旅限無(りょげむ)

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宮崎県の「天の声」 其の弐

2006-12-04 13:29:30 | 政治
■岐阜から福島へと連続した県政の汚染は、宮崎県に飛び火する前に和歌山県を経由?しております。

和歌山県発注工事を巡る談合事件で、知事の木村良樹容疑者(54)(逮捕)が再選された知事選を控えた2004年4月、元出納長の水谷聡明(さとあき)被告(60)(再逮捕)が当時の県幹部職員に、所管する業界団体に木村容疑者の推薦を要請するよう指示していたことが、大阪地検特捜部の調べでわかった。……木村容疑者が水谷被告らに各団体の推薦取り付けを命じていた疑いがあるとみて、公職選挙法違反(公務員の地位利用)容疑……知事選を約4か月後に控えた04年4月ごろ、当時の幹部職員は、水谷被告(当時は審議監)から「知事が選挙のことを気にしている」などと、農協への推薦取り付けを要請されたという。
読売新聞 - 11月19日

■「自民党をぶっ壊す」過程と同時進行していたのが、地方分権の儀議論でした。更に「財政再建」を目指して公共事業はばっさりと削られ、道路公団の民営化も決定して行きましたから、ハコ物・道路・新幹線を頼りにしている地方自治体は小さなパイを激しく食い合うことになりました。


和歌山県の談合事件で、逮捕直後「容疑についてはよく思い出してから話をしたい」と供述していた県知事の木村良樹容疑者が、きょう、事件への関与を否定する内容の話をしていることが分かりました。……木村良樹容疑者(54)は昨夜、任意同行に応じた後、談合の疑いで逮捕されました。……選挙で支援を受けた土建会社「丸山組」を県発注の下水道工事に参入させるよう、前の出納長・水谷聡明容疑者(60)に指示した疑いです。木村容疑者はきょう接見した弁護士に対し、談合事件には一切関与していないと、全面的に否認する説明をしたということです。一方、県庁の秘書課や知事公舎からは、数百万円以上の使い道の判らない現金や、1個数十万円以上する高級腕時計も多数見つかっています。特捜部は、現金は木村容疑者が自由に使えるものだったとみていて、今後は収賄容疑での立件も視野に調べを進める方針です。
朝日放送 - 11月16日

■和歌山県では「論より証拠」の現金や高級時計がごろごろ出て来て、いくら御本人が「覚えていない」などと白を切っても無駄だったのでした。選挙対策には地元の支持が必要で、それも明確な票数が分かる組織である必要が有りまして、それも再選を狙うとなれば鎌倉幕府以来の「御恩と奉公」が最大の武器となります。田舎の組織と言えば、土木関連企業と農協関連の右に出るものは無いでしょうから、摘発が始まると建設会社の経営者が逮捕され、それが県庁内の側近へと連なって県知事の足元に火が回わり、マスコミが殺到する中で「知らぬ、存ぜぬ」の決まり文句が使われて、数日後には辞職か逮捕という段取りです。それを追跡して報道するのがマスコミなのですが、取材対象に接近し過ぎて取り込まれる愚か者も居るもので、大きな事件が解明される過程で、とんだトバッチリを受ける人まで出て来るのですなあ。


朝日新聞社は16日、大阪本社社会部の男性記者(41)が02年と04年、和歌山県発注の土木工事を巡る談合事件で起訴されたゴルフ場経営会社元社長の井山義一容疑者(56)=所得税法違反容疑で再逮捕=から、転勤祝い10万円と出産祝い5万円の計15万円を受け取っていたと発表した。同社は「取材先との適正な関係を逸脱し、記者のモラルに反する」として、同日付で管理本部付に異動させた。……記者は社会部の堺支局に勤務していた00年ごろ、オオタカの営巣を取材するため、井山容疑者が実質経営するゴルフ場「天野山カントリークラブ」(大阪府河内長野市)を訪問。同容疑者と知り合い、地元建設業界や談合情報、関西圏の裏事情に詳しいことなどから付き合うようになった。

