■イラクを崩壊させて「中東のパンドラの箱」の蓋(ふた)を開けた米国は、2つの巨大ハリケーンに沈み、これが米国民を正気に戻したのは不幸中の幸いだったかも知れません。台風一過の晴天が訪れても、米国は明るい希望に向って立ち上がれるかどうか、非常に心配な状態です。さっさと片付くはずのイラク復興計画が完全に頓挫して、日本の新聞紙上でも「自爆テロ」の扱いは、日常生活の一齣(こま)のような小さな扱いです。その内、「今日はイラクで爆発が無い」ことが大ニュースになるかも知れませんなあ。
■イラクと北朝鮮は、財布と鉄砲を一つずつしか持っていない米国にとっては、切り離して扱えない問題です。勿論、財布の中身を見て、足りない分は日本に押し付けて来るのは明らかです。それが沖縄の米軍基地の移転問題ともリンクしているのですから、10年間ももたもたやっていた日本政府は最悪の選択をしてしまった事になるでしょう。北朝鮮と弱気を隠さないような妥協をして見せた米国は、東アジアで中国に大きなアドバンテージを与えた事になります。ロシアも、煮え切らない日本とは距離を取って中国にすり寄っていますから、中国は「朝貢外交」が復活する期待に胸を膨らませているでしょうなあ。このまま北京オリンピックに雪崩れ込めば、世界の主要国は、何が何でも大会を成功させようと最大限の協力をするでしょう。
■今となっては何もかもが手遅れだ!と言ってしまうわけに行かないのが国際問題であり、外交政策というものでしょう。すべての問題の中心にイラクが在ります。中東に一つの形を与えていたジグソー・パズルの大きなワン・ピースを抜き取ったのですから、あっちもこっちもぼろぼろとピースが崩れ落ち続けているのです。米ソ両国に欧州諸国を加えて自在に操ったイラクが、石油でもパレスチナ問題でも、常に中東の第一走者でした。それが消えれば、シリアとイランが第一勝者になろうと飛び出してくるのは最初から分かっていたでしょうに!既に、サウジアラビアは米国の子分を辞めている節が有るので、いよいよ米国は昔からの馴染みに頼らねばなりません。戦闘終了直後の勢いはすっかり無くなってしまいましたなあ。復興政策が躓(つまづ)いた時から、駐留米軍の犠牲者が1000人に達すれば、自国内で反戦運動が始まるだろう、と予想されていたのですが、よく1900人まで米国は耐えました。本当に米国は十字軍カルトに覆われたのか?と思っていたら、ヴェトナム戦争後期を彷彿とさせる光景がワシントンに現れましたなあ。反戦デモです。
■日本が訳の分からない総選挙のお祭り騒ぎが終わり、失敗が懸念されていた愛知の博覧会が、値引きと弁当持込許可で何とか予定入場者数を越えて終了した日に、中東はそれに合わせた訳ではないでしょうが、俄かに動き出しました。
首都ベイルート北方ジュニエで25日、車に仕掛けられた爆弾が爆発、乗っていたテレビ局、レバノン放送(LBC)の著名な女性キャスター、メイ・シェディアク氏が足などに重傷を負った。同氏はキリスト教徒。LBCは反シリア的な報道で知られる。レバノンでは今年2月にハリリ元首相が暗殺された後、テロ事件が頻発。6月には著名ジャーナリストのサミール・カシール氏、共産党のジョージ・ハウィ元書記長と、反シリア派が爆弾テロで相次いで殺された。ベイルートでは今月16日、キリスト教徒地区で2台の車の間に仕掛けられた爆弾が爆発。少なくとも1人が死亡した。
毎日新聞 2005年9月26日
イラクを支配していたのはバース党という組織です。サダム・フセインさんも立派な党員です。この政党はイスラム教よりも社会主義とアラブ民族主義を結合した奇妙なイデオロギーを看板にして、結局、社会主義風の一党独裁とアラブの王様の伝統が結合した政治をしました。イラクのバース党は崩壊しましたが、実は、この政党の本家本元はシリアなのですなあ。決して弟分の敵討ちなどする人達ではなく、他人の不幸を大いに喜ぶリアリスト達なので、中東の覇者になろうとシリアが暴れ出すのは分かっていました。そこまでは米国でも予測していたのですが……
陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで25日夜(日本時間26日未明)、ムサンナ州政府庁舎近くに迫撃弾が1発撃ち込まれた。死傷者はなかった。現地の警察当局が明らかにした。現場はサマワ中心部。警察が事件の背後関係を捜査している。
サマワでは、イスラム教シーア派の反米指導者サドル師派が、知事の辞任を求め州当局と対立を続けている。警察当局者によると、迫撃弾は着弾地点の約3キロ北側から発射されたとみられる。
毎日新聞 2005年9月26日
■こちらは明らかにイランが裏で糸を引いています。サダムのイラクが崩壊すれば、クルドとシーア派が暴れ始めることも予想されていましたが、イランのハシャギぶりは予想外だったのかも知れません。米国は甘かったのでしょう。それに付き合わされた日本はどうするのでしょう?
