称する団体に取り込まれて行った人が居るようですし、仮想や妄想を楽しむのも知的な趣味の範囲とは言えますが、表と裏がひっくり返ると大変なことになりますから、ご用心、ご用心。因みに、第一次デニケン・ブームから四半世紀が経過した1992年に、失われた「契約の箱(聖櫃)」の行方と神秘を壮大なスケールで調査した!との宣伝文句で『神の刻印』という本が世間を騒がせましたなあ。

■著者のグラハム・ハンコックさんは、優秀なジャーナリストで国際援助団体の裏側を告発したり、自分がインドで育った経験も有ってアジアに関する優れたルポも書いていたのですが、映画のインディ・ジョーンズに触発されたのか、「超古代史」に興味を持って『神々…』シリーズを執筆しました。これも忘れた頃にやって来る物の一つです。ハンコックさんの仮説は、地球の「皮」が「中身」から剥がれてずるりと回転した?という一点によって支えられているようです。今は極寒の地となっている極地にはかつて超古代文明が有ったはずだ!という結論を導くために、トンデモ本が大好きな人達にはお馴染みの遺跡を、時々歴史的な時系列を無視してでも結び付けて、壮大な歴史以前の世界を再現したものです。でも、地球物理学を研究している人達からは、「地球の皮は剥けないよ」と簡単に否定されてしまったそうです。でも、小難しい本当の話よりも、面白ければ何でも良い、と考えるのが読者の特権ですからなあ。

■そして、12月6日の東京12チャンネルのみのもんたさんです。ギネス・ブックに載ったとか載らないとか、特権的にテレビを私物化しているようにも見える大人気で、呼ばれれば何処へでも出演してしまう面白い人ですなあ。番組の中身は東京12チャンネルのHPでざっと見たのですが、時宜を得たすばらしい企画!とは申せません。ただの寄せ集めですから、「新説」の後に「!?」が付くのは当然です。


①本能寺の変…史料改ざん発覚!?
②日本のルーツは…古代イスラエル!?
③松尾芭蕉はキリスタン!?
④謎の巨大遺跡!!
⑤日本にピラミッド!?…3000年前に古代文明は存在した!!
⑥テレビ初公開!…青森の沖に眠る巨大海底遺跡の謎!?

司会=みのもんた、
パネラー=荒俣宏、関根勤、渡辺満理奈、さくら

■「パネラー」と言うのは、バラエティ番組に出て横に並んで恥を晒す人の事を呼ぶには不適切な名称のような気もしますが…。因みに、パネラーの最後に出ている「さくら」というのは、ヤラセ演出のために仕込まれた文字通りの「サクラ」ではなくて、ちゃんとした芸名なのだそうです。専門が何かは知りませんが、芸能人のようです。ひとつひとつの項目を詳細に検討するのは大変なので、要点をメモしておきましょう。

■①は太田牛一が書き残した『信長公記』という書物を信じるか信じないか?によって「本能寺の変」の見方は大きく変わります。「真相」を探る本は無数に有るので、歴史好きの方は気長に頭の体操を続けられる貴重なテーマの一つであります。

■②は「ダビデの星」「道満清満」「籠目」…これらの名称が付けられる2つの正三角形を組み合わせたデザインが、ユダヤ教のシンボルでもあり、伊勢神宮を始めとする日本国内の神社にも存在する!そして、東北弁の中に古代ヘブライ語でしか解釈できないものが有る!という楽しい「発見」から展開するお馴染みのお話です。ヨセフ・アイデルバーグという人が思い付いた『日ユ同祖論(日本人・ユダヤ人同祖先論)』というのがネタ元ですが、本当にユダヤの歴史を学ぼうと思ったら大変な苦労を覚悟しなければなりませんし、数あるユダヤ史の謎の一つでしかない「失われた10氏族」にしても、『(旧約)聖書』を熟読研究しつつ、膨大な関連史料を読まねばなりません。今の国境線や民族の配置が決まるまでの1万年の歴史をちょっとでも学べば、古代ユダヤ民族=古代大和民族、という簡潔で分かり易い結論は出て来ません。因みに、「ダビデの星」がユダヤ教徒のシンボルになったのは、割と新しい話だそうで、ユダヤ人を差別するために胸や居住地に無理やり貼り付けたのは欧州やロシアのキリスト教徒達だったとの事です。