■ここまでは彼が有能な新聞記者だったらしい事が伺えます。しかし、地方特有の濃密な人間関係と言うのでしょうか、取材対象との距離を取りながら関係を維持するのは難しいようです。盆暮れの「付け届け」から冠婚葬祭の「挨拶」をきっちりと守る習慣が有る所では、個人的な親睦がだんだん「魚心あれば水心」となって、最後は職業上の不正を犯す事が「義理を返す」ことになったりしまうからなあ。


02年8月、異動で大阪を離れることになったため、ゴルフ場へあいさつに行った際、「御転勤御祝」と書かれた封筒……大阪勤務に戻った04年9月にもあいさつに立ち寄り、子供が生まれたことを知った井山容疑者から「御出産御祝」と記された封筒……いずれも封を切らず、カバンに入れたままにしていた。大阪を中心に発行されている情報紙に15日、「大手紙記者に現金100万円」との記事が掲載されたため、本人が申し出て発覚。同社が聞き取り調査をした。その結果、記者はもらったままの封筒を上司に提出し、「固辞したが押し切られた。関係を維持したいと考え、返すと強く言えず、時間が経過した。反省している」と説明したという。

■大阪の情報紙に記事が出なかったら、この人はどうする心算だったのでしょう?「封を切らずに保管」というのが本当なら、優柔不断を責められつつも同情の余地は有りそうです。事件の発覚は間が悪かったの一言ですが、付き合っている誰が記事のネタになるのか分からないのがジャーナリストの宿命ですから、ケジメは付けておかないと拙(まず)いでしょうなあ。

子供好きのセンセイ 其の弐

2006-12-04 13:17:04 | 教育

東京都あきる野市に住む小学校教諭の男(33)が、交通事故死した子ども6人の写真をインターネットのホームページ(HP)上に無断掲載していた問題で、男は今年6月に愛知県警に著作権法違反容疑で事情聴取を受けた際に、勤務している羽村市内の小学校に対し「捜査中」を理由に具体的な説明を拒んでいたことが分かった。学校側は先月27日に外部から指摘を受けるまで、具体的な内容を把握しておらず、今月1日になって男を自宅待機とした。

■具体的な地名が公表されましたから、テレビで放映されたモザイクが掛かっていない服装や履や自転車などで、既に地元では学校名も本人の名前も特定されていることでしょう。その小学校では12月1日から休んでいる教師というだけで、全校生徒は分かっているでしょうし、今頃は保護者が真っ青になっているのでしょうなあ。


無断掲載された遺族は4日午前、警視庁に侮辱罪と児童ポルノ処罰法違反罪での告訴状などを提出した。遺族らは「子どもの遺体写真などに興味を示す男が、児童を前に教壇に立っていること自体が問題だ」などと憤りをあらわにした。男は名古屋市緑区の保育園で02年9月、屋上駐車場から落下した車の巻き添えになり死亡した片岡樹里ちゃん(当時3歳)の母親が作成したHPから、無断転用して自分のHPに掲載。遺族の感情を害するようなコメントを付けていた。遺族からの相談を受け、愛知県警が今年6月に男を任意で事情聴取した。学校側の説明によると、男はその際に電話で校長に報告したが、「捜査中なので具体的な内容は言えない」と説明していた。

■これは愛知県警のお手柄です!『報道特集』では、他の地域では警察に相談しても「泣き寝入り」するだけの指示しか受けられなかったとの事ですからてん、警察の地域間格差は悲劇を大きくしますなあ。全国の警察には是非とも頑張って頂きたい!


男は同県警から9月に書類送検されたが、東京の片山隼君の父、徒有(ただあり)さん(50)ら遺族側が、男が交通事故のほか、虐待や災害で死亡した子どもの裸を含む遺体写真などを大量に掲載したHPも制作していたことを突き止めた。学校側は先月27日に外部から指摘を受けてようやく、男から具体的な事実確認を始めた。同校校長は「他人の映像を自分のHPに掲載したとは聞いていたが、遺体の写真を掲載していたことまでは把握できなかった。対応が甘かったと言われても仕方がない」と話している。
毎日新聞 - 12月4日

■IT関連の授業を強化しよう!と文科省が旗を振っても、実際の教育現場では人材が揃わず頭を抱えているそうで、オタク趣味?の変わり者みたいな先生か、過労死覚悟で激務を買って出る教員に任せっきりという学校が多いとも聞きます。この校長先生にしても、コンピュータをどれほど扱えるかは心許無い限りだと推察されますから、コンピュータに強い頼れる職員が、実は極端な変態趣味の持ち主だったとは想像もしなかったのでしょうから、可哀想です。


