■精密な地図が無ければ陸軍が戦争出来ないように、海軍には詳細な「海図」が無ければ困ります。かつて嘉永年間に襲来した黒船も、沖縄周辺や江戸湾沿岸を熱心に測量していたのは有名な話で、それは「戦争準備」を意味しますから、江戸幕府が真っ青になったのも当然です。近年に至るまでの中華人民共和国は、「第一列島線」内の海洋調査に熱心に取り組んでいたのですが、それが終了したらしく、この頃は第二列島線付近でも調査を行っているのが確認されていますなあ。海洋調査というのは、他国の「排他的経済水域(EEZ)」では行えないので、日本にとっても第二列島線付近にある沖ノ鳥島辺りをうろうろされるのは目障りです!日本が大金を掛けて波除け設備を完成させているのに、「あれはただの岩だ!島じゃない!」と言い張っているのは北京政府です。その理由は明らかでしょう。
■そればかりでなく、現在の中国海軍はインド洋に面するミャンマーと軍事協力関係を結び、バングラデシュとの国境近くに有るシュトウェ港と、アンダマン諸島に接する大ココ島の港湾を借りて、海軍基地を置いているのです。これでインド洋への足がかりはバッチリですなあ。念の入った事に、更に西、つまりパキスタンとも怪しげな軍事協力関係を持って、オマーン湾の入口に当たるグワダル港を借用して、何と、パキスタンを南北に貫通してカラコルム山脈を越え、自国の新疆ウイグル自治区へと通じる物流ルートを開こうとしているとの情報も有るそうです。これはフビライ時代の再現ですぞ!何処かの暢気な国とは違って、このパキスタンのグワダル港には必ず自国の艦船を「防衛するために」軍艦を並べる日が間も無くやって来ます。
■「列島線」がどういう経緯で考え出されたのかも確認しておきましょう。人民解放軍を完全に掌握して2度も失脚から復活した小平さんが、大規模な軍の改革を進めていた頃、人海戦術を前提として維持されていた数ばかり多い旧式の陸軍を縮小し、兵器や装備の近代化を急ぐ中で人民解放軍の世界戦略が決定します。小平さんの腹心の劉華清提督(1997年まで中央軍事委員会福主席)が命じられて『人民解放軍近代化計画』をまとめたのが1982年で、その中に「列島線」という新しい概念が盛り込まれていたそうです。当時は一種の夢物語同然でしかありませんでした。元々、一つの国が大海軍と大陸軍の両方は持てない、というのが国家論の歴史的な鉄則ですから、広大な国境線を接していたソ連への備えが最優先で、中国人民解放軍は陸軍を中心として組織されていました。海軍の比重は軽くて、沿岸防備を行う程度の沿岸海軍でした。ところが、冷戦が終結してソ連が崩壊、東欧の衛星国を失ったロシアが中国との関係改善を決断したことから事態は大きく変化します。
■プーチン政権と続けた交渉がまとまり、国境問題が解決した結果、中国人民解放軍の課題は台湾問題になります。江沢民時代の事です。どうやら本気で自分の政権で台湾を飲み込もうと思っていたようですが、台湾の後ろには太平洋の覇権を握っている米国が控えていました。ソ連との対決がなくなると、自動的に第一潜在仮想敵国は米国に変わりました。1993年には、李鵬首相が人民代表会議で「防御の対象に海洋権益を含める」と表明し、1997年に石雲生が海軍司令に就任して、中国海軍は沿岸海軍から「近海海軍」への変革を本格化させたのです。その時に注目を集めたのが、「海軍発展戦略」の骨子となる「第一列島線」と「第二列島線」の概念だったというわけです。
■それは軍備増強計画の目標であるばかりでなく、「中華」の膨張を海へと広げる恐るべき国家思想の中核ともなって、1992年に尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国の領土と規定した「領海法」を施行しましたし、1997年には国防の範囲に海洋権益の維持を明記した「国防法」を施行したのでした。こうして理念として法律を定め、具体的な実行力としての海軍力が整備される流れの中で、尖閣諸島への露骨な干渉が続けられていると認識しておかねばなりませんぞ!「第一列島線」が制海権を確保する仮想的な境界線となると、南シナ海・東シナ海・日本海に米空母や原潜が侵入させない実力が必要となります。
