旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

憂鬱な年賀状 其の参

2006-12-20 17:14:48 | 日記・雑学
■北京での6者協議は、予想通りに実質的には米朝の2国間協議になっています。釣魚台の迎賓館で開催されている本会議とは別に、米国大使館では経済制裁に関する密談が行なわれるとかで、北京空港に到着した両国の担当者は、まるで格闘技イベントに来たのかと思えるような体格の人物でしたぞ。食糧難の北朝鮮でも、ちゃんと食べて太っている者が居るぞ!というアッピールなのでしょうか?国際金融部門の責任者だということですから、偽札・麻薬・密輸は儲かる仕事だと言いたいのでしょうか?空港内を無言で逃げ回った北朝鮮側とは違って、米国の担当者は勝ちが決っている試合に向うボクサーかレスラーみたいでしたなあ。外交交渉というよりも、怖い刑事さんと田舎ヤクザの若頭とが、取調室に入って行くようなものですからなあ。開催することに意義が有る空疎な国際会議ですから、拉致・核・ミサイルの3点セットは、何の変化もないまま、新年に持越しです。年賀状に「旧年中は……」とは書けませんなあ。

■ロンドンで起こった亡命ロシア人の暗殺事件も年越しです。おそらく真相は永久に分からないままでしょう。ロシア・チェチェン・ドイツまで広がる疑惑ですから、全貌を調査できる権限は誰も持っていないでしょう。英国の人達は日本人以上に憂鬱なクリスマスを迎えるのでしょうなあ。イスラム系の移民に神経を使っていたのに、今度は亡命ロシア人が物騒な物を持ち込んでいたのですから、楽しい気分で買い物やレストランには行けますまい。どさくさに紛れるように「ダイアナ妃」の死亡事故に関する調査報告が出されて、単なる交通事故死という事になったそうですが、ミステリー好きな国民はぜんぜん納得していないそうです。

■そんな英国では首相が汚職の疑いで取調べを受けるという史上初の椿事が発生したかと思えば、今度は懐かしい?「切り裂きジャック」が再び現われたのだそうですなあ。何だか御難続きで可愛そうです。ブレア政権の間にイラクからの撤兵は実現しそうにないし、アフガニスタンの復興も絶望的のようですし、政権末期とは言え明るい未来が見えないまま、日本よりは女性が働き易い社会制度を構築した事を置き土産にして、少しでも今の好景気が続く事を神様に祈るしかないのでしょうなあ。

■すっかり意気消沈してしまったブッシュ大統領にしても、恒例のクリスマス演説を考えるのも気が重い事でしょう。パパの友達が集まってイラク撤兵プランという、辛口のクリスマス・プレゼントを作ってくれたものの、「悪の枢軸」演説から今日までの業績を、丸ごと否定して反省しなければならないのですから、一体、どんな演説になるのでしょう?米国の兵隊さんが、後何人命を落とすのかも大問題ですが、イラクという人造国家が分裂するのか一体性を保つのかという中東の大問題が残されてしまいました。テロを撲滅する特効薬がイラク攻撃だったはずですが、イスラム過激派は何処でも元気で、クリスマスを嘲笑うテロ事件が起こる心配が有るくらいです。まさか、ブッシュ大統領が痩せ我慢の演説をしている最中に、米国本土の何処かで爆弾が炸裂するような事はないでしょうな?!

■クリスマスを家族と共に過ごそうと、米国内では、あれこれ買い込んで飛行機に乗ろうにも、液体は禁止!大荷物も禁止!薬品禁止!などと喧しいので、手ぶら同然で移動しなければなりそうです。米国の知人に向けて、クリスマス・カードを送るのにも、わざとらしいお祝いの言葉を書くのは気が引けますなあ。ニュー・イヤーがハッピーとは、とても思えません。米国生まれの「グローバリゼーション万歳」運動は、極少数の大金持ちを生み出した反面、膨大な貧困層を吐き出してしまいました。イラク攻撃を端緒とする「大中東民主化戦略」などという絵空事も、根っこは同じものです。10年遅れの米国を気取っていれば、何事も上手く行く時代ではないのに、長年の米国追随が染み付いている元気な老人が日本中を闊歩している間は、何だかんだと言いながら、米国の注文には無理してでも応じて、貿易でも戦争でもますますグローバル化して行くのでしょうなあ。