6遺族を代表して告訴状などを提出した片山徒有さんは、午前11時から東京・霞が関の司法記者クラブで会見した。片山さんは「事故で子どもを失っただけでも大変なのに、好奇の目にさらされ遺族はつらい立場に置かれている。二度とこのような被害が起きないように警察には厳正な処置をお願いしたい」と訴えた。また、この日の警視庁との話し合いで、侮辱容疑を著作権法違反容疑に切り替えて告訴状を出し直すようアドバイスを受けたことなどを明らかにし、「非常に前向きな言葉をいただいた」と述べ、捜査に期待を込めた。片山さんは毎晩遅くまでパソコンに向かい、サイトを監視して、作成した男を特定した。「表現の自由は大事だが、サイトの管理者の責任を問う法規制の必要も感じた」と語り、今後、関係省庁にも法整備を働きかけていく考えも明らかにした。
毎日新聞 - 12月4日

■近所や知り合いに不幸が有れば、同情と哀悼の念を表わす言葉と行為をもって接するのが「普通の国」の風景です。どんどん小型化されるカメラを持って、他人の不幸を撮影して興奮するような輩(やから)がどんどん増えるのなら、デジタル製品もIT機器も、これ以上の発達などしない方が良いのかも知れませんなあ。そして、もう一度、教育現場に居る人達の「子供好き」という言葉を緊急に再点検する必要が有るでしょう。好みの被写体を自分の手で作る前に摘発されたのを幸いだったと思うしかない事件です。

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子供好きのセンセイ 其の壱

2006-12-04 13:16:27 | 教育
■多分、これは純然たる「教育問題」とは違う問題だと思われます。最近、注目されている「教育再生会議」で強調されている「ダメ教師を排除しろ!」という提言にも、この種の問題は想定されていないのではないと思われます。手鏡ひとつで輝かしい?人生を棒に振った「ミラーマン」教授の電車内痴漢行為事件が報道された時、教授は関西の某大学に在職中でしたが「教育問題」としては報道されなかったようですから、この不愉快千万な事件も、「教育問題」の領域を外れた問題だと思われます。勿論、最も強い衝撃を受けているのは愛知県の小学校なのでしょうが……。

交通事故で死亡した6人の子どもの生前の写真などがインターネットのホームページに大量に掲載されていたことが3日、分かった。HPには遺族を侮辱するようなコメントも載っていた。遺族らは4日、ホームページを制作した30歳代の小学校の男性教諭に対して、侮辱容疑で告訴状を、児童ポルノ処罰法違反容疑で告発状を警視庁捜査2課に提出する。

■TBSが日曜夕方に放送している『報道特集』でこの件はねっとりじっくりと取り扱っていました。犯人?の職業が大問題だと前置きしての放送でしたなあ。


ホームページには、東京の片山隼君ら6人の子どもが掲載されていた。「子どもの写真が載ったホームページがある」と匿名のメールが遺族のもとにあり、弁護士とともに調査していた。……遺族が事故の悲惨さを訴えようと立ち上げたホームページの生前の写真などが無断で掲載されていたほか、「トラックにぶつかってぐしゃっとなった」「ペタンコになった」などと遺族の感情を逆なでするようなコメントがあった。

■『報道特集』のねちっこい取材によりますと、この小学校教師は非常に熱心に職務をこなしていたそうで、特にコンピュータ処理については学校で一番の指導者的立場だったと言うのですから、それは当然だろうなあ、と変なところに感心してしまいます。この変態ホーム・ページに不運としか言いようの無い理不尽な自己で幼い命を失った我が子を思い、事故の再発を防ぎたい思いや社会制度の不備を訴えるために御遺族が運営している、胸が痛むホーム・ページから愛くるしい幼子の思い出写真を無断で転写して貼り付けたばかりか、現場検証をした警察関係者しか所有していないような生々しい事故現場の映像まで追加して掲載していたそうですなあ。