■そのためには国内の軍港に高性能の艦船を配備するのは勿論の事、「列島線」で結ばれている島々を天然の防波堤として利用する設備も欠かせなくなります。単なる弾除けの楯とするだけでなく、武器や食料・医薬品などの物資を備蓄したり、艦船の応急修理も出来る拠点が幾つも必要となるわけです。しかし、迷惑千万なことに、人民解放軍が想定した島嶼線は日本・台湾・フィリピン・インドネシアの領土と領海なのです!ですから、中国人民解放軍を統帥する国家中央軍事委員会の副主席で、中国海軍を掌握している劉華清提督がこうした「内部国防方針」を発表した時には、名指しされた国々からは困惑と抗議の声が上がったのは当然です。初めから戦争する気の無い日本が本気で怒るはずもなく、争いごとは常に遠い場所で起こる事で、日本の領海は平穏無事だと、多くの人が何の根拠も無く信じているのですから、ちょっと驚いてしまいます。
■「第一列島線」の内側には、南沙諸島問題、尖閣諸島問題や東シナ海ガス田問題などが発生していますが、中国は当該地域を「海洋領土」と勝手に呼んで澄ましています。何を言われようと、1980年代から、自国の海洋調査船をどんどん送り出して、「第一列島線」区域内の海底の地形や水温などの緻密な海洋調査が実施され、本格的な海戦や潜水艦戦の準備が整ったとも言われています。特に、海底地形、海水温分布、海水密度分布などのデータは、機雷戦を含む潜水艦戦を有利に進めるために必須ですから、着々と「有事」に対する備えは整って来ていると考えるべきでしょう。
■2004年に漢級原子力潜水艦が起こした領海侵犯事件では、浮上航行している無様な姿を日本の海上保安庁に写真を撮られ、領海侵犯後は海上自衛隊の対潜哨戒機と護衛艦に追跡され続けるという潜水艦としては最低最悪の失態を演じています。この事から、実際に対米戦争を引き起こせるほどの実力は持っていないと推測されますが、時を味方にして盗んででも軍事技術を向上させ続けている事には変わりは有りませんぞ。
■そればかりでなく、現在の中国海軍はインド洋に面するミャンマーと軍事協力関係を結び、バングラデシュとの国境近くに有るシュトウェ港と、アンダマン諸島に接する大ココ島の港湾を借りて、海軍基地を置いているのです。これでインド洋への足がかりはバッチリですなあ。念の入った事に、更に西、つまりパキスタンとも怪しげな軍事協力関係を持って、オマーン湾の入口に当たるグワダル港を借用して、何と、パキスタンを南北に貫通してカラコルム山脈を越え、自国の新疆ウイグル自治区へと通じる物流ルートを開こうとしているとの情報も有るそうです。これはフビライ時代の再現ですぞ!何処かの暢気な国とは違って、このパキスタンのグワダル港には必ず自国の艦船を「防衛するために」軍艦を並べる日が間も無くやって来ます。
■「列島線」がどういう経緯で考え出されたのかも確認しておきましょう。人民解放軍を完全に掌握して2度も失脚から復活した小平さんが、大規模な軍の改革を進めていた頃、人海戦術を前提として維持されていた数ばかり多い旧式の陸軍を縮小し、兵器や装備の近代化を急ぐ中で人民解放軍の世界戦略が決定します。小平さんの腹心の劉華清提督(1997年まで中央軍事委員会福主席)が命じられて『人民解放軍近代化計画』をまとめたのが1982年で、その中に「列島線」という新しい概念が盛り込まれていたそうです。当時は一種の夢物語同然でしかありませんでした。元々、一つの国が大海軍と大陸軍の両方は持てない、というのが国家論の歴史的な鉄則ですから、広大な国境線を接していたソ連への備えが最優先で、中国人民解放軍は陸軍を中心として組織されていました。海軍の比重は軽くて、沿岸防備を行う程度の沿岸海軍でした。ところが、冷戦が終結してソ連が崩壊、東欧の衛星国を失ったロシアが中国との関係改善を決断したことから事態は大きく変化します。