パレスチナ・ガザ地区からイスラエルに向けロケット弾を発射していたイスラム原理主義組織ハマス最高幹部のザッハール氏は25日夜(日本時間26日未明)、同地からの攻撃停止を宣言した。だが、別の原理主義組織イスラム聖戦は同夜、幹部ら2人をイスラエル軍に殺害され、停戦の破棄を示唆。軍側も26日早朝までガザ地区で激しい空爆を続行しており、事態はなお流動的だ。
ハマスはガザ北部での23日の軍事パレードで爆発が起き、多数の死傷者を出した事件について、イスラエルの攻撃が原因だと主張。25日までに数十発のロケット弾を発射し、イスラエル人5人にけがを負わせた。だが、その後の調査で事故だった可能性が強まり、イスラエル軍の激しい報復と相まって、パレスチナ人の間にもハマスの責任を問う声が広まっていた。
イスラエル放送によると、ハマスの攻撃停止宣言後もイスラエルを狙ったガザからのロケット弾攻撃はおさまらず、軍側も中北部のガザ市から南部のハンユニス、ラファにかけて、ハマスを含む複数の武装組織の武器工場など4カ所以上を標的に空爆を続行。パレスチナ側は女性が負傷したほか、ガザ市で停電などが起きていると報じた。毎日新聞 2005年9月26日
■ハマスという組織は、最初はイスラエルが援助していた穏健な反アラファト運動の集まりでしたが、エジプトで成長していた過激な原理主義の影響で反米・反イスラエルを主張する凶暴な組織に変身したのでした。資金はサウジアラビアとイランが競い合って提供してくれました。サウジの資金はアルカーイダを育てた資金と同根のものでしょうなあ。サウジ王家が我が身可愛さに米国側に寝返ってからは、イランが主導権を握って援助資金と指示を出しているようです。パレスチナ側から打ち込まれる携帯式のミサイルは、ロシア製のカチューシャのはずなのですが、余り報道されていませんなあ。中東ではアラブ側のゲリラが愛用する安価で扱い易い優れものです。イスラエルはこのカチューシャが大嫌いです。もう直ぐ、日本の自衛隊員も大嫌いになるでしょうし、日本国民も嫌いになるでしょうなあ。そして、
イランのIAEA代表団のバイディ団長が24日、「IAEA史上初めて全会一致の精神が崩れた」と西側の失敗を強調した。しかし、決議では、イランが秘密裏に核開発を行った保障措置協定違反を認定しており、モッタキ外相も25日、国営テレビで、「政治的で違法、不合理」と切り捨てた。
イラン政府は、「米国はイラクへの対応に追われ、イランを軍事攻撃する可能性が低い」と判断しており、これが強硬姿勢につながっている。
また、今後、核問題が安保理に付託されるとしても、ウラン濃縮への着手という一線を越えない限り、常任理事国の中露がイランを支持するとイランは考えており、情勢を見極めつつしたたかに対応する可能性が高い。現地ジャーナリストは、「指導部にとって核燃料サイクルは国家体制維持のための取引材料」と指摘。「真の狙いは米国を交渉のテーブルに引きずり出すことだろう」と分析している。毎日新聞 2005年9月26日
■イランは追い出されたパーレビ国王時代からドイツの技術と米国の援助で核武装しようとしていた国です。その遺産を受け継いで、中国・パキスタン・北朝鮮からの売り込みに乗って、北朝鮮とまったく同じ「核の平和利用」を叫んでいます。石油と天然ガスが「売るほど」有るイランが、核を平和利用するはずは無いでしょうなあ。イラク崩壊し、シリアも米国に締め上げられている現在、サウジアラビアを出し抜き、エジプトを黙らせるには原爆と長距離ミサイルが必要なのです。ですから、北朝鮮は核を使用するガッツが無いとしても、イランは喚声を上げて使うために準備を進めているのです。日本の外務省に捌けるような宿題ではありません。石油が止まる。核が飛ぶ。丸腰の自衛隊は憲法改正まで動けません!