■日本の小学生に英語を強要するよりも、「教育難民」として欧米諸国に留学させてしまった方が話は早そうですし、野球でも金貸しでも、日本でちまちまやっているよりも米国に渡った方が手っ取り早いと、日本の子供達は知ってしまいましたから、「伝統と文化を尊重し」てなどいられないでしょう。知り合いに野球少年やサッカー少年が居たら、ついつい、年賀状にも「海外での活躍を期待します」などと書き添えてしまいそうですなあ。

■北朝鮮問題の先行きが見えなくなって、安部総理の唯一の売り物だった拉致問題解決に対する真摯な姿勢もだんだんボヤけて来ております。総理は自分の政権が「憲法改正」をするのだ!と大見得を切ったそうですが、拉致問題を解決してみせるぞ!とは仰らないようです。「相手が有ることなので…」と言いたいのでしょうが、憲法改正にも「相手」は居るはずなのですが、どうやら、その相手は北朝鮮よりは組し易い人達のようですなあ。まあ、年が明けても日本の政界にはマトモな野党が出現する可能性はゼロなのですから、恥も外聞も気にしないで参議院選挙を乗り切ってしまえば、憲法改正への流れはとなる事は無いでしょう。本来ならば、いくつもの世界的な大変化が起こったこの60年の間に、2度でも3度でも改正されていない方が変なのです。平和憲法護持!を主張する政党でも、更に歩を進めて「世界中から戦争を無くす」使命を国家に課すような条文を入れる努力をすべきでしたし、特定の宗教を熱烈に信仰している政党や、古めかしいイデオロギーを信じている政党からも、独自の憲法草案がどしどし発表されるのが健全な政治なのではないでしょうか?

■勉強をしない学生と同様に、憲法をまじめに検討しない政治家も、本来の義務を怠る不心得者と言えるでしょう。少年法に過度に守られた性悪な若い犯罪者や、選挙と談合と収賄しかやる事が無い政治家が、来年も日本中を騒がせるのでしょう。それでも、少しは良い事が起こる年であって欲しいものです。少しずつ、越年する課題を宿題として、ぼちぼちとブログ上で解きほぐして置こうと思っていますが、これも気の重い事ではありますなあ。何とか、身の回りに小さな幸せがやって来ることを新年に期待しておきましょうか。
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憂鬱な年賀状 其の弐

2006-12-20 16:30:29 | 日記・雑学
■食いしん坊の貧乏人が内臓脂肪を蓄えるために愛用する牛丼屋さんや食べ放題の焼肉屋さんでは、怪しげな米国産BSE牛肉が大量に供されていたそうで、何とかして「安くて安全な」牛肉を食べたい食いしん坊さん達はオーストラリア産のちょっと固い肉で我慢していたそうです。国内の畜産農家を守るために定められている関税が撤廃されれば、もっと安くたくさん肉が食べられるので、世界中から安い肉を買え!と無責任に主張している人が増えているそうです。そう言えば、昨年は時ならぬ「うどんブーム」が起きたようですが、関東に殴り込んで来た讃岐ウドンも、その粉はオーストラリ産だそうですなあ。その農業大国のオーストラリアが100年に一度の大旱魃に襲われて、一転して穀物を輸入し始めたとか……。肉も穀物も、まずは自国民に食べさせねばなりませんから、貧乏な国や大規模生産をしている特定の国から「安くて美味しい」物を買い込んで食べていると、いざと言う時には餓死する覚悟をしておかねばなりませんぞ。「新春のお慶び」を誰に書き送りましょう?