■防衛庁の間抜けな役人や自衛官までが「機密情報」を引き出されてしまうウィニー・ソフトでも悪用したのでしょうか?新聞社や他のマスコミにも無い現場写真を、この教師は何処かから探し出して利用していた可能性が高そうです。海外の死体愛好サイトからも、お気に入りの映像を探し出して転写していたとも言われていますから、根っからの愛好家なのでしょうなあ。おぞましい映像の一つ一つにコメントを丁寧に付けるのは至福の時だったようです。番組でその一部が紹介されましたが、幼児語に似た響きの有る下手くそな文章が、陰湿さを一層強く印象付ける、気味の悪いものでしたが、どうやら本人は性的な興奮やら絶頂感やらに浸っていたようです。


男は「クラブきっず」という名前でホームページを運営していた。別のホームページ上で、「3度の飯より遺体が好き」などと名乗って自らのホームページを紹介していた。
毎日新聞 - 12月3日

■「3度の飯より…」の暴言は、『報道特集』では出て来ませんでしたが、そのくらいの事は書きそうな人物と拝察しました。「個性重視」の手放し授業が、どれほど異常な性向でも正当化して恥ずかしげも無く「個性だ!」と言い張る風潮は、インターネット社会の出現によって極限にまで拡大しているのかも知れません。番組の取材によると、場所は特定しなかったものの海が綺麗な南の島に赴任していた経験が有るこの教師は、その当時にホーム・ページを開設したそうで、そこには自分が担任していた生徒達の写真映像を掲載していたとのことです。可愛さ余っての「生徒自慢」でさえも、肖像権や人権の問題が絡んで来るというのに、この教師が構えたカメラはどうも不自然なアングルや接写映像ばかりだったようです。本人は、「バーチャル空間で潜在的な欲望が解放された」というような発言をしていたようですが、自分の職業という現実と妄想を混同している危険性を自覚する能力が無いのは確かなようです。

■人の心の痛みを知る人間を育てねばならない仕事をしている一方で、「幼児の肉体」やら「死体」やらに執着する自分の欲望と妄想を制御しようとも思わなかったとすると、ネット上の写真を探し回るだけでは満足出来なくなるのも時間の問題で、自分で撮影しようとか、更には撮影するためだけに凶悪事件を起こそうとする心配が有りますから、関係者は対応に苦慮していることでしょう。違法な映像ソフトの中には、その種の趣味の無い人にとっては何が面白いのか、さっぱり分からない「覗き」映像ばかりを集めた物が流通しているのは有名な話ですし、欧米では幼児ポルノが嵩じて幼児殺害映像を商売にしている馬鹿者が居るとも聞きますから、日本にもその種の悪人が現れるのも時間の問題なのでしょうなあ。

事実は映画より奇きかも? 其の七

2006-12-04 08:31:17 | 外交・世界情勢全般

……ただ、今回の事件で検出されたほどの大量のポロニウム210を人工的に作るには、原子力施設など大がかりな設備が必要とされ、国家機関以外の犯行説は説得力に乏しい。25日付タイムズ紙は「動機、手段、機会のすべてFSBの関与を物語っている」と指摘した。その場合、FSBがプーチン大統領の指示・承認がないまま独自に殺害を実行した可能性も浮上しそうだ。
毎日新聞 - 11月26日

■これは北朝鮮が十八番(おはこ)にしている「一部の冒険主義者の暴発」という、訳の分からない責任の所在も実行された内容自体も、何もかも強引に封印してしまう屁理屈と同じ物です。事がチェチェン紛争から起こっているにせよ、事件が起こったのはロンドンですから、こんな茶番劇の幕引きで済むはずがありません。時はブレア政権の末期ですぞ!この世界が注目している大事件を、間違っても田舎芝居にしてしまったら、007の国の名が廃ります!ブレア政権の最後の花道として、イラクで犯した大失態を挽回するには大いなる伝統を誇っていた英国諜報機関の面子に懸けても、世界が「さすがは大英帝国!」と脱帽するような終わり方をしないと、それこそエライことになります。