忘れた頃にやって来るもの 其の弐

2006-12-07 11:19:06 | 日記・雑学

平成7年から米国に留学するなど、事実上休業状態だった石原。出版の理由について「大切な思い出。女優25周年を迎え、女優復帰へのけじめ。人生のすべてを白紙にしたかった」と真っ白なブラウス姿で“過去との決別”を強調した。過去には新興宗教に没頭したり、何度も失跡騒動を起こすなどして“プッツン女優”とも呼ばれた。

■この元・女優さんは、言葉の選択が不得手なようです。「女優25周年」とは何事でしょう?25年前にデビューして、ちょっと注目された短い時期が有り、人気に便乗して企画された映画は酷評され、それを挽回する修行や鍛錬をやる暇も無く、男アサリが禍して自滅してしまった哀れな女性が使える言葉ではありません。もしかしたら、好評だったと言われる1本のテレビ・ドラマの記憶に縋り付いて、25年間ずっと「自分は女優だ!」と自己暗示を掛けて自分を支えていたのかも知れませんなあ。それなら、「出版記念・女優25周年記念」の看板を見たら取材陣はさっさと引き揚げてボイコットするべきだったのではなかろうか?


……実名を出された男性陣について、石原は「連絡の取れる方とは私が連絡した。『本当のことだから何を書いてもいいよ』といわれている」と“了解済み”をアピール。もっとも、「連絡をしたのは13人のうち何人?」と質問が飛ぶと「半分以上は連絡を入れた。本人と話ができたのは3人」とトーンダウンした。

■この種の暴露本が裁判沙汰になるかならないか、それは実名を出された側からの了承や納得が得られているかどうかに懸かっています。取材に集まった人達は、これから始まる血みどろの裁判闘争を予感して、事の発端に立ち会っておいた方が得だ!と瞬時に判断したのでしょうなあ。そうでなければ、質疑にならない支離滅裂なやり取りに付き合っては居られないでしょう。


「発売前から『勇気をいただきました』と反響がありました」と意味不明の発言も飛び出すなど“プッツン”ぶりは相変わらず。……ブログの書き込みは「出版には心から自信を持っております」と結んだが、芸能界からの反発は避けられそうにない。
サンケイスポーツ - 12月7日

■「有名人のブログ」というのも結構な人気だそうで、御本人にとっても安上がりな商売道具でもありましょうから、需要と供給のバランスは取れているようなものですが、このような行動と発言をする「元女優」さんに貴重な時間を割いて興味を示す人がどれほど居るのか?と別の心配をしてしまいます。「芸能人が書いた本」と称されて市場に出て来る商品の中で、本当に本人が原稿を書いてゲラを検討して完成させた物は皆無に近いと言われています。買う方もそれを承知で買っているのでしょうが、読むに値する内容を見つける事は無いのが普通で、直ぐにブック・オフの100円コーナーに出て来たりするのでしょう。

■「忘れた頃にやって来る」のは、本来は医学的な治療を必要とするような人を、芸能人だの作家だのと持ち上げて、その破滅を残酷な趣味で見世物にする世間の恐ろしさが顕在する事件のことではありません。どうでも良い芸能関係の『暴露本』が時々市場を席捲する異常な出版界のアクシデントの事を指します。自分が昔は人気者で、異性にも大いに人気が有って恋愛沙汰も数知れず……という過去の栄光?を時宜を得ない出版物で披瀝してしまう「事故」が、忘れた頃にやって来ては忘れられて行きます。容姿が商売道具となる俳優さんやモデルさんが、同業者からも声を掛けられるというのは、御本人にとっても誇らしい事なのかも知れませんなあ。この種の醜悪な思い出話を、元々、性格に問題が有ると烙印を押された元・女優さんが書くのは苦笑いされて済む場合も有りますが、ちょっと有名な中堅男優が同じ事をやると大変な事になります。

■随分前のことですが、長門裕之さんが酔っ払った勢いで喋った、日活青春映画の全盛時代の思い出話?が出版物になる直前に本人と奥さんの南田洋子さんとの謝罪会見で中止になった事が有ります。大御所になっている女優さんの実名を出して、有ること無いことを書き並べた暴露本だったそうですが、本当に「男はつらいよ」でありますなあ。何はともあれ、総理大臣が「美しい国・日本」を公約に掲げ、『国家の品格』という本が220万部も売れている国で、この種の本がバカ売れなどしない事を祈るばかりです。石原某女史を取材対象にして犯罪的な商売に便乗しようとするよりも、一刻も早く腕の良い精神科医の人でも紹介してあげるのが親切というものでしょうなあ。