■増税の理由として、老人医療と介護の費用が足りない!という便利な話が有ります。どんな理想的な介護・医療制度を考えているのやら……。「教育再生」会議では、目くじら立ててダメ教師の追放を熱心に議論しているそうで、「教員免許の更新」がその切り札となる勢いです。しかし、免許というものは万能ではないことは、毎日毎晩、報道されている交通事故を見ていれば分かりそうなものです。自動車免許の更新が形骸化されているのは経験者なら誰でも知っていますぞ。命にかかわる免許は、本当に厳密な更新手続きを求めたいところですから、教員免許よりも自動車(バイク!)運転免許の扱いを先に考えた方が良いのではないでしょうか?

■それ以上に緊急の問題は医師免許でしょうなあ。「薬漬け」問題は深刻で、副作用も考えないで誤用するお医者さんは報道されますが、売上げアップの目的で無駄な薬やら、強烈な副作用の有る薬剤と抱き合わせの副作用を抑える薬剤もセットで販売?しているお医者さんは放置されています。病気を治すはずの病院が、新型ウィルスの培養工場になっている可能性は高いと言われていますが、この年の瀬になって「新型ノロ・ウィルス」で日本中がちょっとしたパニックです。グルメが大好きなナマ牡蠣が宿主だ!と聞いたら、何となく牡蠣フライも牡蠣鍋も食べたくなくなるのが人情というものでしょうが、ちょっと前までは「お腹に来る風邪」だと言い習わしていた病気が、ウィルスの名前が広まった途端に大騒ぎになりました。病原が何であろうと、ひどい下痢を起して体内の水分が急速に失われたら誰でも死亡します。ナマモノを食べる時には覚悟をしなければなりませんし、小まめに手を洗うのも常識の範囲です。それでも、年賀状の末尾に「手を洗いましょう」とでも書き添えましょうか?

■今のところ、交通事故死の数よりもノロ・ウィルスの犠牲者はずっと少ないようですし、勿論、北朝鮮の餓死者の数には及びませんし、戦後のイラクで爆弾や誤射で死亡したバグダッド市民よりも少ないし、電撃的な勝利の後にばたばたと死んでいる可哀想な米国の兵隊さんよりも少ないようです。それでも心配で仕方が無い人のために、「感染したら病院へ行きましょう」などとマスコミは気楽に言っているようですが、「その病院が無くなってしまったんだ!」と怒っている日本人も多いと思います。医者が居ない、病院が無い、そんな地域で暮らしている人にも、同じ放送や記事が届けられるというのは残酷な話です。年賀状よりも「引越しの挨拶状」を用意した方が良いのでしょうか?

■給料が上がらないのに、統計上の「好景気」を根拠にして増税が始まり、道路特定財源には手を付けられず、過疎の村と財政破綻目前の地方都市とを結ぶ「必要不可欠な道路」が建設され続けるのだそうですなあ。道路から見えるのは「シャッター商店街」やら、バブル時代に作られたテーマ・パークの残骸やら、外食ブームに乗って立てられたレストラン群ばかりでしょうに……。荒れた田畑や見捨てられた山林なども楽しめます。ちょっと離れた土地に住んでいる人に年賀状を書こうと思うと、何となく気が重いのは、その風景を思い出すからかも知れませんなあ。

■12月19日の午前中に、法人税も払えない半病人の銀行から自民党に対して「献金の申し込み」が有ったそうです。中川幹事長はご機嫌で、「有り難く頂戴します」とほくほく顔だったとか……。銀行から借り込んだ80億円以上の大借金を、銀行からの献金でチャラにするのが目的だそうです。それを聞いた安倍総理は、就任3箇月目で支持率が5割を切っている惨状を思ったらしく、午後になったら「やっぱり貰いません」と中川さんに言わせたそうですなあ。こういうのを「朝令暮改」と言うのです。「朝三暮四」という四字成語も有りますなあ。愚かな猿を騙す滑稽な話がネタですが、自民党は国民をサルだと思っているのでしょう。でも、猿でも怒りますぞ!
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憂鬱な年賀状 其の壱

2006-12-20 16:29:53 | 日記・雑学
■郵便局の年賀状が売れないそうです。拙ブログでも、旧暦を無視した「新春のご挨拶」の無理無体を何度か取り上げましたが、改めて、どうして年賀状が売れないのだろう?と素朴に考えていましたら、だんだん連想が広がって、この頃の世相から国際情勢までが一続きの「不快感」の中にに収まってしまいました。元旦に配達して貰うには、クリスマスの25日までに投函しなければならないそうですが、それも皮肉な話ですなあ。明るく「メリー・クリスマス」などと、意味も判らず嬌声を上げる人は多いのでしょうが、心から新年を祝って年賀状を認(したた)めている日本人が何人居るでしょう?