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い
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■イラクと北朝鮮は、財布と鉄砲を一つずつしか持っていない米国にとっては、切り離して扱えない問題です。勿論、財布の中身を見て、足りない分は日本に押し付けて来るのは明らかです。それが沖縄の米軍基地の移転問題ともリンクしているのですから、10年間ももたもたやっていた日本政府は最悪の選択をしてしまった事になるでしょう。北朝鮮と弱気を隠さないような妥協をして見せた米国は、東アジアで中国に大きなアドバンテージを与えた事になります。ロシアも、煮え切らない日本とは距離を取って中国にすり寄っていますから、中国は「朝貢外交」が復活する期待に胸を膨らませているでしょうなあ。このまま北京オリンピックに雪崩れ込めば、世界の主要国は、何が何でも大会を成功させようと最大限の協力をするでしょう。
■今となっては何もかもが手遅れだ!と言ってしまうわけに行かないのが国際問題であり、外交政策というものでしょう。すべての問題の中心にイラクが在ります。中東に一つの形を与えていたジグソー・パズルの大きなワン・ピースを抜き取ったのですから、あっちもこっちもぼろぼろとピースが崩れ落ち続けているのです。米ソ両国に欧州諸国を加えて自在に操ったイラクが、石油でもパレスチナ問題でも、常に中東の第一走者でした。それが消えれば、シリアとイランが第一勝者になろうと飛び出してくるのは最初から分かっていたでしょうに!既に、サウジアラビアは米国の子分を辞めている節が有るので、いよいよ米国は昔からの馴染みに頼らねばなりません。戦闘終了直後の勢いはすっかり無くなってしまいましたなあ。復興政策が躓(つまづ)いた時から、駐留米軍の犠牲者が1000人に達すれば、自国内で反戦運動が始まるだろう、と予想されていたのですが、よく1900人まで米国は耐えました。本当に米国は十字軍カルトに覆われたのか?と思っていたら、ヴェトナム戦争後期を彷彿とさせる光景がワシントンに現れましたなあ。反戦デモです。
■日本が訳の分からない総選挙のお祭り騒ぎが終わり、失敗が懸念されていた愛知の博覧会が、値引きと弁当持込許可で何とか予定入場者数を越えて終了した日に、中東はそれに合わせた訳ではないでしょうが、俄かに動き出しました。
首都ベイルート北方ジュニエで25日、車に仕掛けられた爆弾が爆発、乗っていたテレビ局、レバノン放送(LBC)の著名な女性キャスター、メイ・シェディアク氏が足などに重傷を負った。同氏はキリスト教徒。LBCは反シリア的な報道で知られる。レバノンでは今年2月にハリリ元首相が暗殺された後、テロ事件が頻発。6月には著名ジャーナリストのサミール・カシール氏、共産党のジョージ・ハウィ元書記長と、反シリア派が爆弾テロで相次いで殺された。ベイルートでは今月16日、キリスト教徒地区で2台の車の間に仕掛けられた爆弾が爆発。少なくとも1人が死亡した。
毎日新聞 2005年9月26日
イラクを支配していたのはバース党という組織です。サダム・フセインさんも立派な党員です。この政党はイスラム教よりも社会主義とアラブ民族主義を結合した奇妙なイデオロギーを看板にして、結局、社会主義風の一党独裁とアラブの王様の伝統が結合した政治をしました。イラクのバース党は崩壊しましたが、実は、この政党の本家本元はシリアなのですなあ。決して弟分の敵討ちなどする人達ではなく、他人の不幸を大いに喜ぶリアリスト達なので、中東の覇者になろうとシリアが暴れ出すのは分かっていました。そこまでは米国でも予測していたのですが……
陸上自衛隊が駐留するイラク南部サマワで25日夜(日本時間26日未明)、ムサンナ州政府庁舎近くに迫撃弾が1発撃ち込まれた。死傷者はなかった。現地の警察当局が明らかにした。現場はサマワ中心部。警察が事件の背後関係を捜査している。
サマワでは、イスラム教シーア派の反米指導者サドル師派が、知事の辞任を求め州当局と対立を続けている。警察当局者によると、迫撃弾は着弾地点の約3キロ北側から発射されたとみられる。
毎日新聞 2005年9月26日
■こちらは明らかにイランが裏で糸を引いています。サダムのイラクが崩壊すれば、クルドとシーア派が暴れ始めることも予想されていましたが、イランのハシャギぶりは予想外だったのかも知れません。米国は甘かったのでしょう。それに付き合わされた日本はどうするのでしょう?