■80年代初頭には、イラン革命の動乱を逃れた大物がフランスに亡命し、革命勢力が放った刺客が大暴れした事がありましたなあ。その内、命を狙われている亡命集団の中での内輪揉めまで始まって、誰が誰を狙って爆弾を仕掛けたり銃撃事件を起こしているのか、さっぱり分からない内ゲバ状態になったものです。今回のロンドンを舞台にした謀略工作が、本当にロシア内部の統制を外れた過激な連中と、チェチェンのロシア追随派が関係しているのならば、貧困問題と連動して過激化している在英イスラム教徒にも影響が及んで、女王様のお膝元がテロの巷(ちまた)になってしまいますぞ!ロンドン


インタファクス通信は1日、ロンドンで変死したロシア連邦保安局(FSB)元中佐、リトビネンコ氏が体調を崩した11月1日に同氏と接触していたFSBの元同僚、アンドレイ・ルゴボイ氏が1990年代初めにガイダル元首相代行の警護を担当していたと報じた。ガイダル氏もアイルランド訪問中に原因不明の急病で倒れ、毒を盛られた疑いが出ている。ルゴボイ氏を介して、リトビネンコ氏変死事件との間に何らかのつながりが出てくる可能性もあるとみられる。 
時事通信 - 12月2日

■ロンドンとアイルランドという近所で連続して起こった奇怪な事件が、一本の細い糸で結ばれそうな話です。国連や他の国際会議にも大きな顔をして出席しているロシアですが、内実は危なっかしい無政府状態一歩手前なのかも知れません。経済の主要部分はマフィア化しているという指摘は以前からも有りましたし、それでも国際社会から糾弾もされないのは、欧州の生命線のパイプ・ラインの「バルブ」を握っているからです。誠に恐ろしいことながら、万一、ロシアが英国の主権を犯して非合法活動を好き放題に実行している事が判明しても、「不買運動」も「経済制裁」も不可能だと、自ら認めてしまったら、完全に欧州はロシアの裏庭となってロシアの犬や猫?が放し飼いにされる場所になるかも知れませんなあ。それでは、まるでスパイ天国の日本みたいですぞ。


英紙ガーディアンは2日……アレクサンドル・リトビネンコ氏の体内で見つかった猛毒の放射性物質ポロニウム210は、致死量の100倍に達していたと報じた。2000万ポンド(約40億円)相当だという。……やはりポロニウムが検出されたイタリア人学者マリオ・スカラメッラ氏についても、ポロニウムを盛られたのではないかとの見方が強まっている。英メディアによれば、スカラメッラ氏の体内のポロニウムは、リトビネンコ氏に比べ格段に少ないが、単に同氏と接触しただけで体内に入るような量ではないとされる。 
時事通信 - 12月2日

■20年ほど前の米国ドラマに『100万ドルの男』というサイボーグ作品が有りましたが、悪い冗談を承知で書けば、『2000万ポンドの男』となると円換算でも一桁上がります。こんな馬鹿馬鹿しい高価な暗殺などが有り得るのか?こうなると、何らかの「事故」と考えた方が良いかもしれませんなあ。だからと言って安心は出来ませんぞ!昼日中、無数の群集が歩き回っている場所で、こんな物騒な「商品」を持ち歩いて取引している馬鹿者が居るかも知れないのですからなあ。実質的に破綻した国家が、核開発施設を持っていたりすると、現金化ししようとトンデモない物を盗み出して売り捌こうとするのを、どうやって阻止するのでしょう?「太陽政策」が全土に浸透するのを待っている余裕が有るのでしょうか?困りましたなあ。


……アレクサンドル・リトビネンコ氏(43)がロンドンで不審死を遂げた事件で、同氏から検出されたのと同じ放射性物質ポロニウム210が、同氏の妻とイタリア人研究者のマリオ・スカラメラ氏からも検出されたことが英保険保護庁(HPA)の調査で明らかになった。生前の同氏と接触した人物から相次いで放射性物質が検出され、事件の深刻さがさらに拡大した。……スカラメラ氏は、リトビネンコ氏が体調不良を訴えた11月1日にすしバーで面会していた人物。HPAによれば、検出量はリトビネンコ氏より格段に少ないものの、「健康状態への影響が懸念される量」といい、同氏も暗殺の標的になっていた可能性が浮上してきた。妻から検出されたポロニウムは微量という。

