「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

陽炎の中より電車喘ぎ来る 佐藤憲一 「滝」6月号<滝集>

2015-06-14 04:49:33 | 日記
 句座「喘ぎ来る」の比喩に臨場感があふれる。遠くから出
現した電車は、いつもの正確な時間にしばられた車両とはま
るで違っていた。いつもの電車が内蔵する時間をデジタル的
だとすれば、陽炎をくぐってきたこの電車の時間経過はアナ
ログ的なのだ。時間はいつでも捉え難いものだが、陽炎をく
ぐらせるとさらにそれが極まる。時間と「陽炎」の有空不二
とがうまく共鳴している。これからこの電車は「自在」の境
地へ向かうのかも知れない。(石母田星人)