パレスチナ・ガザ地区からイスラエルに向けロケット弾を発射していたイスラム原理主義組織ハマス最高幹部のザッハール氏は25日夜(日本時間26日未明)、同地からの攻撃停止を宣言した。だが、別の原理主義組織イスラム聖戦は同夜、幹部ら2人をイスラエル軍に殺害され、停戦の破棄を示唆。軍側も26日早朝までガザ地区で激しい空爆を続行しており、事態はなお流動的だ。
ハマスはガザ北部での23日の軍事パレードで爆発が起き、多数の死傷者を出した事件について、イスラエルの攻撃が原因だと主張。25日までに数十発のロケット弾を発射し、イスラエル人5人にけがを負わせた。だが、その後の調査で事故だった可能性が強まり、イスラエル軍の激しい報復と相まって、パレスチナ人の間にもハマスの責任を問う声が広まっていた。
イスラエル放送によると、ハマスの攻撃停止宣言後もイスラエルを狙ったガザからのロケット弾攻撃はおさまらず、軍側も中北部のガザ市から南部のハンユニス、ラファにかけて、ハマスを含む複数の武装組織の武器工場など4カ所以上を標的に空爆を続行。パレスチナ側は女性が負傷したほか、ガザ市で停電などが起きていると報じた。毎日新聞 2005年9月26日
■ハマスという組織は、最初はイスラエルが援助していた穏健な反アラファト運動の集まりでしたが、エジプトで成長していた過激な原理主義の影響で反米・反イスラエルを主張する凶暴な組織に変身したのでした。資金はサウジアラビアとイランが競い合って提供してくれました。サウジの資金はアルカーイダを育てた資金と同根のものでしょうなあ。サウジ王家が我が身可愛さに米国側に寝返ってからは、イランが主導権を握って援助資金と指示を出しているようです。パレスチナ側から打ち込まれる携帯式のミサイルは、ロシア製のカチューシャのはずなのですが、余り報道されていませんなあ。中東ではアラブ側のゲリラが愛用する安価で扱い易い優れものです。イスラエルはこのカチューシャが大嫌いです。もう直ぐ、日本の自衛隊員も大嫌いになるでしょうし、日本国民も嫌いになるでしょうなあ。そして、
イランのIAEA代表団のバイディ団長が24日、「IAEA史上初めて全会一致の精神が崩れた」と西側の失敗を強調した。しかし、決議では、イランが秘密裏に核開発を行った保障措置協定違反を認定しており、モッタキ外相も25日、国営テレビで、「政治的で違法、不合理」と切り捨てた。
イラン政府は、「米国はイラクへの対応に追われ、イランを軍事攻撃する可能性が低い」と判断しており、これが強硬姿勢につながっている。
また、今後、核問題が安保理に付託されるとしても、ウラン濃縮への着手という一線を越えない限り、常任理事国の中露がイランを支持するとイランは考えており、情勢を見極めつつしたたかに対応する可能性が高い。現地ジャーナリストは、「指導部にとって核燃料サイクルは国家体制維持のための取引材料」と指摘。「真の狙いは米国を交渉のテーブルに引きずり出すことだろう」と分析している。毎日新聞 2005年9月26日
■イランは追い出されたパーレビ国王時代からドイツの技術と米国の援助で核武装しようとしていた国です。その遺産を受け継いで、中国・パキスタン・北朝鮮からの売り込みに乗って、北朝鮮とまったく同じ「核の平和利用」を叫んでいます。石油と天然ガスが「売るほど」有るイランが、核を平和利用するはずは無いでしょうなあ。イラク崩壊し、シリアも米国に締め上げられている現在、サウジアラビアを出し抜き、エジプトを黙らせるには原爆と長距離ミサイルが必要なのです。ですから、北朝鮮は核を使用するガッツが無いとしても、イランは喚声を上げて使うために準備を進めているのです。日本の外務省に捌けるような宿題ではありません。石油が止まる。核が飛ぶ。丸腰の自衛隊は憲法改正まで動けません!
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