■郵便局と言えば、先ず頭に浮かぶのは「郵政民営化」問題です。参議院で否決されたから衆議院を解散だ!という暴挙に出た小泉前総理を追い詰め切れなかった野党・マスコミ・政治学者、そして選挙民には、最近起こった「復党問題」に対して適切なコメントなど出せません。だから、「女の喧嘩」を囃し立ててお茶を濁しているに違いない!岐阜県の人達は不愉快千万なことでしょう。県庁の出納長が自殺するような大事件が起こっているというのに、たった一人の自民党公認候補は誰でしょう?などというどうでも良い事ばかりが報道されるのですから、いい加減にしろ!とご立腹の事でしょう。その岐阜県ばかりでなく、福島県から始まった県知事の談合汚職事件に見舞われた地域や、財政破綻して「難民」が出ている夕張市、その夕張市よりも財政が悪化している地方自治体の住民が、どんな気持ちで年賀状を書くのでしょう?

■折角、小泉変人総理が議会制民主主義の原則を蹴飛ばしてくれたのですから、そもそも衆議院の議決をチェックする権能を担っている参議院が虚仮(こけ)にされたわけです。しかし、衆議院のカーボン・コピーに堕して惰眠を貪っている参議院は怒り狂うどころか、裏に回って衆参両自民党議員が談合して二院制を破綻させてしまったのでした。それなら、財政再建の一環として「参議院の廃止」が提案されねばならないはずなのに、何処からもそんな正論は出て来ませんでしたなあ。「政治は最高の道徳だ」と臆面も無く断言する政治家センセイがいらっしゃるのですから、「教育再生の根本は道徳教育だ!」と言う安倍総理は、率先して不道徳な参議院を退治してしまわねばなりませんぞ。

■戦後の日本を歪ませたのは『教育基本法』だそうです。個人に偏重した条文が諸悪の根源だそうですが、本当にそうなのでしょうか?誰もその点をじっくりと検証した形跡が有りませんが……。「公」の精神が枯れ果てたのが今の日本の宿痾(しゅくあ)なのだそうですが、それを学校の諸問題と直接結び付けるのは短絡ではないでしょうか?イジメ問題よりも、ヤラセ問題の方が「道徳」の問題に直結しているような気がしますなあ。税金浪費・公金横領・談合・不正献金などなど、これらは全部、税金を自分の縄張りに引っ張り込んで自分のカネだと勘違いしている馬鹿者達がやっている国賊的犯罪です。キックバックやら水増しやら、財政危機の声自体が随分と「水増し」されている証拠でもありますぞ。何処かで税金は大量に「余っている」のです。でも、来年からはどんどんと増税が続くのだそうですなあ。まったく、「謹賀新年」などとは悪い冗談になってしまいます。

■学校のイジメ自殺も年を越えそうです。各地の進学高校では「必修科目」も削って必死に受験勉強をしているかと思えば、同級生をイジメ殺して暇潰しをしている「勉強しない生徒」が居るようです。学校内に獲物が見付からないと、愛知県の岡崎市あたりでは高齢のホームレスを狩って遊んでいるそうであります。暴行傷害・強盗殺人・窃盗・放火などなど、これは教育問題などではありません。たまたま、労働の義務が免除された学生と言う身分が保障されている「少年」によって行なわれた凶悪犯罪です。『教育基本法』を見直すなら、この身分をすべての未成年者に保障すべきか?という根本問題も取り扱って欲しいものですなあ。少年法に守られている年代には少年院などの施設に収容され、成年になってからは刑務所を出たり入ったりしている税金で暮らしている人をどうするのか?という、これまた人権思想の偽善性を真正面から議論することにもなりますから、そんなタフな議論に耐えられる国会議員は皆無でしょうなあ。