■毎日のようにポロニウム汚染の被害者が1人ずつ増えて行くようです。一旦、体内に取り込まれたら永久に除去出来ない迷惑な物が体内に入っていると知らせて貰っても、ぜんぜん嬉しくはないでしょうなあ。飲食物に混ぜれば口から入り、微粒子粉末を鼻から吸引しても、皮膚から浸透させる事も可能というのですから、通常の生活を送っていたら絶対に避けようのない「攻撃」に晒されるわけです。奥さんの体内に入った経路によっては、もっとややこしい侵入方法が有る可能性も出て来そうですが、「すしバー」で同席したスカラメラ氏の体内に入っていたなら、料理か飲み物に誰かが仕込んだのでしょうなあ。

■さてさて、毒を仕込んだのは寿司の「ネタ」か「シャリ」か、などと暢気な詮索をしている場合では有りません。まして「アガリ」か「ムラサキ」かも?などと、天下のMI-5が必死に調べているのでしょうか?もしも、ロシア名産の「キャビア」を使ったアバンギャルドな寿司や、日本でもお馴染みの「蟹寿司」だったら調査も楽になるのでしょうか?日本は蟹のシーズンですが……。


……米CNNは、米連邦捜査局(FBI)も英当局から捜査協力要請を受け、大量破壊兵器の専門家が科学的捜査を支援すると報じた。一方、ロシアのラジオ放送、エホ・モスクブイによれば、イタリアの有力紙カリエレ・デラ・セラはリトビネンコ氏殺害に露対外情報局(SVR)のイーゴリ・ブラソフ職員が関与していると報じた。SVRは旧ソ連国家保安委員会(KGB)の継承組織の一つで、現役情報機関員の実名が報じられるのは初めて。
産経新聞 - 12月3日

■話がここまで広がったら、『ゴルゴ13』の愛読者にしか着いて行けないマニアックな領域ですなあ。「SVR」はアリューシャン列島内に特殊訓練基地を持っていて……という話が有りましたぞ。選びに選び抜かれた殺人マシーンが更なる厳しいトレーニングを積んでいるという人跡稀な寒々とした風景が、まるで見て来たように描かれていた記憶が有ります。ロシア本国から、こんな秘中の秘のような情報が流れ出るというのはただ事ではありませんぞ!とても平和な日本で平穏無事に暮らしている日本人には、まったく分からない領域に謎解きが入ってしまいましたなあ。日本のマスコミは、一体、どう扱うのでしょう?そちらの方に興味が移ります。

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事実は映画より奇きかも? 其の伍

2006-12-04 08:30:52 | 外交・世界情勢全般
■ベレゾフスキー年代記の続きです。
1998年9月、ロシア金融危機の収拾のためにエフゲニー・プリマコフが首相に就任し、「ファミリー」に圧力。
1999年3月、CIS執行書記を解任。
1999年の下院国家会議選挙に大量の資金を流がし、「統一」の勝利に貢献。自身もカラチャイ・チェルケス共和国の小選挙区から立候補し当選。下院議員として、第二次チェチェン戦争に反対の立場を表明。

■アル中に苦しんだエリツェン末期の頃です。ベリゾフスキーを目の敵にしたプリマコフという人物にしても、それほど身奇麗なわけではなく、テレビ・カメラの前に引っ張り出されてエリツェンに「脱税野郎」呼ばわりされたりもしましたなあ。富と権力を奪い合う暗闘が泥沼化すれば、情報機関の存在感が増すのは何処も同じで、元KGBの大幹部だったプーチンが突然姿を現したかと思ったら、地方政府を皮切りにあっと言う間に中央政界に入り込みました。


2000年3月の大統領選挙で、ウラジーミル・プーチンを支持。
新興財閥の影響力を削ごうとするピーチンと対立し、同年7月下院議員を辞職。
2001年、ORTの株式49%を、ロマン・アブラモヴィッチに売却。
ロシア最高検察庁は、アエロフロート資金の横領疑惑などでベレゾフスキーへの追及を強め、逮捕を恐れたベレゾフスキーは国外に脱出。
2002年10月、本人不在のまま、最高検察庁は、詐欺の罪でベレゾフスキーを起訴。