■プーチン政権と続けた交渉がまとまり、国境問題が解決した結果、中国人民解放軍の課題は台湾問題になります。江沢民時代の事です。どうやら本気で自分の政権で台湾を飲み込もうと思っていたようですが、台湾の後ろには太平洋の覇権を握っている米国が控えていました。ソ連との対決がなくなると、自動的に第一潜在仮想敵国は米国に変わりました。1993年には、李鵬首相が人民代表会議で「防御の対象に海洋権益を含める」と表明し、1997年に石雲生が海軍司令に就任して、中国海軍は沿岸海軍から「近海海軍」への変革を本格化させたのです。その時に注目を集めたのが、「海軍発展戦略」の骨子となる「第一列島線」と「第二列島線」の概念だったというわけです。
■それは軍備増強計画の目標であるばかりでなく、「中華」の膨張を海へと広げる恐るべき国家思想の中核ともなって、1992年に尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国の領土と規定した「領海法」を施行しましたし、1997年には国防の範囲に海洋権益の維持を明記した「国防法」を施行したのでした。こうして理念として法律を定め、具体的な実行力としての海軍力が整備される流れの中で、尖閣諸島への露骨な干渉が続けられていると認識しておかねばなりませんぞ!「第一列島線」が制海権を確保する仮想的な境界線となると、南シナ海・東シナ海・日本海に米空母や原潜が侵入させない実力が必要となります。
■そのためには国内の軍港に高性能の艦船を配備するのは勿論の事、「列島線」で結ばれている島々を天然の防波堤として利用する設備も欠かせなくなります。単なる弾除けの楯とするだけでなく、武器や食料・医薬品などの物資を備蓄したり、艦船の応急修理も出来る拠点が幾つも必要となるわけです。しかし、迷惑千万なことに、人民解放軍が想定した島嶼線は日本・台湾・フィリピン・インドネシアの領土と領海なのです!ですから、中国人民解放軍を統帥する国家中央軍事委員会の副主席で、中国海軍を掌握している劉華清提督がこうした「内部国防方針」を発表した時には、名指しされた国々からは困惑と抗議の声が上がったのは当然です。初めから戦争する気の無い日本が本気で怒るはずもなく、争いごとは常に遠い場所で起こる事で、日本の領海は平穏無事だと、多くの人が何の根拠も無く信じているのですから、ちょっと驚いてしまいます。
■「第一列島線」の内側には、南沙諸島問題、尖閣諸島問題や東シナ海ガス田問題などが発生していますが、中国は当該地域を「海洋領土」と勝手に呼んで澄ましています。何を言われようと、1980年代から、自国の海洋調査船をどんどん送り出して、「第一列島線」区域内の海底の地形や水温などの緻密な海洋調査が実施され、本格的な海戦や潜水艦戦の準備が整ったとも言われています。特に、海底地形、海水温分布、海水密度分布などのデータは、機雷戦を含む潜水艦戦を有利に進めるために必須ですから、着々と「有事」に対する備えは整って来ていると考えるべきでしょう。
■2004年に漢級原子力潜水艦が起こした領海侵犯事件では、浮上航行している無様な姿を日本の海上保安庁に写真を撮られ、領海侵犯後は海上自衛隊の対潜哨戒機と護衛艦に追跡され続けるという潜水艦としては最低最悪の失態を演じています。この事から、実際に対米戦争を引き起こせるほどの実力は持っていないと推測されますが、時を味方にして盗んででも軍事技術を向上させ続けている事には変わりは有りませんぞ。