忘れた頃にやって来るもの 其の壱

2006-12-07 11:18:35 | 日記・雑学
■天災は忘れた頃にやって来る、との名言を残したのは寺田寅彦さんでしたが、これは物理学者として自然現象の見方を諭す至言でありますなあ。大きな地震や台風(最近は竜巻)などへの備えは大切ですが、忘れた頃にやって来るのは天災ばかりではありません。「賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ」などと申しますが、「愚者」にはもう一つ注意すべき事が有りまして、それは「愚者は直ぐに忘れる」という事です。今もイラクで凄惨な殺し合いが続いているのも、米国の大統領が「歴史」を学ばず、大英帝国の失敗やら自国のヴェトナム戦争の記憶も無視して始めたお節介な行為が切っ掛けでした。

イラク情勢の打開策を検討していたベーカー元国務長官ら超党派の「イラク研究グループ」は6日、報告書を提出。……「イラクの現状は深刻で悪化している」とし、「問題解決のための極意はない」と指摘した。研究グループは、イラク政府が治安向上に向けた策を講じない場合、米国が政治、軍事および経済面での支援を削減すべきという見方も示した。……イラクの治安状況次第では、「部隊防護」に必要とされない米戦闘部隊を2008年第1・四半期までに撤退することが可能との見方を示している。その上で「米国はイラクで大規模な部隊を無期限に展開するべきではない」と指摘した。…
ロイター - 12月7日

■既に自国の兵士だけで3000人もの犠牲者を出し、現地の住民はその10倍以上が死傷していながら、事態はまったく改善してはいません。兵士としては最も辛い「犬死」を強いる責任を、最高責任者は永久に追わねばなりませんから、ブッシュ大統領としては残り2年の任期の間に、「犬死」「無駄骨」と歴史に刻まれるのを何としても避けたいと起死回生の決断をしようとしているようです。イラクという国を「民主的に作り変える!」などという実にお節介な理由で先制攻撃しておいて、国連加盟国でもあるイラクと国が分裂するか消滅するか?という極限状態を作り出してしまったのですから、全部やりっ放しで逃げ出すか、国際社会に頭を下げて後始末の協力を要請するか、どちらに転んでもブッシュ2世の政権は、米国の歴史に大きな汚点を残すのは避けられません。

■汚点のシミをどれだけ小さく出来るのか?「超党派」で研究グループが動いているのは、党利党略を忘れて米国という国家の名誉を守るために、この一点で合意したからでしょう。あと2年は、米国の貧困層に属している若者達が今と同じ泥沼状態の中に放置されるのは間違い有りませんが、幸運にも2008年から解決に向かえるようになったとしても、その後、おそらく5年も経たない内にイラクの失敗をころりと忘れて、米国は次の戦争を始めるのでしょうなあ。12月6日という日に、日本でも「忘れた頃にやって来る」2つの見物が有りましたぞ。その第一は、ブログに書くのも面倒な話ですが、テーマの関連上、仕方なく取り上げねばなりません。


女優、石原真理子(42)が6日、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテルで記者会見を開き、同日発売の自叙伝「ふぞろいな秘密」(双葉社)に登場する歌手、玉置浩二(48)ら大半が実名の交際男性13人について「大切な思い出で、感謝の思いもあり包み隠さず書いた」と説明した。書かれた側は困惑しているが、石原は「女優復帰へのけじめ。さわやかに書いている」と居直り気味だった。

■幾つかの週刊誌が先行取材をしていたらしく、電車の中吊り広告には予告が出ていたようです。それを見上げた人達の多くは、「石原真理子」という名前を知らないか、知っていても「何で今頃?」と怪訝に思ったでしょうなあ。週刊誌の中吊りでは、それほど大きな扱いではなかったのに、何故かテレビは異常な反応を示して動いたようです。見も蓋も無い言い方をすれば、ロング・セラーや名著に拘っていると倒産してしまう厳しい状況の出版界の中には、犯罪ぎりぎりを承知で一発大きく当てて「売り逃げ」てしまう困った商法を選ぶ者が居て、可哀想なことに世間に忘れ去られて「失う物は何も無い!」と開き直った元・有名人を食い物にしては消費して捨て去られる本とも呼べない出版物を商売にするわけです。

■翌日が発売日だそうですから、「記者会見」は露骨な宣伝会場となるのは当たり前の話で、そこに押し寄せたマスコミ関係者はどんな言い訳をしても、腐臭ぷんぷんの餌に誘(おび)き寄せられた宣伝要員でした。勿論、海千山千のレポーターさんや芸能記者の皆さんは、自嘲しているのでしょうが、報道する事自体が宣伝になってしまうマスコミの悲しくも恐ろしいジレンマを感じる出来事ですなあ。