■そして、ベレゾフスキーが逃げた先がロンドンだったというわけです。これだけ怪しげな経歴を持っている人物ですから、ポロニウムなどという物騒な物質に関わっていても、何の不思議も有りません。おそらく、英国の対外情報組織MI-6は厳重に彼を監視して、時には貴重な情報源にする代わりに生命の安全を保障していたに違い有りません。


元ロシア連邦保安庁中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏変死事件にからみポロニウム210とみられる放射性物質が検出されたのは28日までに計7カ所となった。このうち1カ所はロシア反体制派の富豪べレゾフスキー氏のロンドン中心部の事務所。英当局は引き続きリトビネンコ氏の足取りを追って検出作業を続けている。
毎日新聞 - 11月28日


■反体制派の事務所で反応が出たという事は、ベレゾフスキー本人を暗殺しようとしたか、逆にベレゾフスキー側がこれを使って逆襲しようとして、ロシア以外から仕入れてロシア国内に運び込んだか、さてどちらでしょう?殺害されたリビネンコ自身が、「核物質の運搬にかかわった」と発言しているのが気になりますなあ。


ロシアの元情報機関員アレクサンドル・リトビネンコ氏がロンドンで怪死した事件で、英スカイテレビは28日、同氏が倒れる直前にすしバーで会ったイタリア人学者、マリオ・スカラメッラ氏が英国内で英警察当局の保護下に入ったと報じた。スカラメッラ氏はイタリアで潜伏中と伝えられていたが、同テレビなどによると、自分の身に危険が及ぶのを恐れてロンドンに戻り、英警察に保護を要請した。また同氏は、リトビネンコ氏のような放射性物質の被害を受けていないかどうか検査中という。 
時事通信 - 11月28日

■こんなニュースを聞きますと、ロシアン・マフィアとイタリアン・マフィアが結託しているのか?と考えたくもなります。英国が保護要請に応じたという事は、怪しげな組織の暗闘の構図を把握しているという事です。少なくとも、イタリアでスカラメッラ氏を狙う者達を「敵」と認識しているのは確かです。


米誌ニューズウィーク最新号(27日発売)は、不審死した露連邦保安局(FSB)元中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏が、FSBの前身である旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者の秘密組織とされる団体「尊厳と名誉」から、脅迫文とみられる文書を受け取っていたと報じた。サッチャー元英首相の顧問を務め、リトビネンコ氏の仲間と親しい関係にあるティム・ベル卿の話として伝えた。文書の内容は不明だが、リトビネンコ氏が体調を崩し始める直前に送られたという。
読売新聞 - 11月27日

■「尊厳と名誉」とは大層な名前ですが、KGBがどのような過程を経て現在のFSBになったのかは組織の性質上、公表されていないのですから、この秘密組織がプーチン大統領とどのような関係に有るかは不明です。しかし、KGBから大量の要員が解雇されたという話も聞きませんし、元同僚間での殺し合いが起こっているとも聞きませんから、持ちつ持たれつの関係にあると考えるのが穏当でしょうなあ。

事実は映画より奇きかも? 其の四

2006-12-04 08:30:37 | 外交・世界情勢全般

……ロンドン警視庁は27日、ロシアの政商ベレゾフスキー氏の事務所などから新たにポロニウム210の痕跡を発見した。BBCテレビによると、ポロニウムがその場にあったのか、リトビネンコ氏が摂取した後に立ち寄ったのかは定かではない。また、事件の現場にいた市民ら3人が検査の結果、放射能汚染の恐れがあるとして放射線専門医による精密検査を受けることになった。リード内相は27日、英下院で緊急声明を出し、先週末に駐英ロシア大使に捜査協力を要請したことを報告した。
産経新聞 - 11月29日

■今度はベレゾフスキーさんの登場です。ソ連崩壊後の大物が続々と関与を噂されて出て来たら、エリツェン登場以来のはちゃめちゃな歴史を整理し直さなければなりませんなあ。堅気とマフィアの境目が無い人間達の権力闘争ですから、いまだにまとまった本が書けない状態ですから、突然、ベレゾフスキー登場!などと言われても、面食らってしまう人がほとんでしょうなあ。ちょっとウェキペディアを参考にして要点をまとめておきましょう。


1946年1月23日にモスクワでユダヤ系ロシア人の家庭に生まれる。モスクワ林業技術大学を卒業後、応用数学博士号を取得。
1969年頃から研究員として管理研究所に勤務。
1983年ソ連科学アカデミー会員となる。

■37歳までのベレゾフスキーは、ユダヤ系ロシア人の典型的な出世コースを地道に歩んでいたようです。しかし、彼が40代になって間も無く、一党独裁のソ連体制が崩壊します。


1989年ヴォルガ自動車工場とイタリアのロゴシステムに関係する自動車販売会社「ロゴヴァズ」を設立して社長に就任し、メルセデス・ベンツ、ゼネラル・モータースなどの公認ディーラーとなる。、
1994年にマフィアに自動車が爆破される。

■帝政ロシアを倒して一気に社会主義国家となったソ連が70年余の支配した歴史は、資本家・実業家不在の歴史でもあります。まともな金融機関も存在していない、通常の市場経済がなければ全国的な通信や物流のシステムも国家管理の下で、笑うしかないような非効率な仕事しかしていませんでした。そこに突如として何でも有りの資本主義のジャングルが広がったのでした!ルール無用、徹底的な弱肉強食の「仁義なき戦い」の修羅場が、かつては労働者の理想郷!社会主義の楽園!実態は「貧乏人の平等社会」ではあっても、政府に歯向かわない限りは生命は保障されるという、ロシア人の過酷な歴史の中では稀に見る平穏な?時代が続いていたのに……。それが崩壊したのですから、何とどうしたら良いやら、一般の人民には見当も付かなかったのでした。

■我先に資本主義の勝者になろうとしても、先立つ元手も技術も才覚も、何よりもコネが無ければ、商売しようにも仕入先と市場へのアクセスは不可能でしたでしょうし、生産業ともなれば、原材料・生産材・工業施設・従業員・物流・市場などなど、一から始められるような仕事では有りません。ましてや、海外の優良企業との提携だの、特約店契約だのを進められた人物が、何をやったのかなど想像も出来ませんぞ。国家資産とされていた全ての生産財が、「払い下げ」という名の横流しと横領によって特定の人物や勢力に渡されて、かつての共産党と軍部と犯罪組織との三つ巴の分捕り合戦が繰り広げられたに違いないのです。その争いは今でも終結せずに続いているのも容易に想像が出来ることですし、大物が狙い打ちされて国内で処刑されたり、国外に逃亡したり、まったく傍迷惑な話です。


大手石油会社シブネフチ(シベリア石油会社)設立。
国際航空会社のアエロフロートなどロシア国内の優良企業を買収。
金融部門では、アフトバス銀行、統一銀行を支配。
国営放送のロシア公共テレビ(ORT)民放のTV6、ロシア有数の経済誌であるコメルサント紙、ネザビシマヤ・ガゼータ(独立新聞)、週刊誌アガニョーク、ヴラスティなどを次々に支配下に置き世論操作?

■今では欧州の生命線を完全に握ったと言われるロシアのネネルギー政策ですが、ソ連崩壊直後には誰がどんな資格で取引をしたのかも分からない競争?の末に、ベロゾフスキーは見渡す限りのシベリア石油を自分の物にしたのでした。それに加えて金融とマスコミを抑えたのですから、現代の帝王そのものに成り上がったというわけです。正に「乱世の英雄」の出現でした。日本のIT長者の中には情報と金融とマスコミを融合させようとした人が居ましたが、それにエネルギーまで結び付けるとなると、その富と権力の大きさは計り知れませんなあ。


1996年、エリツィン再選に貢献して新興財閥(オリガルヒ)を「ファミリー」化。
1996年10月、ロシア安全保障会議副書記に就任し、チェチェン問題を担当。
1997年同職を解任される。
1998年4月CIS(独立国家共同体)執行書記に就任。
エリツィン政権の「黒幕」「政商」と呼ばれる。

■政治家というものは、基本的に商才は無いもので、なまじ算盤勘定に長けていたりすると、あっと言う間に「金脈」政治家になって汚職の沼に沈んでしまいますからなあ。黒い財閥に頼ってエリツェン政権は維持されていたわけですが、スポンサーが絶対に裏切らないようにする為には自分の目の届く所に置くのが一番ですから、ベリゾフシキーは表の政界にまで姿を現したというわけです。